レビュー

君は知っているか!? 「LD」を四半世紀ぶりに再生してみた

“絵の出るレコード”のキャッチフレーズも使われたLD

これを読んでいる方の中で、「LD(レーザーディスク)」という言葉を知っている人はどれだけいるのだろう。

少し前、とあるテレビ番組のアンケート結果を切り取ったツイートが一部で話題になったことがあった。そのアンケートの内容とは、オジサン世代なら知っているであろう言葉を10代の若者に問い、言葉の認知度を確かめるというもの。で、その結果はというと、「テレカ」や「ワープロ」、「赤チン」といった言葉を抑え、「LD」が栄えある認知度0%の栄冠に輝いたのである。

あれはもう40年以上前のこと。当時、保守的ともいえるピュアオーディオの世界と、登り坂だった映像技術が融合し、高画質な大画面を高音質なサラウンドサウンドとともに楽しむオーディオビジュアル(AV)が誕生した。

そんな時期に“絵の出るレコード”というキャッチフレーズで登場したLDは、ホームシアターの黎明期を支える記念碑的なメディアになった。AV好きでなくても、当時を過ごしたことのある世代なら、吉幾三が「レーザーディスクは何ものだ?」と歌ったのを憶えていることだろう。それくらい、LDは一世を風靡したわけだ。

ただ、LDプレーヤーの出荷は2009年に終わってしまったし、映像メディアとしてはもっと前……2000年頃には既にAVの主役から退いていた。

今の若者がLDという言葉を知らないのは当然だし、LDプレーヤーやソフトをまだ手元に残している古参のAV好きでさえ、そのほぼ大半は、もう何十年もLDを再生していないと思われる。かくいう僕も、最初のシアターが出来上がる直前……1998年頃を最後に、本格的にLDを再生した記憶が無い。現実的には、LDは名前だけでなく、画音もほぼ忘れ去られたメディアなのだ。

誰もやらないニッチな事に挑戦するのが、僕の身上。このままLDが、人類の記憶から消えていってしまうのだろうなとか考えていたら、何だか無性にムズムズしてきた。「久しぶりにLDが見たい……」。

というわけで今回は、AV Watchでもう二度と取り上げられることはないであろう絶滅メディア(?)のLDを蘇らせるべく、手持ちプレーヤーのレストアとおよそ四半世紀振りの再生に挑戦してみた。

LD再生の難しさとLDのおさらい

とはいえ、ハード、ソフトともに進化の速いAVの世界にあって、過去の遺物であるLDをこの時代に再生するのは、実はかなり困難なことなのである。

LDを観るためには、要するに当時の再生環境を再現すればいいのだが、いざ実際にやろうとするとそう簡単なことではない。少なくともまったく同じ機器をそろえるのは不可能に近いので、映像のコンバートやメディアの入れ替えなど、あの手この手を使って、再生環境を疑似的に再現するしかないのだ。

LDプレーヤーとLDソフトが手元に残っていることが前提としても、2つのハードルがある。ひとつは、LDプレーヤーが正常に動作していること。当たり前だが、ソフトを正常に再生できないことには始まらない。もうひとつは、コンポジットビデオ信号を表示できるディスプレイがあること、もしくはコンポジットビデオ信号をHDMIに変換できること。このどちらかができないと、プレーヤーが生きていても映像を観ることができない。

ちょっとここで、LDを軽くおさらいしよう。

LDは片面約60分、両面で約120分記録可能

LDは1970年代の初めに海外で開発され、日本では1981年にパイオニアから発売された。LDはいわゆる光学ディスクであるが、その形状はCDやDVDとは大きく異なるもので、直径は30cmもあって盤の厚みは2.5mmある。信号の記録面は両面で、コンポジットビデオというアナログの映像信号を片面約60分、両面で約120分記録できる。2時間を超える映画だと2枚組で3面に渡って収録されていた。

当時、レーザー光線を用いて盤面に非接触で信号を読み取るというLDはAVの新時代を象徴する存在だった。光学ディスクは形状を変えてCDやDVD、Blu-rayとして今でも現役であり、その先駆が実はLDなのである。

LDプレーヤーの初号機が発売されたのは1981年で、翌年のオーディオフェアは“レーザーディスクまつり”の様相を呈した。その後、ハードとソフトの低価格化とクオリティの向上が並走し、1980年代後半から1990年代にかけてピークを迎えた。

しかし、LDの栄華はそれほど長くは続かなかった。1984年にはLDに加えてCDも再生可能なコンパチブルプレーヤーが発売され、1996年にはさらにDVDの再生にも対応したプレーヤーも登場したが、デジタル映像の波には勝てず、その数年後にDVDにあっさりと天下を奪取されてしまったのだ。

LDは光学ディスクではあるが、映像信号はコンポジットという純粋なアナログ信号である。スペック的にはアナログ地上波テレビと同等だったわけで、デジタル映像でいうならVGA程度だ。つまり、画質の限界が早々にみえたわけだ。

さらに問題となったのが、プレーヤーへの機械的な負荷が大きかったこと。直径30cm、厚さ2.5mmで500g近い重さの分厚いアクリル盤を、毎分1,800回で高速回転させるというのは物理的に無理があり、プレーヤーの故障頻度が高かった。プレーヤーをお持ちの方であれば、再生中に本体に触れると、キャビネットが激しく振動しているのがわかるはずだ。

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パイオニア「DVL-H9」

それではまず最初のハードル、LDプレーヤーの復活に挑もう。我が家には2台のLDプレーヤー、ソニーの「MDP-911」とパイオニアの「DVL-H9」が残っている。

MDP-911は1988年発売のLD/CDコンパチプレーヤー。LDといえばパイオニアだが、ソニーも相当注力していて、1990年には本体重量30kgの「MDP-999」を発売している。MDP-999はLD史に残る名機(狂機?)といわれているが、MDP-911は999のベースとなったモデルであり、本体重量は18kgとMDP-999には及ばないものの、当時のソニーのハイエンド機だった。

DVL-H9の背面
天面

DVL-H9は1998年発売のLD/CD/DVDコンパチプレーヤーであり、パイオニアの最後のLDプレーヤーとなった。DVDの開発で得たその当時の最高の映像技術を投入した機種で、LDの画質はもちろん、当時はDVDも専用機をしのぐ高画質だといわれた名機である。

どちらのプレーヤーも長く休眠している。DVL-H9は3年くらい前まで、サブシステムで“CDプレーヤー”として使っていたものの、ある日突然壊れてしまってシステムから外したのだが、いつか直そうと思ってずいぶん経ってしまった。ちょうどいい機会なので、まずはDVL-H9の修理にトライしてみる。

ドライバーでネジを外す
天板を外すと、ドライブが現れる

当初は、ローディング関係のベルト切れかなにかで、簡単に直るとタカをくくっていたのだが、そうは問屋が卸さない。電源コードをつなぐとスタンバイにはなるものの、内部でモーター音などは全くしない。キャビを開けて目視点検をおこなったところ、ベルトは切れていないし、メカにも異常は認められない。どうやら電気回路の故障のようだ。なお、メーカー修理は2020年に完全終了している。

ピックアップメカ

僕の修理はアナログには強いがデジタルには弱い。DVL-H9は20年以上前の機種ではあるが、回路はほぼデジタルで埋め尽くされていて、基板には無数のLSIがひしめきあっている。仮にLSIの故障であれば全くお手上げだ。

奇跡的に、再生カウンターが動いた…!

しかし、コネクターの接触不良なんかも考えられるので、これまた無数あるコネクターを端から抜き差ししてみたところ、なんと突然動き出したのである。おお! と思ってLDを入れて再生ボタンを押したところ、ディスクが唸りをあげて回転し始めた。再生カウンターも正常に動いている。おお直った! まあ、コネクターの接触不良はアナログ回路でもよくあること。ピン数の多いコネクターなら十分あり得ることだ。

DVL-H9のメカはLDの両面連続再生ができるという優れものである。つまり盤を裏返さなくても、A面からB面へ続けて再生できるわけだ。

キャビを開けたままメカの動作を見たのは初めてなのだが、複雑でアクロバティックな動きをしている。ディスクの上下に渡されたU字型のレールの上を、まるでとしまえんのコークスクリューみたいにピックアップが高速で宙返りする。実にかっこいいメカだ。この宙返りはCDやDVDでは不要であって、LDのときだけ作動するようになっている。LDのためにこんな複雑で精緻なメカを作ったとは、LDにかけたパイオニアの情熱を感じて思わず胸が熱くなってしまう。

さて、直ったところで一旦電源を切ってキャビを閉めて再度電源を入れようとしたら、あれれ……。またもや電源が入らない。参ったなあ、と思いながら、もう一度キャビを開けて、再度コネクターの抜き差しなどしたのだが、今度はダメだ。その後、いろいろと悪あがきをしたのだが、メカが再度動くことはなかった。やはりLSIの故障みたいだ。ああ、残念無念である。

ソニー「MDP-911」

DVL-H9がだめならMDP-911の復活にトライするしかない。こっちは休眠期間がさらに長く、最後に使ったのは20年以上前だと思う。

MDP-911のディスクトレイ
天板を取り外した時の内部

久しぶりに電源投入したところ、電源ランプが点灯してウィーン、ウィーンとモーターが動いている音が聞こえる。イジェクトボタンを押したら巨大なトレイがせり出してきた。どうやら電気回路もメカも生きているようだ。ただ、LD、CDとも挿入してもまったく読み込まない。

メカベルトが伸びてスリップしている模様
手持ちのベルト(左)と交換してみる

キャビを開けて点検したところ、こちらはメカのベルトが伸びてスリップしている。MDP-911のメカは3本のベルトが使われていて、そのうち1本を交換すれば何とかなりそうな感じである。手持ちのベルトに使えそうなものがあったので、交換したところメカが動いて盤が回転し始めたが、信号の読み取りができない。そこでピックアップを分解してレンズ周りを清掃してみたところ、LDの読み取りができるようになった。

ピックアップ部

CDの読み取りはピックアップの移動がときどき引っかかるが、ピックアップそのものは生きているので、残りの2本のベルトを交換すればこっちも直るだろう。今回はLDがかかればOKなので、修理はひとまずここまでとする。プレーヤーが直らないと、この企画そのものが成り立たないのでこれで一安心だ。

懐かしの30cmメディア「LD」を四半世紀振りに再生してみた

視聴

プレーヤーは何とか復活できた。次はディスプレイだが、実は我が家には古いブラウン管テレビ、ソニーの「KD-36HD800」がまだ残っていて、コンポジットビデオをそのまま見ることができる。

さっそくMDP-911をブラウン管テレビに接続

修理あがりのMDP-911をブラウン管テレビに接続し、手持ちのLDソフトをかけてみたところ、問題なく映像が映し出された。もちろん、画質はいまの映像とは比べ物にならない。いかにも古臭いNTSC映像であって、ブラウン管のインターレース表示特有のちらつきや、茫洋な輪郭線を観ていると、30年前へとタイムスリップしたような感じになる。でも、思いのほか画質は悪くない。

真っ先に観たのは、「グラッド オール オーバー」

真っ先に観たのは、「グラッド オール オーバー」という、RCサクセション解散後の忌野清志郎と仲井戸麗一のライブ盤だ。DVDやBDで発売されているが、初出盤のLDで観てみたかった。1994年発売なのでLD後期の盤であり、クオリティは熟成されている。ブラウン管で観ると明るく鮮やかな発色が印象的だ。音は単なるステレオだがなかなかいい。前半は夏の蝉しぐれが聴こえて雰囲気がバツグンだ。

次に「フリーダムフェスティバル ネルソン・マンデラ コンサート」という1988年にイギリスのウェンブリーでおこなわれたフェスを収録した盤を観た。アナログ時代によく観たが、黒のセットアップレベルが通常とは異なる印象で、三管プロジェクターの設定をいろいろいじった記憶がある。いま見ると解像度はいいがコントラストが浅い印象だ。この盤は大画面で観てみたいところだ。コンサートの内容は非常に充実している。特に終盤に登場する全盛期のホイットニー・ヒューストンの歌唱は素晴らしい。この1曲だけでも価値のある盤だ。この盤はDVD、BDでは発売されていないかもしれない。

映画では「八月の鯨」を観た。八月になるとやってくる鯨を待ち続ける老姉妹の物語でとても静かな映画だ。ふたりの往年の名優の共演が話題になった。淡く繊細で美しいトーンの描画は、LDの映像にはむしろあっている印象だ。不思議と心が落ち着く映像を堪能できる。

総括

ソフトラックの隅からLDを引っ張り出しながら、昔のことをいろいろと思い出してしまった。大掃除のとき古新聞や古雑誌に読み入ってしまうかのようだ。また、観ていない盤が結構あることにいまさら気づいた。買ったら安心してしまって、観るのは後回し。そうこうしているうちに古びてしまって、結局朽ち果てていく。申し訳ないことをしてしまった、という懺悔の思いが沸いてくる。

今回は、心の中でLD復活を叫びながら、血眼になって朽ち果てそうなプレーヤーの修理をしてみたが、やはり最新の映像には逆立ちしても勝てない。ふと我に返るとどこからか「トカトントン」と聞こえてきた。やはりレーザーディスクの映像は、アナログのブラウン管で小ぢんまりと観るのが似合っているよなぁ……。

市川二朗