ニュース

オーテク、新ハイエンドオーディオ「鳴神」。真空管HPアンプ+黒柿ヘッドフォン

ヘッドフォンアンプ/プリアンプ「HPA-KG NARU」

オーディオテクニカは、香港で開幕したオーディオ展示イベント「Hong Kong High-End Audio Visual Show 2023」にて、ヘッドフォンアンプ/プリアンプを中心とした新しいハイエンドオーディオシステム「鳴神(NARUKAMI)」として、ヘッドフォンアンプ/プリアンプ「HPA-KG NARU」とヘッドフォン「AW-KG NARU」の2製品を発表した。どちらも日本での発売は未定。

「鳴神(NARUKAMI)」は、雷の神である“雷神”、または自然の力の現れともいえる雷の嗚る音“雷鳴”を意味する。「鳴神」の姿は、自然への敬意を表すものとして人々に崇められ、日本の祭りや伝統劇では太鼓を打ち鳴らすことで雷や“雷鳴”を表現している。

こうした歴史的な背景から、音楽に関連する事物の多くが「鳴神」という名で登場し、音と活力を表現するとともに、人々の音楽への情熱と追求を示すものとなっている。

そんな鳴神の名を冠したヘッドフォンアンプ/プリアンプの「HPA-KG NARU」は、オーディオテクニカが創業以来60年の間に蓄積してきた音響技術と厳選されたカスタムパーツにより、音のディテールと深みをよりリアルに感じられ、「繊細で自然なリスニング体験を通じて、音楽の喜びを楽める」という。

製品開発にあたっては、オーディオテクニカが日本のブランドであることを表すために素材選びに試行錯誤を重ね、「自然の神秘」と「日本の職人技」を体現できるものとして相応しいと、希少な木材の「黒柿」を採用した。

黒柿

黒柿は樹種ではなく、柿の木の中で内部に黒い紋様が現れたもの。なぜこの紋様ができるのかは、いまだに解明されていないうえ、100年以上経った古木でした見つかっておらず、意図的に育てたとしても黒柿に出会う確立は非常に低いことから「神秘の銘木」とも言われている。加えて、黒柿の乾燥作業には専門知識とともに培ってきた高い技術が求められるため、生産量が極めて少ないことも特徴。

トップパネル

HPA-KG NARUは、日本の庭園をコンセプトに、枯山水と和室のイメージを取り入れ、オーディオテクニカが表現したい音の宇宙を構成したという。枯山水を想起させるデザインとしては、トップパネルの孔の位置に真空管を配置。横方向には水流をイメージした紋様がまっすぐに刻まれている。

サイド

紋様で表現された水流が出会うことで渦を生み、無限を象徴する「∞」を形作り、本体の両側へと水が流れ落ちるように黒柿を囲んで流れるデザインに。∞を縦から見た数字の「8」はアジア文化圏では縁起の良い象徴でもある。

真空管と出力トランスを保護する金属製メッシュカバーには「綾杉模様」を採用する。綾杉は日本固有の樹種で、庭園や景観設計に広く使われているもの。その葉の美しさは古来から愛され、多くの伝統的な模様のデザインにも採用されている。

電子回路部品は、電圧増幅段に「ECC83S」を使用したSRPP回路を使用、電流増幅段にはヘッドフォンアンプ用に選別された高槻電器工業製の真空管「TA-300B」を使用して、特別仕様のアモルファスコア+銀線で作られている出力トランス「LL2765AgAM」を駆動する。

回路設計では、ルンダール製入力トランス「LL1532」や上述の出力トランス「LL2765AgAM」と「TA-300B」、アムトランスの極めて高い放熱特性を発揮する材料と構造を持った最高級オーディオ抵抗、HPA-KG NARUのために専用設計された染谷電子製の左右独立電源トランス、JJ Electronic製の真空管「ECC83S-gold」と「GZ34S」など、あらゆる面で厳選した高品質部品を使用している。

そして入力や出力トランスの切り替えは、すべてシールされたリレーで行なうことで耐久性と信頼性を確保。リレーを使うことで最適化した信号の流れも実現している。

フルバランス駆動を採用。前段各4本の「ECC83S」をSRPP回路で信号増幅し、後段各4本の「TA-300B」を駆動することで、洗練されたアンプ回路設計を実現した。バランス入力時、信号は直接左右のバランス回路に送られ、ライン入力時は信号が入力トランス「LL1532」を介してバランス信号に変換されたあと、左右のバランス回路に送られる。

またHPA-KG NARUの回路設計は、左右のチャンネルをHOT側・COLD側のバランス回路構成としており、全体として4つの回路を持つ贅沢な構成に。左右の音声信号回路に供給される電流は、左右独立した専用電源トランスから安定かつ、ピュアな状態で供給されるため、高い分離度と低ノイズで透明かつ豊かな音質を導くという。

音響機器において重要な要素となる出力トランスには、ルンダール製のものを選択。トランスコアは一般的なコアとは異なりるアモルファス合金で作られており、非常に低い磁気ヒステリシス損失、高い飽和磁束密度、優れた周波数特性を持つ。コアは高純度の銀線で巻かれているため、非常に低い抵抗と優れた導電性も持ち合わせている。

この設計は、真空管アンプの出力トランスとヘッドフォンのインピーダンスをマッチングするために使われ、最適なインピーダンスマッチングを提供。アンプはヘッドフォンに、より大きなパワーを供給し、豊かな表現力を加え、優れた周波数特性を保持できるという。

出力トランスのヘッドフォンマッチング回路には3つのポジションがあり、ヘッドフォンの特性や音質に応じてインピーダンスを選択可能。プリアンプの出力機構も備えるため、真空管「TA-300B」で駆動される出力トランスの信号を出力して、パワーアンプを駆動することもできる。

高槻電器工業製「TA-300B」

真空管は、個別にテストとマッチングを行なうことで、より最適なパフォーマンスを発揮。信号増幅段には豊かで響きのあるサウンドが特徴という、ペアリングされたJJ Electronic製「ECC83S」を採用。パワー段には高槻電器工業製「TA-300B」を2ペア使い、パワフルなドライブ力と躍動感のある高品質なサウンドを提供する。

この「TA-300B」のヒーターは、複雑な直流点灯方式で駆動され、複数のフィルターにより点灯電源がクリーン化され、低ノイズを実現している。

ヘッドフォンの「AW-KG NARU」は、黒柿のハウジングに加え、特別なチューニングも施すことで優れた音質を提供。このヘッドフォン専用に調整されたケーブルも付属し、HPA-KG NARUとの組み合わせで、実力を最大限に発揮するという。

ヘッドフォン「AW-KG NARU」