レビュー

AbemaTVってこんな便利だった? オンデマンド&大画面対応の「Abemaビデオ」を活用

 2016年4月の開局以来、無料の映像配信サービスとして、着々とその知名度を高めているのが「AbemaTV」だ。開局2年目となる2017年は、5月の「亀田興毅に勝ったら1000万円」、将棋・藤井聡太四段の連勝記録がかかった一連の対局、さらには元SMAPの3人による「72時間ホンネテレビ」など、幅広い視聴者を狙った番組をラインナップ。大きな盛り上がりを見せた。

「Abemaビデオ」のメイン画面(FireTV Stickでの表示例)

 ただ、AbemaTVと聞いて「番組表をベースとしたスケジュール配信」を連想する方は多いかも知れない。スマホで好きな時・好きな場所で見られるといっても、やっぱり忙しい時は忙しい。せめて、テレビ放送のようにレコーダで録画できれば……。

 実はその認識、半分正解で半分は間違い。「Abemaビデオ」を利用すれば、多くの番組を配信終了後でもオンデマンド視聴できるのだ。しかも、相当数のコンテンツが無料。2017年末には対応機種が一気に増え、大画面テレビでも手軽に見られるようになった。どんなサービスなのか、具体的にご紹介しよう。ポイントは、「有料契約しなくても、かなりのコンテンツが用意されている」、「テレビ対応の充実」だ。

スマホ・タブレット以外のデバイスでも「見逃し配信」

 まず最初に、Abemaビデオの概要を確認しておこう。サービスが開始したのは2017年4月。AbemaTV自体の開局は2016年の4月だから、だいたい開局1周年のタイミングで追加された新機能になる。ただ、当初はiOSアプリ/Androidアプリ/PCからしか利用できなかった。

こちらはPCのブラウザーで表示した「Abemaビデオ」

 Abemaビデオは、「Ameba TV専用の見逃し配信サービス」と考えればいいだろう。AbemaTVで配信された番組を、配信終了後にオンデマンドで視聴する事ができる。そして何より「結構な数の番組を無料で見られる」───ぜひこの点を頭の片隅に留め置いていただけると嬉しい。詳しくは後述する。

 さて、このAbemaビデオだが、2017年12月に対応機種が拡大。Fire TVシリーズ、Android TV、Apple TV(第4世代)でも視聴できるようになった。使い方も簡単。この3つのプラットフォームでは、すでにAbemaTVの視聴用アプリがリリースされているが、そのアプリの中からAbemaビデオ機能を呼び出せる。別のアプリを追加する必要はない。

Fire TV StitckやChromecast、Apple TV(第4世代以降)などがAbemaビデオに対応している

 ここではFire TVシリーズでの利用例を見ていこう。すでに世代を重ね、バリエーションも多いFire TVシリーズだが、今回は筆者の私物である2015年モデルのFire TV Stick使った。当時の販売価格は4,980円(税込)だったが、現在は同価格の後継モデルが出ている。

FireTV Stickのアプリストアから「AbemaTV」を選択
アプリをインストール

 まずAbemaTVアプリをインストールし、起動。AbemaTVの番組が流れ始めるたらリモコンの上ボタンを1回押す。すると番組表などのメニューと並んで「ビデオ」が表示されるので、選択するだけだ。操作で難しい部分はほとんどない。

番組視聴中に上キーを入力するとメニュー画面に移行する。つまり、AbemaTVの視聴画面からほぼダイレクトにAbemaビデオへ移行できる

 コンテンツのジャンルは全部で20。ニュース、バラエティ、アニメ、ドラマ、韓流・華流、リアリティショー、ドキュメンタリー、麻雀、将棋、釣り、格闘、ヨコノリ、サッカー、ゴルフ、趣味、LDH、MUSIC、スポーツ、ヒップホップ・ラップ、K-POP・バラエティとなっている。

 再生画面も非常にスムーズだ。一時停止、30秒スキップ、10秒戻しはもちろん、リモコンの早送り・巻き戻しボタンもきちんと機能してくれる。

コンテンツを選択したところ
こちらが視聴中の画面。トリックプレイは一通りできる

 AbemaTVは、スマホで見られるその気軽さが魅力なのは言うまでもない。ただ、Fire TVを使って大画面テレビに映し出してみると、やはり見やすさはグッと増す。さらにAbemaビデオに登録されている作品なら、視聴にあたっての時間の縛りもなくなる。興味があっても時間がない、あるいは、せっかく時間をとるなら大画面で見たい──そういったニーズを上手く汲み取ってきた印象だ。

 なお、Abemaビデオでは、スマホ版・FireTVシリーズ版含めて、コメント機能は存在しない(読む・書く共に)。ここは、スマホ版でのAbemaTVリアルタイム視聴とは明確に異なるポイントだ。

AbemaTVのオリジナルバラエティは番組はだいたい無料

 さて、こうやって実際にAbemaビデオに触れてみると分かるのだが、無料で見られる作品は本当に多い。特に、AbemaTVのアイデンティティとも言えるオリジナルバラエティ番組はことごとく無料である。

 具体的な例をみてみよう。年末年始の注目番組として大プッシュされた「朝青龍を押し出したら1000万円」は、2017年12月31日の20時00分から1月1日の00時45分にかけて配信された。まず、この番組は30日間の無料見逃し期間が設定されている。この期限が切れるまでであれば、2018年の1月下旬でも、5時間近い番組の全編を余すところなく無料で楽しめる。

 また、この番組の予告編や、試合部分を5~6分ずつにまとめた短尺動画が10本、Abemaビデオに登録されている。こちらの動画については視聴期限の設定がない。未来永劫ずっと見られる……という保証はないが、実用上はこれで十分だろう。

「朝青龍を押し出したら1000万円」の番組概要。配信から約1週間後の時点での情報なので、まだ24日間見逃し配信期間が残っている
こちらが見どころを数分単位で抜き出したビデオ。こちらには視聴期限が設定されていない。将来的に削除される可能性はあるが、当面は問題なく見られるだろう

 放送からすでに相当の時間が経過した作品はどうだろうか? 2017年のゴールデンウィークに配信された「亀田興毅に勝ったら1000万円」の本編にあたる5時間特番は、当然もう所定の無料見逃し配信期間を過ぎている。しかし、2018年1月7日の段階でもAbemaビデオで完全に無料で視聴する事ができる。もちろん他の作品と同様、ユーザー登録も要らない。

 また、週1回配信のレギュラーバラエティ番組も、多くが無料見逃し配信の対象になっている。バナナマンの日村勇紀による「日村がゆく!」は、これまでに放映された30回分以上のバックナンバーがやはり無料で見られる。

「亀田興毅に勝ったら1000万円」は2018年1月の時点でもほぼ全編、無料視聴できる
「日村がゆく!」もレギュラー版が30回分以上、無料視聴OK

 確かに、Abemaビデオには月額960円のプレミアムプランがある。これを契約すると見逃し視聴できる番組はグッと増えるのは事実だ。新日本プロレスの録画中継などはAbemaTVでまず無料配信されるが、その後、Abemaビデオでオンデマンド視聴したいとなると、プレミアムプラン登録が必須になってくる。

 ジャンル的にいうと、バラエティ以外はプレミアムプランの出番が多い。例えばアニメだと、1月の新作「ポプテピピック」あたりは、AbemaTVの通常枠で繰り返し再配信(それこそ朝・昼・夕・夜・深夜の1日5回とか)されているが、オンデマンドで見たいとなるとプレミアムプランが要る。

 ちょっと変わった体制なのが「ライムスター宇多丸の日曜Abemaロードショー」だ。これは週1回の映画枠なのだが、その作品本編の見逃し配信は一切ない(プレミアムプランを契約していてもダメ)。ただし、本編の前後につく映画解説コーナーは無料見逃しの対象で、バックナンバーも揃っている。

アニメ作品の一覧。「無料」のアイコンがないものは、視聴にあたってプレミアムプランが必須
「ライムスター宇多丸の日曜Abemaロードショー」は、映画本編は見逃し一切なし。だが解説コーナーはどれも無料になっている

 こんな具合なので「Abemaビデオではどれくらいの番組が見られるの?」と質問された時、どう答えればいいかは結構難しい。「全部無料」ではないし、かといって「有料プランを契約すれば全部」でもない。けれども「一部の番組」という表現では、その充実ぶりとはそぐわない。

 結果、これらを総合すると、「ジャンルにもよるが、結構な数が無料」というのが順当な表現ではないだろうか。例えば「バラエティ」のジャンルだけで128番組が登録されており(2017年1月7日時点)、さらに番組ごとに数十本のエピソードが登録されているケースはザラ。しかも、それが全部無料だ。これだけでもう「結構な数」という表現はできると思う。

Abemaオリジナルの番組はとにかく豊富。これらを中心に見たい人なら、プレミアムプランがなくても問題ない

ちょっと独特な有料プラン契約手続き

 有料のプレミアムプランの契約方法を確認しておこう。初回は1カ月無料で試せるが、その大前提として「手続きに利用したデバイスによって、決済手段が変わる」。例えば、PCブラウザーから手続きする場合は、メールアドレスとクレジットカードの登録が必要となる

PC版からプレミアムプランを申し込む時は、メールアドレスが必要

 これに対して、FireTV Stickから手続きする場合は、Amazonのアカウント(に登録されているクレジットカード)を使って課金するし、iOS端末ではApp Storeのアプリ内課金機能を利用する事になる。ただし、どれか1つで課金手続きをすれば、アカウント連携機能により、別のデバイスからもプレミアムプランを利用できる。

FireTV Stickから申し込むと、自動的にAmazonアカウント決済を選択する事になる

 筆者は個人的にGoogle Playで課金機能をよく利用しているので、今回もGoogle決済を選択。つまり、AndroidスマートフォンにインストールしたAbemaTVアプリから手続きした。

(左)Androidアプリ版のプレミアムプラン申し込み画面。(中央)Google Playでアカウント決済。(右)Google Playの「定期購入」画面から課金状況を確認できる

 これをFireTV Stickを適用するにはどうすればいいのか? まずはAndroidアプリの設定画面で「アカウント情報」を開く。すると、14桁のランダムな英数字がIDとして表示されるので、最大10桁のワンタイムパスワード(10分間)を任意に設定する。このIDとパスワードをFireTV Stickの「デバイス連携」画面で入力。認証が完了すれば、どちらの端末でもプレミアムプランで番組を視聴できる……という流れだ。

「アカウント情報」からIDを取得し、ワンタイムパスワードを設定。この値を別デバイスから入力すると、プレミアムプランの契約状態をコピーできる

 AbemaTVは、視聴にあたって一切ユーザー登録を不要としており、そこが分かり易さに繋がっている。逆に言うと、アカウントの概念が薄く、マルチデバイス利用時にやや面倒が増える。ここはなかなか二律背反な部分と言える。

 ちなみに、アカウント連携自体はプレミアムプラン契約と関係なく利用できる。番組のお気に入り登録に相当する「マイビデオ」設定をデバイス間で共有できるメリットもあるので、一度お試しあれ。

こちらがFireTV Stickにおける設定画面
連携が無事完了すると、設定画面の表記も変わる

 無料でもかなりの番組が楽しめるAbemaビデオだが、新日本プロレスの過去放送分や、アニメの最新話“以外”も含めて、オンデマンドで見たい、という場合は、プレミアムプランの契約を検討したい。

Android TV&Apple TVでも視聴OK

 今回はFireTV Stickでの利用法を中心にみてきたが、 Android TVおよびApple TV(第4世代以降)でも、ほほ同じ感覚でAbemaビデオを利用できる。

こちらはAndroid TV版のAbemaビデオ視聴画面。FireTVシリーズと比べてもほとんど差がない
メニューの呼び出しも一緒。AbemaTV視聴中に上キーを押せばOK
アプリのインストールはGoogle Playストアから行う
こちらはApple TV版
メニューの表示などが多少異なる
アプリのインストールはやはりApp Storeから

「録画したかった」「できれば無料で……」という人こそ、使ってみてほしい

 以上、Abemaビデオの使い方をここまで見てきた。冒頭でも述べたが、AbemaTVというと、どうしても開局時の印象……つまり「番組表に則った、スケジュールベースのネットテレビ局」という先入観をお持ちの多いかもしれない。

 ただ、実際のサービスをよくよく追ってみると、その怒濤のコンテンツ攻勢だけでなく、ソフトウェア面での進化ペースも凄まじい。AbemaTVのコンセプトとはまるで真逆のAbemaビデオが追加された事自体、ある意味驚きだ。スマホ版アプリの機能改善も着々と進められていて、2017年11月にはモバイル通信時のパケット量を大幅に抑える「通信節約モード」も追加された。

 今回の本題であるAbemaビデオは、繰り返しになるがAbemaTVの意味を根っこから覆すようなサービスだ。ただ、ユーザーにとってのメリットは明らか。もし2016年のAbemaTV開局時にアプリをちょっと使ってみて、「便利だけど、やっぱり録画したい」と感じてそれっきり縁がないという方は、ぜひ一度アプリに触れ直してみてほしい。印象がまったく変わるはずだ。

 また「Abemaビデオって有料でしょ? 」という方にも、やはり一度アプリに触ってみてほしい。無料プランでも、とにかく沢山のコンテンツをフルに楽しめるからだ。

 特に、Fire TV、Android TV、Apple TVをすでにお持ちの方は、ぜひこれらの機器を使って、大画面で番組を楽しんでみてほしい。どの番組も、スマホで十分楽しめるわけだが、一方で大画面表示に十分耐える、しっかりとした画質で配信されていることに、驚かされると思う。ぜひAbema TVだけでなく、Abemaビデオも体験してみてほしい。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。