レビュー

foobarやAudirvanaなど、ハイレゾ再生ソフト使い始めの注目ポイント

 パソコンでのハイレゾ再生はハードルが高そう……そんな思いから、まだ利用に踏み出せていない人はいないだろうか? 確かに設定は必要だが、どのようなオーディオプレーヤーソフトを使うにせよ、要点さえ押さえていれば難しいことはない。

 また、製品付属ソフトにはない便利な機能を備えたものもあり、より快適なハイレゾオーディオライフを楽しめる。そこで、ハイレゾプレーヤーソフトとして代表的な「foobar 2000」と「Audirvana Plus」、「HQ Player」と「JRiver Media Center」という4つのソフトを使って、Windows/Macでの設定のポイントを解説していく。

USB DAC追加で高音質に再生。「ASIO」、「DoP」どちらの対応か確認

 パソコンでハイレゾ再生を行なう場合のマストアイテムが「USB DAC」。パソコン単体では再生できない、または音質劣化してしまうファイルも、USB DACを追加することで高音質なまま再生可能になるほか、搭載する高品位なDAC(デジタル-アナログ変換)チップによる処理などによる高音質化も図れる。

 ハイレゾファイルフォーマットとして増えつつある「DSD」の再生可否や性能はDAC製品ごとに異なるが、基本的にはメーカーが配布するドライバをインストールして(Macでは基本的にドライバ不要)、その後USBケーブルでPCと接続、オーディオプレーヤーソフトの出力先をそのUSB DACに指定する、という作業の流れは共通している。

 DSD再生に対応したUSB DACでは、Windows向けに「ASIO対応ドライバ」が提供されていることがある。DSDのネイティブ再生(PCMなどに変換せずそのまま再生する)には「DoP(DSD Audio over PCM Frames:ディオ―ピー/ドップ)」と「ASIO(Audio Stream Input Output:アジオ/エイシオ)」の2方式がある。

 簡単に違いを説明すると、Windows標準のオーディオ再生機構「WASAPI(Windows Audio Session API)」ではDoPを利用するが、ASIOの方がデータ効率に優れ、DACの処理能力をフルに引き出せるというのが特徴。ドライバをインストールするときに、ASIO対応かどうかを確認しておこう。なお、Macはシステム標準のオーディオ機構「Core Audio」の仕様により、DoPのみサポートするUSB DACがほとんどだ。

WindowsでUSB DACドライバをインストールするとき、ASIO対応かどうか確認しておこう(画面はティアック「HA-P5」使用時)

foobar 2000【Windows】

 定番ソフトの一つといえる「foobar 2000」は、Windows向けオーディオプレーヤーソフトであり、無償で利用できることが大きなアドバンテージ。コンポーネント(プラグイン)により機能を拡張できるなどカスタマイズ性が高く、適切に設定すればDSDを含むハイレゾ音源の再生にも活用できる。使いこなしかた次第では市販ソフトを凌駕する実力を秘めたソフトなのだ。

foobar 2000の再生画面。スペクトラムアナライザの有無など画面構成は自由に変更できる

 設定のポイントは「DSD」。USB DACのドライバがインストール済みであれば、FLACやWAVはデフォルトの状態でも再生できるが、いくつかのコンポーネントを追加しないことにはDSDネイティブ再生には至らない。現行バージョンのv1.3.10を例に、ASIO対応のUSB DACをセットアップする手順を解説しよう。

 必要なコンポーネントは「ASIO support」と「Super Audio CD Decoder(foo_input_sacd-0.9.8)」の2つ。前者はfoobar 2000 Webサイトの「Components」タブから、後者は「Super Audio CD Decoder」のページからダウンロードできる。それぞれ事前にZIPファイルを展開しておき、foobar 2000で[File]→[Preferens]を実行、現れた設定パネルの左上にある「Components」をクリックしよう。画面下部にある「Install」ボタンを押して前述した2つのコンポーネントを選択し、「Apply」ボタンをクリックすれば(その後確認のダイアログがいくつか表示される)、インストールは完了だ。

 次に、サウンドデバイスの指定を行なう。同じくPreferencesで[Playback]→[Output]の順に画面を開き、Device欄でUSB-DACのドライバ名(「DSD」と「ASIO」の両方が含まれているはず)を選択、さらに[Tools]→[SACD]画面でアウトプットモードに「DSD」を選択すれば、ASIO方式でのDSDネイティブ再生が可能になる。あとは、DSDなりFLACなりのハイレゾ音源を画面へドラッグ&ドロップして再生するだけだ。

Installボタンをクリックしてインストールするコンポーネントを読み込む
Applyボタンをクリックし、許可すると、コンポーネントがfoobar 2000に登録
USB DACのドライバ(ASIO対応)を選択する
アウトプットモードに「DSD」を選択する
Media Libraryに外付けドライブを登録しておくと、USBメモリや外付けHDD上の楽曲を再生するとき便利

foobar 2000
価格:無料
対応OS/推奨環境:Windows XP以降

Audirvana Plus【Mac】

 Windowsの定番がfoobar 2000とすれば、Macの定番は「Audirvana Plus」。FLACやWAVはもちろんDSDネイティブ再生(DoP)にも対応、iTunesライブラリ上の楽曲も直接再生できるので、これまで圧縮音源を中心に聴いてきたがこれからはハイレゾ、というユーザにも優しいソフトといえる。入手方法は開発元Webサイト経由のダウンロード販売のみ、決済後に送付されてくるファイルを認識させれば利用可能になる。

Audirvana Plusの画面。iTunesライブラリ上の曲も、このUIから直接操作できる

 OS XにおけるDSDネイティブ再生は基本的にDoPでの対応だが(少ないもののASIOドライバを提供するメーカーもある)、ドライバのインストールが必要ない点は大きなメリット。USB DACはケーブルで接続し電源オンすればシステムに認識され、あとはオーディオ再生アプリ側で出力先デバイスとして指定すればいい。

 Audirvana Plusも基本的にはこの方式で、環境設定パネルの「Audio System」タブでUSB DACを指定するだけでDSDや各種ハイレゾ音源の再生が可能になる。さらにNative DSD Capability欄で「DSD over PCM standard 1.1」を選択しておけば準備万端だ。

Audirvana Plusを初めて起動したときにUSB DACを接続していると、プルダウンメニューを操作するだけでセットアップできる
初回起動時に外付けドライブやiTunesライブラリを指定しておこう
次回以降の起動でUSB DACを変更する場合は、環境設定パネルのAudio Systemタブで作業

Audrirvana Plus
価格:74ドル(アップグレード価格は39ドル)
対応OS/推奨環境:Mac OS X 10.9以降(10.10以降を推奨)
Core 2 Duo以降の64bit CPUを搭載したMac、2GB以上のRAM(4GB以上を推奨)

Signalyst HQ Player【Windows/Mac】

 オーディオファンから高い支持を集める「Signalyst HQ Player」は、WindowsとMac、Linux(日本語版は非サポート)に対応するハイレゾ対応オーディオプレーヤー。一般的にはDAC側で行なう処理(ディザやアップサンプリングなど)をPCの高い演算性能を生かし正確に処理する、というコンセプトが特徴だ。幅広いオーディオフォーマットに対応しており、USB DACを用意すればFLACやDSDなどハイレゾ音源の再生も自在だ。

HQ Playerの画面。画面中央のプルダウンメニューで各種フィルタ処理やアップサンプリングを指示できる
再生方式に「ASIO」を選択すると、インストール済の(ASIO対応ドライバを持つ)USB DACが自動選択

 ハイレゾ再生を行なう場合、出力先デバイスにUSB-DACを指定する。メニューで[ファイル]→[HQPlayer設定]を選択し、現れた設定画面の再生方式欄で再生方式を指定しよう。ASIO対応のUSB DACを接続していれば、再生方式に「ASIO」を選択するとデバイス欄にUSB DACの名称が表示されるはずだ。DSDの再生を行なう場合、メニューで[ファイル]→[DSDIFF/DSF設定]を選択し、「DirectSDM」をチェックしておくこと。

 あとは、[ファイル]→[ライブラリ]を選択してライブラリに楽曲を登録すれば、ハイレゾ音源を再生できる。なお、HQ Playerの売りであるフィルタやディザなどの処理は再生中に変更できないため、再生開始前に画面中ほどのプルダウンメニューで変更しておこう。

DSDIFF/DSF設定画面で「DirectSDM」にチェックを入れる
ライブラリにUSBメモリなどハイレゾ音源が保存された領域を登録しておこう

Signalyst HQ Player
価格:16,473円(日本語版ライセンス)
対応OS/推奨環境:Windows Vista SP1以降、Windows 7、Windows 8/8.1(x64)、Windows 10(x64)、Mac OS X 10.9以降、Linux
WindowsはSSE対応CPUを搭載したマシンを推奨

JRiver Media Center【Windows/Mac】

 特徴的なUIが目を引く「JRiver Media Center」は、豊富なオーディオフォーマットに対応、ASIO/WASAPIの標準サポート(Windows版)により追加機能のインストールなしにDSD再生までこなせるメディアプレーヤーソフト。Mac版とLinux版も提供されており、対応するフォーマットなど機能は共通だ。

JRiver Media Centerの画面。日本語を含む各種言語で表示できる

 インストール後に言語設定([Tools]→[Languages]で日本語に変更か)を完了させたあとは、オーディオ信号の出力先としてUSB DACを登録する。[ツール]→[オプション]を選択し、現れた画面の左上で「オーディオ」を選択、オーディオデバイス行をクリックして接続中のUSB DACを指定する。

 DSDの再生を行なう場合は、設定欄にある「DSPと出力ファイル形式」を開き、出力エンコーディングにUSB DACの性能に応じた行を選択する。DSD 5.6MHz/ASIO再生に対応した製品であれば、「2xDSDネイティブ形式(ASIOと2xDSDに対応するDACが必要)」を選ぶことになるだろう。同じく設定欄にある「ビットストリーミング」を開き、「DSD」にチェックを入れれば準備は完了だ。

オーディオデバイスにUSB DAC(ASIOドライバ対応)を指定

 ハイレゾ音源は内蔵ストレージに保存するとはかぎらないため、ライブラリの追加設定も必要だ。[ファイル]→[ライブラリ]→[インポート]を選択、現れた画面で「自動インポートを設定」を有効にして次の画面でドライブ/フォルダを登録する。これで、USBメモリや外付けHDD上のハイレゾ音源を再生できるようになるはずだ。

「DSPと出力ファイル形式」を開き、出力エンコーディングにUSB DACの性能に応じた行を選択
ビットストリーミングの設定画面でDSDにチェックを入れる

https://www.jriver.com
価格:49.98ドル(単体)、69.98ドル(マスターライセンス)
対応OS/推奨環境:Windows Vista/7/8/10、Mac OS X 10.7以降、Linux

その他のソフト

AudioGate 4(Windows/Mac)

 コルグ製のソフト。最大の特徴は、同社DAC「DS-DAC-10R」接続時にDSD録音が行なえる点。DSD再生は5.6MHzまで、PCMは192kHz/24bitまで対応。Windows版はASIO対応。19,980円(DS-DACシリーズユーザーは無料)。

AudioGate 4

http://www.korg.com/jp/products/audio/audiogate4/

Amarra 3.0(Mac)

 Sonic Studio製のソフト。DSDは5.6MHz、PCM音源は384kHz/24bitまで対応。DSDは接続したDACの対応サンプリングレートに合わせてPCM変換再生。約10,905円~(7月25日時点)。Dirac Researchと共同開発したオプション「iRC」を追加すると、周波数特性の補正とインパルスタイミングの最適化も可能。

Amarra 3.0

http://www.sonicstudio.com/amarra/amarra.php

sMedio TrueLink+ Hi-Res Edition(Windows)

 DSD 11.2MHzまで、WAV 384kHz/32bitまで再生可能。WASAPI排他モードに対応する。USB DAC接続でDSD再生時にはDoPモードで動作する。Windowのタッチ操作にも対応したUIも特徴。1,500円。

sMedio TrueLink+ Hi-Res Edition

http://www.smedio.co.jp/soft/products/dlna/tl-hi-res/

海上 忍

IT/AVコラムニスト。UNIX系OSやスマートフォンに関する連載・著作多数。テクニカルな記事を手がける一方、エントリ層向けの柔らかいコラムも好み執筆する。オーディオ&ビジュアル方面では、OSおよびWeb開発方面の情報収集力を活かした製品プラットフォームの動向分析や、BluetoothやDLNAといったワイヤレス分野の取材が得意。2012年よりAV機器アワード「VGP」審査員。