レビュー

実はコスパ最高! ソニー新ウォークマン「NW-ZX707」に迫る

NW-ZX707

ソニー・ウォークマンの新たなミドルクラスとして登場した「NW-ZX707」。実売は約105,000円と、前モデル「NW-ZX500」(登場当初直販8万円)と比べると少し高価になった。気になるのはZX500からどのくらい進化したのか、そして上位機「NW-WM1AM2」(直販187,000円)と、どのくらい音が違うのか? だ。

そこで、3機種を揃えて聴き比べてみた。結論から言うと、ZX707はZX500の後継機種というよりも、「ほとんどNW-WM1AM2」と言えるハイコスパDAPに仕上がっていた。

左からNW-WM1AM2、NW-ZX707、NW-ZX500

3機種の機能や使い勝手の違い

NW-ZX707

まずはNW-ZX707の概要を簡単に振り返ろう。

一番大きな特徴は、筐体のサイズやデザインがZX500からガラッと変わった事だ。ZX500は側面が丸みを帯びた、縦長形状だったが、ZX707は横が長くなり、角張ったデザインになった。ディスプレイも3.6型から5型へと大幅にサイズアップしている。一見すると“分厚いスマホ”みたいになった。

左側面
右側面
角張ったデザインになった
前モデルのZX500

横に大きくなったので「ZX500より薄くなったかな?」と思うのだが、そう見えるだけで、ZX500の外形寸法は約122.6×57.9×14.8mm(縦×横×厚さ)、重量約164g。ZX707は約132.3×72.5×16.9mm(同)、重量は約227gと、ZX707の方が少し分厚い。並べて見ると後継機種と言うよりも、“大人と子供”みたいな違いがある。ZX500の細長さ、軽さが気に入っていた人は、ZX707を手にすると激変ぶりに驚くだろう。

左からZX707、ZX500

そういう意味で、比較相手としては上位機のNW-WM1AM2の方が適任だ。こちらは約142.5×80.5×20.8mm(縦×横×厚さ)とZX707よりさらに一回り大きく、重さも約299gと、ZX707より重い。つまりNW-ZX707のサイズ感は「NW-WM1AM2よりちょっと小さく、ちょっと軽くした」感じだ。

上位機のNW-WM1AM2
左からNW-WM1AM2、ZX707

従来よりも大きく、重くなると持ちにくくなるのでは? と心配するが、実際に触ってみると“分厚いスマホ”感覚なので持ちにくい事はない。むしろ適度な厚みがあるので薄いスマホより持ちやすく、背面に指を置きやすいカーブがつけられ、滑りにくい仕上げになっているのも好印象だ。

滑りにくい仕上げの背面

OSは、ZX500がAndroid 9だったが、ZX707はAndroid 12を採用。これは上位機NW-WM1AM2のAndroid 11よりも新しい。まあ新機種なので当たり前の話ではあるが、上位機に勝るポイントがあるのは嬉しい事だ。

ZX707のストレージメモリは、ZX500と同じ64GB。NW-WM1AM2の128GBと比べると半分だが、3機種全てがmicroSDカードスロットを備えているので、microSDで増設すればさほどウィークポイントにはならないだろう。

ZX500には無かった機能として、ZX707はNW-WM1AM2と同様にUSB DAC機能を備えている。パソコンとウォークマンをUSB接続し、パソコンの音楽をハイレゾで楽しむことができる。例えば、パソコンのNetflixで映画を見る時に、ZX707から出力してヘッドフォンで楽しむ……なんて事も可能だ。ノートパソコンのイヤフォン出力はあまり音が良くない事も多いので、“外だけでなく、家でもウォークマンを活用できる”機能として魅力的だ。

底部にUSB-C端子
USB DAC機能も追加された

使い勝手の面で大きな進化は、バッテリー持続時間。「W.ミュージック」アプリ利用時で、ZX500の20時間から、ZX707では25時間にアップ。W.ミュージック以外のアプリを使っている時も、持続時間が大きくアップしている。「ZX500はバッテリーがすぐ無くなるなぁ」と感じていた人には、大きな進化点だ。

また、前述の通り3.6型から5型へディスプレイが大型化したのも、使い勝手向上の面では大きい。楽曲の検索や、音楽配信アプリの使用時など、スマホに近い画面サイズになった事で、視認性がアップ。処理速度もアップし、動作もサクサクで使っていて気持ちが良い。

大画面化して使いやすくなった

W.ミュージックアプリのUIも刷新され、音楽再生画面を中心に上下左右にスライドすることで、各メニューに素早くアクセス可能に。音楽再生ウィジェットがホーム画面に表示できるようになり、ジャケット写真の色味に合わせ、背景の色が自動的に変化する機能も搭載されている。

再生画面/操作時に、画面下部にミニプレーヤーが表示され、その部分を左へフリックすると前の曲へ、右へフリックすると次の曲へという操作もできる。

音質面の進化点

外観もそうだが、ZX707の中身も「ZX500との違い」を見るより、「NW-WM1AM2との違い」を見る方がわかりやすい。

ZX707の筐体は、ハイエンドモデルと同様のアルミ切削シャーシで、低インピーダンス化と高剛性を追求している。アルミ切削シャーシは高い精度が出せるため、基板を高精度に保持できるのも利点。削り出した後でアルマイト処理で仕上げているが、グランドを落とすために一部はレーザーで削っている。

アルミ切削シャーシ。黒く見えるのはアルマイト処理で仕上げているため

背面にはアルミリアカバーを採用。ステンレスよりも癖のない音になり、伸びのある透明感を実現するという。CPUなどの部分には無酸素銅の切削ブロックも配置し、ノイズを低減。重量をあえてアップさせ、低域の質感を高めている。

背面のアルミリアカバー
デジタル部分のノイズが、他のアナログ回路に影響しないように無酸素銅の切削ブロックを配置

オーディオ機器では電源部が重要だが、ZX707では大容量固体高分子コンデンサーを投入。これにより、ZX500よりも電源インピーダンスを約1/10まで低減。バッテリーアシスト機能により、瞬間的に大電流を供給でき、急激な電圧降下を防ぎ、正確な信号を出力できるという。

上位機と同じ様に、コンデンサーには独自開発したFTCAP3を使用。表現力向上や音場の拡大などに寄与するというパーツだが、コンデンサ内部構造にさらなるチューニングを加えており、ホーム用据え置きオーディオ機器で培ったノウハウも投入し、耐振動性も向上させている。

オーディオラインも最適化。WM1シリーズと同じサイズの大型コイルを、ヘッドフォンのバランス出力のローカットフィルターに採用。全周波数帯域に渡って、音の解像感を向上させた。Au(金)を含有させる事で、電気特性を向上させたリフローはんだを、接合部分に採用。微細音の再現力を高めている。

基板のレイアウトも、アナログブロックへデジタルブロックの影響が及ばないように最適化。クロック部分には、小型低位相ノイズ水晶発振器を採用しているが、WM1シリーズで使っているものよりも一回り小さいそうだ。

中央より少し上の青くて四角いチップがフルデジタルアンプのS-Master HX。その上にある4つのシルバーの丸いパーツがFTCAP3
こんな感じで構成されている

ソニーのDAPではお馴染み、フルデジタルアンプのS-Master HXを採用。NW-WM1AM2に搭載されている、入力されたすべてのPCM信号を11.2MHz相当のDSD信号に変換する「DSDリマスタリングエンジン」をZX707にも新たに搭載。PCMデータでも、DSDのアナログライクな音で楽しめる機能だ。

様々な音源を、楽曲データを学習しているAIでリアルタイムに分析し、最適なハイレゾ相当のサウンドにアップスケーリングする「DSEE Ultimate」も搭載。最大192kHz/32bit相当まで拡張してくれる機能だが、AIアルゴリズムを進化させ、CD音質相当音源(44.1kHzおよび48kHz/16bit)データのアップスケーリング性能も高めている。

楽曲データをAIでリアルタイム分析し、最適なハイレゾ相当のサウンドにアップスケーリングする「DSEE Ultimate」
アナログレコードっぽい音を再現してくれる「バイナルプロセッサー」も備えている

ZX707ではこのDSEE Ultimateが使えるシーンが増加。ZX500では、有線イヤフォン接続時のみ、さらに再生アプリも「W.ミュージック」しか使えなかった(同アプリ以外ではDSEE HXが動作)。新機種のZX707では、同アプリ以外でも使えるようになり、例えば音楽配信サービスのアプリで聴いている時でもDSEE Ultimateを適用できるようになった。

さらに、ワイヤレスイヤフォンを接続している時も使用可能。高音質なLDACで接続している時も、DSEE Ultimateが利用できる。

このように、ZX707にはWM1AM2に搭載されているパーツが多く投入されている。逆に「もうZX707で良いのでは?」という気もしてくるが、WM1AM2は筐体がより大きいため、基板の表裏両面に大きいコンデンサーを搭載できるが、ZX707はサイズを維持するために基板上のパーツは片面に集中。上位機ほど大きなパーツは搭載できない。こういった部分が音質の違いになっている。

また、ヘッドフォンの最大出力にも注目だ。端子としてはステレオミニのアンバランス×1、4.4mmバランス×1を搭載しているのは3機種共通。

ZX707のヘッドフォン出力。ステレオミニのアンバランス×1、4.4mmバランス×1を搭載している

しかし、実用最大出力(16Ω/ハイゲイン設定時)を比較すると以下のような違いがある。

  • WM1AM2:ステレオミニ 60mW+60mW/バランス 250mW+250mW
  • ZX707:ステレオミニ 50mW+50mW/バランス 230mW+230mW
  • ZX500:ステレオミニ 50mW+50mW/バランス 200mW+200mW

通常のイヤフォン/ヘッドフォンではZX707のスペックで十分だが、鳴らしにくいヘッドフォンなどをメインに使う場合は、WM1AM2の高出力が魅力となる。

音を聴いてみる

ZX500からZX707への進化をチェックしよう。ソースダイレクトモード、ハイゲインOFFの状態で、手持ちのヘッドフォンの中でも鳴らしにくいフォステクスの平面駆動型「RPKIT50」(インピーダンス50Ω)をバランス接続して聴き比べてみた。

まずはZX500。W.ミュージックアプリを使い、「ダイアナ・クラール/月とてもなく」(192kHz/24bit FLAC)を再生。ハイゲインOFFでは、フルボリューム120でようやく「音量は十分だけど、低音がちょっと弱い」という状態。このままではダメなので、ハイゲイン設定にすると、ボリューム値107くらいで低域にもパンチが出て満足できる音になる。アコースティックベースの低域や、ピアノの左手にも重みが出てきた。

ZX500の魅力は、ウォークマンらしいSN比の良さ、音場の広さだ。ボーカルやピアノの響きが、空間の奥まで広がる様子がよく描写されている。静かな空間に、スッと音が立ち上がる鋭さも気持ちが良い。こうした音は、スマホのイヤフォン出力や、ワイヤレスイヤフォンのTWSではなかなか味わえない。DAPを使う醍醐味とも言えるだろう。

ZX707に切り替える。バランス接続での出力はZX500よりもアップしているのだが、ノーマルゲインではフルボリューム120でも、低域の馬力がまだ薄い。ハイゲインに設定すると、ボリューム値100くらいで音量・低域のパワフルさも十分になった。

ゲインを切り替えているところ

「月とてもなく」を聴くと、空間描写がZX500より数段広くなる。同じ曲を聴いているとは思えないほど、ハッキリと空間が広いのがわかる。その空間に出現する音像も、1つ1つに力強さがあり、音のコントラストがハッキリ出ている。

SN感も良い。楽器を演奏する直前に、腕を動かすのでおそらく服の衣擦れだと思うが「スッ」という微かな音が入っている事もZX707だとハッキリわかる。こうした情報量の多さが、その場にアーティストがいるようなリアリティに磨きをかけている。

静かで広大な空間に、繊細な音がキレよく出現するこの感覚は、明らかにミドルクラスというよりもハイエンドの領域。約10万円のDAPでこの音は文句なしに凄い。

また、今現在、音を聴きながらこの感想をメモしているのだが、ZX500の時は音楽を聴きながらバリバリと文章が書ける。しかし、ZX707に切り替えると、数文字書いて指が止まってしまう。ZX707の方が、音の情報量が多く、よりリアリティがあるため“自分のすぐ近くで女性が本当に歌っている感”が強く、脳みそが勝手に「近くに歌手がいるでしょこれ」と思い込んで「そっちに注意しなきゃモード」に切り替わってしまい、メモが手につかないのだ。

音楽に脳を強制的に持っていかれ、“ちゃんと音楽を鑑賞するモード”になってしまうので、メモを書くには一度再生を停止して「ふぅ」と一息ついてからでないと書けない。

では、上位機WM1AM2に切り替えるとどうなるだろうか? WM1AM2では出力がさらにアップするので、ノーマルゲインでもRPKIT50の低域がしっかりと出る。アコースティックベースからブルンという重さや、ピアノの左手の和音にも「ズン」という深みがある。

音場の広さはZX707を上回る。左右や奥行きはかなりZX707が肉薄しているのだが、やはりWM1AM2の方が一枚上手だ。また、WM1AM2の方が低域の音圧と深さが鋭いため、下方向にも低い音広がっていく感じがして、それが“空間のデカさ”に拍車をかけている。

ヴォーカルの口の動きや、ベースの弦が震える様子まで目に浮かぶような繊細な描写はさすが上位モデル。ZX707もかなりリアルだったが、WM1AM2はさらにドキッとさせるような生々しさがある。

高価な上位機の方が音が良いのは当たり前だ。ただ、注目すべきは“音の違いの幅”だ。

ZX500とZX707の音の差は、正直言ってかなりある。それだけZX707がミドルクラスDAPとして大幅に進化したわけだ。

一方で、ZX707とWM1AM2の差はそれほど大きくはない。ZX505からZX707を見ると、遠すぎて背中が見えるかどうかという感じだが、ZX707はWM1AM2の背中に手が届くまであとすこしという位置まで迫っている。そう考えると、20万円近いWM1AM2に、約10万円で肉薄しているZX707のコストパフォーマンスの高さは優秀だ。

鳴らしにくいヘッドフォンで試聴したので“ウォークマン全体に駆動力が無い”みたいに見えてしまったかもしれないが、通常のイヤフォンやヘッドフォンを駆動するには十分すぎるパワーがある。

ただ、イヤフォンで比較試聴しても、3機種の音の違いの印象はヘッドフォンで感じたものとほぼ同じだ。むしろ、ヘッドフォンよりも音場が狭いイヤフォンでは、ZX707とWM1AM2レベルの“音場の広さ”がより効果を発揮するため、ZX707とWM1AM2でイヤフォンを聴いたあと、ZX500に戻るとかなり音場が狭く感じてしまう。

例えば米津玄師「KICK BACK」のように、無数の音が乱れ飛ぶような楽曲を聴くと、空間が狭いZX500では、狭い部屋に音が一杯詰め込まれたような圧迫感を感じる。1つ1つの音の隙間が狭く、聴き分けにくいため、ボリュームを上げるとうるさく感じてしまう。

ZX707とWM1AM2では、音が広がる部屋が広く、閉塞感は少ない。音像と音像の間のスペースも広いため、どの音が、どんな風に鳴っているか聴き分けられ、音量を上げても個々の音がまざらないので明瞭度が維持され、うるさくは感じず、むしろ音がパワフルになって気持ちが良い。これはZX500からZX707への大きな進化と言えるだろう。

ZX707とWM1AM2で比較すると、「KICK BACK」の40秒あたりでベースラインが豊富に入ってくるところで、WM1AM2では「ズズン」と地面を揺らすような深く、ちょっと怖いくらいの低音が出てくるが、ZX707ではそこまでは重さ・音圧が出ない。本当に小さな違いではある。だが、聴き比べるとハッキリわかる違いは確かにある。

「Amazon Music」アプリで聴いているところ

ローカルファイルだけでなく、「Amazon Music」アプリも入れて聴いてみよう。Android OSなので、Google Playストアから普通にアプリをインストールできる。いい音で聴くために、スマホで使う時と同じように、Amazon Musicの設定から「ラウドネス・ノーマライゼーション」をOFFにしたり、ストリーミング/ダウンロードする音楽のクオリティを「最高」に設定するのを忘れないようにしよう。

もう一つ、ウォークマンの音設定画面にある[ハイレゾストリーミングの使用]を「オン」にするのも忘れずに。これをオンにしないと、W.ミュージック以外のアプリを使った場合の音が48kHz/16bitにダウンコンバートされてしまう。オンにすると、192kHz/32bitにアップコンバート再生される(例えば96kHz/24bitなどのデータでも、192kHz/32bitに変換されて再生される)。

Amazon Musicにはハイレゾではなく、CD相当音質の楽曲も多い。それを聴きながら、「DSEE Ultimate」をオンにしてみた。AIで分析して、最大192kHz/32bit相当まで拡張してくれる前述の機能だ。

“音が激変する”というほどではないのだが、オンにすると音場の見通しが良くなり、音の響きが広がる様子や、ボーカルの口の開閉など、細かな描写も聴き取りやすくなる印象。派手な変化ではないが、逆に言えば「これなら常時ONにして使ってもいいかな」と思わせてくれる完成度だ。

右がA&norma SR25 MKII

他社のライバルモデルとも比較してみよう。Astell&Kernの「A&norma SR25 MKII」が約10万円なので、ZX707と価格帯は近い。ただ、並べてみると、大人と子供かと思えるくらいA&norma SR25 MKIIの方が小さい。

しかし、見かけによらず、アンプとしての駆動力はSR25 MKIIの方が上で、先程のヘッドフォン「RPKIT50」も、ボリューム値7割くらいで余裕を持ってドライブしてくれる。

聴き比べてみると、音場の広さはZX707の方が広く、SN感も良い。一方で、低域の馬力や、個々の音のパワフルさではSR25 MKIIが勝る。音の傾向が両者で異なり、よりピュアオーディオライクで優等生的なZX707に対し、パワフルで躍動的がある美味しい音のSR25 MKII……という印象だ。

前述の通り、ワイヤレスイヤフォンで聴いている時にもDSEE Ultimateが使えるようになった。さっそくTWS(Noble Audio FALCON PRO)と連携、DSEE Ultimateの効果が昔MP3で録音したファイルを聴いてみる。聴きながらDSEE UltimateのON/OFFを切り替えると、劇的な変化ではないが、確かにONにすると、音の広がる余韻が深くなり、高域のキツさが少し和らいでアナログっぽい音になったと感じる。古い音楽ファイルが無いという時も、例えばアプリでradikoやインターネットラジオを聴く時にONにすると良さそうだ。

NW-WM1AM2に手が出なかった人は、今すぐお店へ

約10万円のDAPとして、ZX707のサウンドはかなりクオリティが高い。ZX500のユーザーは、乗り換える価値が十分にある。また、「NW-WM1AM2欲しいけど、ちょっと値段がなぁ……」と思っていた人は、今すぐお店にZX707を聴きに行くべきだ。

また、音の進化だけでなく、使い勝手の良さが大幅にアップしている事も見逃せない。画面が巨大になり、動作もサクサクなので、音楽を探しやすく、サウンドの設定をいじる時も快適だ。しばらくZX707を使ってから、ZX500に戻ると「画面ちっさ!」と落差に驚き、「ZX707を触っちゃうと、あの広さからもう戻れない」と頭を抱える快適さだ。バッテリーの持続時間が伸びたのも快適さを後押ししている。そのぶん、筐体サイズも大きく、重くなっているわけだが、それを差し引いてもこれらの魅力は強いだろう。

音楽配信サービスを使う時にもDSEE Ultimateが使えたり、ワイヤレスイヤフォンを使う時も高音質化機能が使えたりと、今の時代に即した機能も備えており、“今どきのDAP”としてオススメできる製品になっている。

一方で懸念もある。“スマホ + TWS”というスタイルでポータブルオーディオを楽しむ人が増えた今、DAPにはスマホと別に“DAPと有線イヤフォンを持ち歩く強い動機”が求められている。最大の動機は“音が良い”事なのだが、それだけでスマホよりも重く、スマホに似たサイズの物体を買ってね! というのは限界がある。

また、音楽配信サービスに限って言えば、DAPを屋外に持ち出すと、事前ダウンロードをしていない限り音楽を再生できず、スマホのテザリングやWi-Fiスポットなどを使わねばならず、スマホより利便性が低い。他社のDAPでは、据え置きヘッドフォンアンプに迫る駆動力を備え、“外だけでなく、家の中でも活用できるDAP”をアピールしている製品もある。ウォークマンにも順当な進化を超える“次の一手”が欲しいところだ。

山崎健太郎