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final×DITA共同開発、伝統技法「沈金」で仕上げたイヤフォン。500台限定

SHICHIKU.KANGEN-糸竹管弦-

finalは、自社ブランドfinalとシンガポールのオーディオブランドDITAと共同開発をしたイヤフォン「SHICHIKU.KANGEN-糸竹管弦-」を2021年2月に発売する。2つのブランドが、デザインから音作りまで全てを共同で行なった、「これまでにないコラボ製品」だという。全世界500台限定生産で、価格は298,000円(税込)。予約受付は既に開始されている。

両社の関係は、2015年に、DITAがfinalの東南アジア総代理店となったことでスタート。両者とも「音作りにこだわり、ダイナミックドライバーの開発を自社で手掛けているところ」や「素材にもこだわりが強く、その加工方法までも自社で開発するところ」など、ブランドとしての共通点が多く、「自然とお互いの製品やチーム同士に強い敬意と信頼感が生まれた」という。

単なる代理店としての関係を超えた深い関係が築かれ、その後、finalはDITAの日本総代理店となり、2019年の初めに両社のフラッグシップイヤフォン「A8000」(final)と「DreamXLS」(DITA)のプロトタイプが完成。これを双方のエンジニアがお互いに相手の製品を高く評価をしたことから、本製品「SHICHIKU.KANGEN-糸竹管弦-」のプロジェクトが始まったという。

製品名に採用した「SHICHIKU.KANGEN/糸竹管弦(しちくかんげん)」は、音楽や楽器の総称として中国から伝わった古語で、糸・弦は糸や弦に刺激を与え、弦の振動を利用して音を出す楽器類・弦楽器。竹・管は竹や管の中の空気の振動を利用して音を出す楽器類・管楽器を意味している。

SHICHIKU.KANGENという名前には、「すぐそこに楽器が、そして演奏者が存在しているかのような生き生きとしたサウンドを奏でるイヤホンであり、また、音楽を演奏するたびに手に馴染んでいく楽器のように、この製品を長く熱心に愛用していただきたいという願いが込められている」とのこと。

麻の葉文様

ステンレス製筐体のデザインには、伝統技法「沈金」を活用。漆器の表面などに、専用の刃物(沈金刀)で文様を彫り、漆を塗り込み、金箔や金粉を塗り重ねる装飾技法で、中国で生まれ日本で培われたという伝統の技法。漆が乾燥した後に、周囲の金箔か金粉を拭い取ることで、彫り込んだ文様部分にのみに金粉が残り、美しく繊細な模様が現れる。金が漆に沈んでいくことで、美しい文様が浮かび上がることから、「沈金」と呼ばれる。SHICHIKU.KANGENでは、この沈金によって美しい麻の葉文様を施しているという。

美しい文様をより美しく輝かせるため、本体色は呂色鏡面仕上げ採用。呂色(ろいろ)とは、日本の伝統色の一つで、黒漆の濡れたような深く美しい黒色のこと。

「麻の葉文様」は、日本を代表する伝統の文様。DITAは日本の伝統工芸の技術や文化に高い関心があり、製品や付属品などに取り入れてきた。麻の葉文様も、DITAからの提案で採用したという。

麻の葉は成長が早く虫が寄り付かないことから、健やかな成長と、邪気を祓う意味があるとされ、古来より神聖なものとして神事や家紋、浮世絵や着物の柄などに広く用いられている。SHICHIKU.KANGENの製作にあたって、「DITAとfinalとの友情と成長が永遠に続くようにとの思いが込められている」という。

沈金の、金粉を定着させる工程は、石川県輪島の名工と呼ばれる漆職人に依頼。麻の葉模様の細かい溝に漆を塗り込み、立体的に輝くように金粉を塗り重ねていく作業は、高い集中力と技術が必要だとのこと。

輪島の漆職人

ドライバーは共同開発による「トゥルーベリリウム ドライバー Gen.SK」を搭載。目の前で楽器が演奏されているような「美しい高域」や、「立ち上がりの良い音」を実現するために、finalのA8000で採用されたトゥルーベリリウム振動板を使っている。

さらに、「広がりのある豊かな低域」を実現するため、ボイスコイルからの引き出し線と振動板との接着方法を新設計で開発。複雑な樹脂成形や加工を得意とするDITAによって、引き出し線と接着剤による振動板への影響が極めて少ない接着方法を治具から開発した。

ボイスコイルの線材や内部配線は、標準ケーブルであるOSLOケーブル Gen.SKに最適なものを選定している。

新しく開発された付属ケーブル「OSLOケーブル Gen.SK」は、DITAの「OSLOケーブル」という特殊なオイルをコーティングした線材を使用したモデルがベースになっている。これは、サメの肝臓から取れるスクワレンという高級化粧品にも使われるオイルをコーティングすることで、絶縁性を高めたもので、さらにオイルにブレンドされたゴールドとシルバーのナノ粒子がケーブルの線材の表面に取り付き、表面を滑らかにすることで導電性を高めている。

さらに、芯線の太さ、本数、編み方、被服の厚みなど数十種類も試作を繰り返し、最適なものに調整。線材に一度スリーブをかけたあと、編み込み、もう一度スリーブをかぶせる二重構造となっている。

イヤフォン側端子はMMCXリケーブルに対応。プレーヤー側端子は環境に応じて3.5mm 3極、2.5mm 4極、4.4mm 5極とプラグを付け替えられる「AWESOMEプラグ」になっている。感度は99dB/mw、インピーダンスは16Ω。重量は47g。

プレーヤー側端子は環境に応じて3.5mm 3極、2.5mm 4極、4.4mm 5極とプラグを付け替えられる「AWESOMEプラグ」