国際家電見本市「IFA 2012」は、8月31日に開幕

-「スマートテレビ」もトピックに


IFAを運営するMesse BerlinのChristian Goke COO

 国際コンシューマ・エレクトロニクス展「IFA 2012」の展示概要などを発表する「IFA 2012 Global Press Conference」(IFA GPC)が、クロアチア・ドゥブロヴニクで現地時間13日に開催された。

 IFA 2012は、ドイツ・ベルリン国際見本市会場で8月31日~9月5日(現地時間)に開催。1924年の初開催から、今年で52回目となる。AV/IT機器や、白物家電などの最新製品が展示され、毎年、日本からもソニーやパナソニックなどの大手メーカーをはじめ、多数の企業が出展している。

 IFAを主催するドイツ民生通信エレクトロニクス協会(gfu)の監査役会議長、Rainer Hecker氏は、今回のIFA GPCがドゥブロヴニクで開催された経緯について、かつて国際共通のHDTV規格の導入を目的とした「CCIR conference」が1986年にこの地で開催されたことを紹介した。

 家電業界におけるIFAの存在についてHecker氏は、3つの側面を説明。「毎年拡大を続けており、技術革新においてトレンドセッターであり、マーケットトレンドを先導する存在となった」、「コンシューマエレクトロニクス(AV機器など)とホームアプライアンス(生活家電)の両方をリードするトレードショーである」、「クリスマスシーズンを前に、各社が新製品を披露するための最適なプラットフォームになっている」とアピールした。

 一方で業界の課題として、価格破壊により各社の利益が削られ続けていることに懸念を示し「製品やサービスで革新を続けるためには利益を得られる体制を構築しなければならない。これまでの“price orientation”(価格指向)だけでなく、“value oriented”(価値指向)の考えを導入していくことが必要。トレードショーは、価値を消費者に理解してもらう役割も担う」と説いた。

ドイツ民生通信エレクトロニクス協会(gfu)の監査役会議長、Rainer Hecker氏消費者の“価値指向”へのシフトにIFAが貢献するとしたミスIFAも登壇


■ 経済危機も「影響なし」。日本の回復にも期待

Messe BerlinのChristian Goke氏

 運営者であるMesse BerlinのChristian Goke COOは、IFAの世界との“つながり”について説明。51回目だった2011年には、海外からの参加者が3万8,569人、海外メディアの参加が2,181、取引額が約48億ドル相当となった。入場者数のトータルは23万9,518人だった。

 2012年についても、展示エリアを前年に比べ同等あるいはそれ以上にする計画や、一般来場者数/海外メディアの来場者数についても増加が期待できるとの見通しを示した。出展社の参加数については調整中だという。

 今年のIFAにとってポジティブな要因として、最寄の空港がこれまでのベルリン・テーゲル空港から、6月3日開業予定のブランデンブルク空港に代わり、よりメッセへのアクセスもしやすくなることも紹介。欧州で最も新しい空港となるブランデンブルク空港には、各国との間で多くの直行便が運航されるようになる点に大きな期待を寄せた。

 欧州経済については、ギリシャの債務危機などが不安視されているが、Goke氏はこの状況を受け止めつつ「危機にある国々は、欧州全体から見れば比較的規模が小さなギリシャ、ポルトガル、アイルランドの3つであり、GDPの割合を合わせても5%ほど」として、展示会そのものに悪影響は及ぼさないとの考えを示した。

 また、日本企業の収益が大幅に悪化したことを受けて、出展に悪影響があるのではないかという記者からの質問には、Messe Berlinのエグゼクティブ・ディレクターであるJens Heithecker氏が「日本メーカーはこれまでも革新的な製品を生み出してきた。我々は日本のマネージメント、エンジニア、マーケッターを良く知っている。彼らが危機を乗り越えることを確信しており、これまでの日本のプレゼンスが変わることは無い」と述べた。

ギリシャなどの危機についても、展示会そのものに悪影響は無いとしたグローバルの“つながり”を、IFAの成長の大きな要因として挙げた
新しくブランデンブルク空港が開業予定空港からのアクセスMesse BerlinのJens Heithecker氏


■ 2012年は“スマートテレビ”に注目

GfKのJurgen Boyny氏

 発表会では、GfKの家電部門においてグローバルディレクターを務めるJurgen Boyny氏が、家電業界のグローバルのトレンドについてプレゼンテーションを行なった。

 Boyny氏は最近のトピックとして、引き続き新興国の需要がグローバルでマーケットを牽引するとの見方を示したほか、テレビが一時期の勢いを無くした一方で、「スマートテレビ」が2012年の大きな変化の機会になり得ると説明。

 Boyny氏は、「2013年には、薄型テレビ全体の1/3(約8億台)が3Dとなり、世界の40%以上の薄型テレビがインターネットに接続され、ネット接続されたテレビは無限のコンテンツを得ることになる」とし、これにスマートフォンやタブレットなどを加えた家庭内の「マルチスクリーン」化が進むと予測。

 現在、世界の各地域で人気の高いデバイス(画面サイズ)は異なることから、それぞれの地域で求められる機器が販売され、コンテンツのプラットフォームが共有化できるというスマートテレビの特徴を挙げ、市場全体が拡大すること期待を表したほか、こうした様々な機器を使って、いつでもどこでも買い物ができるというオンラインショッピングの成長も大きなトレンドの一つとして紹介した。

新興国の需要が、引き続き市場拡大を牽引するとの見通しを示したテレビの伸びは鈍化すると見込むスマートテレビを今後の成長のカギとして挙げた
「ネット接続されたテレビのコンテンツはエンドレス」と説明世界の各地域で需要が高い製品群の比較マルチスクリーン化で、それぞれの市場の発展を見込む
各国のネット接続率オンラインショッピングの拡大にも期待を寄せた生活家電も引き続き大きな成長を続けると見込んでいる
クロアチア・ドゥブロヴニクのホテル「Radisson Blu Resort」でプレスカンファレンスが行なわれた
アドリア海に面した、クロアチア南端の観光地として知られるドゥブロヴニク。高い城壁に囲まれた旧市街には小さな商店やレストランなどが軒を連ね、オレンジ色の屋根で統一された美しい街並みを多くの人が訪れている。また、街のところどころに、旧ユーゴスラビア内戦の爪あともそのまま残されている

(2012年 4月 16日)

[AV Watch編集部 中林暁]