レビュー

低価格Atmosサウンドバーに、ついにヤマハ参戦。「SR-B30A/B40A」は“なぜ斜め上向きなのか”

ヤマハの新サウンドバー、ワンバータイプの「SR-B30A」

“サウンドバーの開拓者”ヤマハ再び

サウンドバーに注目が集まっている。手軽なサイズと価格のワンバータイプから、10万円を超える高級機まで様々な製品が登場。どれを選べばいいのか悩ましい状況だ。そんなところに、気になる2モデルが新登場した。ヤマハの「SR-B30A」(実売33,000円前後/9月上旬発売)と「SR-B40A」(同50,600円前後/8月上旬発売)だ。注目の理由はズバリ“ヤマハのサウンドバーだから”だ。

長年AV Watchを読んでいる読者には説明不要かもしれないが、ヤマハは約20年前、2004年に初代「YSP-1」というサウンドバーを発売。指向性の高い音をビーム状に放出し、壁や天井などに反射させる事で“サウンドバーなのにリアルサラウンド”な製品を実現して、AVファンの度肝を抜いた。

その後も、高機能・高級機だけでなく、手に取りやすい価格の製品も展開。サウンドバー市場を開拓すると共に、サウンドバーという製品そのものの可能性も追求してきた。要するに、“今盛り上がっているサウンドバー市場”の土台作りをしてきたのがヤマハというわけだ。

そんなヤマハから、久しぶりに登場したサウンドバーの新機種というだけで“要注目”なのだが、もう1つ注目ポイントがある。新モデルはいずれも10万円以下……どころか、実売では5万円も切りそうなほど手の届きやすい価格で、それでいてDolby Atmosに対応しているのだ。

“手頃な価格でDolby Atmos対応”という激戦区に、サウンドバーの王者ヤマハが満を持して送り込む2モデルの実力を聴いてみよう。

“Atmosだから音場を広げればいい……”わけではない

これまでのヤマハ・エントリーサウンドバーは、コンパクトな「SR-C20A」と、スタンダードな「SR-B20A」をラインナップしていた。いずれも音質の評価は高かったが、Dolby Atmosには非対応だった。ヤマハで、グローバル市場のサウンドバー・マーケティングを担当している、CCA(クリエイター・コンシューマー・オーディオ)事業部 事業開発部ホームオーディオグループの山本祐己氏は、「市場にはAtmos対応の低価格機や大型モデルが登場しており、お客様が求めているサウンドバーの傾向が変わってきているというのは把握していました」と語る。

そこで、グローバルで展開している他のモデルで培った技術も活用しながら、まずは“エントリーでAtmos対応”という市場に向けて、今回の2モデルが開発された。「あえて機能を詰め込まず、この価格帯でできるだけ良い音を届けたいと考えました」(山本氏)。

浜松にあるヤマハの試聴室とオンラインで接続、開発メンバーに話を聞いた。左からデザイン研究所 プロダクトデザイングループ 風当将文氏、CCA事業部 商品開発部L&Cグループ 藤森弘喜氏、CCA事業部 事業開発部ホームオーディオグループ 山本祐己氏

2機種の違いをおさらいしよう。SR-B30Aは手軽なワンバータイプ、SR-B40Aはサウンドバーと別体のサブウーファーがセットになっており、より重低音再生が可能だ。ちなみに、SR-B40Aのサブウーファーはワイヤレス接続なので、設置の自由度も高い。

ワンバータイプの「SR-B30A」
「SR-B40A」はサウンドバーと別体のサブウーファーがセットになっている

HDMI eARCに対応し、テレビとHDMIケーブル1本で接続できる。サラウンドフォーマットはドルビーデジタル、ドルビーデジタルプラス、Dolby TrueHD/Atmos、MPEG-2 AAC、7.1chまでのリニアPCMに対応する。

背面の端子部

どちらのモデルもDolby Atmosをサポートするが、天井に音を反射させるイネーブルドスピーカーは非搭載。バーチャルサラウンド技術を使って、Atmosサラウンドを再現するタイプだ。エントリーモデルではあるが、ヤマハがこれまで、ハイグレードなホームシアター機器で培ってきた技術をベースとした高音質設計が投入されているという。

「設計者によって意見は違うと思いますが、個人的にはSR-B30Aのようにワンバータイプの方が設計は難しいですね」と笑うのは、CCA事業部で、サウンドバーの音質設計を担当する商品開発部L&Cグループの藤森弘喜氏。

「ワンバータイプは、筐体にサブウーファーのユニットやバスレフポートを内蔵する必要があるためです。低音はパワフルなので、本来出したい中高域が、低音によってマスキングされてしまい、明瞭度が低下することもあります。音を遮る遮蔽物が無いのが理想なのですが、ワンバーの中には基板やユニット、ポートなどがありますので、それらの影響を抑える工夫が必要になります」(藤森氏)。

この“工夫”は非常に地道なものだ。試作機を使って音を出して確認。問題がある部分に、1つ1つ振動対策を施し、時にはパーツ配置を変更、内部の空間を密閉にしてみるなど、試行錯誤を繰り返す。「ハイエンドとエントリーモデルでは対策に使えるコストも違います。ですので、モデルごとに“最適な解決策”も違ってきます。ヤマハには、今まで培った膨大なノウハウがありますので、メカ、電気、ソフトのエンジニアチーム全員が一丸となって、アイデアを出して、音を良くしていきます。サウンドバーは、内蔵しているユニットが、全て同じ方向を向いているわけではないので、低音と高音を融合させ、自然な音を出すというのもエンジニアの腕の見せ所です」(藤森氏)。

ビリつきが無くなり、自然な音になれば完成……ではない。これがステレオスピーカーであれば、“2chの音楽が良い音で鳴ればOK”なのだが、サウンドバーはそうはいかない。スピーカーとしての音質をシンプルに高めつつ、Atmosやサウンドモードを選んだ時に、それらの効果がしっかり出ないといけない。文字通り、やることは山積みだ。

山本氏はAtmosサラウンドの再生について、「今回の2モデルでは“画面との親和性”を重視しました」と語る。「サラウンドと聞くと、“とにかく広がって聞こえる事”が大切だと思われるかもしれませんが、人の声などが、ちゃんと画面から聞こえているようなリアルさが大切です。そのリアルさがあった上で、広がりを出す事をテーマにしました」。

例えば、「Atmosサラウンドだから、とにかく音場を広げよう」とした結果、主人公が喋っている時の“口の音像”が超巨大になって、テレビ画面からはみ出してしまったら、不自然になってしまう。あくまで「画面の中の人が喋っている」というリアルさを追求した上で、サラウンド感を出さないと、リアルに聞こえない……というわけだ。

「ヤマハは“TRUE SOUND”を追求しており、それはAtmosサラウンドを再生している時でも同じです。良い意味で“黒子に徹する”事が大切で、映画を鑑賞している時はサウンドバーに目が行かず、画面から自然に音が出ているように感じられるように開発しました」(藤森氏)。

この開発姿勢は、人の声をより聞き取りやすくする「クリアボイス」や、低音をパワフルにする「バスエクステンション」にも貫かれている。

「新機種では、リモコンにクリアボイスとバスエクステンション専用のボタンを備えていますので、使われる機会も多くなると考えました。その際、エントリーモデルですので、ボタンを押した時に“明らかに音が変わった”“効果があった”と実感していただく事が大切だと考え、かなり思い切って音を変えています」(藤森氏)。

新機種のリモコン。クリアボイスとバスエクステンション専用のボタンがあるほか、サウンドモードとしてスタンダード、ステレオ、ムービー、ゲームのボタンも搭載している

「バスエクステンションは、かけすぎると人の声など中域以上の音が不明瞭になるため、その聞こえ方が変わらないようにしながら、低域の量感と伸びがアップするように調整しました。機能名を“バスブースト”ではなく“バスエクステンション”と呼んでいるのも、こだわりです」(山本氏)。

家族が寝静まった深夜など、大きな音を出せない時もある。しかし、サウンドバーを小音量にすると、声が聞こえづらくなる。そんな時に使えるのがクリアボイスだ。「小さな音でも、声が明瞭に聞こえるようになります。声の帯域を単純にブーストするのではなく、“子音”がクリアに聞き取れるようにこだわりました。映画のセリフを英語で聞く際は、母音よりも子音が聞き取りやすい方がより英語の発音が明瞭に聞こえるため意識して調整をしています」(藤森氏)。

専用アプリ「Sound Bar Remote」を使うと、スマホからの操作も可能。また、アプリからはEQの調整も可能で、高音と低音に関して、上下±6まで調整できる

地道なサウンドモード開発

再生するコンテンツに合わせて選ぶサウンドモードは、スタンダードに加え、ステレオ、ムービー、ゲームを用意する。これらのモードを開発する際も、“モードの効果をハッキリ出す事”と“TRUE SOUND”の両立に苦労したそうだ。

「サウンドモードは、私も含め計3人のエンジニアが“モードごとに特色のあるものにしよう”と、気合を入れて開発しました。ステレオモードは音楽、ムービーは映画と、各コンテンツを実際に再生しながらEQを仕上げていくのですが、特色のある尖ったものにしつつ、異なるコンテンツをそのモードで再生した時にも破綻しないように調整するのが難しいポイントです」(藤森氏)。

各モードを作れば終わり……ではない。サウンドモードに、バスエクステンションやクリアボイスを“重ねがけ”できるため、それらと組み合わせた状態でも破綻しないように仕上げる必要がある。組み合わせが何通りあるか考えただけでも気が遠くなる。

「例えばゲームでは、“攻撃が当たった音”などが聞き取りやすいように、要所要所を思いきって上げ下げしてメリハリを出すのですが、映画と違ってゲームはスキップができないので、“EQ調整に使おう”と考えているシーンまでゲームを進めないといけないのが大変です」。

「映画もテレビ番組も、同じシーンを何度も何度も観るので“何回この人の声を聞いたんだろう”という気分になります(笑)。調整のしがいはあるのですが、開発にゴールがあるわけではなく、何処まで突き詰めるかという世界になるので、本当に大変でした。最終的には“自分が納得できるものになるかどうか”なのですが、自信が持てる音質に至るまでには、それなりの時間が必要でした」(藤森氏)。

昨今は、テレビでYouTubeなどのネット動画を楽しむ人が増えているため、開発時にはYouTube動画でも破綻しないかもチェックしているそうだ。大変な作業ではあるが、こうした地道な積み重ねが、製品のクオリティを底上げするわけだ。

バースピーカーが斜め上を向いているのはなぜか?

SR-B30Aを横から見たところ。斜め上を向いているのがわかる

SR-B30AとSR-B40Aは、外観にも特徴がある。バースピーカーを横から見ると、斜め上を向いているのだ。

「年々テレビのサイズが大きくなっている事と関係しています」と語るのは、デザイン研究所プロダクトデザイングループの風当将文氏。

「テレビが大きくなった事で、テレビ台は逆に低くなっています。そこにサウンドバーを置くと、サウンドバーがユーザーの膝や足に向けて音を出すカタチになってしまいます。そこで、設置位置が低くても、ユーザーの耳の方に向いて音を放射することを意識したデザインにしました。横から見ると、ラッパのような形状にもなっています。音が広がっていくイメージをデザインしたもので、お客様が見た時に“音を届けてくれそう”と感じていただけると思います」(風当氏)。

このデザインは、実際に音にも良い影響があると藤森氏は語る。「ハイエンド機ですと、ハイトスピーカーを搭載したり、ユニットの数が増やせるので大画面テレビと親和性の高い音作りができるのですが、エントリー機ではそこまでユニットを増やせません。そのため今回の斜め上を向けた形状は、中高域の音質をダイレクトにお客様の耳に届けられるデザインになっていると思います」。

斜め上向きサウンドバーには、壁掛けした時のメリットもある。サウンドバーの天面は、地面と水平になるため、結果的に、サウンドバーの後部がクイッと上がる角度になる。すると、後部にあるケーブル接続部や、底の脚部など、ゴチャゴチャした部分が見えにくくなる。「視覚的にノイズとなる部分を隠せるので、映画を観ている時に邪魔されず、画面に集中できるようになります」(風当氏)。

では“ひたすら地味なデザインにすればいいのでは?”と思うが、風当氏は首を横に振る。「エントリーであっても、サウンドバーを買われるお客様は“良いものが欲しい”“良い音が出そうだな”という期待を持って買っていただくので、地味過ぎてもいけません。我々が大切にしているのは、“音のためのそのカタチである”という事に対して、正直なデザインにする事です。迫力のあるデザインにはしたいのですが、“機能と関係ない迫力”にしてはいけないのです」。

わかりやすい実例が、バースピーカーの側面だ。ワンバータイプでサブウーファーをバースピーカーに内蔵しているSR-B30Aは、側面にバスレフポートの穴がある。穴のデザインは、低域が滑らかに出そうな形状になっており、光沢もあるので目に入る。

一方で、低域を別筐体のサブウーファーに任せるSR-B40Aのバースピーカーには、バスレフポートが無いので、側面に穴はない。その代わりに、サブウーファーの前面に、滑らかに低音が出そうなデザインのポートが開いている。大きなバスレフポートは、音を聴く前に、「この製品は重低音がしっかり出そうだな」という期待を持たせてくれ、実際にその期待を裏切らない重低音が出る。

SR-B30Aの側面。穴がある
SR-B40Aのバースピーカー側面。穴が無い
SR-B40Aのワイヤレスサブウーファーの前面には、滑らかに低音が出そうなデザインのポートが開いている

風当氏はデザインする際、PCを使ってCGを描くのだが、それだけでなく必ず実寸大のモックを、3Dプリンターではなく、なんと自らの手で削って自作するという。「ヤマハが楽器を作る時と同じ手法なのですが、モックがあると、“自分の前に置いた時に、どのくらいの迫力を感じるか?”という繊細な部分を目で見て、手で触れてチェックできます。PC画面の中だけでデザインを完成させても、実物を作ってみたら印象が違った……という事は多いうので、ヤマハは“手で作る”事を大切にしています」。

音を聴いてみる

では音を聴いてみよう。

ワンバータイプのSR-B30A

ワンバータイプのSR-B30Aから。映画「ファーストマン」の冒頭、X-15という実験機に乗ったニーム・アームストロングが、大気圏に突入し、そのまま宇宙空間へ出てしまいそうになるシーンを再生した。音声はDolby Atmosだ。

ワンバーだけなので、そこまで広がりは出ないのかな……と予想していたが、音が出た瞬間に驚く。前方から音の空間に包まれるような、Atmosの包囲感がバツグンだ。目の前にあるテレビ画面を超えて、音が左右に広がる……というレベルを超え、自分の真横まで音が広がっていると感じられる。前方からブワッと広がった映画空間に体ごと突っ込んだような感覚だ。

高速で飛行するX-15の中では、轟音のような風切り音が響き、機体の接合部分がギシギシときしむ。別体のサブウーファーは無いが、バースピーカー内蔵サブウーファーによる、音圧豊かな低音がしっかり感じられ、映画らしい迫力が味わえる。そのパワフルな低音に負けず、ギシギシという鋭い“キシミ音”はクリアに生々しく突き抜ける。“迫力とリアリティの両立”が見事だ。

Atmosサラウンドを聴きながら、低域を強化するバスエクステンション機能をONにすると、低域の音圧がさらにパワフルになる。音圧がグッと上がるので、確かに機能をONにした事がわかりやすい。中低域の押し出しはパワフルになるが、中高域の明瞭さはほとんど低下しない。アクションシーンが多い映画などでは、積極的に使いたい機能だ。

バスエクステンションをOFFにした状態で、今度はサウンドモードから「ムービー」をONにしてみる。すると、音の広がる空間がさらに拡大し、映画の空間に包まれている感覚がより強くなる。音にメリハリがつき、よりドラマチックなサウンドになる。いわゆる「おいしい音」になるので、この機能も一度聴けば、積極的に使いたくなるだろう。

クリアボイス機能をONにすると、管制塔からの無線の声がクッキリシャープになり、なるほど聞き取りやすい。映画を字幕で楽しむ人にオススメだが、それだけでなく、例えばテレビ番組で、沢山の芸人が喋るようなシーンでも、それぞれの声が聞き分けやすくなるだろう。

音楽コンテンツも聴いた。サカナクションのライブ「SAKANAQUARIUM 2019 "834.194" 6.1ch Sound Around Arena Session -LIVE at PORTMESSE NAGOYA 2019.06.14-」から、「さよならはエモーション」を再生する。こちらもAtmosサラウンド収録だ。

音の広がりが広大なので、ライブ会場の広さが音からしっかりと伝わってくる。その空間に、冒頭の楽器やスネアドラムの低域などが鋭く切り込んでくる。音場が広いのに、そこに定位する音像はシャープで、ドラムの音像が不必要に膨らまず、タイトさを維持しているのがヤマハらしい。

バスエクステンションを有効にすると、ベースの音像の輪郭が肉厚になり、音楽に安定感が増す。ビートが腹に響くようになり、音楽の波に身をゆだねているようで気持ちが良い。

バスエクステンションをONにしても、中高域のクリアさは低下せず、むしろ音像の輪郭はコントラストが深まり、明瞭さがアップしたようにも聴こえる。夜間などの小音量再生時には、バスエクステンションを活用するといいだろう。

SR-B40A

同じ作品を、SR-B40Aでも聴いてみよう。

音の広がる範囲は、ワンバーのSR-B30Aと大きくは変わらない。ただ、サブウーファーが追加された事で低域の沈み込みの深さや、中低域の張り出しの強さなどがしっかり出ており、サブウーファーの効果が実感できる。

ファーストマンの成層圏を飛ぶ「グォオオ」という低音も、足の裏にビリビリと響くような重さとパワーがある。SR-B30Aも、ワンバーだけで十分な満足感は得られたが、SR-B40Aの重低音に包まれると「これぞホームシアターの醍醐味だ」とも感じる。なお、SR-B40Aもバスエクステンションは搭載しているが、使わずとも十分な低音が出ているので、個人的にはOFFでもいいかなと感じた。

SR-B30Aよりもパワフルな低音が出ているのに、「ギシギシ」という機体のキシミや、風切り音の鋭さ、クリアさが低下しないのも良くできている。サウンドの重心が下がる事で映画に“凄み”が増し、放り出されそうになる宇宙空間の恐ろしさが、効果音やBGMから伝わってくる。

スラスターを噴射して機体の方向を変える時も、SN比の良い静かな空間に、「ブシュッー! 」と鋭い音がトランジェント良く響き、その背後にある無音の空間の深さに驚く。音によって、宇宙の広さ、闇の恐ろしさが描写されるため、主人公が感じる焦りや恐怖により共感できる。

音楽作品は「エリック・クラプトン/レディ・イン・ザ・バルコニー:ロックダウン・セッションズ」のBlu-rayから、「アフター・ミッドナイト」を再生。

アコースティックベースの豊富な量感が、グッと押し寄せてくる。この肉厚さは、やはりサブウーファーが別体だからこそ。肉厚で張り出す低域に負けず、クラプトンのギターは繊細に描写され、弦が震える細かい音がハッキリと聴き取れる。低域をサブウーファーに任せた事で、バースピーカーが受け持つ帯域が減り、中高域の再生に専念できることで、中高域のクオリティアップにも繋がっているのだろう。

エントリーでもDolby AtmosとTRUE SOUNDが味わえる

SR-B30Aが実売約3万円、SR-B40Aが約5万円と、価格はリーズナブルだが、前述の通り、サウンドは本格派。「テレビの内蔵スピーカーより音が良い」という次元ではなく、本格的なホームシアターサウンドとして、Dolby Atmosの広がり、包囲感、音像の明瞭さといった醍醐味をしっかり味わえるのが嬉しい。

2機種で迷っている人は、音の傾向は非常に似ているので、純粋に“予算”と“サブウーファー設置を許容できるか否か”で選ぶといいだろう。

クリアボイスやバスエクステンション、サウンドモードも完成度が高く、またリモコンのボタンでダイレクトにON/OFFできるので頻繁に活用できる。これならば「いろんなモードがついてるけど、結局使わなくなっちゃった」という事もないはずだ。

また、これらの機能を使っても、音が不自然に歪んだり、不快になったりせず、情報量の多いナチュラルなサウンドを維持しているのもヤマハのサウンドバーらしい。

エントリーモデルなので、音のビームが反射するなど、驚くような機能は無い。しかし、手が届きやすい価格で、しっかりとしたサウンドを再生し、デザイン的にも満足度が高いという、「Atmos対応エントリーサウンドバーのお手本」のような完成度の高さが最大の魅力だろう。そういった意味で、実にヤマハらしいサウンドバーだと感じる。

また、AVファンとしては、エントリー以外のモデルにも期待したいところ。山本氏は「もちろんこのモデルで終わりではありません」と頷く。「サウンドバー市場には様々な製品、価格帯がありますが、その中に、我々ヤマハのどんな製品があれば、お客様に選ぶのが楽しくなっていただけるかを考えています。ご期待ください」。

(協力:ヤマハ)

山崎健太郎