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14日開業「109シネマズ新宿」。6,500円のプレミアムシートを体感した

6,500円のCLASS Sシート

4月14日の開業に先立ち、「109シネマズプレミアム新宿」が報道陣に公開された。座席数を通常の半分以下に減らしたプレミアム仕様のシート(4,500円/6,500円)や特注ケーブルを使用した音響システム、カクテルやジンが提供可能なバー併設ラウンジなど、一般的なシネコンとは一線を画したラグジュアリーな施設を一足先に体験してきた。

109シネマズプレミアム新宿があるのは、「新宿ミラノ座」跡地を中心に建てられた高層複合施設「東急歌舞伎町タワー」の9・10階。住所は、東京都新宿区歌舞伎町1-29-1となる。

地上48階・地下5階の「東急歌舞伎町タワー」
ラウンジの窓からは、すぐ隣にある新宿東宝ビルが見える

全シアターにカスタムスピーカー。ケーブルも開発して音質を追求

既報の通り、同劇場は、109シネマズが新ブランドとして打ち出すプレミアムシアターで、日本初の全席プレミアムシート、そして全シアターにハイスペックな最新映写・音響設備を備えているのが特徴。

シアター入口
日本初の全席プレミアムシートを導入

シアター音響監修には、著名な音楽家・坂本龍一氏を招聘。音響設備には、109シネマズのオリジナルシステム「SAION」をベースにチューニングを施した「SAION-SR EDITION」を導入した。

スピーカーは8シアター共通で、スクリーン裏に1.4インチのベリリウムダイヤフラムツイーター、10インチのカーボンファイバーコーンミッド、15インチのラジアルシャシーコーンウーファーを組み合わせた3ウェイメインスピーカーと、バンドパスにバックロード方式を加えた18インチのハイブリッド・サブウーファーを設置。

側面と背面には、0.7インチ×8つのシルクドームアレイと8インチウーファーを組み合わせた同軸2ウェイスピーカーを配置している(スピーカー数は下記参照)。

シアター正面SP側背面SP天井SP
シアター13(LCR)、SW×212-
シアター23(LCR)、SW×216-
シアター3(Atmos)5(LCR)、SW×33212、SW×4
シアター43(LCR)、SW×216-
シアター53(LCR)、SW×212-
シアター6(ScreenX)3(LCR)、SW×216-
シアター75(LCR)、SW×316-
シアター83(LCR)、SW×212-
オリジナルシステム「SAION」をベースにチューニングを施した「SAION-SR EDITION」を全8シアターに導入
側面に設置されている同軸2ウェイスピーカー

各スピーカーの駆動には、日本初導入となるLinea Research製パワーアンプ「44C20」を使用。関係者によれば、「世界中のパワーアンプをチェックしたが、44C20はずば抜けた音の良さを誇っていた」とのこと。クラスDでありながら良質なアナログアンプのように自然な増幅ができるのも、導入の理由という。

さらに「パワーアンプの力感を最大限にスピーカーへ伝送する」べく、外径10.5mmのスピーカーケーブルを開発し、サウンドクオリティを追求。ケーブルには、1芯あたり80本の無酸素銅線(13AWG)が使われており、「80本の銅線が流す電流量は驚異的」と話す。

開発したスピーカーケーブルの断面図(イメージ)

信号処理の中枢にはQSC社のQ-sysを導入。スピーカーとパワーアンプの制御に加え、プロジェクターやシネマサーバー、ライティングのコントロールまでをプログラミング。空間のエフェクト効果や音源管理も本システムで制御している。

“ノイズのない空間”を作るべく、通常の劇場よりも遮音性能を高め、壁を分厚くしているのも、音響的なこだわりポイントとのこと。背面の壁には、全シアターで三角形のブロックを配置。フラッターエコーが発生しないよう、音を分散させる工夫を施した。

側面の吸音材についても、フラッターエコー対策として、四角形のブロックをランダム配置(シアター3・7)。シアター3・7以外は表面仕上げをドレープとしているものの、ドレープ裏の吸音材を斜めにカットする事でエコーが発生しないように配慮した。

シアター7
シアター7の側面の吸音材。四角形のブロックをランダムに配置した
シアター8の側面。表面仕上げをドレープとしているものの、裏の吸音材を斜めにカットする事でエコーが発生しないようにした
背面の壁には、全シアターで三角形のブロックを配置

坂本龍一氏の提案を受け、シアター8にはシネメカニカ製の35mmフィルム映写システム(ZENITH X4001H)を常設。開業日の14日から5月18日まで開催される期間限定イベント「Ryuichi Sakamoto Premium Collection」では、村上春樹の短編小説を市川準監督が映画化した「トニー滝谷」と大島渚監督の名作「戦場のメリークリスマス」の2作品が、35mmフィルム版で上映される。なお、使われる映写機は以前、「シネマスクエアとうきゅう」(2014年閉館)で使っていたものを継承している。

シアター3には、ドルビーの立体音響システム「Dolby Atmos」を導入

全8シアターの中で座席数が多いシアター3にはドルビーの立体音響システム「Dolby Atmos」、シアター6には新宿エリア初導入となる“視界270度・3面ワイドビュー”の「ScreenX」を導入。

14日からは、人気グループBTSの釜山コンサートを映画化した「BTS: Yet To Come in Cinemas」、SEVENTEEN初の映画作品「SEVENTEEN POWER OF LOVE: THE MOVIE」、トム・クルーズ主演の大ヒット映画「トップガン マーヴェリック」の3作品がScreenX版で上映される。

新宿初の3面ワイドビューシアター「ScreenX」~4月14日開業「109シネマズプレミアム新宿」
シアター6の「ScreenX」

CLASS Sシートはまさに極上。秒で夢の世界に堕ちた

各シアターの座席は、シネコンの一般座席と比べて最大約2.3倍のサイズを確保。本来であれば、合計2,000席程度入る広さのシアターに、わずか752席に厳選して設置する事で、劇場を訪れた来場者がくつろぎながら作品に没入できる空間を目指した。

座席は2種類。通常チケット料金は、リクライニング機能とサイドテーブルを備えたハイグレードな「CLASS A」が4,500円(一般)、より上質で幅広なシートと没入感を高めるパーテーション、電動リクライニング仕様のプレミアムな「CLASS S」が6,500円(同)となる。本料金はウェルカムコンセッションで受け取れるフード代も含まれており、塩・キャラメルの味ごとに豆の種類を変えた、お代わり自由(上映終了30分前まで。鑑賞後はNG)のポップコーンやソフトドリンクをラウンジやシアター内で味わうことができる。

CLASS S
CLASS S
CLASS A
CLASS A

なお、毎月1日のファーストデイと、シネマポイント会員(入会手数料1,000円/年会費0円)は通常チケット料金から500円引きで利用可能。ScreenX鑑賞時は通常料金に700円が加算される。

シアターCLASS ACLASS S車椅子席合計
シアター1635270
シアター2888298
シアター3(Atmos)128122142
シアター4667275
シアター5635270
シアター6(ScreenX)888298
シアター711012275
シアター8667275

CLASS A、CLASS Sのシートともに、一般的なファブリック生地ではなく、肌触りのよい合皮素材が使われている。座面と背もたれは程よい柔らかさのクッションになっており、両脇には肘を乗せてくつろげるサイドテーブルが設けられている。サイドテーブル下のスペースには、床のクッションに付けることなく、手持ちのカバンなどを収納可能。後方には、傘を立て掛ける空間も用意されていた。

CLASS Aのシートに腰を下ろすと、シートそのものの座り心地がよいのはもちろん、一般的な劇場に座った際に感じる、座席の窮屈さや周囲のゴチャゴチャさが全く感じられない。席数を絞り、前後左右にゆとりを持たせた設計が、心も身体もリラックスさせてくれる。

前の座席との距離も十分に確保されている(CLASS Sの場合)
CLASS Aの場合

そして、スクリーンの高さと座席との距離間も理想的。目線や首を持ち上げることなく、座席に座って視線を前に運ぶだけで、スクリーンの中心付近が目に飛び込んでくる。プロジェクターやスクリーンの外寸は非公表(アスペクト比は全てビスタ)で、決して巨大さを謳った施設ではないものの、十二分に満足できる映像の明るさとスクリーンサイズと感じた。また、座席前後の傾斜もしっかり確保されているため、前方の鑑賞者のアタマがスクリーンを遮ることもなかった。

予告編を数本鑑賞した限りでは、クリアかつメリハリの効いた力強いサウンドと伸びやかな高域が印象に残った。ラウンジなどのラグジュアリーな雰囲気から、勝手に大人しめのサウンドを想像していたのだが、Atmos対応のシアター3では、上半身だけでなく、シートやサイドテーブルからも振動やビリ付きが伝わってくるほどにパワフルな鳴りっぷり。機会があれば、次は映画作品で32本のサラウンドと12本のトップスピーカーをしっかり味わってみたいと思った。

ちなみに、CLASS Sシートは極上の一言。シートは身体の触れた部分を優しく包む感覚で、後頭部のヘッドレストはふかふか。側面のリクライニング調整ボタンで背もたれを傾け足を伸ばしたところ、館内に流れる心地よいサウンドに誘われ、秒で夢の世界に堕ちた。座るというより、全身をあずけてしまいたくなるような心地よさ。映画鑑賞でシートの心地よさを長時間味わってしまうと、離席するのも名残惜しくなってしまいそうだ。

なお、CLASS SシートはUSB式充電装置付サイドテーブル付き。内部には重量センサーが搭載されており、離席時にはリクライニングを元の角度へ戻すオートリターン機能も備えている。

CLASS Sシート購入者のみが入室できる専用ラウンジも

シアター設備だけでなく、来場者をもてなすラグジュアリーな空間作りも同劇場のポイント。

9階・10階のラウンジには、109シネマズプレミアム新宿のために作成されたというアート作品を随所に展示。国内外で活躍する、気鋭のアーティストらの完全新作が楽しめるようになっている。ラウンジにはドリンクやフード類のほか、季節ごとに異なるクラフトビールや、オリジナルカクテルやジントニック、ジャパニーズウイスキーを注文できるバーも設置されている。

9階ラウンジ
10階ラウンジ。各階で異なるアート作品を展示
オリジナルカクテルやウイスキーが楽しめるバーも設置

10階のエスカレーター傍には、6,500円のCLASS Sシート購入者のみが入室できる専用ラウンジ「OVERTURE」を用意。鑑賞後の利用も可能で、開口の大きな窓からは、新宿の街が展望できる。利用者には、スペシャルドリンクが1杯提供されるようになっているとのこと。

CLASS Sシート購入者のみが入室できる専用ラウンジ「OVERTURE」
大きな窓からは、新宿の街が展望できる

なお、9階には映画チケットの有無に関わらず、誰でも利用できるショップ「POST CREDIT」を併設。坂本龍一氏とのコラボ商品や映画の公式グッズ、新宿・歌舞伎町のお土産などをラインナップ。ショップ奥には、旧作のカタログ(中古)を扱うコーナーも用意されていた。

映画チケットの有無に関わらず、誰でも利用できるショップ「POST CREDIT」
旧作のカタログ(中古)を扱うコーナーも