ミニレビュー
ヘッドフォンジャック消滅のiPhone。Lightning-3.5mmアダプタの注意点
2016年9月23日 22:12
iPhone 7/7 Plus世代でヘッドフォンジャックが廃止された。国内市場で最もシェアの高いスマートフォン、つまり最も身近な“オーディオプレーヤー”ともいえるiPhoneシリーズからヘッドフォン出力が省かれたことは、ヘッドフォン市場にも大きな影響がありそうだ。
もちろん、iPhone 7/7 Plusからヘッドフォンジャックが削除されたからと言って、ヘッドフォン出力ができなくなったというわけではない。Lightning端子に接続する新イヤフォン「EarPods with Lightning Connector」が付属するので、iPhone 7購入者はこちらを使えば良い。単品販売も行なわれており、価格は3,200円。
また、従来のイヤフォンを使いまわしたいという人のために、Lightningからステレオミニのヘッドフォン出力に変換する「Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ」が付属する。こちらも単品販売も行なわれており、価格は900円だ。
さらに、10月には左右完全分離のワイヤレスヘッドフォン「AirPods」の発売も予定されている。
とはいえ、これまでのヘッドフォンを使いまわす場合は、ヘッドフォン出力のために一つ余計な「アダプタ」(Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ)が必要になったわけだ。取り回しの面でもあまり美しくないし、また、音質への影響も懸念される部分だ。
今回はLightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ(以下ジャックアダプタ)利用時の、iPhoneのLightning出力の注意点をまとめた。なお、ジャックアダプタ出力と本体ジャック出力との比較や同時出力検証のため、テストにはiPhone 6sを用いている。
ジャックアダプタ出力にはiOS 10が必須
まず気になったのが、Lightning - 3.5mmヘッドフォンジャックアダプタ(ジャックアダプタ)の動作対象機種が、iPhone 7/7 Plusのほか、「iOS 10以降に対応するLightning搭載iPod touch、iPad、iPhone」となっていること。つまり、iOS 10以降が必須とされているのだ。
Lightningの仕様においては、デジタル出力のみの対応で、アナログ信号はでていないはず。つまり、ジャックアダプタ側でなんらかのD/A変換やヘッドフォンアンプ的な機能を持っていると思われるが、iOS側でなんらかの処理を行なっているのだろうか?
実際に検証してみると、iOS 10にアップデートしたiPhone 6sにジャックアダプタを接続して、ミュージックを再生すると、あたりまえだが何の問題もなくイヤフォンから音楽が出力される。
続いてiOS 9.3のiPhone 6にジャックアダプタを繋いでみると、[このアクセサリはこのデバイスでは使用できません]とのアラートが表示される。そのまま再生を試みるとスピーカーから音がでてしまう。
つまり、Lightning端子からジャックアダプタ経由でヘッドフォン出力する場合は、「iOS 10が必須」ということだ。
ジャックアダプタと本体ジャックの同時出力は不可
もう一点気になっていたのが同時出力について。iPhone 7ではLightning出力しか無いが、iPhone 6sのようにヘッドフォンジャック出力も備えている場合はどうなるだろうか? 。
結論から言うと、ジャックアダプタとiPhone 6s本体ジャックの双方にヘッドフォンを接続した場合は、ジャックアダプタ(=Lightning)が優先される。ヘッドフォンの接続状況をiOS側で検出しているようで、ジャックアダプタ側のヘッドフォンを抜くと、本体ジャックに繋いだヘッドフォンの音が鳴る。基本的には「ヘッドフォンが挿さっている側が鳴る」という仕様だ。
またiPhone 6sの場合、ジャックアダプタ出力(Lightning)と、本体ジャック出力のボリュームは、それぞれが別に管理される。
なお、iPhoneコントロール対応のイヤフォンであれば、ジャックアダプタ経由でも再生操作や通話などのリモコン機能は利用可能。試しに、ジャックアダプタにiPhone 6s付属イヤフォン「EarPads」を繋いだが、問題なく再生や楽曲スキップ、ボリューム操作などが行なえた。
ジャックアダプタの変換出力品質はイマイチ
Lightning端子からアナログ変換&出力するということで、気になるのは音質への影響だ。さっそく、iPhone 6s付属のイヤフォン「EarPods」で本体ジャックとジャックアダプタ経由での出力を聴き比べてみたが、中域の厚みと力強さが印象的で、本体ジャックとアダプタ経由でさほど違いは感じられない。細かく言えば、ジャックアダプタ経由のほうがボーカルの押し出しが強く感じられ、本体ジャック接続のほうがニュートラルな印象はある。
イヤフォンをShure「SE215」に変更すると、ジャックアダプタ接続では音場が狭まり、ダイナミックレンジもぐっと抑えられ、窮屈な印象になる。Apple MusicでPULP「Do you remenber the First time」を聴くと、ベースラインとボーカルだけモコっと強調されて、ギターが引っ込んでしまう。ジャックアダプタ接続時に、ソニーのヘッドフォン「MDR-1A」に変更しても、音場が抑えられて、バランスがおかしいという印象は変わらない。率直に言うと、本体ジャック接続のほうが遥かに良い。
アプリを「HF Player」に変えて、192kHz/24bitのイーグルス「ホテル・カリフォルニア」(出力は48kHz変換)を聞いてみたが、ジャックアダプタを経由すると、ヌケが悪く、ハイレゾっぽさは損なわれている。シアターシステムで、深夜に小さな音でもセリフや音を聞き取りやすくする「ダイナミックレンジ圧縮」機能があるが、それに近い印象で、迫力はあるがディテールの表現は物足りない、という感じなのだ。
困ったのはコーネリアス「Fit Song」。パンニングを多用し、ギターやドラムの左右への移動感が特徴的な曲だが、やたらとバスドラとベースが強くなる一方で、音の移動は最小限になり、ステージの広さが損なわれている。迫力だけはあるが、「コレじゃない」といいたくなる。
イヤフォンを、CampFire Audioの「ANDROMEDA」(約13万円)に変えてみても、ジャックアダプタ経由のイーグルスのダイナミックレンジ損なわれ感がより顕著。ジャックアダプタ経由でEarPodsを聞いたときは、さほど音の変化を感じていなかったので、ジャックアダプタ自体がEarPodsにあわせてチューニングされているのかもしれない。
いずれにしろ本体ジャック出力のほうが、音質的には満足できる。だが、iPhone 7/7 Plusでは、その本体ジャックが削除されてしまった。また、Ligintning出力のみとなったことで、「充電しながら音楽を聞けない」(Bluetoothなどワイヤレス接続を利用すれば回避できるが)というのも、デメリットといえる。
iPhone 7に付属する「EarPods with Lightning Connector」は、iPhone 6s世代までのEarPodsと音質傾向はほぼ同じで、付属イヤフォンで満足という人にとっては、大きな問題はないかもしれない。ただ、音にこだわってイヤフォン/ヘッドフォンを選んできた人にとっては、本体ジャック削除は大きな問題なのは間違いない。
Appleは、左右完全分離のワイヤレスイヤフォン「AirPods」を10月に発売するように、ワイヤレスに力を入れる方針のようだ。iPhoneユーザーにとっては、そうしたワイヤレスへの移行や、JBLやAUDEZEなどが発売しているLightningイヤフォンへの切り替えなどが一つの選択肢になるだろう。さらに音にこだわるのであれば、ポータブルアンプとの連携や、ウォークマンやAKシリーズなどのオーディオプレーヤーの2台持ちなども選択肢に入ってくるだろう。