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デノン、Dirac Liveにも対応できるAVアンプ「X3800H」と、7.2ch「X2800H」

AVR-X3800H

デノンは、AVアンプの新モデルとして9.4chの「AVR-X3800H」と、7.2chの「AVR-X2800H」を10月下旬に発売する。価格はAVR-X3800Hが181,500円、AVR-X2800Hが121,000円。カラーはいずれもブラック。デノンのサウンドマスター・山内慎一氏が、開発の初期から深く関わったAVアンプとなる。

X3800は、日本では展開していなかった3000番代のAVアンプの新製品。X2800Hは、X2700Hの後継機種。どちらも、Hi-Fiオーディオアンプの設計思想を継承したという全チャンネル同一構成のディスクリート・パワーアンプを搭載。X3800Hは最大出力215Wで9ch。X2800Hは最大出力185Wで7ch。

AVR-X2800H

上位機のX3800Hは、放熱効率に優れる肉厚なアルミ押し出し材のヒートシンクに、1枚の基板に分けた9chアンプを搭載。効率的な放熱と不要振動の抑制を実現。

X3800Hの内部
X2800Hの内部

パワートランジスターはパーツメーカーと共同開発で、半導体内部の回路パターンにまでこだわった高音質素子を作り上げている。その結果「サウンドマスターが目指したシャープな音像、高い分解能、しなやかな表現力を実現した」という。

X2800Hも、シャープな音像、高い分解能、しなやかな表現力を目指してサウンドマスターが徹底的にチューニング。パワーアンプ基板の信号ライン、電源供給ラインの低インピーダンス化やパーツ配置の最適化により、ノイズの影響を最小化したという。電源供給ラインを2系統にすることで、チャンネル間のクロストークやSN比も改善させた。

どちらのモデルも、パワーアンプ入力段に、高品位なフィルムコンデンサーを採用。フォーカス感やエネルギー感を向上させている。

オブジェクトオーディオのDolby Atmos、DTS:Xに対応。ステレオや5.1ch、7.1chのソースを再生する際に、Dolby SurroundやNeural:Xを使い、3Dサウンドにアップミックスする事も可能。バーチャル3DサラウンドのDolby Atmos Height Virtualizer、DTS Virtual:Xも利用可能。ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを設置していない環境でも、擬似的にイマーシブオーディオを再現できる。

X3800Hは9chのパワーアンプを内蔵し、ステレオパワーアンプを追加すると11chまで拡張可能。その場合は、ハイトスピーカーは最大6chまでアサインできる。サラウンドバックやハイトスピーカーを使わない場合は、フロントを4chアンプで駆動するバイアンプや、2系統のフロントスピーカーを切り替えて使うこともできる。

X2800Hは5.1.2のスピーカー配置に対応。2つのハイとスピーカーを接続できる。このモデルも、サラウンドバックやハイトスピーカーを使わない場合は、フロントを4chアンプでのバイアンプ駆動や、2系統のフロントスピーカー切り替えが可能。

4K/8K衛星放送で使用されている音声フォーマット、MPEG-4 AAC(ステレオ、5.1ch)のデコードにも対応。4Kや8Kの放送を、サラウンドサウンドと共に楽しめる。

HDRのパススルーは、HDR10、Dolby Vision、HLGに加え、HDR10+とDynamic HDRにも対応。HDMI 2.1の新機能である「ALLM(Auto Low Latency Mode)」、「VRR(Variable Refresh Rate)」、「QFT(Quick Frame Transport)」にも対応する。

HDMI端子は、X3800Hが6入力、2出力。6入力全てが8K/60pと4K/120pに対応。全端子が著作権保護技術のHDCP 2.3に対応する。さらに、HDMI出力からの電源供給能力が200mAから300mAに向上、電源供給を必要とする長尺のHDMIケーブルを使用した場合にも、高品位かつ安定した伝送が可能という。

X2800HのHDMI端子も6入力、2出力だが、入力の内3系統と、出力の2系統が8K/60pと4K/120p対応。全端子が著作権保護技術のHDCP 2.3に対応。HDMI出力からの電源供給能力は300mAに向上しており、電源供給を必要とする長尺のHDMIケーブルでも安定した伝送ができる。

クリーンで安定した電源供給を実現するため、X3800H・X2800Hのどちらも、低リーケージフラックス、低振動を突き詰めたカスタム仕様の大型EIコアトランスを搭載。X3800Hはプリアンプとパワーアンプそれぞれに、専用の巻線からの電源を供給する事で干渉を抑えている。

電源部のブロックコンデンサーには、各モデル専用にチューニングされた大容量12,000uFのカスタムコンデンサーを2個使用。信号経路および電源供給ラインの最短化や、基板上のパターンを太くするなどの改良を行ない、5ch同時再生時でも定格出力の70%以上という大出力を可能にした。

DAC、DSP、HDMI回路への電源供給を行なうデジタル電源基板を一新。エルナー製コンデンサーなどの音質対策パーツを使用することで、サウンドの純度を高め、より広い空間表現力を追求。

デジタル電源回路のスイッチング周波数を通常の約3倍にすることでスイッチングノイズを可聴帯域外へシフトさせ、再生音への影響を排除した。スイッチングトランスにはシールドプレートを追加し、デジタル電源回路全体をシールドプレートで覆うことで、周辺回路への干渉を抑制。アナログビデオ回路への電源供給もスイッチング電源から行うなことで、オーディオ回路への影響を排除している。

一体型のボリュームICをあえて使わず、半導体メーカーと共同開発した、入力セレクター、ボリューム、出力セレクター、それぞれに特化したカスタムデバイスを採用。ハイエンドモデルのために開発されたもので、フラッグシップモデルの「AVC-X8500HA」にも採用されているものを、2モデルにも投入。専用のデバイスを最適な配置で基板上に実装することで、音質を最優先したシンプルかつストレートな信号経路を実現した。

サウンドマスターによるリスニングテストによって選択された32bit対応のDACを、X3800Hは8基、X2800Hは4基搭載。X3800Hでは、映像回路やネットワーク回路から独立した専用基板にマウントする事で、周辺回路との相互干渉を排除した。

ネットワークオーディオのプラットフォーム「HEOS」を搭載。ストリーミングサービスやインターネットラジオ、LAN内のNASなどに保存したハイレゾファイルの再生も可能。ストリーミングサービスは、Amazon Music HDやAWA、Spotify、SoundCloudなどをサポートする。

ネットワーク経由や、USBメモリーからの音楽ファイル再生では、DSDは5.6MHzまで、PCMは192kHz/24bitまでの再生が可能。DSD、WAV、 FLAC、Apple Losslessファイルのギャップレス再生にも対応する。

AirPlay 2とBluetoothもサポート。Bluetoothは受信だけでなく、送信も可能で、Bluetoothヘッドフォンへ、AVアンプのサウンドをワイヤレス伝送できる。FM/AMチューナーも搭載する。

自動音場補正は、X2800Hが「Audyssey MultEQ XT」、X3800Hは「Audyssey MultEQ XT32」を搭載。AVアンプ単体では設定できない細かな調整が可能なアプリ「Audyssey MultEQ Editor」も利用可能。

スピーカーターミナルは、端子を横一列に配置し、ケーブルの差込口を真上にした。GUIは、テキストや画像の表示解像度をアップさせ、視認性を高めた「HD GUI」となる。アニメーションも交えてわかりやすく設定方法を提示する「セットアップアシスタント」も搭載。

2機種共通の新機能として、Wi-Fi/ネットワーク/Bluetoothといった無線機能を、個別にON/OFFできるようになった。さらに、無線LANはIEEE 802.11acに対応。電波障害が少ないという利点がある。

HDMI以外の端子は、X2800Hがアナログ音声入力×4、PHONO入力(MM)× 1、光デジタル入力×2、サブウーファープリアウト×2、ゾーンプリアウト×1、ヘッドフォン出力×1。アンテナを寝かせた場合の外形寸法は、434×341×167mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は9.5kg。消費電力は500W。

X3800Hは、アナログ音声入力×5、PHONO入力(MM)× 1、光デジタル入力×2、11.4chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×1、ヘッドフォン出力×1。アンテナを寝かせた場合の外形寸法は、434×389×167mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は12.5kg。消費電力は660W。

X3800Hのみの特徴

X3800Hは、IMAXとDTSによる厳格な基準を満たした製品である事から、「映画製作者の意図通りにIMAX Enhancedコンテンツを再生できる」という。さらに、Auro-3Dもサポートする。

MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)もサポート。対応コンテンツを、HDMI端子から入力して再生する事も可能。

上位モデルに搭載されているDSPを上回る処理能力を持った、最新オーディオDSP「Griffin Lite XP」を新たに搭載。11.4ch分のデコードやアップミックス、音場補正など、高負荷な処理でも余裕を持ってこなせるという。Auro-3Dでは7.1.4chを実現した。

11.4chのプリアウトも備えているため、パワーアンプを追加してシステムの拡張や音質のグレードアップが可能。プリアンプモードも備ており、以前はモードのON/OFFしか選べなかったが、このモデルからは9ch全てのパワーアンプを停止させるだけでなく、チャンネル毎にON/OFFを設定できるようになった。プリとパワーを切り離すことで、大出力時にパワーアンプがクリップした時の歪みの影響をプリアンプが受けなくなり、高音質で楽しめるという。

4系統の独立したサブウーファープリアウトも用意。音量レベルとリスニングポジションまでの距離を個別に設定できる。マニュアルでの設定に加え、Audyssey Sub EQ HTによる自動設定も可能。4系統のサブウーファー全てから同じ音を出すスタンダードと、各サブウーファーの近くにある「小」に設定されたスピーカーの低音を再生する「指向性」の2モードから選択可能。

将来的に、有償で追加となるが、2023年にファームウェアアップデートによりDirac Liveにも対応予定。特許技術により、周波数特性だけでなく、部屋内の反射やスピーカーの位置ずれに起因する音の遅延まで測定・補正を行なうもので、複数のスピーカー、複数のリスニングポイントに対して、マイクによる測定データから最適な補正結果を導き出し、広いスイートスポットを実現できるという。