エンタメGO

「無職転生 II」や、復活「はたらく魔王さま!!」に歓喜! 7月期注目アニソン

「無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~」第0話ED主題歌「Clover」
(P)2023 TOHO CO.,LTD 理不尽な孫の手/MFブックス/「無職転生Ⅱ」製作委員会

筆者は、'90年代にオタクになったちょっと古い世代の人間なので、ノーストレスのアニメでは物足りないと感じることがある。主人公が苦労もなくモテまくり、スローライフや無双をすると、ふとドラマ部分に刺激を求めてしまうのだ。

本稿で取り上げる作品は、主人公やその仲間達が困難や理不尽にぶち当たる。悩んだり乗り越える過程で、登場人物達の感情がダイナミックに揺れ動く。その振幅こそドラマだと筆者は考えており、なんでもかんでも友情・努力・絆が必須という訳ではないが、何かしらの壁はあってほしいなと思ったりする。

とはいえ、異世界転生アニメは、毎クール1話を必ずチェックするし、今期も自動販売機のアニメは楽しく最後まで視聴させていただいた(「またのご利用をお待ちしております」)。

本企画は、音楽的にも音質的にも注目のアニソンを紹介するもの。さっそく、今期の注目ソングをみていこう。

「無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~」第0話ED主題歌「Clover」(96kHz/24bit)

「無職転生 II ~異世界行ったら本気だす~」第0話ED主題歌「Clover」

理不尽な孫の手氏原作による大人気小説のテレビアニメ第2期。様々なショックで男性のそれが不能になってしまった主人公ルーデウスが、序盤の泥沼編で本気で生きることに再び目覚め、中盤以降のラノア大学編では転移事件の謎を研究する傍ら、級友やフィッツ先輩との心の交流を重ねていく。

ルディの中身は、だいぶ下品でスケベな中年おじさんなので、時々お下劣な展開もあるのだが、ベースは山あり谷ありな“人生”を描いた作品だと捉えている。

シルフィ(フィッツ)との本当の意味での再開は「おめでとう! そしてありがとう!」と歓喜した。後半クールはいよいよ結婚生活が描かれるとあって、「ルディ、地上波で放送できる内容でくれぐれもよろしく!」と野暮な心配をしてしまう。

前半クールの最終話を見た後に、もう一度第0話を見ると、シルフィがどんな思いでルディとの真の再会を待ち続けたのか、彼女の覚悟の原点や芯の強さを思うと、胸にくるものがあった。

EDの作詞作曲・歌唱は、無職転生ではお馴染みの大原ゆい子。編曲はMANYOが担当。ハイレゾ版をチェックした。

まず、第一にピアノとアコースティックギターの生々しい質感とトランジェントの良さは聴きどころ。96kHz録音による生音は、音像一粒一粒に奥行きがあって、スピーカーの周りにまるで掴めそうなくらい立体的に浮かび上がる。大原のボーカルは、コンプレッションこそ強めだが、口元感や今そこで歌ってくれている感覚は味わえた。サビに入ると、ベーストラックが分厚くなって、やや中低域が飽和気味になるのは気になった。

Control 1 PROのような小型のスピーカーでも似た傾向の直接音が鳴っていたので、ベースが結構上の帯域までワイドに作っていると思われる。MANYO氏の音数少なめのバラードアレンジは、同氏のファンにもきっと刺さるのではないか。フルバージョンをスタジオマスターで聴いてほしい。

  • Amazon music HD:ハイレゾ配信
  • Apple Music:CD音質配信

【moraで購入】

【e-onkyo musicで購入】

「わたしの幸せな結婚」OP主題歌「貴方の側に。」(48kHz/24bit)

アニメ「わたしの幸せな結婚」 ノンクレジットオープニング|りりあ。「貴方の側に。」

顎木あくみ氏による同名小説のテレビアニメ版。同作はアニメ放送前に実写映画化されており、数年前まで遡れば朗読劇も催されている。明治・大正をイメージした架空の日本を舞台に、薄幸の少女・美世とエリート軍人・清霞の政略結婚から始まる和風シンデレラ・ストーリー。

どん底の生活で生きる希望もなかった美世が、一見冷徹で圧倒的な存在の清霞と意外にも早く惹かれ合って、互いに信頼を深めていく。その過程だけでも十分面白いのに、異能と呼ばれるファンタジー要素を加え、バトルや謀略を絡めて描く展開に筆者はドハマり。キネマシトラスの超絶美麗な映像も見所の1つだった。

美世が徐々に自分の主張をして、自信を取り戻していく過程は、自立を想起させる感じがして個人的には好きな描写だった。2期以降、異能も含めてどう彼女自身が活躍していくのか楽しみである。

主題歌は、シンガーソングライターりりあ。による作詞・作曲。OP映像との見事なシンクロに鳥肌が立った方も多いのでは。moraにはハイレゾ版があるが、e-onkyoには配信自体がない。レーベルの販売元を担うのがソニー系列だからだろうか。ただ、OTOTOYにはハイレゾ版が配信されていた。

よく整理されたミックスだと感心する。デスクの小型スピーカーやテレビのAAC圧縮の音声では気付かなかったが、ローエンドがかなり下まで入っている。ブヨブヨと太り過ぎなベースラインではなく、適度に引き締まり、楽曲に重厚感を与える。

りりあ。のボーカルはコンプレッションが強めでもう少しダイナミクスはほしいところ。左右に定位するアコギとエレキは、エフェクトも最小限にまとめているのか、ディテールが豊かできめ細やか。

44.1kHzのCD音質はもちろん、ストリーミングのロッシー配信では48kHzから44.1kHzへと非整数倍の変換が制作過程で行なわれている。これがギターやシンセ等の音の輪郭を滲ませ、いかにも人工的なデジタル録音という印象を強くしてしまう。オリジナルのハイレゾ版と比較しないと気付くことは難しいのだが、一度聴くと元には戻れない。48kHzとは言え、マスターを聴く価値は十分にあるだろう。

アニメ「わたしの幸せな結婚」 ノンクレジットオープニング|りりあ。「貴方の側に。」
  • Amazon music HD:ハイレゾ配信
  • Apple Music:CD音質配信

【moraで購入】

「はたらく魔王さま!!」2nd Season OP主題歌「光のない街」(96kHz/24bit)

TVアニメ『はたらく魔王さま!!』2nd Season OPテーマ / nano.RIPE「光のない街」Official Music Video / Hikakrinonaimachi

和ヶ原聡司氏原作による同名ライトノベルのテレビアニメ。テレビアニメの第1期が終了してから実に9年ぶりにアニメの2期が始まって、後半クールはなんと10年後に開始されているという、奇跡のような作品。

前半クールでは無数の謎が提示され、後半クールではある程度まで背景が明かされつつある。筆者がオタクになった'90年代は、設定が難解なファンタジー系のライトノベルは珍しくなく、理解しようと何度も原作を読み返したものだ。

筆者は原作未読であるので、設定の不明点はあまり気にせずに、魔王城に集まる面々の悲喜こもごもを楽しませてもらった。特に第1期ではギクシャクしていたそれぞれの世界の面々が、当たり前のように魔王城のもとに集って、あげく共闘までしている様に、ほんわかせずにいられない。

主題歌は、10年前のリアルタイム視聴勢にはたまらないであろうnano.RIPEの再登板。前半クールで楽曲提供というかたちだった「水鏡の世界」は本作のシングルでは2023年バージョンがボーカルのみ再レコーディングしてリミックスされている。光のない街は、単曲配信のみ96kHzのオリジナルフォーマットで配信されているので試聴は96kHz版で行なった。

やはり96kHz制作のバンドものはいい。48kHzの方がパンチが出るとか、まとまりが出るという意見が大勢だと想うが、あえて96kHzも魅力的だと言いたい。筆者は、奥行きや音像の立体感、低音楽器の密度や質感、アンプからマイクで録る竿(ギター/ベース)の音がライブのようにリアルなことに96kHzの意義があると思う。

本楽曲では、ドラムのタムは実在感があり低域も密度があって聴いていて気持ちいいし、エレキの音は厚みがあってライブの会場で聴く情報量に近いものがある。きみコのボーカルは、どことなく優しいなかにも情動の強さを滲ませながら、疾走感のある楽曲に芯を通している。音量を上げると、ライブで聴いてみたくなるような没入感に浸れる。イヤフォンや小型スピーカーで聴くと、シンセパートの音が聴きやすかったりして、新たな発見もあった。

TVアニメ『はたらく魔王さま!!』2nd Season OPテーマ / nano.RIPE「光のない街」
(P)Lantis
  • Amazon music HD:CD音質配信
  • Apple Music:CD音質配信

【moraで購入】

【e-onkyo musicで購入】

e-onkyo musicは、Qobuzとの事業提携により、新しいプレーヤーアプリを開発し、ハイレゾに対応したストリーミングサービスも開始すると予告している。

秋クールのアニソンを紹介する記事を発表する頃には、おそらくサービスが始まっているだろう。モバイル/PC用の新アプリで、ストリーミングもダウンロード購入もできるようになる予定だ。ダウンロード購入とストリーミングが統合されるのはとても魅力的である。ストリーミングはアプリ、ダウンロード購入はブラウザと分ける必要がないのは、想像以上に快適だろう。ストリーミング再生には別途契約が必要になるだろうから、料金面も気になるところ。

ネットワークオーディオユーザーとしては、Qobuz対応のネットワークストリーマー/トランスポートなどで、そのまま国内展開のQobuzが使用できるか未定な点が気になるところ。「そんなの使えるに決まっているだろう」とツッコミを頂戴しそうだが、筆者は実際に使ってみるまで油断はできないと考えている。

対応の有無はともかくとして、安定性・対応フォーマット・ライブラリ連携・レスポンスなど、快適なネットワークストリームに必要な要素が国内向けのサービスでも維持されるかは注目したいポイントだ。

ライブラリは、e-onkyo musicでハイレゾ配信されているアニソンでも、ストリーミングで聴く時はCD音質になってしまうのではと心配しているし、アカウントにしても新たにQobuzアカウントを作るのか、e-onkyo musicのアカウントを引き継げるのか、「スムーズに移行」の一言の中に想像はいくらでも膨らむ。さらなる詳細の発表を待ちたい。

【使用機材】

  • NAS/ネットワークトランスポート「Soundgenic RAHF-S1」SSD 1TB(アイ・オー・データ機器)
  • USB-DAC「NEO iDSD」(iFi audio)
  • プリメインアンプ「L-505uXII」(ラックスマン)
  • スピーカー「RUBICON2」(DALI)
  • ポータブルプレーヤー「PLENUE R2」(COWON)/ HPH-MT8(YAMAHA) / IE 400PRO(ゼンハイザー)
橋爪 徹

オーディオライター。ハイレゾ音楽制作ユニット、Beagle Kickのプロデュース担当。Webラジオなどの現場で音響エンジニアとして長年音作りに関わってきた経歴を持つ。聴き手と作り手、その両方の立場からオーディオを見つめ世に発信している。Beagle Kick公式サイト