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新世代マランツデザイン、ネットワーク再生対応「SACD 30n」、アンプ「MODEL 30」

上からSACDプレーヤー「SACD 30n」、プリメインアンプ「MODEL 30」

マランツは、新世代のマランツデザインを採用した、ネットワーク再生機能付きのSACDプレーヤー「SACD 30n」、プリメインアンプ「MODEL 30」を9月上旬に発売する。価格は各27万円。カラーはシルバーゴールド。

これまでの同社プリメインアンプ、プレーヤーのデザインベースは、16年ほど同じだったが、家具やガジェットなどのデザインが変化する中、それらとマッチするような新世代のデザインを採用したのが今回のモデルとなる。

デザインとしては新しいものだが、“シンメトリー”や“ポートホール”のようなマランツの伝統的なデザインエレメントの継承も重視。そこに現代的な解釈を取り入れたモダンなデザインへと進化した。

SACDプレーヤー「SACD 30n」
プリメインアンプ「MODEL 30」

また、デザインの刷新に伴って機構設計の全面的な見直しが可能となり、ビルドクオリティも大きく進化。ハウジングを構成するシャーシに用いられる鋼板の厚みは12シリーズと同等とし、アルミ製サイドカバーについては12シリーズを超える最厚部5.7mmの高剛性なアルミパネルを採用。インシュレーターや電源トランスの固定には、特に太いネジを使うなど、上位モデルに匹敵する堅牢さを実現している。

光を落としたところ。フロントパネルの横から光が漏れ、少し内側に丸くへこんだ部分にやわらかな光があたり、模様が浮かびあがるようなデザインになっている

ネットワーク再生機能付きのSACDプレーヤー「SACD 30n」

最大の特徴は、マランツの理想のサウンドを追求するために開発された完全オリジナルのディスクリートDAC「Marantz Musical Mastering(MMM)」を採用している事。27万円の製品ながら、フラッグシップモデル「SA-10」と同一の回路構成をそのまま継承した。

さらに、ネットワークプレーヤーの専用モデル「NA-11S1」(33万円)や、SACDプレーヤー「SA-12」(30万円)に匹敵・凌駕するようなクオリティを目指して開発したという、意欲的なモデルとなっている。

ディスクリートDAC「MMM」は、オリジナル・デジタルフィルター「MMM-Stream」と、MMM-Streamから出力されるDSD信号をアナログ変換する「MMM-Conversion」で構成。MMM-Streamは、独自のアルゴリズムでPCM信号を1bit DSDデータに変換し、後段のMMM-Conversionに送り出す。

その過程でオーバーサンプリング、デジタルフィルター、ΔΣモジュレーター、ノイズシェーパー、ディザー、レゾネーターなどの処理を、全て自社開発のアルゴリズム、パラメーターで行なうことで、マランツの理想とするサウンドを具現化した。

デジタルフィルター切り替え機能を搭載しており、再生する楽曲や好みに合わせてフィルター1(スローロールオフ)とフィルター2(シャープロールオフ)を切り替えられる。MMM-ConversionはMMM-Streamから入力される1bit DSD信号をアナログFIRフィルターによってダイレクトにD/A変換。シンプルかつ高品位な回路でD/A変換する事で、原音に忠実なアナログ信号が得られるという。

ディスクリートDACのメリットとして、MMM-Streamをデジタル基板に、MMM-Conversionをアナログ基板にレイアウト。その間にデジタル・アイソレーション回路の「コンプリート・アイソレーション・システム」を挿入することで、デジタル/アナログステージの完全な分離を実現。高周波ノイズによる音質への悪影響を排除した。

一列に8個並んでいるのがデジタルアイソレーター

ICにパッケージングされたDACでは不可能なパーツの選定も自由に行なえるため、SACD 30nではMMM-Conversion出力部に精密メルフ抵抗や銅箔フィルムコンデンサーなど、高品位なパーツを多数搭載し、サウンドチューニングを行なっている。

ネットワークオーディオ再生機能も備え、HEOSのネットワークモジュールを搭載する。このネットワーク再生の音質を高めるために、工夫がある。これまでの製品では、超低位相雑音クリスタルのマスタークロックを使って信号を処理しているSACDやCDなどと比べ、HEOSのネットワークモジュールを使った機器ではジッター的に不利な部分があった。

SACD 30nでも、SA-10などの上位モデルと同様に、クロック回路に超低位相雑音クリスタルを採用し、44.1kHz系、48kHz系のクロックを再生するソースのサンプリング周波数に応じて切り替えて使用することにより最適なクロック信号を供給している。

SACD 30nではさらに、ネットワーク再生時のクロック品質を向上させるため、新たにクロック回路に高性能ジッタークリーナーを用いた「プレミアム・クロック・リジェネレーター」を追加している。

ネットワーク再生時のクロック信号は、HEOSモジュールからD/A変換回路までの長い距離を伝送される間にジッターが発生し、再生音にもその影響が現れてしまうが、それをジッタークリーナーにより、劣化したクロック信号に含まれる揺らぎやノイズを取り除き、高品位なクロック信号を供給。これにより、「再生するソースに関わらず、明瞭な定位と見通しの良い空間表現を実現した」とする。

DAC以降のアナログステージには、独自の高速アンプモジュールHDAM、HDAM-SA3を用いたフルディスクリート回路を採用。ハイスピードで情報量豊かなサウンドを実現したという。

サウンドマスターと音質担当エンジニアによる試作、試聴を繰り返し、既存の音質対策パーツと新規開発のカスタムパーツからSACD 30nに最適なものを厳選。細部に至るまで徹底したサウンドチューニングを施したという。

通常のアナログ音声出力端子(FIXED)に加え、出力信号の音量を調整できる可変出力端子(VARIABLE)も装備。HEOSアプリや付属のリモコンで音量の調整できる。L/R独立タイプのアナログ出力端子を余裕のある間隔で配置し、大型のRCAプラグを使用したケーブルも着脱しやすいという。固定出力の端子には真鍮削り出し端子を装備。アナログ出力端子と、同軸デジタル入力/出力端子には金メッキ加工も施した。

専用設計のオリジナル・メカエンジン「SACDM-3L」を搭載。光学系と制御系についてはSA-12用メカエンジン「SACDM-3」と同一の回路、パーツを使用した。ディスクローダーなど機構系パーツのコストダウンを行なう一方で、シャーシへ固定する際のネジをより太いものにするなど、振動対策を徹底して高い読み取り精度を維持している。

黒い部分がオリジナル・メカエンジン「SACDM-3L」。手前のヒートシンクがついた小さな基板がHEOSのモジュールだ

USB DAC機能も搭載。最大11.2MHzのDSDと、384kHz/32bit PCMに対応。DSDはASIOドライバー(Windowsのみ)でのネイティブ再生、DoPの両方式に対応。PC側のジッターを多く含んだクロックを使用せず、SACD 30nの超低位相雑音クロック発信器によって生成されるマスタークロックで制御を行なうアシンクロナスモードにも対応する。

CD、SACDに加え、DVD-R/-RW/+R/+RWやCD-R/-RWに記録したMP3/WMA/AAC/WAV/FLAC/Apple Lossless/AIFF/DSDファイルの再生に対応。最大5.6MHzのDSDファイルと、192kHz/24bitまでのPCM系ファイルの再生が可能。

HEOSのネットワークオーディオ再生が可能で、音楽ストリーミングサービスやインターネットラジオをはじめ、ローカルネットワーク上のミュージックサーバーやUSBメモリー/HDDに保存した音源も再生できる。DSDは5.6MHzまで、PCMは192kHz/24bitまで再生できる。DSD、WAV、FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生も可能。

Amazon Music HDをはじめ、AWA、Spotify、SoundCloudなどの音楽ストリーミングサービスにも対応。インターネットラジオの再生もできる。

Amazon Alexaにも対応。Alexaに話しかけるだけで再生、停止、スキップや音量の調整などの基本的な操作に加え、Amazon Musicの楽曲から楽曲名やアーティスト名、年代、ジャンルなどを指定して再生することができる。

AirPlay 2にも対応。Apple Musicやアプリなどの音声を、SACD 30nで再生できる。Bluetoothにも対応しており、SBCコーデック、A2DPプロファイルをサポート。スマホなどから手軽に再生が可能。

最大192kHz/24bitのPCMに対応する同軸デジタル入力1系統と、光デジタル入力2系統を装備する。

電源部には、大容量トロイダル型電源トランスを搭載。音質に悪影響を及ぼす漏洩磁束を抑えるために、垂直方向の磁束漏れを抑えるアルミ製ショートリングに水平方向の磁束漏れを抑える珪素鋼板シールドを加えた2重シールドを施した。

メカエンジン、デジタルオーディオ回路、アナログオーディオ回路、ディスプレイ、それぞれブロックごとに専用の二次巻線を使い、後段の整流回路や平滑回路も独立させることで、回路間の相互干渉を排除している。ベースプレートを介してメインシャーシにしっかりと固定し、振動の伝搬も抑制した。

アナログ回路電源用のブロックコンデンサーには、試作と試聴を繰り返し、エルナーと共同開発した大容量3,900μFのカスタム・ブロックコンデンサーを採用。

ヘッドフォンアンプにもこだわり、HDAM-SA2を用いたフルディスクリート型のヘッドフォンアンプを搭載。3段階のゲイン切り替え機能を備えるほか、ヘッドフォンを接続していない時にはアンプの電源が自動的にオフになり、他の回路への干渉を抑制する。

ディスプレイは日本語表示対応
ヘッドフォンを接続するとはじめて、ヘッドフォンアンプの回路がONになる

さらに、出力する音声信号に流入する周辺回路からのノイズを抑えるため、ネットワーク/USBメモリー再生、Wi-Fi、Bluetooth、可変オーディオ出力回路、デジタル出力回路をオフにする機能や、ディスプレイ、ライティングを消灯する機能も搭載する。

音声出力端子は、アナログアンバランス(FIXED)×1、アナログアンバランス(VARIABLE)×1、同軸デジタル×1、 光デジタル×1、ヘッドフォン×1。音声入力端子は同軸デジタル×1、光デジタル×2、USB-A×1、USB-B×1。その他に、LAN端子×1、RS-232C×1、フラッシャー入力×1、 マランツリモートバス(RC-5)入出力×1も備える。

消費電力は48W。外形寸法は443×424×130mm(アンテナを寝かせた場合/幅×奥行き×高さ)で、重量は13.7kg。

リモコン

プリメインアンプ「MODEL 30」

「Audio Consolette」、名機「Model 7」を原点とするマランツのプリアンプ開発では「入力信号の鮮度をいささかも損なうことなく、パワーアンプに送り届けること」という哲学が受け継がれているという。

「Audio Consolette」、名機「Model 7」

MODEL 30では、スイッチングアンプを採用する事で、従来のアナログアンプにおいて大きなスペースを占めていたパワーアンプ回路およびヒートシンクを小型化。空いたスペースを活かし、このクラスのプリメインアンプとしては非常に大きなスペースをプリアンプのために使っている。

黄色い部分がプリアンプ部。左のアンプではほとんどの部分がパワーアンプに割かれているが、右のMODEL 30では半分以上のスペースがプリアンプに使える

独自の高速アンプモジュールHDAM-SA3を用いた電流帰還型アンプに、JFET入力とDCサーボ回路を組み合わせた1段構成のプリアンプ回路を搭載。定評ある情報量の豊かさやハイスピードなサウンドに磨きをかけると同時に、カップリングコンデンサーの使用個数を減らし、音声信号の解像度および透明感を大幅に改善した。

さらに、プリアンプ専用の電源回路を搭載。パワーアンプによる電力消費量の変動に影響を受けない安定した電源供給を可能にした。高純度かつゆとりのある電源供給のために、プリアンプ専用に大容量トロイダルコアトランスを搭載。トランス外周には珪素鋼板とスチールケースによる2重のシールドを施し、漏洩磁束による周辺回路への悪影響を抑えている。

整流回路には、超低リーク電流ショットキーバリアダイオードを採用。平滑回路にはエルナー製カスタムブロックコンデンサー(6,800μF/35V)を採用し、高品位かつハイスピードな電源供給を可能にしている。

ボリューム回路には、新たにJRC製の最高グレードのボリュームコントロールIC「MUSES 72323」を採用。機械式ボリュームでは構造上避けられない左右チャンネル間のクロストークや音量差が生じないため、「空間表現力を大きく向上させることができる」という。

ゼロクロス検出によるゲイン切り替えにより、ボリューム操作時にクリックノイズが発生することもない。加速度検出システムにより、ゆっくり回すと0.5dBステップで高精度に、早く回すと素早く音量を調節。可変抵抗体を使用していないため、ボリュームパーツの経年劣化に伴う音質の変化もなく、長期にわたり安心して使えるとする。

パワーアンプには、定格出力200W/4Ω、Hypexスイッチング・パワーアンプ・モジュール「NC500」を採用。電力効率とスペースファクターに優れ、低域から高域に至るまで歪が極めて少なく、接続されるスピーカーのインピーダンスにかかわらず周波数特性が変化しないという優れた性能を備える。

Hypexスイッチング・パワーアンプ・モジュール「NC500」

MODEL 30では2基のモジュールを搭載。高さを抑えた筐体ながら200W/4Ωの大出力を実現した。スピーカーリレーを用いない保護回路を採用し、パワーアンプ・モジュールをリアパネルのスピーカー出力基板に直接取り付けることで、パワーアンプ・モジュールからスピーカー端子までの経路を約10mmにまで短縮。接点数も半減。その結果、PM-12 OSEと同様にPM-14S1の4倍以上のダンピングファクターを実現し、スピーカー駆動力を向上させている。

フォノ入力も用意。MM型、MC型両方式のカートリッジに対応する「Marantz Musical Premium Phono EQ」を搭載。20dBのゲインを持つMCヘッドアンプと、40dBのゲインを持つ無帰還型フォノイコライザーアンプの2段構成で、1段当たりのゲインを抑え、低歪を実現。音声信号が通過する信号経路はすべてディスクリート回路により構成。JFET入力とDCサーボ回路によってカップリングコンデンサーを排除し、繊細な音声信号の純度を損なうことなく増幅する。新たにMCカートリッジ用のインピーダンス切り替え機能を搭載し、カートリッジに合わせて3段階で設定できる。

プリアンプ回路やフォノイコライザー回路には、新開発の銅箔フィルムコンデンサーや高音質フィルムコンデンサー、高音質電解コンデンサー、精密メルフ抵抗、金属皮膜抵抗など、リスニングテストによって厳選された高音質パーツを採用。スピーカー出力には純銅削り出しのスピーカーターミナルを使っている。

スイッチング・パワーアンプ・モジュールや電源回路などから発生するノイズや漏洩磁束による干渉を最小限に抑え、外来のノイズによる音質への影響も防止するため、パワーアンプ・モジュール間にはシールド効果に優れた銅メッキ鋼板を設置。内部配線にはリスニングテストを繰り返しながら効果的なポイントにフェライトコアを挿入してノイズを低減。電源回路にはチョークコイルを追加して電源ラインからのノイズの流入も防いでいる。

入力端子は、アンバランス×5、Phono×1、POWER AMP IN×1。出力端子はプリアウト×1、RECアウト×1、ヘッドフォン×1。マランツリモートバス(RC-5)入出力×1も備えている。

消費電力は150W。外形寸法は、443×431×130mm(幅×奥行き×高さ)。重量は14.6kg。