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「9.4ch最高峰」デノン、中級でも独立パワーアンプ基板のAVアンプ「AVR-X4800H」
2023年1月24日 11:00
デノンは、9.4ch AVアンプ「AVR-X4800H」を2月上旬に発売する。価格は313,500円。前モデルはベトナムの工場で生産していたが、生産拠点を上位モデルと同じ、福島県にある白河ワークスに移すとともに、パワーアンプ回路を一新。上位機と同様のモノリス・コンストラクションを採用。「9.4chアンプの最高峰モデル」を謳う。
従来モデル「AVR-X4700H」との大きな違いは、パワーアンプ部。AVR-X4700Hは、5chパワーアンプ基板と、4chパワーアンプ基板の2枚構成で9chアンプとしていたが、新モデルのAVR-X4800Hは、上位機のX6700Hなどと同じ、チャンネル毎に独立したパワーアンプ基板を多数マウントする全9ch同一構成のディスクリート・パワーアンプ構成となった。電源供給もそれぞれ独立させることで、チャンネル間の干渉、クロストークを排除。チャンネルセパレーションを高め、純度の高いリアルな音場再生を実現しているのが特徴。
白河工場で手掛ける事が決定した事から、X4800H開発にあたっては、かつてデノンのAVアンプを立ち上げたベテランエンジニア3人が再集結。デノンのサウンドマスター・山内慎一氏と共に、最新パーツを駆使しながら再設計しており、X4700Hから大幅に刷新されたAVアンプとなっている。
チャンネル毎に独立したパワーアンプ基板には、放熱効率に優れ、共振の少ない肉厚なアルミ押し出し材を使ったヒートシンクを採用。入力段には高品位なフィルムコンデンサーを使い、「フォーカス感と全帯域に渡るエネルギー感を向上させた」とする。
X4700Hでは、フィルム状の平たいFFCケーブルがパワーアンプの上部を通っており、放熱性を少し妨げていたが、X4800Hでは、同ケーブルがパワーアンプを避けたレイアウトになり、放熱性が向上。より安定した動作が実現したという。
また、オーディオ基板とパワーアンプ間を、従来はワイヤーで接続していた。自由に取り回しできる一方で、生産によってばらつきが出るデメリットがある。X4800Hでは、オーディオ基板とパワーアンプを基板で直接接続する方式に変更。モデル間のばらつきが出ないようにしている。
信号経路の最短化も徹底。X4700Hでは、DAC回路、プリアンプ、マルチルーム用のDACがそれぞれ別の基板に分かれており、信号や電源が交差する構成になっていた。X4800Hでは、それらを1枚に集約。相互干渉を抑えながら、ミニマムシグナルパスを徹底したという。
DCサーボ回路には大容量コンデンサーを用いて、可聴帯域よりもさらに低い、超低域からの再生を可能に。可聴帯域以下のハーモニクス成分が、映画の重厚な爆発音や、コンサートのパワフルなパーカッションなどの表現力を高め、臨場感をさらに向上させた。
パワーアンプは9ch分だが、処理としては11.4chプロセッシングに対応し、11.4chプリアウトも装備。上位モデルのX8500HAには、アナログデバイセズの「Griffin Lite」というDSPを2基搭載しているが、下位モデルであるX4800Hに、その処理能力を1基で上回る最新の「Griffin Lite XP」を搭載。11.4ch分のデコードやアップミックス、音場補正などの高負荷な処理もこなせる。
11.4chプリアウトを活用し、パワーアンプを追加してシステムの拡張や音質のグレードアップが可能。ステレオパワーアンプを追加すれば11chまで拡張でき、その場合、ハイトスピーカーは最大6chまでアサインできる。
サラウンドバックやハイトスピーカーを使用しない場合は、フロントL/Rの駆動に4チャンネルのアンプを使う「バイアンプ」や、2系統のフロントスピーカーを切り替えて使用できる「A+B」など、システム構成に応じた柔軟なアンプアサインもできる。
内蔵パワーアンプの動作を停止させ、高品位なAVプリアンプとしての使うモードも用意。9chすべてのパワーアンプの動作を停止できるだけでなく、チャンネル毎に個別にオン/オフ設定が可能。
独立した4系統のサブウーファープリアウトを装備。音量レベルとリスニングポジションまでの距離を個別に設定できる。マニュアル設定に加え、Audyssey Sub EQ HTによる自動設定も可能。4系統すべてから同じ音を再生する「スタンダード」と、各サブウーハーの近くにある「小」に設定されたスピーカーの低音を再生する「指向性」の2モードから選択できる。
オブジェクトオーディオのDolby Atmos、DTS:Xに対応。IMAXとDTSによる性能基準を満たす「IMAX Enhanced」認定製品でもあり、IMAX Enhancedコンテンツの再生に最適化されたサウンドモード「IMAX DTS」、「IMAX DTS:X」が使用可能。
Auro-3Dデコーダーも搭載し、通常の5.1chセットアップにフロントハイト(FHL+FHR)、サラウンドハイト(SHL+SHR)スピーカーを加えた9.1chシステムで、自然で臨場感豊かなAuro-3Dのサウンドが楽しめる。ステレオパワーアンプを追加すれば、センターハイトとトップサラウンドを含む11.1chシステムまで拡張できる。
新4K/8K衛星放送で使用されているMPEG-4 AAC(ステレオ、5.1ch)のデコードも可能。360 Reality Audioにも対応しており、対応コンテンツをHDMI端子から入力して再生できる。
バーチャル3DサラウンドのDolby Atmos Height Virtualizer、DTS Virtual:Xもサポート。ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを設置していない環境でも、高さ方向を含むサラウンドを擬似的に再現できる。
回路設計には、D.D.S.C.(Dynamic Discrete Surround Circuit)技術を活用。32bitプロセッシングを行なう、最上位バージョンを搭載している。サラウンド音声信号のデコードや音場補正、D/A変換、セレクター、音量調整など、サラウンド再生のために必要な信号処理回路を複合デバイスに頼ることなく、32bitフローティングポイントDSPを始めとする高性能な専用デバイスを用いてディスクリート化するもの。
全チャンネル同一レスポンス、同一クオリティを念頭に構成しており、ピュアオーディオで培ったノウハウを基にパフォーマンスを最大限に引き出すよう、オーディオ回路をはじめ各回路に厳密なチューニングを施し、「ロスレスオーディオやイマーシブオーディオの圧倒的高音質をダビングステージに迫るクオリティで再現する」という。
アナログ波形再現技術の「AL32 Processing Multi Channel」も搭載。16bitや24bitのマルチチャンネル信号を32bitに拡張でき、オリジナルのアナログ波形を忠実に再現。「ホールに吸込まれるような残響音などの微小な音の再生能力を高めている」という。
DACチップは、32bit対応のものを8基搭載。リスニングテストを繰り返して厳選して選ばれたチップで、純A級動作のポストフィルターにより、DACの性能を最大限に引き出している。
D/A変換回路とアナログオーディオ回路を映像回路やネットワーク回路から独立した、オーディオ専用基板にマウントする事で、周辺回路との相互干渉を排除した。デジタルオーディオ回路が動作する基準となるクロック信号に含まれるジッターを取り除くクロック・ジッター・リデューサーも搭載する。
電源部には、大電流の供給能力、低リーケージフラックス、低振動を突き詰めたカスタム仕様の大型EIコアトランスを搭載。プリアンプとパワーアンプそれぞれに専用の巻き線から電源を供給することで、相互干渉を抑え、サウンドの純度を高めている。
ブロックコンデンサーには、AVR-X4800H専用にチューニングされた大容量15,000uFのカスタムコンデンサーを2個使用。同じチャンネル数のAVR-X3800Hの25%増しとなり、より大きな出力を実現。同じ音量での再生する場合は、余裕が増すという。信号経路および電源供給ラインの最短化や、基板上のパターンを太くするなどの改良も行ない、5ch同時再生時でも定格出力の70%以上という大出力を可能にしている。
強力な電源と、安定度の高い回路構成により、4Ωスピーカーであっても余裕を持ってドライブできるという。
DAC、DSP、HDMI回路への電源供給を担うデジタル電源基板を一新。サウンドマスターによるリスニングテストで厳選された音質対策パーツを使用することで、サウンドの純度を高め、より広い空間表現力を獲得。
また、デジタル電源回路のスイッチング周波数を通常の約3倍にすることでスイッチングノイズを可聴帯域外へシフトさせ、再生音への影響を排除。スイッチングトランスにはシールドプレートを追加し、デジタル電源回路全体をシールドプレートで覆うことにより、周辺回路への干渉を抑制している。
入力セレクター、ボリューム、出力セレクターは、それぞれの機能に特化したカスタムデバイスを半導体メーカーと共同開発。これらは本来、ハイエンドモデルのために開発されたもので、AVC-X8500HAにも採用されている。専用のデバイスを最適な配置で基板上に実装することによって、音質を最優先したシンプルかつストレートな信号経路とし、透明感の高いサウンドを実現したという。
音質に悪影響を及ぼす内部、外部の不要振動を排除し、音質を向上させるダイレクト・メカニカル・グラウンド・コンストラクションを採用。堅牢なスチールシャーシをベースに、ヒートシンクや電源トランスなどの重量物を支える箇所にはサブシャーシやスチールプレートを追加し、剛性を高めた。フットには上位モデルと同じ、共振を防止する楕円形のリブを設けた高密度フットを採用し、最適な振動のコントロールを実現している。
音場補正技術「Audyssey MultEQ XT32」も搭載。付属のマイクを使ってスピーカーの有無やサイズ、距離、音量などの基本的な調整値を自動的に設定する。最大8カ所で測定したデータを解析することで、スピーカーごとの周波数特性の違いや部屋の反響音などの音響的な問題を取り除く。AVレシーバー単体では設定できない詳細な調整が可能な「Audyssey MultEQ Editor」アプリも用意する。
Sub EQ HTも搭載。最大4台のサブウーファーを個別に測定し、それぞれに最適な音量、距離の設定および、Audyssey MultEQ XT32の信号処理を行なえる。
特許技術により周波数特性だけでなく、部屋内の反射やスピーカーの位置のずれに起因する音の遅延についても測定・補正する音場補正機能「Dirac Live」にアップデートで対応予定。対応ファームは2023年になる予定。なお、Dirac Liveのライセンスは有料となる。
新型HDMI回路で7入力すべてが8K対応
HDMI入力は7系統。新型HDMI回路の採用により、全ての入力が8Kに対応。8K/60Hzと4K/120Hzが入力できる。HDMI出力は3系統装備し、2系統が8K/60Hzと4K/120Hzに対応する。
ゾーン出力も含む7入力/3出力すべてのHDMI端子がHDCP 2.3に対応。2系統の出力にテレビとプロジェクターを接続し、利用シーンに合わせて使い分けられる。HDMI出力端子からの電源供給能力は従来の200mAから300mAに向上、電源供給を必要とする長尺のHDMIケーブル使用時にも高品位かつ安定した伝送を可能にする。
HDR信号のパススルーに対応。HDR10、Dolby Vision、HLGに加え、HDR10+とDynamic HDRもサポートする。ゲームやVRコンテンツ体験の質を向上させるHDMI 2.1の新機能「ALLM」、「VRR」、「QFT」にも対応する。
HDMI出力端子(モニター1)は、ARCとeARCに対応。1080pや4K解像度のHDMI映像信号を8Kにアップスケーリング出力する事もできる。
ネットワークオーディオ機能「HEOS」も搭載。NASやUSBメモリーなどに保存したハイレゾ音楽ファイルを再生でき、Alexaによる音声操作にも対応。Amazon Music HDやAWA、Spotify、SoundCloudなど音楽配信サービスも使用できる。
AirPlay 2、Bluetooth受信にも対応。Bluetooth送信機能も備えており、再生中の音をBluetoothヘッドフォンなどにワイヤレスで伝送できる。
Wi-Fiも搭載し、IEEE 802.11acに対応。なお、Wi-FiとBluetoothといった複数の無線機能を個別でON/OFFできる。
iOS/Android対応リモコンアプリ 「Denon AVR Remote」も用意。X4800Hの操作や設定が可能。ワイドFM対応FM/AMラジオチューナーも備えている。
ケーブルを接続しやすいよう、スピーカー端子は横一列に配置。ケーブルの差込口を真上に配置している。チャンネルごとに端子の表示が色分けされ、付属の色付きケーブルラベルを使用すれば、スピーカーケーブルの誤配線も防止できる。
セットアップメニューも刷新。テキストや画像の表示解像度を上げ、テキストの読みやすさや画像の視認性を高めた。スピーカーの接続や設定、入力機器との接続、そしてネットワークの設定など、初期設定をテキストや画像、アニメーションで分かりやすくガイドする「セットアップアシスタント」機能も備えている。
定格出力は125W+125W(8Ω/2ch駆動)、実用最大出力は235W(6Ω/1ch駆動)。適合インピーダンスは4~16Ω。
HDMI以外の映像入力端子として、コンポーネント×1、コンポジット×2を搭載。音声入出力端子は、アナログ入力×5、PHONO入力(MM)× 1、光デジタル入力×2、同軸デジタル入力×2、11.4chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドホン出力×1(フロント)。
外形寸法はアンテナを寝かせた場合で434×389×167mm(幅×奥行き×高さ)。重量は13.4kg。消費電力は710W、待機電力は0.1W(ネットワークコントロール、HDMIパススルーオフ時)。CECスタンバイで0.5W。無信号時に消費電力を30~40%低減するエコモードも備える。