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Xperia 1 IVだけで動画/ゲーム配信が手軽に。スマホゲーの音ズレ解決

Xperia 1 IVでゲーム配信設定をしている画面

世界初となる望遠光学ズームレンズを搭載した「Xperia 1 IV」。従来機の「Xperia 1 III」からは様々な進化を遂げているが、その中でも目玉となっているのが配信機能だ。動画撮影用アプリ「Videography Pro」と、ゲームプレイ中に起動するアプリ「ゲームエンハンサー」に配信機能が新たに追加され、Xperiaのみでの配信が手軽に行なえるようになった。

また、「歌ってみた動画」の投稿者向けとして、録音した音声からノイズカットや高音質化が行なえる新アプリ「Music Pro」も新たに登場。今回は2つの配信機能とMusic Proについて掘り下げて紹介する。

「Videography Pro」の配信機能

動画撮影アプリ「Videography Pro」の配信機能は、設定メニューに追加された「Streaming mode」をONにすることで、赤いRECボタンが緑のStreamingボタンに変わり、利用できるようになる。

Videography Proの画面。画面右下に赤いRECボタンがある
「Streaming mode」をON
右下のRECボタンが緑のStreamingボタンに変わる

配信先は「Connect to」からYouTubeが選択できるほか、RTMP URLを選択して配信先のURLを入力すれば、TwitchやFacebookなどにも配信できる。

今回紹介するのは、YouTubeでの配信方法。アプリ内からYouTubeにログインし、「ライブイベントの新規作成」から、タイトル、概要欄に表示する説明文のほか、配信日時、公開設定、配信の遅延(通常/低遅延)などを設定して、ストリーム開始ボタンを押せばそのまま配信開始できる。なお、αなどのカメラと接続した外部モニター機能経由でも配信が行なえる。

設定画面から配信先の設定を行なう
タイトル、説明などの設定
公開設定や遅延もアプリから設定できる
Streamingボタンを押すと確認画面が表示される

この機能では、Xperiaで撮影している映像と音声をそのまま配信できる。一方で、画面レイアウトの編集や、配信中のチャット表示などはXperiaから行なえないが、今後のアップデートでそういった機能に対応していく予定だという。

配信が始まると画面上部に緑のStreamingアイコンが点灯する
視聴者側の画面。ライブ配信中になっている
撮影側の映像がそのまま配信されている

ゲームエンハンサーで配信。コメント表示やレイアウト変更、ミキサー機能も

ゲームを起動し、ゲームエンハンサーを開いた様子。右下に動画&配信メニューが表示されている

ゲームエンハンサーでは、メニューに「動画&配信」が新たに追加され、Xperia単体で配信を行なう機能と、PCに接続して配信する際の出力設定が行なえるようになった。

Xperia単体で行なえる配信機能はYouTubeのみ対応。「動画&配信」メニューの「ライブストリーミング」からYouTubeのアカウントにログインすることで、タイトル、概要欄の説明、解像度とフレームレート、公開設定、配信の遅延(通常/低遅延/超低遅延)の設定ができ、サムネイルも編集して配信が行なえる。

ライブ配信の設定画面
サムネイルも編集できる(編集前)
画像とテキストで簡易的に作成できる(編集後)

配信レイアウトの設定も可能。Xperiaのゲーム画面のアスペクト比は21:9だが、配信先には16:9で表示されるため、上下の余白を活用して、テキストや画像の表示が行なえる。テキストの場合は文字色、背景色が選択可能で、ピンチイン/アウトで文字の大きさも調整できる。レイアウトは上下テキスト、上テキスト&下画像、上余白なし&下テキスト/画像などのプリセットが用意されており、そこから選択して内容を編集できる。縦位置ゲーム用も搭載する。

配信レイアウトの選択画面(横位置)
こちらは縦位置。横位置のゲームで試しているため、表示がおかしくなっている
上に文字、下に画像が入れられるプリセットでの編集画面。背景色や文字色、表示する画像の選択が行なえる

ミキサー機能も備えている。Xperiaにヘッドセットを接続することで、自分の声を配信に載せることができるが、この自分の声とゲーム音の音量を個別に設定可能。設定画面は配信中にも表示可能なため、配信を開始してチャットを見ながら音量バランス調整が行なえる。配信で送信する音とは別に、自分がプレイ時に聴くゲーム音量は「メディアの音量」から調整できるため、自分に合ったゲーム音量でプレイに集中できる。

音量バランスの調整も行なえる

配信URLの共有もゲームエンハンサー内から行なえ、メールでの送信やSNSへの投稿などが可能となっている。また、ゲームエンハンサーのメニュー画面は配信画面に表示/非表示が選択できるため、視聴者側にはゲーム画面だけを見せた状態で音量調整などが行なえる。

設定を終えて「準備完了」をタップすることで、確認画面が表示され、「GO LIVE」ボタンをタップすると、配信を開始する。

配信開始。配信者側はゲーム画面
視聴者側は設定したレイアウトで配信される
配信中にも音量バランスの調整が可能。この画面は配信への表示/非表示が設定できる

ダミーイメージも用意。離席時に手動で配信側の画面に表示させられるほか、ゲーム以外のアプリやホーム画面を表示している間に配信側に自動でダミーイメージを表示し、プライバシーを保護できる。なお、デザインは固定で、ブルーの背景にアイコンと、手動設定側には「Away」、自動表示の方には「Privacy」の文字が表示されたものとなっている。

配信中にホーム画面に戻った様子
視聴者側には自動でダミー画像が映る

また、さきほど「チャットを見ながら音量バランスの調整が行なえる」と記載した通り、ゲームエンハンサーでの配信時は、視聴者のチャット表示にも対応。スーパーチャットにも対応しており、金額ごとのカラーもYouTubeに準拠したカラーで表示する。設定画面の「チャットボード」を開けば、チャット欄の履歴も確認できる。

配信者側のチャット一覧
プレイ中は画面上部にコメントが表示される

また、配信中にブラウザを表示して見せることも可能なので、通信待機中などにゲームのアップデート情報について、サイトを見ながら話すといったこともできる。

配信中にブラウザアプリの表示も可能
視聴者側にもちゃんと表示される

また配信を終了すると、配信開始日時、チャンネル登録者数、配信時間、最大同時接続数、評価の数が一覧表示されるので、配信の手応えがその場で分かるようになっている。

配信を終了すると配信時間や最大同時接続数などの情報が一覧で表示される

ゲーム配信に便利な機能が多数盛り込まれた一方で、ゲームプレイ中のチャット表示場所は画面上部のみ、レイアウト編集では選択できる文字色、背景色が少ないなど、まだ制限も多い。しかし、スマホ本体だけで簡潔に配信が行なえる最低限の機能が揃っているため、今後のアップデートでさらに自由度が上がっていくことが期待ができる。

イヤフォンジャックとUSB-Cに音声を同時出力。配信の音ズレ問題を解決

キャプチャーボードへの出力設定

キャプチャーボードを使用したPCでの配信用にも設定を用意。映像出力設定は画質とリフレッシュレートを外部機器とXperiaのどちらかの低い値に合わせる「自動」設定のほか、消費電力を抑える「フルHD/60Hz以下」を用意している。

とくに今回の目玉機能となるのがオーディオ機能で、ゲームサウンドをイヤフォンジャックとUSB-Cの両方から同時に出力できるようになった。さらにミキサー機能により、自分の声や通話音声もミックスした状態でPC側に出力できる。

従来のXperiaやコンシューマーゲーム機では、搭載されているイヤフォンジャックにヘッドセットを接続すると、ヘッドセット側でゲーム音声が再生され、USB-CやHDMIといった出力端子側には音声が出力されない仕様になっている。しかし、この仕様がゲーム配信時に、ある問題を引き起こしてしまう。

それは、キャプチャーボード経由で映像と音声をPCに取り込むと“遅延”が発生すること。スマホゲームを配信する場合、スマホのイヤフォンジャックを使うと上記の通り、配信に音が乗らなくなってしまう。これを避けようとイヤフォンジャックを使わずに、USB-CやHDMI経由でPCに取り込んだ音声を聴いてゲームを遊ぼうとすると、今度はスマホのゲーム画面と音がズレてしまうのだ。

つまり、FPSなど音が重要なアクションゲームやリズムゲーム、いわゆる“音ゲー”において、かなりの影響を及ぼしてしまう(さまざまな設定などを駆使して乗り切る猛者もいるが、少なくとも快適ではないはずだ)。

これを解決する方法として、取り込む映像/音声とは別に無遅延で出力できるパススルーの端子を備えたキャプチャーボードを使用し、パススルー接続したモニターやテレビの音声出力から音を聴くという方法もあるのだが、この場合、音ズレは解決できるが、PCやスマホとヘッドセットが直接接続されていないため、Discordなどのチャットアプリで通話しながらの配信が行なえなくなる。

そして、問題の全てを解決しようとすると、ミキサーやオーディオインターフェイスを用意し、パススルーで接続したモニターやテレビの音声出力端子とオーディオケーブルで繋いで……と必要な機材や配線が複雑になり、スマホゲームの配信に挑戦するぞ! という初心者がこの説明を見た瞬間「よく分からんし、気軽にできないならやめておこう……」となるだろう。

前置きが長くなったが、Xperia 1 IVでは、イヤフォンジャックから音声を出力しながら、USB-Cからも音声を出力できるため、この厄介な音ズレ問題を解決できる。また、Xperia側でDiscordなどのアプリを使えば、通話音声ごと配信可能なので、友人との協力プレイや、コラボ配信などもそのまま行なえるわけだ。

オーディオ設定は、キャプチャーボードと有線ヘッドセットをXperiaに同時に接続している状態で行なえるようになっている。ミキサー機能では、自分の声と、ゲーム音声、通話音声の音量バランス調整が行なえる。配信のレイアウトなどはPC側のOBS Studioをはじめとした配信ソフトで設定できるため、これまでスマホゲーをPC経由で配信していた人は、より快適な環境で配信できるようになるはずだ。

また、配線が簡潔になることの利点として、ノイズが発生しにくくなるという点も上げられる。複雑な配線になればなるほど、ノイズが発生してしまった際に原因の解明に時間がかかったり、そもそも原因に辿り付けなかったり、機材の相性の問題で別の機材を買い直すことになったりという場合もある。

この音声出力は、Xperia 1 IV独自の設定による機能となっているとのことだが、配信だけでなく、友人と画面を共有しながらゲームをプレイするといった機会も増えてきた今、他のスマホやゲーム機にも搭載して欲しい機能だ。

「歌ってみた動画」投稿者向けの録音アプリ「Music Pro」

Music Proのアイコン

Xperia 1 IVで新登場したアプリに録音アプリ「Music Pro」がある。このアプリも昨今の動画投稿の流行に着目したもので、「歌ってみた動画」の投稿者をターゲットに、スマホで手軽に高音質な録音ができるように開発したという。

Music Proでは、Xperia 1 IVのマイクを使って音声の録音と簡単な編集が行なえるほか、クラウド処理によってノイズや部屋の残響音の除去、ソニーの真空管マイク「C-800G」の周波数特性や、ソニーミュージックのスタジオで録音した際の良質な響きを再現した加工を施して高音質化できる「Studio tuning」が利用できる。音声の録音と編集は無料で行なえるが、Studio tuningの利用には月額580円が必要になる。

真空管マイク「C-800G」

アプリの使い方は、まず起動してプロジェクトを作成。トラックを追加することで録音できる状態になる。Studio tuningで処理できる音声はボーカルとアコースティックギターの音のみとなっているため、トラックは「ボーカル」「ギター」と弾き語りを録音する際に使用する「ボーカル&ギター」を用意。「ファイル読み込み」からカラオケ音源などを取り込んでおけば、ヘッドフォン/イヤフォンを接続してMusic Proアプリから音源を再生しながら、声のみ録音できる。

トラックを追加するときの画面

準備ができたら録音ボタンを押せばそのまま録音開始。Xperia 1 IVは縦位置で上下にマイクを備えているが、Music Proの収録時は下部のマイクを使用する。

録音時は本体下部のマイクを使う

録音完了後は、アプリ上部のEDITをタップすることで編集モードに移行。トラックをタップすることで、カット、コピー、削除、移動などの簡易な編集と「エクスポート」から書き出しが行なえるため、Music Proアプリ単体でも簡単な作品であれば制作可能となっている。

編集画面

編集画面右下の「STUDIO TUNING」をタップすると、録音データの高音質処理が行なえる。具体的には、弾き語りで録音した場合にボーカルとギターを分けて出力する機能、ノイズ除去、一般的な家の残響音を取り除く残響除去、C-800Gの周波数特性を再現するマイクシミュレート、レコーディングスタジオの反響を付与するスタジオシミュレートで、これらの項目から必要な機能にチェックを入れて録音データをアップロードすると、処理が開始される。

Studio tuningの機能詳細(一部)

処理前後の音声データを聴き比べてみたが、ノイズ除去機能は強力で、屋外で収録されて風の音が入った音声データでも、若干声がこもって聴こえる部分はあるものの、風が吹いているとは思えない声だけの音声に変換されていた。もちろん室内で録音された音声データでは、こもって聴こえる部分もなくなり、自然に聴こえた。

また、室内で録音された音声データにノイズ除去、残響除去、マイク/スタジオシミュレートされた音声と、実際にスタジオでC-800Gマイクを使って収録された音声も聴き比べた。テイクが異なるためそもそもの違いはあるが、声の響き方や透明感は、かなり高い再現度になっていた。ノイズ除去などの影響もあるため、聴き比べると違いが分かるが、同じカラオケ音源を同時に流すと、テイクによる違い以外では、聴き分けの難易度が跳ね上がる。

Studio tuningの処理の時間については、現時点で録音データの時間と同時間かかるという。例えば、3分の録音データの変換には3分前後かかる。今後のアップデートで処理時間は短くなる予定だという。

レコーディングスタジオを借りて限られた時間内で録音することなく収録が行なえ、機材の知識も必要とせずに高音質な音声データを作成できるため、歌ってみた動画の投稿のハードルも少し下がりそうだ。とくに実写の弾き語りであれば、カメラを別途用意する必要はあるが、Xperiaで収録して高音質化し、出力した音声を演奏の映像と組み合わせれば、手間以上の高音質化が狙えるだろう。