レビュー
nasneのリモート視聴を長崎の離島旅行で試す
放送中番組も録画番組も自宅感覚で外出先から楽しめる
(2014/10/7 10:00)
リモート視聴対応で外出先から録画番組や放送中番組が視聴可能に
ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、ネットワークレコーダ「nasne」の最新システムソフトウェア「Ver.2.50」の提供を9月25日に開始した。インターネット接続環境があれば無料でアップデートできる。
2.50の目玉とも言える更新内容が、録画番組や放送中の番組をnasne経由で視聴できるリモート視聴機能「Anytime TV」だ。事前に登録した機器に限られるものの、インターネットにつながりさえすればどこにいても録画番組が楽しめるようになる。放送中のテレビ番組も視聴できるため、ワンセグやフルセグ感覚で「どこでもテレビ」を楽しむことも可能だ。
なお、リモート視聴にはnasneアップデートのほかに対応機器と専用端末が必要。具体的にはiOS/Androidアプリ「TV SideView」、Androidアプリ「nasne ACCESS」、PlayStation Vitaアプリ「torne PlayStation Vita」(torne PS Vita)の3種類だ。数が多くてわかりにくいかもしれないが、iOSとVitaは対応アプリが1つのみに対し、Androidのみ2つのアプリから選択できることになる。また、現状のところPCからのリモート視聴には対応していない。
いずれのアプリも有料で、TV SideViewとnasne ACCESSはアプリ自体は無料ながらリモート視聴には500円の追加プラグインが必要。torne PS Vitaはアプリ自体が有料で、PlayStation Storeから823円で購入できる。なお、TV SideViewをすでに利用しており、録画番組を再生できる追加プラグインを購入済みであればリモート視聴は利用可能だ。
待望のリモート視聴である一方、Androidユーザーにとっては2つの有料アプリが登場したことになり、どちらを購入すればいいのか悩むユーザーも多いだろう。今回はTV SideViewとnasne ACCESSの機能比較を行ないつつ、torne PS Vitaも含むnasneのリモート視聴全般について紹介する。なお、iOS版のTV SideViewはAndroidとUIがほぼ共通になっているため、本レビューおよび以前に紹介したTV SideViewのnasne対応レビューを参照して欲しい。
対応アプリは端末ごと3種類。Androidのみ2つのアプリを提供
nasne本体のアップデートは、ブラウザ経由でnasneにアクセスする「nasne HOME」から実行する。リモート視聴に対応したアプリはいずれもnasne HOMEへのショートカット機能を備えているため、設定画面へ簡単にアクセスできる。
リモート視聴対応アプリは今回初めてリリースされるのではなく、すでに提供されているアプリのバージョンアップで対応するため、アプリ利用中のユーザーはアップデートが必要だ。TV SideViewとnasne ACCESSはGoogle PlayやApp Storeといったアプリ配信システムのアップデートから適用可能。torne PS Vitaはアプリ起動前に表示される画面から最新版にアップデートできる。
リモート視聴の設定方法はアプリによって異なり、nasne ACCESSはアップデート後に表示される画面右上の「テレビ」から「放送中」「録画番組」といったリモート視聴機能を利用する際に初回設定が必要になる。正しくリモート視聴できているかを確認するために20秒間のリモート視聴デモが用意されており、その後画質を「画質優先」「速度優先」から選択する。
TV SideViewはメニューの「機器設定」から設定できるほか、初回設定時のチュートリアルから設定することも可能だ。nasne ACCESSと異なり、リモート視聴のデモなどは用意されていない。設定は「外出先視聴」にチェックを入れたのち、nasne ACCESSと同様に「画質優先」「速度優先」のどちらかを選ぶと完了する。
torne PS Vitaは、「SETTING」の「アプリケーション設定」「nasne設定」に「エニイタイムアクセス設定」が追加されており、これをオンにすることで利用可能。また、オンラインサービスにも「ニコニコ実況設定」が追加されており、ニコニコ実況のアカウントを設定することで録画番組にニコニコ実況を表示することができるようになる。
なお、nasne ACCESSとTV SideViewともにリモート視聴の画質設定機能が用意されているが、torne PS Vitaには画質設定機能は用意されていない。画質の詳細はnasne ACCESSでは記述されていないが、TV SideViewでは速度優先が1Mbps、画質優先が2Mbpsとあるためnasne ACCESSも同様と思われる。また、この画質設定は設定後に録画する番組に対して有効になるため、設定前に録画された番組は適用されない。
リモート視聴の画質設定は、nasne ACCESSのほか、nasneの設定画面[nasne HOME]から設定できる(Vitaのリモート視聴中は設定不可)。速度優先の場合、上り1Mbps以上、画質優先が上り2Mbps以上の回線環境が必要になる。
視聴機能はほぼ同等ながら再生周りに細かな違い。録画予約はTV SideViewのみ
nasne ACCESSとTV SideViewのリモート視聴だが、結論から言ってしまうと両者にほとんど違いはない。というのも、リモート視聴では録画再生時のスキップ操作などが現状利用できないため、どちらも「録画番組とテレビ放送をただ再生する」というシンプルな機能に留まっているいるからだ。
nasne ACCESSの場合、リモート視聴は画面上部の「テレビ」アイコンから視聴可能。画面下部には「放送中」「録画番組」が並ぶほか、録画番組をジャンルやチャンネル、接続先のnasneや年月でソートできる。番組は縦に一覧表示され、放送中番組は地上デジタル、BS、CSの順に、録画番組は録画した年月日が降順に表示される。
TV SideViewの場合、放送中番組はホーム画面の「現在放送中」またはメニューの番組表から、録画番組はメニューの「録画番組リスト」から視聴できる。表示形式は放送中番組の場合、ホーム画面の「現在放送中」であればサムネイルつきでわかりやすい。録画番組はnasne ACCESSと同様一覧表示され、番組のジャンルごとに絞り込める。絞り込みという点ではチャンネルやnasne単位でも絞り込めるnasne ACCESSのほうが機能が多いものの、実用上は十分だろう。
リモート視聴の際は前述の通り録画番組であってもスキップ操作ができないため、使い勝手はほぼ変わらない。どちらもタイムバーを使った再生時間の指定はできるが、TV SideViewでは15秒スキップ/10秒バックやチャプタスキップがグレー表示になって機能せず、nasne ACCESSに至ってはそもそもチャプタスキップや15秒スキップなどが存在しない。
細かな違いでは、nasne ACCESSは再生時かならず横表示になるのに対し、TV SideViewは縦表示と横表示どちらにも対応できるほか、nasne ACEESSは動画再生時にAndroidのメニューが常時表示されるが、TV SideViewは横表示時にフルスクリーン表示することでメニューも非表示にできる。
一方、nasne ACCESSは放送中の番組を視聴中にそのまま録画できる機能が搭載されているが、TV SideViewの場合は一度視聴を停止して録画操作を行なう必要がある。
番組視聴以外のテレビ関連機能を見ると、TV SideViewは単体で録画予約ができるのに対し、nasne ACCESSはTV SideViewまたはWebサイト「CHAN-TORU」を呼び出す機能があるのみで単体で録画予約機能は持たないのが大きな違いだ。TV SideViewも録画予約機能だけであれば無料で利用できるものの、2つのアプリを行き来しなければならなくなる。放送番組視聴中の録画にこだわらない限り、リモート視聴を楽しむにはTV SideViewのほうがよいだろう。
nasne ACCESSは無料での併用がおすすめ。容量上限のアラートが便利
nasne ACCESSには他にもサムネイルやカバーアート表示速度の大幅改善や、nasne ACCESSのウィジェットがオートアップロードの状況やnasneのHDD容量上限、録画件数上限を知らせるアラート表示に対応するといったアップデートが行なわれている。ただし、これらはNASとしてのリモートアクセス機能であるほか、追加プラグインを購入することなく無料で利用できる機能だ。
番組視聴としての用途がメインであれば、リモート録画予約機能も備えたTV SideViewのほうが圧倒的に使いやすい。また、宅内での番組視聴であればTV SideViewは15秒スキップ/10秒戻しが使えるのに対し、nasne ACCESSは宅内であってもタイムバーによる再生時間指定しかできない。
nasne ACCESSを使ったNAS機能は無料で利用できることに加え、テレビ視聴とNASは用途としても異なるため、アプリが2つになってもさほど利便性は変わらないだろう。nasne ACCESSのリモート視聴はスマートフォンからのリモート録画予約を必要とせず、NASとしての活用がメインというユーザー向けと感じた。
なお、自宅にテレビがなくスマートフォンだけでテレビを楽しみたいというユーザーは、nasne ACCESSもインストールしておくと便利だ。というのも、nasneのHDD容量はTV SideViewでは確認できず、nasne本体にブラウザ経由でアクセスする「nasne HOME」経由でないと確認できないからだ。
そのためドラマやアニメなどを繰り返し録画している場合などに、nasneの容量上限に達してしまい次回の録画ができない、という場合もTV SideView単体では気がつきにくいが、nasne ACCESSのウィジェットを設定しておくと容量や録画件数の上限が近づいたタイミングでアラートを表示してくれる。録画ミスを防ぐためにも設定しておきたいウィジェットだ。
ちなみに、nasneのリモート視聴が設定できるのは最大6台までという制限が設けられているが、nasne ACCESSとTV SideViewは別の端末としてカウントされ、同じスマートフォンであっても2台分の登録になってしまう。使用端末が少ないユーザーであれば問題はないだろうが、家族など複数ユーザーで使うことを考えるとAndroidのリモート視聴登録はどちらか1つにしておくほうがいいだろう。できれば同じ端末であれば別アプリであっても1台とカウントするよう仕様変更を望みたいところだ。
ニコニコ実況+リモート視聴時の15秒スキップも可能なtorne PS Vita
TV SieView、nasne ACCESSがどちらも「放送中番組や録画番組を外出先から視聴する」というシンプルな機能に特化しているのに対し、ユニークな機能を搭載したのがtorne PS Vitaだ。前述の通り、すでにPlayStation 3/4では搭載されているニコニコ実況との連携機能が搭載され、リモート視聴中にもニコニコ実況を楽しむことができる。
ニコニコ実況は、ニコニコ動画の関連サービスとして提供されている、テレビを見ながらリアルタイムに感想を投稿できるサービス。torne PS Vitaでこの機能をオンにすると、放送中のテレビ番組と同時にニコニコ実況のコメントを表示できるほか、無料のアカウント登録を行なえば放送から10日以内の録画番組でも実況を表示可能。さらに有料のプレミアム会員であれば10日を過ぎた録画番組であってもニコニコ実況を表示できる。
実況のコメントはテレビ番組の上下に表示する仕組みになっており、機能をオンにすると番組の表示が縮小され、その余白にコメントが横へ流れるように表示される。コメント表示行はPS3/4では1行から3行までカスタマイズできるが、Vitaの場合は画面サイズに制限があるためか1行または2行のみとなっている。
ニコニコ動画の場合、コメントは動画の上に表示されるため、人気のある動画ほどコメントが増えて動画そのものが見にくくなってしまうが、torneのニコニコ実況連携の場合は画面サイズこそ小さくなるものの、番組の上をコメントが横切ることはないため、番組は番組、コメントはコメントとして楽しめる。筆者は「動画を見たいのにコメントがあって見られない」ことが苦手でニコニコ動画はあまり楽しめないのだが、torneの表示形式は番組そのものも番組の盛り上がりもどちらも楽しめるため、話題の番組などを視聴する際は積極的にオンにしている。
torne PS Vitaでのニコニコ実況対応もPS3/4と変わらないのだが、リモート視聴でも変わらずニコニコ実況を楽しめるのが面白い。外出先でテレビや録画番組を楽しむ時も、自宅にいるのと変わらない感覚で実況を表示できるため、サッカー観戦などのスポーツ中継を楽しむ時には活躍しそうだ。
番組の視聴感も自宅の環境そのまま。TV SideViewやnasne ACCESSではできない15秒スキップ/10秒戻しに加え、シーンサーチも使えてしまう。チャプタスキップのみリモート視聴では利用できないが、これだけの時間操作機能が使えれば十分だろう。さらにシリーズの連続再生といった便利な機能や番組の削除も可能だ。ニコニコ実況による視聴の楽しさという要素も含め、今回のリモート視聴対応の中で、もっともnasneの機能を楽しめるのがPS Vitaと感じた。
外出先でも自宅と変わらぬ体験。ぷららの無制限LTEとの組み合わせが便利
nasneのリモート視聴がリリースされた直後、ちょうど長崎県の離島へ旅行するタイミングだったため、自宅(東京)のnasneにリモート視聴を設定した上で旅行中にもスマートフォンからのリモート視聴を試してみた。
事前の設定さえ行なっておけば、操作そのものは自宅とまったく変わらない。自宅でnasneの番組を見る感覚でアプリを起動し、見たいテレビ番組を選ぶだけでいつものように再生できる。リモート視聴のためスキップ機能が起動しないという違いはあるものの、自宅にいるような感覚でテレビを楽しめる。
とはいえユーザー体験という点では大きな違いだ。長崎県は東京と比べると民放が4局と少なく、放送されている番組も異なる。深夜にテレビをふと付けると、東京ではすでに終了しているアニメ番組が、最終回よりも数話前から放送されているなど、国内旅行ではおなじみのシチュエーションに今回も遭遇した。
しかし、nasneのリモート視聴ならどこにいても自宅と変わらないテレビ番組や録画番組を視聴できる。長崎県の離島にいながらも東京のテレビ番組表から見たい番組を選べるというのは実に新鮮な体験だ。旅行であればわざわざテレビを見なくてもいいかもしれないが、出張の際にいつも見ているテレビドラマの続きを見たい、という時にも非常に重宝するだろう。
また、今回便利だったのが、ぷららのMVNOサービス「ぷららモバイルLTE」が提供する「定額無制限プラン」との組み合わせ。このプランは通信速度が上下3Mbpsに制限される代わりに、携帯電話キャリアで当然のように行なわれている月ごとの容量制限がなく、月にどれだけ通信しても料金は定額という、ヘビーユーザーには非常に魅力的なサービスだ。このサービスを使い始めて1ヶ月近くが経つが、実際のスピードテストでは3Mbpsどころか4Mbps近くを記録することもあり、未だに快適に使えている。
筆者のnasneはリモート視聴を「速度優先」モードに設定しているが、実効が3Mbps以上ということもあって、ぷららモバイルLTEのSIMを装着したスマートフォンからは快適に視聴できた。電波状況にも左右されるものの、LTEが安定して通信できる場所であればほぼ動画の寸断もなく番組を楽しめる。ただし、都内で再度試したところ、電波のアイコン表示が良くても寸断が発生することもあるため、同一エリアの混雑度次第といえそうだ。
一方、速度優先モードを設定前に録画した番組は容量が大きいようで、速度優先モード設定以降の番組と比べて寸断が頻繁に発生した。画質に関しては速度優先の場合、フルスクリーン表示時に若干のブロックノイズを感じるが、視聴に違和感を感じるほどではない。LTEなどのモバイル回線を使って視聴したい場合は速度優先のほうがいいだろう。
エリアの通信環境に依存するとはいえ、ぷららモバイルLTEの定額無制限プランとの組み合わせは、データ通信の容量制限を気にするストレスから解放されというのが何よりの幸せ。nasneが実現したリモート視聴を存分に楽しむという点では、ぷららモバイルLTEとの組み合わせは非常に魅力なコンビと言える。
なお、PS Vitaの初期モデルではWi-Fiに加えて3Gに対応したモデルも発売されている。試しにぷららモバイルLTEのSIMを装着し、3Gのアクセスポイントを設定して使ってみたが、通信はできるもののさすがに動画視聴は厳しく、テレビ放送は頻繁に画面が止まり、3倍モードで録画した番組も数十秒程度で番組が止まってしまう。
SIMロックフリーのNexus 7 2013にぷららモバイルLTEのSIMを装着してテザリングを実行、PS Vitaから接続したところこちらは問題なく視聴できたが、ぷららモバイルLTEでテザリングするにはSIMロックフリー端末が必要なためハードルも高い(iOS 8を適用したNTTドコモのiPhoneであればテザリングは可能)。今では3Gモデルは販売されなくなってしまったVitaだが、いまこそ改めてLTE対応モデルが欲しくなった。
待望のリモート視聴は満足の仕上がり。PC対応に期待
nasneユーザーにとって待望とも言えるリモート視聴。対応アプリの数が多いためややこしく感じる面もあるが、設定から操作までは非常にシンプルで、外出先でも自宅と変わらない感覚でテレビを楽しめるのは非常に嬉しい。通信環境さえ整っていれば、いちいち事前に書き出し操作を行なわずとも録画番組を楽しめ、ワンセグやフルセグより安定した環境で放送中の番組も楽しめる。
筆者はリモート視聴のためにDTCP+対応NASのRECBOX「HVL-ATシリーズ」を導入していたため、外出先から録画番組を視聴するという体験はさほど変わらないのだが、録画番組のみの対応のDTCP+に対し、放送中のテレビ番組も楽しめるのは大きなメリット。また、DTCP+環境を構築せずとも500円程度のアプリ課金でリモート視聴が利用できるようになるというリーズナブルさも嬉しい。
一方で、スマートフォンの環境は整ったものの、現在のところnasneのリモート視聴はPCには対応していない。DTCP+はPCクライアントも提供されているため、この点は対応を期待したいところだ。
実売2万円程度の価格で本来の録画機能に加え、外出先での録画番組はテレビ放送も楽しめるなど機能が非常に充実した今回のアップデート。テレビを持っていないユーザーがスマートフォンでテレビ番組を楽しむために購入しても便利に使えるだろう。筆者もこれで録画番組の消化がいっそうはかどりそうだ。
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