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Apple Musicで「ザ・ビートルズ1」空間オーディオ版、配信開始

「ザ・ビートルズ1」空間オーディオ版

アップルは1日、同社の音楽配信サービス・Apple Musicで、ビートルズのベストアルバム「ザ・ビートルズ1」(英語タイトル「1」)の空間オーディオ版の配信を開始したと発表した。

「ザ・ビートルズ1」は2000年に発売されたベストアルバムだが、2015年、音楽プロデューサーのジャイルズ・マーティンによるリミックス版(以下2015年版)が発売されている。

今回、空間オーディオ版として提供されるのは、その2015年版がベースだ。

「ザ・ビートルズ1」空間オーディオ版

Apple Musicではすでに多数のビートルズ作品の空間オーディオ版が提供されているが、その多くをジャイルズ・マーティンが手がけている。「1(2015年版)」の空間オーディオ版も同様だ。

ジャイルズ・マーティンは、Dolby Atmosを使った空間オーディオのビートルズ作品への適応について、次のようにコメントしている。

空間オーディオ版のリミックスを担当した、音楽プロデューサーのジャイルズ・マーティン 写真:Alex Lake

ジャイルズ・マーティン:私は長い間、サラウンドに関わる仕事をしてきました。ラスベガスで行なった『LOVE』では、部屋に7,000個のスピーカーがあり、サラウンドサウンドのアルバムを制作し、大成功を収めました。

でも、その時は、サラウンドサウンドを聴く人はまだ少なかった。アップルのような企業が、サラウンドサウンドを消費者体験として広く普及させる方法を考え出すまでには、しばらく時間がかかりましたね。

特別な部屋に招待して「これは素晴らしい体験になりますよ」というのも良いものです。しかし、人々が簡単にアクセスできるようにするようになれば、気づいたら「聴いて感動する」ことになる。それが音楽というものです。

一方で、空間オーディオのミックスには長い時間も必要だったという。

ジャイルズ・マーティン:半日かかることもあれば、3日かかることも、もっと何日もかかることもあります。

理由は、初期の音源の多くについて、ビートルズが録音した「スタジオ2」に戻る必要があるからです。そうすることで、実際に楽曲を聴くときに「スタジオ2」を感じることができます。元のトラックをミックスするだけでなく、実際に彼らがいる部屋の雰囲気を再現して、よりリアルなものに仕上げるんです。

そのプロセスの後は、トラックをアップしたら、信じられないほど素早くミキシングします。もちろん、「これはおかしい、しっくりこない」と思って何時間もかかってしまうトラックもありますけどね。

正直言って、『ハード・デイズ・ナイト』は大変でした。ジョンのボーカルとアコースティックギターとコンガが1曲に入っているんです。ギター、ドラム、ベースは別のトラックで、ジョンとポール、もう一人のギターは別のトラック。このバランスが重要で、モノラルではなく空間オーディオとして分割すると、圧縮のためにレベルが変化し、(元のアルバムと)同じフィーリングを得るのは大変でした。『ア・デイ・イン・ザ・ライフ』も大変でしたが、空間オーディオで聴くと、とても良い音になりますね。

楽曲はすでに公開済みで、他の空間オーディオ対応楽曲同様のやり方で視聴できる。

最もシンプルなのは、iPhone・iPad・Macなどアップル製品と、アップルのヘッドフォンのうち、「W1」「H1」チップを搭載したもの(第3世代AirPods/AirPods Pro/AirPods Max、もしくはBeats製のヘッドフォンなど)を組み合わせる方法。

Androidでの利用や、アップル製ヘッドフォン以外での利用も設定変更によって可能だが、空間オーディオの効果はアップル製品同士の組み合わせとは異なる可能性がある