レビュー

マーベル好きは見放題Disney DELUXEに入るべき? スター・ウォーズ&ピクサーも

大手の新規参入が未だ絶えない定額制動画配信サービス(SVOD)。競争が激しすぎるその戦場へ、また新たな勢力が加わった。ディズニーである。ミッキーマウスはおろか、いまやスターウォーズ、そして現代エンタメのトップランナーたるマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)を傘下に擁する巨大ブランドが、果たしてどんなサービスを用意してきたのか? 詳しく見ていこう。

ディズニーの有名作品が勢揃い。しかも、それだけじゃない

今回紹介するサービスは「Disney DELUXE(ディズニーデラックス)」だ。先月3月7日に発表され、同月26日にはサービスをスタートした。価格は月額700円。順に解説していくが、はっきり言ってコストパフォーマンスがとてつもないことになっている。あらゆる世代・世帯にオススメできるが、個人的には「マーベル作品にほんのちょっとでも興味があるなら今すぐ契約すべき」と断言したい。

実際のサービスにログインして、配信作品のラインナップを確認してみよう。「ディズニー、ピクサー、スター・ウォーズ、マーベルの4ブランドがそろう唯一のディズニー公式動画・エンターテイメントサービス」という触れ込みのとおり、とにかく沢山の映像コンテンツが揃う。

Disney DELUXEはマルチデバイス対応。この画像はPCで映像配信用ページ「Disney THEATER」のメイン画面

まずは「ディズニー」ブランドの長編作品だが、世界初の長編アニメーション映画とされる「白雪姫」を筆頭に、「ピノキオ」、「ファンタジア」、「ダンボ」、「バンビ」、「シンデレラ」、「ふしぎの国のアリス」などのレジェンド級作品がズラリと揃う。

「白雪姫」(1937年)のような不朽の名作はもちろん用意

時を下って1980~90年代の作品となってくると、今度は「リトル・マーメイド」、「美女と野獣」、「アラジン」、「ライオン・キング」、「ヘラクレス」。しかし、まだこれだけでは終わらない。2000年代以降の「リロ・アンド・スティッチ」、「塔の上のラプンツェル」などが続き、そして大ヒットの記憶が今なお鮮明に残る「アナと雪の女王」も、当然のようにラインナップされている。

この事実からも分かるように、Disney DELUXEはクラシック作品限定の配信サービスではない。「シュガー・ラッシュ」、「ベイマックス」、「ズートピア」、「モアナと伝説の海」なども月額700円の範囲でキッチリと視聴できてしまう。

2010年代後半に制作された新しい作品も多い

ただ、これでもディズニー作品の「長編アニメーション作品」だけである。短編アニメや実写長編も含むとさらに多い。目立つところでは「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの1~4作目(最新作「最後の海賊」は未配信)、「トロン」、実写版「シンデレラ」、「ナショナル・トレジャー」(全2作)などが配信対象だ。

実写作品も相当数ある

乗り遅れた人も安心!? マーベル作品の一気見にどうぞ

「ピクサー」ブランドの長編は、配信されていない作品の方がむしろ少ないほど。ラインナップの中で、最も制作年代が新しいのは「リメンバー・ミー」だが、「トイ・ストーリー(第1~3作)」、「ファインディング・ニモ」、「カーズ(第1~3作)」、「Mr.インクレディブル」などが楽しめる。

ピクサー作品の数もエラいことに

「スター・ウォーズ」作品シリーズは、近年制作された「最後のジェダイ」、「ローグ・ワン」が配信中。旧シリーズもほとんど楽しめるが、なぜかオリジンたる「エピソード4/新たなる希望」はラインナップから外れている。ここは少し謎な部分だ。

「スター・ウォーズ」の配信ラインナップ。アニメシリーズを入れるともう少し増える。ただしエピソード4は未配信

そして「マーベル」ブランドである。アメコミ原作タイトルの実写映画を、一連のシリーズとして展開する「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」は2008年にスタートし、すでに20作品以上が劇場公開されている。そのどれもが国際的に大ヒットをとばしている。

Disney DELUXEでは現在、MCUの中から16の長編がラインナップされている。逆に配信されていないのは現在まだ劇場公開中の「キャプテン・マーベル」以外では、やはりソフトが発売されて間もない「アントマン&ワスプ」と、あとは「スパイダーマン:ホームカミング」くらい。

またMCU最初期の「アイアンマン」や「インクレディブル・ハルク」もなぜか配信されていないが、逆にこの2作はAmazonプライム・ビデオなど競合SVODでも比較的よく見かける。なにか契約の都合などがあって、Disney DELUXEに含まれていないのかもしれない。

一方で、2018年公開の「ブラックパンサー」、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」は、Disney DELUXEの契約だけで見れてしまう。どちらも作品評価が高く、まさに2010年代を代表するエンタメ作品でもある。この2本だけを見るために、Disney DELUXEに加入してもいいほどだ。それで好みに合わなければ1カ月で退会すればいい。1年縛りなどの解約制限はない。

筆者が最も驚愕したのが、このマーベル作品のラインナップ。Huluが期限限定で拡充するケースはあったが、まさか「ブラックパンサー」、「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」までもが……。

筆者の周辺では「MCU作品に興味はあるけど、シリーズ途中から見るのはちょっと……」という声をよく聞く。確かに20本以上の映画を今から見始めるのは、心理的ハードルが高い。

MCU作品は脚本作りがしっかりしており、どの作品も単体でそれなりに話をまとめ、かつ副次的にシリーズとしての連続性を維持している(と個人的には考えている)。気になる作品があれば、前作がどうのとあまり気にすることなく、素直に見れば良いとは思う。

ただ、そういったモヤモヤを抱えている人にこそ、Disney DELUXEを試してほしい。MCU作品は他のSVODではほとんどラインナップに組み込まれていないし、仮にオンライン配信版を単体レンタルしていくと、1本400~500円×約20本で1万円近い出費になる。それが月額700円でほぼ完全にキャッチアップできるのだから、これほどいいことはない。MCUの布教に熱心なファンなら、自分がDisney DELUXEを契約するのもいいが、周りを説得するための材料としてもうってつけだろう。

我が魂の一作「キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー」も。「ウィンター・ソルジャー」、「シビル・ウォー」の後にこちらを見ると、キャップへの思い入れが倍化することうけあい

携帯電話キャリアに関係なく、誰でも加入OK

コンテンツのラインナップと価格面だけでも相当優れているDisney DELUXEだが、視聴環境もまた最新トレンドをきっちり抑えている。

まず大前提として、Disney DELUXEはNTTドコモとディズニーよる共同サービスだが、エンドユーザー(視聴者)がNTTドコモの携帯電話を契約しているかどうかに関係なく、利用できる。auやソフトバンクのスマホを使っていても問題なし。

加入にあたっては「dアカウント」と「ディズニーアカウント」をそれぞれ取得し、関連付けを行なう必要がある。どちらも無料で取得できるし、前者は「dポイントクラブ」、後者はディズニーリゾードの入場チケット購入などにも使えるアカウントなので、持っておいて損はない。

「Disney DELUXE」のスマホ版公式サイト
申し込みはNTTドコモのサイトから行なうが、ドコモの携帯電話を契約している必要はない。dTVなどと同様、キャリアフリーのサービスだ

Disney DELUXEは映像配信以外にもいくつかのサービス(アプリ)が使える、総合エンタメサービスという位置付け。中でも映像配信サービスは「Disney THEATER」という名称になっていて、アプリも専用のものがある。もし、どのアプリをダウンロードしていいか迷ったら、とにかく「Disney THEATER」という言葉を思い出してほしい。

筆者の場合、メインで契約しているスマホはauのGalaxy S8。Disney THEATERアプリはGoogle PlayからダウンロードすればOKだ。もしiPhoneであれば、App StoreからやはりDisney THEATERアプリがダウンロード可能だ。

NTTドコモ加入者であれば、利用料は携帯電話代金との一括請求。筆者はau回線から使っており、クレジットカード支払い
手続きの途中で、dアカウントとディズニーアカウントの連携を行なう。画面の指示に従ってID(メールアドレス)とパスワードを入力するだけだ
手続き完了。ドコモの携帯電話を使っていれば必要なアプリが自動インストールされるが、もちろんそれ以外の端末であっても、手動でアプリをダウンロードすれば良い。映画を見たいときはまず「Disney THEATER」のダウンロードを
Disney THEATERのメイン画面

アプリの使い勝手はごくオーソドックスなもので、サムネイルから作品を選び、視聴ボタンをタップするだけ。画面下のシークバーから再生位置を自由に調整できるし、30秒単位のスキップ/逆スキップも1タップで行なえる。

映像視聴は基本的に横画面限定
シークバーをドラッグすると、サムネイルが表示される

また、非常に多くの作品で音声を英語版・吹替版から選択できるのも良い。作品数があまりにも多いため、全てを調べることはできなかったが、著名作を中心に約20本の作品を任意にピックアップして確認したところ、全てで英語音声・日本語音声が用意されていて、さらに英語字幕・日本語字幕の有無を視聴オプションから選択できた。

洋画作品において、日本語音声の吹替版が用意されているかどうかは、SVODのカラーがハッキリでる部分だ。Netflixは相当力を入れているようだが、Amazonプライム・ビデオは字幕版だけの公開となっているものが目立つ印象だ。

ただ、老若男女問わず幅広く作品に親しんでもらうためには、字幕版・吹替版の両方があったほうが良いのは確実。このあたりはディズニーの底力を感じさせる。なお、「アナと雪の女王」は英語音声版のみの公開となっていたが、これは出演声優の薬物スキャンダルによるごく例外的な処置だろう。今後何かしらの形で日本語音声版の公開が再開するものと予想される。

ほぼ全ての作品で英語音声・日本語音声が用意されているようだ

画質についても全く申し分がない。スマホ版Disney THEATERアプリでは全3段階のストリーミング品質設定が用意されているので、任意に選べば良い。

Disney THEATERアプリ唯一の欠点は、作品のダウンロード保存ができず、常にストリーミングでの視聴が絶対となる点だ。最も低い画質に設定した場合でも、1時間あたりの通信量が約0.6GBになるとされている。外出先で視聴したい、あるいは自宅にWi-Fiがないというユーザーの場合、やや躊躇するところではあろう。市場を見回しても、決して珍しい機能ではないだけに、将来の対応を期待したい。

ストリーミング品質は3種類から選択できる。ダウンロード保存できればなお良かった

テレビ対応もほぼ完璧

とはいえ、Disney DELUXEを契約するのなら、是が非でも自宅のテレビを活用すべきだ。スマホの小さな画面は比べものにならない迫力で映像を楽しめる。

実際、テレビへの対応は手厚い。サービス開始の初日から、FireTV、ChromecastはおろかApple TV、Android TVにも対応している。このうちどれか1つとか、せいぜい3つに対応するSVODが多い中、その当初から4つ全部に対応していることには驚いた。

Fire TV版「Disney THEATER」のメイン画面
アプリはFire TV用のアプリストアにて公開されている
アプリへのログインは、PCかスマホでDisney THEATERのWebサイトを表示し、所定のキーコードを入力する仕組み(この画面はAndroid TV版Disney THEATERだが、Fire TVでも基本的に同じ)

PS4に対応していないとか、VRゴーグルなどで視聴できたらいいのに……という事も言えようが、現状の日本においてはこれら4大デバイスをサポートしていれば十分だと筆者は考える。

テレビ視聴時の操作性については、筆者が所有するFire TV Stickの第2世代モデル(2017年発売)で試してみた。なお、FireTV Stickの対応についてサービス開始後に情報が訂正され、第1世代モデルには非対応と明言されたので注意してほしい。

再生画面の下部。上下左右キーで画面上のボタンを選び、操作する。シークバーも利用可能

シークバーにカーソルを合わせ、リモコンの左右キーを1回押しするとそれぞれ10秒送り・10秒戻し。長押しし続けると、どんどん早送り・早戻しのスピードが上がっていく。左右キーを放すと、まもなく再生が再開する。

一方、リモコンの早送り・早戻しボタンを1回押すと、それだけで早送り・早戻しが継続する。同じボタンを押すごとにスピードが2倍・4倍・8倍・16倍・32倍・64倍と上がっていく。再生ボタンを押すと、通常の再生に戻る。

そして、どちらのトリックプレイ中でもシークバー上には常にサムネイルが表示される。このおかげで、お気に入りのシーンを探しやすい。

TVアプリにおいても、トリックプレイ時はサムネイルが表示される

映像の精細さ、トリックプレイ時の待ち時間などは通信回線の品質にもよるだろうが、光ファイバーを引いている我が家では満足のいくもの。画質はフルHDとのことだが、それを十分感じさせる映像であることが確認できた。

Disney DELUXEでは、1つのアカウントに対して最大5台のデバイスを登録しておき、そのうち4台までで同時に映像を視聴できる。これだけあれば、親子世帯でも難なく、好みの作品を自由に楽しめるだろう。

作品概要画面。ここからお気に入りの登録ができる
お気に入りの一覧表示画面

知名度抜群の「ディズニー」参入で、サブスクが変わる?

本稿の執筆にあたって、自宅のテレビで「アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー」をじっくりと見た。この作品が劇場上映されたのはわずか1年前の2018年4月。もちろんDVDで再生した訳ではない。わずか月額700円のサブスクリプション(サブスク)サービスで、いわゆるハリウッドメジャー作品の中でも、特にど真ん中のエンタメ作品を、ストリーミングで見れてしまう。2000年代前半、ブロードバンド回線の普及前夜から映像配信の取材を続けてきた筆者としては、改めて「時代は変わったんだな……」と感心するばかりだ。

動画配信市場全体の動向を見ると、あのアップルが今秋には「Apple TV+」を日本で開始すると発表済みだし、またディズニーはさらに別の「Disney+」を11月に米国でスタートさせる。市場の勢力図がどう動いていくか、全くもって未知数だが、SVODが社会に一層普及していくのは間違いないはずだ。

物理メディア不要、1万円を大幅に切るFire TVで、しかもネットは無線。最新クラスのコンテンツが月額700円のサブスクに含まれる。いやはや凄い時代だ

他社の定額配信サービスを見ると、Netflixなら「レディ・プレイヤー1」が見られるし、Amazonプライム・ビデオにも「ジュラシック・ワールド/炎の王国」、「ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書」のような新しい作品が並んでいる。SVODそのものがここ数年で爆発的に伸長し、ITに詳しい人であれば、いまや珍しいものではないと感じるかもしれない。

そうした中で、日本人にとって知名度100%に近いであろうディズニーが、これだけのコンテンツを揃えて新たに参入した意義は大きい。「サブスクって何?」という人や、「作品ごとならレンタルまたは購入するが、定額制には躊躇していた」人も、“ディズニー/マーベル/スター・ウォーズ/ピクサーが好き”というシンプルな動機で、使い始めるきっかけになるのではと思う。

今回始まったDisney DELUXEの魅力を一言で表すなら、とにかく「コンテンツのラインナップ」だろう。絶対的人気を誇る4つのブランドが揃い、そして実際の作品数も莫大だ。ブランドの方向性もそれぞれ違っていて“かぶり”が少なく、まさに「全世代で楽しめるSVOD」と言える。Disney DELUXEで自分の生活がどう変わるのか。初回31日の無料制度なども活用して、ぜひ考えてみてほしい。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。