ミニレビュー

小さくても音が広がる、1万円を切るAmazon「Echo Show 5(第3世代)」使ってみた

Amazonは、スマートディスプレイ「Echo Show 5(第3世代)」を8日より出荷開始した。新たに「AZ2 Neural Edge」プロセッサーを搭載し、前世代機と比べて20%処理速度が向上しているのがウリだが、AV Watch的にはスピーカーが刷新され、音質が向上したのが気になるところ。さっそく実機を聴いてみた。

パッケージ
中身は本体とACアダプターだけというシンプルさ

Echo Show 5は、5.5インチのディスプレイを搭載。Echo Showシリーズの中ではコンパクトな、エントリー機という立ち位置だ。スピーカーも搭載しているので、Amazon Musicなどの配信サービスで音楽を再生できるだけでなく、ディスプレイにAmazon Prime Videoの映画を表示したり、YouTubeの動画を流すといった使い方もできる。

アレクサに呼びかけて声で操作する照明などのスマートホーム機器を、ディスプレイタッチで制御する事も可能。スマートホームの制御端末のような役目を果たしつつ、ディスプレイで天気予報を確認したり、時刻を表示して置き時計のように使うこともできる。

時計を表示したり、スマートホーム機器を制御する端末としても使える

なお、第3世代はスマートホーム製品の標準規格であるMatterもサポートしているため、対応するスマートホーム製品のセットアップが容易になるほか、様々なブランドのMatter対応デバイス同士をシームレスに連携できるようになっている。

価格は9,980円と、1万円を切っており、スマートディスプレイとしては手に取りやすい。カラーは従来からのチャコールとグレイシャーホワイトに加え、新色のクラウドブルーも加えた3色展開だ。

片手で掴んで、簡単に移動できるサイズ感

外形寸法は147×91×82mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は456g。片手で掴め、手のひらにも乗るコンパクトさが魅力だ。ディスプレイ以外の部分はファブリックに覆われており、柔らかさを感じるデザインなのでインテリアにも溶け込みやすいだろう。なお、デバイスには再生利用ポリエステル糸を100%使用、再生利用アルミニウムも80%使っているそうだ。

本体を上から見ると、ボリュームボタンと、マイク/カメラをON、OFFするボタンを装備。プライバシー配慮としてこれとは別に、物理的にカメラを遮断するスライドカバーも備えている。

本体を上から見たところ
スライドカバーでカメラを遮断できる

IEEE 802.11a/b/g/n/acのWi-Fiに対応するほか、Bluetooth接続にも対応しているので、シンプルなBluetoothスピーカーとして使うこともできる。

背後にACアダプターを接続する

音を聴いてみる

搭載するスピーカーが刷新されており、44mm径のフルレンジスピーカーを内蔵しているとのこと。音を出しながら耳を近づけてみると、斜めになった天面部分にユニットが上向きに搭載されているようだ。

そのため、本体の正面に座って音楽を聴いてみると、“画面から音が出ている”のではなく“画面の上に音が出現している”ように聴こえる。ただ、これによってコンパクトな筐体を超えるスペースに音が広がってくれるため、開放的で気持ちのいいサウンドが楽しめる。

音を正面や下に向けて放出すると、設置したデスクを振動させて音が濁る原因にもなるため、上方向に音を出す構造は、音のクリアさにも一役買っているのだろう。

Amazon Musicから「米津玄師/KICK BACK」を再生

Amazon Musicから「米津玄師/KICK BACK」や「Aimer/カタオモイ - From THE FIRST TAKE」を聴いてみたが、従来モデルと比べても音の明瞭度がアップ。低域にも迫力が増したように聴こえる。というか、迫力を通り越して、標準状態だとちょっと低域が膨らみ過ぎているようにも聴こえる。

データがある楽曲では、歌詞も表示される。スマートディスプレイならではの音楽の楽しみ方だ

ディスプレイは搭載していない、Echoシリーズのエントリーモデルとして5月末に発売された「Echo Pop」(5,980円)とも聴き比べたが、Echo Show 5(第3世代)の方が、Echo Popよりもパワフルな低域が出る。ただ、より大型なスマートスピーカー「Echo(第4世代)」と比べると、流石に筐体がより大きいEcho(第4世代)の方がワイドレンジな再生ができている。

左が「Echo Pop」
左上がEcho(第4世代)

Echo Show 5(第3世代)の低域がちょっと豊富過ぎると感じた場合は、設定メニューのイコライザーから、「ベース」を少し下げ気味にすると、中高域の明瞭度が阻害されず、見通しが良く、高解像度なサウンドに変化する。迫力重視の人は「ベース」を強めにしても良いが、よりオーディオライクなバランス重視のサウンドを求めるのであれば「ベース」を弱めにした方が良いだろう。

ベースを少し下げると、良いバランスになった

前述の通り、音が上に立ち昇り、気持ちよく広がるサウンドなので、とてもこの小さな筐体から音が出ているとは信じられない。女性ボーカルメインのシンプルな楽曲では、音場の奥へと響きながら広がり、消えていく余韻の描写が良く聴こえる。小説などのオーディオブックを聴く時にも、広がりがあってナチュラルなサウンドなので、頭の中に情景を思い浮かべやすいだろう。

左上がEcho(第4世代)

Amazon Prime Videoで映画を見てみる

しっかりと音が広がり、この筐体サイズからは想像できないほどパワフルな低音も出せるため、映画などの動画を見る時にも思いの他楽しめる。とはいえ、画面サイズは5.5インチと小さいので、10分以下の短い動画を観るには良いだろうが、長時間映画を観るのはキツイかもしれない。

Amazon Prime Videoで映画を再生

前述の音楽配信サービスの操作や、ホーム画面の表示などはサクサクと動作し、AZ2 Neural Edgeプロセッサーによる処理速度向上を実感できる。

ただ、Amazon Prime Videoで映画を選んだり、気に入ったシーンまでシークバーを移動させてジャンプするなどの操作時には動作がモッサリする。動画ビューワーとしてバリバリ活用したいという人は、よりハイスペックな上位機を狙ったほうがいいだろう。

内蔵ブラウザを使ってYouTubeの再生も可能ではあるが、動画を全画面表示するボタンをタップする時に、画面が小さくてタップしにくかったりと、操作性は今ひとつだ。

YouTubeもブラウザから再生できるが、スマホやPC、タブレットでの視聴と比較すると快適性は今ひとつ

小さいけれど、広がりのある音が魅力

Echo Show 5の最大の魅力は、机の空きスペースが小さくても設置しやすい事だ。第3世代に進化した事で、目立たないコンパクトさを維持したまま、サウンドはより広がりがあり、クリアな音に進化したのが魅力だ。音楽を流すと、机の上の小さなディスプレイから音が出ているとは思えないほど豊かに広がるので、BGM的に音楽を楽しむ使い方にはピッタリだ。

スマートホーム機器で、照明やエアコン、ロボット掃除機などを制御している人には、画面をタップするだけでそれらを制御できるコンソール的な魅力もある。「声でアレクサと呼びかけて操作すればいいじゃん」と思いがちだが、声を出すよりも、手を伸ばしてタップする方が楽な時というのも多い。

シンプルなデザインのため、置き時計、カレンダーとしても空間に溶け込みやすい。音楽を楽しめるインテリアの1つとして導入してみるのも、アリだろう。

山崎健太郎