ミニレビュー

現世代最高水準画質。「Rokid Max」と「Rokid Station」を試す

サングラス型ディスプレイの「Rokid Max」

サングラスに近い形状にマイクロOLEDなどの小型ディスプレイを埋め込み、映像などを表示する「サングラス型ディスプレイ」的な製品が増えてきている。

そこに、新しいデバイスが登場した。

その名は「Rokid Max」。

昨年の「nreal(現XREAL) Air」や、クラウドファンディング募集が先日終了、9月に出荷される「VITURE One」に続く製品、という見方もできる。

Rokid自体は過去にも製品を発売しており、XREALなどに並ぶ先駆者の1つではある。

そのハイエンドモデルである「Rokid Max」はどんな製品になるのか。

Rokid Maxは6万8,800円で発売済み。組み合わせて使う専用のAnndroid TVデバイスである「Rokid Station」も発表された。こちらは2万1,990円で予約を開始したところで、出荷は9月上旬の予定だ。

なお、Rokid MaxとRokid Stationを同時に注文した場合、3,800円引きの8万6,990円で購入できる。セットの場合には9月上旬に出荷を予定。

今回は、Rokid MaxとRokid Stationの実機を試すことができたので、使い勝手をお伝えしたい。

画質的には「現世代最高水準」

まずこの種のデバイスの基本を振り返っておこう。

小型のディスプレイが目のところに組み込まれているが、反射を使って目のところに映像が届き、半透明な板を通して外の風景の上に映像が重なる。一般的には目の上側にディスプレイが入り、それをプリズムで反射する構造になっている。ディスプレイ部が小型かつ高解像度になってきたため、非常にクオリティの高い映像が楽しめるようになってきた。

この仕組み自身は、どの企業のものも大差ない。「ARグラス」とメーカー側が自称する場合も多いが、「スマホなどと組み合わせてAR的なアプリも動く」と言った方が正しい。本質的には、「2Dもしくは3Dの表示ができるディススプレイ」とするのが正しい。

差別化ポイントは「どれだけ画質が高いか」「使い勝手を上げるためにどのような工夫をしているか」、そして「接続するデバイスにどのようなものを用意するのか」というところになる。

Rokidも以前に「Rokid Air」という製品を出していた。そのアップデート版が「Max」ということになる。

シェードをつけて暗くして使うこともできる
本体を裏側から
ディスプレイは上側、眉のあたりに入っている

前のモデルは試していないので、このモデルとどう変わったかはかなりわかりづらい。スペック上はディスプレイのフレームレートが120Hzになっているのが目立つ。

というわけで、他社製品と横並びで比べてみると、「ライバルに匹敵する」レベルと感じる。画質・画素密度・視野角的に言うと、XREAL Airにかなり近い。スペックの数字は違うのだが、使ってみたフィーリングは「そっくり」だ。

比較すると、VITURE Oneは少し画角が狭めで黒の締まりが弱いと感じる。とはいえ「画質が悪い」という水準ではない。利便性での差別化重視なのか、という感じだ。

視度調整内蔵、他製品との細かい違いも

他方で、ディスプレイデバイスの単純な性能ではない「使い勝手」の部分での違いもある。

Rokid Maxのもっとも大きな特徴は、視度調整があることだ。近視・遠視向けだが、本体にあるダイヤルを回すことで自分に合わせて調整できる。視度調整はVITURE Oneにもあるが、XREAL Airでは別途補正レンズを組み込む必要がある。コスト追加が不要、という点は大きい。

主に近視向けの視度調整機能があり、手動で合わせて使う

さらに使い勝手という意味で、地味に良いのが「輝度や音量の調節がやりやすい」ことだ。

この種のデバイスではディスプレイ輝度を、メガネのツルにあたる部分にあるボタンで調整できるようになっている。それは他の機種と同じなのだが、Rokid Maxの場合、さらに「音量」もコントロールできる。

また、他機種では輝度を変えても画面に「今の輝度は何段階目か」という表示はなかった。音量調節はそもそもないので、こちらも表示がない。だが、Rokid Maxはいわゆる「オンスクリーン・ディスプレイ」があって、音量も輝度も表示される。非常にわかりやすい。

なお、ケーブルはツルの端に汎用のUSB Type-Cケーブルを挿す形。ひっかかった時などの安全性ではマグネット式の方が良いが、専用ケーブルになるのがマイナスではある。

接続用のUSB Type-Cコネクタは、ツルの端についている

というわけで、いまある3製品を比べてみると以下のような感じになる。わりと「利点が分散していて、重視する点によって選択が変わる」感じだ

今市場にある主要な製品の特徴を表にまとめてみた。結構特質が違うのがわかる

その中でもRokid Maxは「画質と視力補正と使い勝手」というところが選択のポイントになってくるだろう。

ただ、ちょっと気になった点も2つある。

1つは、ケーブルをつけたままだとケースに入らないこと。他の製品も推奨はされていないのだが、ケーブルをつけたまま、グラス本体に巻いてケースに入れられる。だがRokid Maxの場合、コネクタをつなぐとギリギリケースからはみ出す。微妙に不便だ。

コネクタをつけたままでは、絶妙に幅が足りずケースに入らない

次に「発熱する場所が眉のあたりにある」こと。使っていてなんとなく熱が気になったのでチェックしてみると、他の製品はツルの部分に発熱源が集まっているので気付きづらい一方、Rokid Maxは眉から眉間にかけての部分にある。ひどく不快なほど熱いわけではないが、気になる人は気になるだろう。

順にXREAL Air、VITURE One、Rokid Maxの発熱をチェック。Rokid Maxのみ熱源が眉間にあるのがわかる。ちょっと不快だ

専用のAndroid TVデバイスを用意

この種の製品は「ディスプレイ」なので、何をつなぐかで使い勝手が大きく変わってくる。

一般的にはスマートフォンやタブレット、ゲーム機などをつなぐことになるだろう。どれもその辺にはかなり工夫している。ソフト的に先行しているのはXREALだが、VITUTEは首にかける「ネックバンド」タイプの独自Androidデバイスが特徴だ。

一方でRokidの場合、片手に持てるサイズの「Android TVデバイス」である「Rokid Station」が特徴になる。

専用のAndroid TVデバイスである「Rokid Station」
裏側には大きくロゴがある

このデバイスは、なにより「かなり素直なAndroid TVデバイスである」というのがポイントだ。Googleから正式な認証を受けたAndroid TVデバイスとなっていて、大きなカスタマイズもないが、それだけにシンプルで安心して利用できる。また、VITUREのネックバンドはコントローラーのデジタルパッドの操作性がイマイチだったのだが、Rokid Stationは問題なく快適だ。

Rokid StationのUI。Android TVとしては大きなカスタマイズもなく、素直。画質調整やテザリングなど、使いやすくする工夫もある

ちょっと気にかかるとすれば、出力が「マイクロHDMIである」ことだろうか。Rokid MaxはUSB Type-C + DisplayPort Altモードでの接続だが、マイクロHDMIでつなぐために、わざわざ専用のケーブルが付属する。だからどうだ、という不便さはないのだが、ケーブルを別に用意しないといけないのは煩雑にも思える。

接続は中央のマイクロHDMIで行なう。バッテリー内蔵だが、電源は隣のUSB Type-Cから供給する

ただ、Rokid Stationには充電用のUSB Type-Cコネクタが別途あるので、「充電しつつ使う」には便利だったりする。

この辺も含め、どれを選ぶのが良いか選択の参考にしてほしい。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
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