レビュー
俺の部屋改造計画! 6畳間でボーズ、デノン、Sonosサウンドバー聴き比べ
2023年2月14日 08:00
昨年5月に6畳の寝室兼仕事部屋に48型の有機ELテレビを導入した。主な利用目的がゲームだったが、大画面テレビがあると、やはり4K Ultra HD Blu-rayや映像配信サービスなどで映画やドラマを観たくなるもの。そうなると気になってくるのが音周り。テレビ内蔵スピーカーのサウンドはあまり良いとは言えず、「映像が綺麗だけど、音がイマイチで作品に集中できないな」と思うことが増えてきた。そこで、サウンドバーを使ってみる事に。デノン、Sonos、ボーズの製品を借りて、聴き比べてみた。結論から言うと、テレビのスピーカーには戻れなくなってしまった。
筆者が購入した有機ELテレビは、LGの2021年モデル「OLED48C1PJB」。PlayStation 5を繋いでのゲームが主な目的で、ゲームを遊ぶときはソニー・INZONEブランドのゲーミングヘッドセット「INZONE H9」を使うことが多く、テレビ自体のスピーカー品質にはあまりこだわっていなかった。しかし、映像コンテンツを観始めると、やはり内蔵スピーカーでは低域の迫力に物足りなさを感じる。
サウンドバー選びにあたって、今回重視したのは2点。1つは価格帯で、今回の設置場所は、あくまで仕事場も兼ねた寝室であり、リビングほど使用頻度は高くなく、さらに基本的には“ゲーム用ディスプレイ”として使っているので、あまり高価なものは買えない。そこで実売10万円を上限とした。
もう2つ目は、動画配信サービスでもコンテンツが増えているDolby Atmosに対応していること。本来であればイネーブルドスピーカー搭載をマストにしたいところだが、こちらも設置場所があくまで6畳の寝室であることを考慮して、今回は不問に。Dolby Atmos対応の有無だけを基準にした。
その結果、選んだのがデノン「DHT-S217」と、Sonos「Sonos Beam (Gen 2)」、そしてボーズ「Bose Smart Soundbar 600」の3機種。価格はDHT-S217が実売29,700円前後、Sonos Beam(Gen 2)が直販64,800円、Bose Smart Soundbar 600が74,800円と、3万円以下、7万円以下、7万円以上と、価格帯も絶妙にバラける形となった。
各製品の特徴をおさらい
DHT-S217
DHT-S217は、サウンドバーでありながら「ピュアでストレート」なサウンドを追求し、話題となった「DHT-S216」の後継機種として登場。DHT-S216と同様に、デノンのサウンドマスター・山内慎一氏が開発の初期から関わっている。
ドライバーはDHT-S216と同じく合計6基。内訳は前面の左右端に25mm径のツイーター、45×90mmの楕円形ミッドレンジが各2基、中央付近の下向きに75mm径のサブウーファーが2基となっている。
一方で、SoCは約6万円の上位モデル「DHT-S517」と同じものを採用することでスペックアップ。ロスレスであるDolby TrueHDベースのDolby Atmosまで対応できるようになった。
Dolby Atmosイネーブルドスピーカーは搭載していないが、Dolby Atmosのハイト音声をデジタル信号処理することで、ハイトスピーカーやDolby Atmosイネーブルドスピーカーが無くても、より臨場感のある再生ができるという「Dolby Atmos Height Virtualizer」を搭載している。
サウンドモードとして、映画館のような臨場感のあるサウンドが体感できる「Movie」、コンサートホールのような臨場感が楽しめる「Music」、夜間などで音量を控えめにした時でも小さな音が聞き取りにくくならない「Night」モード、そしてサウンドモードやバーチャルサラウンド処理をバイパスし、増幅回路に入力することで、音の純度が最も高くなる「Pure」モードを利用できる。
ちなみに「Pure」モード利用時は、Dolby Atmosのハイト情報が含まれず、Dolby Atmosとしての再生ができない。これはDolbyのレギュレーションで、ハイトスピーカーがなく、フロントスピーカーしかない場合は、必ずDolby Atmos Height Virtualizer処理をかけるようにと定められているため。
バーチャライザー処理をカットするPureモードでは、Atmosのデコードが働かなくなり、ハイト情報が入れ込めなくなる。筆者はこの点を失念し、PureモードのままDolby Atmosコンテンツを視聴しようとして「Dolby Atmos再生ができない!」と10分ほど頭を悩ませてしまった。
これらモードの切替は付属のリモコンから操作可能。そのほかリモコンからは、音量調整、BASS調整、入力ソースの切り替え、映画のセリフや音楽のボーカルを聴きやすくする「ダイアログエンハンサー」を3段階で設定できる。
外形寸法は890×120×67mm(幅×奥行き×高さ)、重さは3.6kg。入力端子は4K対応のHDMI入力、光デジタル入力、AUX入力を各1系統装備。HDMI ARC/eARC対応テレビと接続する場合は、HDMIケーブル1本で接続できる。出力は4K対応HDMI、サブウーファー出力が各1系統で、別売りのサブウーファーを後から追加することもできる。
そのほかBluetoothにも対応し、ペアリングしたスマートフォンなどから音楽再生もできる。コーデックはSBC。
Sonos Beam(Gen2)
Sonos Beam(Gen2)は2021年に国内発売された。外形寸法651×100×69mm(幅×奥行き×高さ)のコンパクトな筐体でありながらDolby Atmosに対応。サウンドバー独自の音響構造にあわせてチューニングされた5つのクラスDデジタルアンプを内蔵する。
製品名に「(Gen2)」とあるように、Sonos Beamとしては第2世代のモデルで、第1世代から処理速度が向上。処理能力も高まったことでスピーカーアレイが3つから5つに増え、eARC対応HDMI端子も搭載した。
搭載するドライバーは、センターツイーター×1と楕円形のミッドウーファー×4。3つのパッシブラジエーターも備える。DHT-S217同様、イネーブルドスピーカーは搭載していないため、HRTFテクノロジーを使用して空間に広がるサウンドに高さを生み出している。
入力はARC/eARC対応のHDMIが1系統のみで、HDMI出力はなし。光出力のみのテレビとは付属のSonos光オーディオアダプター経由で接続できる。そのほかLAN端子、Wi-Fi、テレビリモコンと同期できる赤外線レシーバーも搭載する。
サウンドチューニングは音楽界や映画界などの第一人者で構成されるSonos Soundboardが担当。さらにiOS端末が必須だが、壁や家具に反射するスピーカーの音を検知・調節し、部屋や構成に最適なオーディオ体験を実現する「Trueplay」も利用できる。
DHT-S217のような、コンテンツにあわせた再生モードはないが、会話がはっきりと聴き取れるように音声周波数を上げる「スピーチエンハンスメント機能」、大きな音の強さを抑え、静かな音のレベルを上げる「ナイトサウンド」が利用可能。アプリのEQからは「ラウドネス」のオン/オフも選べる。
Bluetoothは非搭載だが、Wi-Fi経由で音楽配信サービスが利用可能。AirPlay 2にも対応する。
Bose Smart Soundbar 600
Bose Smart Soundbar 600は、ボーズサウンドバーの中級モデルで、2022年10月に発売されたばかり。今回比較する3機種のなかで、唯一上向きのアップファイアリングスピーカーを搭載している。
Dolby Atmosコンテンツ再生時は、チューニングされたデジタル信号処理と5基のドライバーが連携し、スピーカーを配置していない場所からもサウンドを出力。2基のサイドファイアリングレーストラック型ドライバーが相互に連動し、音を水平方向および音を天井に向かって反射させることで、頭上からもサウンドで満たされるような感覚を生み出すという。
Dolby Atmosコンテンツ以外でも、臨場感あふれるサウンドを実現。5基のドライバーをサポートするTrueSpaceテクノロジーが、ステレオ、5.1chなどのDolby Atmos以外の信号も高度に分析・リミキシング。Dolby Atmosコンテンツのような、拡がりのあるサウンドを効果的に創り出すという。
インターフェイスは、eARC対応HDMI入力、光デジタル入力、USB(サービス専用)、有線IRブラスターなど。外形寸法は、695×104×56mm(幅×奥行き×高さ)。重量は3kg。
Bluetoothに対応するほか、アプリから音楽配信サービスにアクセスが可能。AirPlay 2、Spotify Connect、Chromecastも利用できる。
3機種の設置性の違い
テレビの前にサウンドバーを設置してみる。今回試用した3機種のなかで、もっとも横幅の大きいDHT-S217は、48型テレビの前に置いてみると、ほぼジャストサイズ。それに対し、Sonos Beam(Gen2)とBose Smart Soundbar 600はテレビの横幅よりコンパクトなので、少しアンバランスさもある。しかし、空いたスペースにテレビのリモコン、ゲーム機のコントローラーを置けるという利点もある。
ちなみに、高さはDHT-S21が67mm、Sonos Beam(Gen2)が69mm、Bose Smart Soundbar 600が56mmで、もっとも背が高いSonos Beam(Gen2)は少し“ずんぐりむっくり”した印象を受けた。
3機種で「トップガン」や「LA LA LAND」を聴き比べる
いよいよ音を聴いてみる。試聴したコンテンツはUHD BD「トップガン マーヴェリック」。冒頭の超音速機「ダークスター」が少将の上を通過するシーンだ。
DHT-S217では、音が上方向も含めて部屋全体にグワッと広がっているのが分かり、機体がブウォーン! と轟音を立てて通過していく様子がしっかりと描かれ、その衝撃波で砂漠の砂が巻き上げられるパラパラという細かな音もしっかり描写される。それでいてセリフが聴こえにくいということもなく、ダイアログエンハンサーをもっとも低いLowにしていても、しっかりと登場人物たちのセリフを聞き取れる。
同じシーンをSonos Beam(Gen2)で観てみると、マーベリックがダークスターに乗り込む前のBGMから、低域が量感たっぷりに力強く再生される。ダークスターが少将の上を通過するシーンでは、機体が通過していく甲高い音のあとに、ドウンッと風圧が襲ってくる様子、その圧で詰め所の天井が浮く音など、こちらも唸るような低域を味わえた。その一方で、DHT-S217と比べると、砂塵が舞う細かな音の表現はやや大人しめだった。
Bose Smart Soundbar 600を試してみると、3機種の中でセリフの明瞭さ、聞き取りやすさが群を抜いていた。ダークスターが通過する場面でも高域の印象が強く、機体が近づいてくる音、通過したときの「フォォン!」という甲高い音が耳に残る。ブワッという風圧の迫力はSonos Beam(Gen2)と比べると控えめだが、砂塵がサラサラと舞う細かい音もしっかりと聞き取ることができた。
ちなみに、テレビ単体で同じ場面を再生すると、低音の迫力がまったくなく、セリフもBGMや効果音に埋もれてしまい、聴き取りにくい。普段はボリューム13程度でもうるさく感じるのだが、トップガン マーヴェリックの場合、ボリューム13では耳をそばだてないとセリフすら聴き取れない。ボリューム設定を90近くまで上げれば、セリフの聴き取りやすさは改善されるが、低音の迫力はサウンドバーには遠く及ばなかった。
また細かいところでは、映画中盤でマーヴェリックが単独でタイムアタックに挑む場面、そのスタート地点で「ピッ」という機械音が鳴るのだが、サウンドバーで聴くと音に深みがあり緊張感を演出するのに対し、テレビスピーカーではスーパーのレジで商品をスキャンしているような軽い「ピッ」に聴こえ、サウンドバーとの音の違いに驚かされた。
続いてはミュージカル映画「LA LA LAND」から、オープニングの高速道路のミュージカル場面。DHT-S217では、ボーカルがくっきりと浮かび上がってくる。かといってバックのミュージックから浮いてしまうわけではなく、音のバランスが良い。
Sonos Beam(Gen2)は、DHT-S217と比べてもボーカルなど中域の押し出しが一段強く、自動車のドアをバタンと閉める音やボンネットの上を歩く音、演者のステップ音なども強調されて聴こえてくる。
最後にBose Smart Soundbar 600を聴いてみると、こちらもボーカルがくっきりと聴こえ、リップノイズも聴き取れるほどの解像感もある。一方で、Sonos Beam(Gen2)やDHT-S217と比べると、自動車のドアをバタンと閉めるところ、トラックの中から出てくるドラム隊のサウンドなどは大人しく感じられた。
“ハマれば”圧巻のデノン、“ドンシャリ”なSonos、“意外と大人しい”ボーズ
2作品を観終えた時点で、セリフや細かい音の明瞭さはボーズ>Sonos≧デノン、低域の迫力はSonos>デノン≧ボーズという印象。
PS5でFPSゲーム「Call of Duty | Modern Warfare II」などもプレイしてみたが、この印象は変わらず。爆発音の迫力はSonos Beam(Gen2)が一歩抜きん出ており、セリフの明瞭さ、細かな足音などの描写はBose Smart Soundbar 600が優れていた。
DHT-S217は2機種と聴き比べると、低域の迫力や明瞭さに物足りなさを感じる。だが、音のトータルバランスは良く、特に不満なくゲームに没頭できた。
またDHT-S217は、視聴するコンテンツに合わせて「Movie」と「Music」、「Pure」の各モードを切り替えることで、明瞭感や解像感がアップ。コンテンツにあわせたモードに切り替えれば価格帯が上のSonosやボーズに匹敵、時には凌駕するようなサウンドを楽しめた。
ただネックに感じたのは「コンテンツにあわせたモードに切り替える」というところ。例えばMovieモードで映画を観たあと、モードを切り替えるの忘れたままライブBDを再生したら、低音が強調されすぎる上、ボーカルも埋もれてしまい、全体的にボワボワとこもるような音に聴こえてしまった。
「それなら、ずっとPureモードにしておけば良いのでは」とも思ったのだが、上述したようにPureモード時はDolby Atmos再生ができない。
またPureモードでテレビのバラエティ番組、ネットで生配信されるコンサートなどを観ると、演者の声やボーカルが解像度の低いザラザラとした質感に聴こえてしまい、コンテンツに集中できないこともあった。ソースとなる音のクオリティが低いと、それがモロに出る印象。このあたりは「ピュアでストレート」なサウンドを追求したからこそのネックと言えるかもしれない。
それでも再生モードがピタリとハマったときのサウンドは圧巻。設定を追い込んでいく楽しさ、それがハマッたときの爽快さは、DHT-S217ならではの魅力だった。
Sonos Beam(Gen2)は、極端な表現をすれば今回の3機種の中で一番“ドンシャリ”なサウンド。アクション映画などは迫力たっぷりに楽しめ、ライブBDやバラエティ番組なども、ソツなくこなしてくれるサウンドだった。デノンのようなモード切替も不要なので、テレビと電源につなぐだけでOKというシンプルさも魅力。
一方で、女性ボーカルや弦などの表現力は、あと一歩といったところで、ほか2機種と比べると少し抑えめに感じられた。
また、ほか2機種と違って、リモコンが付属しないのも特徴。EQ設定などを、すべてスマホアプリで操作する点は好みが分かれるところだろう。ちなみに音量調整はHDMI接続したテレビ経由で操作できた。また音声アシスタント用マイクのオン/オフなど、一部操作は本体上面のタッチ操作で行なえる。
Bose Smart Soundbar 600は、「あのボーズのサウンドバー」と思って聴いてみると、意外と低域の量感が抑えめでアッサリとしている。それに対し、セリフの聴き取りやすさ、音楽BDの女性ボーカルや弦の表現力などは、今回の3機種のなかではトップレベルに感じられた。筐体も横幅と高さを抑えたコンパクトでスタイリッシュなデザインで、個人的には好印象だった。
ちなみに、Bose Smart Soundbar 600にはリモコンも付属し、音量や入力ソースの切り替えなどが可能。スマホアプリ「Bose Music」からも音量調整のほか、センターチャンネル/ハイトチャンネル/低音などのイコライザー、ダイアログモードのオン/オフ、壁掛け時用のイコライザー「Wall EQ」のオン/オフなどを操作できる。
聴き比べた結果、購入したのは……
価格帯を念頭に選んだ3機種だったが、設定がハマれば上の価格帯の製品をしのぐサウンドが楽しめ、コストパフォーマンスに優れるDHT-S217、ポンと置くだけでどんなコンテンツも迫力あるサウンドで気持ちよく楽しめるSonos Beam(Gen2)、解像感高いサウンドが楽しめたBose Smart Soundbar 600と、それぞれまったく異なる特徴を把握できた。
当然ではあるが、やはり一度サウンドバーを体験してしまうと、テレビの内蔵スピーカーには戻れない。サウンドバーを体験するまでは「これで充分かな」と納得していたテレビの音は、迫力がないだけでなく、ドラマや映画、ゲームのキャラクターのセリフが聴き取りにくいと感じてしまうようになった。6畳しかない寝室のテレビであっても、多少でも映画やゲームなどを楽しむ機会があるなら、サウンドバーは積極的に導入するべきだと、改めて気付かされた。
そんなわけで、テレビスピーカーに満足できなくなってしまった筆者は、昨年末のブラックフライデーでSonos Beam(Gen2)を購入した。セールだったので、購入価格は50,023円。コスパに優れるDHT-S217と最後まで迷ったのだが、特に設定を変えることなく、映画やゲーム、バラエティ番組など、何でも“楽しい音”で再生してくれる手軽さが最大の決め手だった。
Bose Smart Soundbar 600は、家族がBOSE愛用者で、リビングのテレビにもBOSEのサウンドバーがつながっているため“一番慣れ親しんだ音”だったため、当初は第一候補だったのだが、思いのほか低域が抑えられた音質が個人的な好みに当てはまらなかったこと、Sonos Beam(Gen2)との価格差などから、購入には至らなかった。
また細かいポイントではあるものの、AirPlay 2に対応している点も購入を決めた要因。当初、活用するつもりはなかったが、AirPlay 2に対応していると、特にペアリング作業をせずとも、数タップでiPhone/iPadなどから音楽をサウンドバーに飛ばすことができる。就寝前のちょっとした空き時間にも、数ステップで音楽を流せるのが、思った以上に快適で、気がつけば手放せない機能になっていた。