ニュース

TV番組やWeb、撮影動画を「スマート視聴」。メーカー連携のDLPAが推進、DiXiM新アプリも

 家電機器メーカーなどが参加するデジタルライフ推進協会(DLPA)は18日、設立5周年を記念したイベント「リモートアクセスDay2015」を開催。スマートフォンなどを使ったテレビ番組リモート視聴などの「スマート視聴」の促進を宣言し、これまでの活動報告や、リモート視聴に関する今後の説明などを行なった。会場には、東芝やシャープ、アイ・オー・データ機器、バッファロー、デジオンなど各社のスマート視聴対応機器/アプリなどが展示された。

DLPA代表理事を務めるアイ・オー・データ機器の細野昭雄社長が登壇して説明した

録画番組とWeb、プライベート動画をまとめて見るアプリ「DiXiMチャンネル」開発中

 DLPAは、地上デジタル放送への移行やパソコンでのテレビ視聴など、新たな技術の活用形態を「デジタルライフ」と位置付け、利用者にとって便利で健全なデジタル社会の発展を実現することを目指して設立された団体。'13年1月に「リモートアクセスガイドライン」を策定。外出先から自宅にあるデジタル放送録画番組を保存したNASにアクセスして視聴可能にする機能についての共通仕様をまとめている。DLPAでは、リモートアクセス機能を“リモアク”という略称で呼び、より多くの人にとって身近に感じてもらえるように機能を訴求しているという。

DLPAリモートアクセスガイドライン

 '14年8月に策定した最新版の「DLPAリモートアクセスガイドライン 2.0」では、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)が策定した「デジタル放送受信機におけるリモート視聴要件(NEXTVF TR-0001/リモート視聴)」に準拠。レコーダやテレビなどにおける録画番組や放送中番組のリモート配信と視聴に対応した。さらに、リモート視聴をメーカーごとの独自機能として利用するのではなく、異なるメーカー間で相互接続を行なうための共通の技術要件を定めている。バッファローが発売した「LS411DXシリーズ」や、アイ・オー・データ機器の「RECBOX HVL-DRシリーズ」などのNASがDLPA 2.0に対応している。

 発表会では、リモート視聴を楽しむ環境が整いつつある現状に合わせて、より多くの人がリモート視聴を手軽に楽しめるように、テレビ番組だけでなくネット動画やプライベートコンテンツも1つの端末/アプリでシームレスに視聴できるという新しい視聴スタイルを提案。

 そこで紹介されたのが、デジオンが開発中のスマートフォン/タブレットアプリ「DiXiMチャンネル」。手持ちのDLNA/DTCP-IP対応レコーダで放送中/録画済み番組を、ジャンルやテーマなどの様々な「チャンネル」に分類することで、好みに合った番組を見つけやすくしているほか、Web上のニュースやYouTube動画などもチェック可能。例えば、「野球」を選ぶと、録画済みの試合や、プロ野球関連のニュースなどがまとめて表示。そこから好きな球団だけを絞り込むこともできる。「ドラマ」の場合は、出演者や、オープニング/エンディング曲などに関連したWebニュースの情報、作品ごとの絞り込みなどが可能。アプリは'15年夏までにiOS版を提供し、その後にAndroid版も提供予定。ニュース閲覧などは無料でできるが、レコーダ番組視聴については、アプリ内などで課金することを検討している。

アプリ「DiXiMチャンネル」
iPad版の画面
「チャンネル」ごとに、録画番組やWebニュースなど関連コンテンツをまとめて表示
ドラマの録画番組一覧
「野球」チャンネルでは、好きな球団だけ絞り込むことも可能
複数のレコーダ録画番組もまとめて表示できる
チャンネル登録の編集画面

 家庭内のDLNA/DTCP-IP視聴のほか、外出先からのリモート視聴にも対応。家に複数のレコーダがある場合でも、ジャンル別表示などではシームレスに検索して、まとめてチェック可能。アプリ提供後にアップデートで追加する機能として、家のWebカメラなどの映像も、同アプリから視聴可能にする予定で、家にいるペットなどの様子を外出先からもスマホで確認するといった使い方が可能となる。アプリで表示する(野球やドラマなど)「チャンネル」を、ユーザーが作成するといったことなども検討しているという。

デジオンの田浦寿敏社長

 デジオンの田浦寿敏社長は、今回デモした「DiXiMチャンネル」に関連し、3つのテーマで同社の方針を説明。1つ目は、メディアの消費スタイルが多様化しているという点で、「テレビをリビングで観る、ネットはPCやスマホで見るといったステレオタイプな見方から変わっている」とした。2つ目は、動画とネット情報の融合による新しい価値の提案。「動画と、検索を柱にしたネット情報yは、そのままでは親和性があまり良くない。それぞれの持つ価値をどこに見出すか、その一つの解を(DiXiMチャンネルで)提示できたのでは」と述べた。3つ目は“チャンネルの再発明”。「どこでもいつでも誰でも利用可能な、マルチメディアとテキストの融合が、未来を作っていくことに期待している」とした。

各社DLPA 2.0対応NASが機能強化、複数レコーダ一括検索/操作、外出先からNASダビング操作

 バッファローは会場内のブースで、発売中のリモート視聴対応NAS「LS411DXシリーズ」に今後実装予定の新機能をデモ。アップデート内容の一つ目は「VDMS(仮想DMS)機能」で、家にある録画対応テレビやレコーダにある番組などを、まとめて検索/再生できるというもの。もう一つはリモート設定で、NASの設定変更や、BDレコーダなどで録画した番組のNASへのダビングを、外出先からスマートフォンで操作できる。

バッファローのNAS「LS411DXシリーズ」(右)と、Wi-Fiルーターの「WZR-1750DHP2」(左)
アップデートによるVDMS(仮想DMS)機能で、家のコンテンツをまとめて表示可能にする
外出先からのダビング操作も可能にする予定

 アイ・オー・データ機器も、発売中のNAS「RECBOX DRシリーズ」で、DLNAのVDMS機能を追加予定。他社のレコーダも含め、LAN内のDLNAサーバーのコンテンツをRECBOX DRから、一括して表示できるようにする。リモート設定による外出先からのNASダビング操作にも対応予定。さらに、スマートフォン向けのトランスコード機能を持っていないレコーダ向けに、RECBOX DRがDLNA経由でコンテンツを受け取り、それをトランスコードしてスマートフォンなどに配信する「トランスコード中継」機能の提供も予定。そのほか、ビデオカメラで撮影した映像を、RECBOX DRに転送してトランスコーダを使ってスマートフォンやタブレットにリモート配信する機能や、NASが管理しているコンテンツ情報をスマホ用プレーヤーアプリへキャッシュする機能、スマホ写真/動画のNASへのリモートアップロードといった機能も追加予定としている。

RECBOX DRシリーズ(左)と、RECBOX +REMOTE HVL-ATA(右)
仮想DMSなどの説明
機能アップデートの予定など
sMedioの展示

 バッファローやアイ・オーと同じくDLPAに加盟し、これまでガイドライン策定にも協力してきたsMedioは、機器メーカー向けにDTCP-IP視聴/ムーブなどに対応するアプリ「sMedio TV Suite」をAndroid/Window向けに提供することを紹介。iOS版も準備中としている。現在、組み込みLinux向けのリモート視聴対応DMS(デジタルメディアサーバー)機能の提供を、機器メーカーと共同で進めており、間もなく発表予定としている。なお、同社のDMP(デジタルメディアプレーヤー)機能は、既に提供されているアプリにも採用されており、カレンダー形式やジャンル別といったUIでコンテンツを確認できることなどが特徴。

DLPA代表理事のアイ・オー・データ機器 細野昭雄社長

 DLPA代表理事を務めるアイ・オー・データ機器の細野昭雄社長は、DLPA設立から2月で5年を迎えたことに触れ、設立当初の5社から、現在は16社まで加盟社が増えたことや、設立当時は「リモート視聴」が(著作権的に)“グレーな存在”とも見られていたことなどを振り返り、これまでDLPAが「メーカー主導」よりも「ユーザー視点」を重視してきたことを説明。その例として、DLPA 2.0ではメーカーを問わずに異なるメーカー間で相互接続を行なうことを推進していることなどを挙げた。

 DLPAは'13年に行なった「DLPAリモートアクセスDay」において、「スマート視聴元年」を宣言した。今回の「DLPAリモートアクセスDay 2015」では、1歩進んだ「スマート視聴、促進宣言」を掲げ、今後の取り組みについて大きく2点を提示。1つ目は、録画番組に限らず、写真や音楽、Webコンテンツへのシームレスなアクセスなどの実現を目指すこと。2つ目は、現在のリモート視聴サービスを使い続ける場合に、90日に1回はスマホなどの再認証が必要となるが、こうしたネットワーク必須サービスの認証手続きをNFCのワンタッチ接続などで簡略化すること。これらの標準化を今後進めていく方針を示した。

「スマート視聴、促進宣言」がテーマ
DLPA 2.0では、メーカーを問わず相互接続を実現可能にしている
DLPA 2.0の相互接続で、ユーザーの利便性向上を目指す

 今回のイベントでは、全録レコーダも使っているというタレントの水道橋博士も登場。前述したデジオン「DiXiMチャンネル」を使った新たな視聴スタイルのデモなどを交え、DLPAが促進するデジタルライフに関してのトークセッションが行なわれた。

ゲストとして水道橋博士が登場

 まず、DiXiMチャンネルアプリを使って、福岡で録画している放送中番組のリモート視聴を体験。様々なデジタル機器を駆使しているという水道橋博士は「ワンセグのようなカクカクした動きは無くて、スムーズに観られますね」とコメント。家庭内でもDLNA/DTCP-IP経由でレコーダ番組を視聴できることなどを紹介し、2~3年前のレコーダであればDLNAに対応していることなどが説明されると「意外に知らない人は多いと思います」と述べた。

 普段は全録レコーダを使って、視聴時間を選ばずに観られるという便利さを知っている水道橋博士だが、ジャンルによっては録ったことを忘れていて、そのまま上書きされて消えている場合もあるとのこと。DiXiMチャンネルアプリでは、ジャンルごとの絞り込み表示などで、好みに合った番組を探しやすいとの説明を受け、博士の好きな阪神タイガースの情報だけを閲覧するといったデモも行なわれた。さらに、ネットワークカメラ映像などのプライベートコンテンツもこのアプリで閲覧できることから、「“おじいチャンネル”とかもできそうですね」と提案。「レコーダとスマートフォン/タブレットとの連携が簡単にできることは、割と皆さん知らないのでは? このチャンネル(DiXiMチャンネル)は発展性に富んでいて、これからも楽しみ。パーソナルなコンテンツも混ぜて観られる、テレビの未来形ですね」とした。

DiXiMチャンネルアプリを体験
家のペットの様子をネットワークカメラ経由で確認できるというデモ
バッファローの斉木邦明社長は、DLPAがユーザーにとっての利便性追求を進めてきたことを説明。特にNASの「自動ダビング」や「自動圧縮」といった機能に注力してきたことなど、設立からこれまでの取り組みを振り返った
左から、デジオンの田浦寿敏社長、水道橋博士、アイ・オー・データ機器の細野昭雄社長、バッファローの斉木邦明社長
シャープは、ドラマやアニメなどをまるごと録画する「ドラ丸」機能を備えたBDレコーダ「AQUOSブルーレイ BD-T3700」などを紹介
東芝は、全録のタイムシフトマシン機能を搭載した「レグザサーバー DBR-M590」の特徴などを説明した

(中林暁)