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録画番組の“機器バインド”解消を狙うSeeQVault。各社が対応を加速
(2014/10/8 09:45)
10月7日に開幕した「CEATEC JAPAN 2014」では、東芝、パナソニック、ソニーらが推進し、録画番組の“機器縛り”を解消する著作権保護技術「SeeQVault」をライセンスするNSM Initiativesがブース展開している。別記事で東芝のSeeQVault対応レコーダを紹介しているが、ここではその他のSeeQVault対応新製品についてレポートする。
SeeQVaultの狙いは「機器バインド」の解消
SeeQVaultは、SDメモリーカードのストレージデバイスで利用できる著作権保護技術で、従来のメディアで発生していた「機器バインド」の解消を重視している。
従来、日本のデジタルテレビで外付けHDDに録画した放送番組は、そのテレビのみで再生可能となっていた。録画機器に紐付いて暗号化されるため、他のテレビにHDDを繋ぎ変えても再生できず、録画機器が故障した場合もHDD内のコンテンツが再生できなくなるという問題があった。
SeeQVault(SQV)では、こうした「機器バインド」を解消し、さまざまな対応機器での再生互換性と強固なセキュリティの両立を図るもの。SDカードやメモリーカードのほか、HDDなどのメディアでもSQVを適用可能で、機器とメディアがSQVに対応していれば、居間のテレビで外付けHDDに録画した番組を、他の部屋のテレビでも再生する、といった利用が可能になる。
同様にSQV対応のSDカードに保存した放送録画コンテンツも、スマートフォンなどがSQVに対応していれば、さまざまな機器でHD画質のままコンテンツを楽しめるようになる。将来的には放送録画だけでなく、コンテンツ流通や個人情報管理などのサービス領域への展開も予定している。
パナソニック、東芝、ソニーらが対応製品を展示
パナソニックは、10月発売の4K VIERA「AX900/AX700シリーズ」と、「DMR-BRZ2000」など新DIGAでSeeQVaultに対応。内蔵HDDやSQV非対応のUSB HDDに録画した番組を、SQV対応HDDにダビングし、他のSQV対応DIGAやVIERAなどで再生できる。ただし、他社製品については動作検証ができていないため、現時点ではサポート外としている。
東芝は別記事で紹介しているように、未発表のSeeQVault対応レコーダを参考出展。録画番組をHDDやSDカードにダビングし、HD解像度でパソコンやタブレットで再生するデモを行なっているほか、Windows PC向けのプレーヤーソフトも参考出展。東芝ブースでもSQV対応SDカードやソリューションを積極的にアピールしている。
ソニーは、発売中のワイヤレスポータブルサーバー「WG-C20」を中心に紹介。nasneの録画番組を無線LAN経由でWG-C20のSDカードにダビングし、ネットワーク経由でさまざまなデバイスに配信できる点などを訴求。東芝の新SQV対応レコーダでも動作しているという。
USB HDDがSQV対応に? メディアロジックのSQVA
メディアロジックは、USB 3.0-SATA 6Gbps変換アダプタなどのSeeQVault対応製品などを出展している。
SQVA-SATAは、USB 3.0-SATA 6Gbps変換アダプターで、USB HDDメーカーなどが筐体内に組み込むことで、通常のUSB HDDをSeeQVault対応にできるもの。すでにHDDメーカーなどに供給を開始している。
SQVA-SATAにはメディアロジック製のUSB-SATA変換LSI「MLDU3L」のほか、SeeQVaultの著作権保護の実現のためのmicroSDカードも内蔵している。SQVは、SDメモリーカードを想定して規格が立ち上がったほか、東芝などSDカードメーカーが推進していることもあり、SDカードで先行して対応が進んでいる。一方、HDDメーカーのSQV対応は進んでおらず、現時点ではSQVの著作権保護機能を内蔵したHDDが存在しない。そのため、現時点でSQV対応USB HDDを実現するためには、暗号化のためのmicroSD/SDが必要なのだという。今後、SQVの普及が進み、HDDメーカーがSQVの暗号化機能をHDD自体に内蔵すれば、SDカードへの対応は不要となる見込み。
また、メディアロジックの展示でユニークなのが、SQV対応のUSB 3.0-USB 2.0変換アダプターを使った「SQVA-USB」という製品。USB 3.0機器とUSB 2.0機器の間に接続することで、接続したUSB機器をSQV対応にできる。
例えば通常のUSB HDDとSQV対応機器の間に挟むことでUSB HDDがSQV対応となる。ただし、SQVA-USBのような変換アダプタ製品について、SQVのライセンス上で規定が設けられていないため、SQVのライセンスを行なうNSMと協議しているところだという。
アイ・オー・データ機器は発表済みのSQV対応HDD「AVHD-USQ2.0/3.0」を紹介している。容量は2TBと3TBで、10月に発売。価格は21,000円~25,000円。また、DIGA用に録画・再生処理のリアルタイム性を高めるAVコマンドに対応した「AVHD-AUSQ2.0/3.0」も11月に発売予定としている。AVコマンドの対応以外の変更点はない。
前述のメディアロジックのものではないが、アイ・オーのSQV HDDでも変換基板を内蔵し、SQV対応を実現している。そのため、小型化が難しく、筐体スペースに余裕のある3.5型HDD採用製品での対応を先行させたという。
WindowsやAndroidのプレーヤーアプリも
ピクセラは、SeeQVault対応のWindows/Androidプレーヤーアプリ「SeeQVault Player」を参考出展。SQV対応SDカードにダビングした録画番組などをモバイルデバイスで再生可能にするもので、Android版は年明け(2015年初頭)の提供開始を予定、Windows版はもう少し後の提供になる見込み。一般販売を行なうかOEM供給のみとなるかは、現時点では未定という。対応OSはAndroid 4.2以降と、Windows 7以降。
デジオンは組込み機器向けのNSM開発キット「DiXiM NSM SDK」を紹介。STBやテレビ、レコーダなどのNSM(SQV)暗号ライブラリの開発キットで、同キットを利用することでSQV対応プレーヤーの開発をスピーディに行なえるとする。ソニーのWG-C20でも採用されている。