防水対応で操作性が向上した「ウォークマンW」でジョギング
-容量2倍、実売1万円。楽曲管理はよりシンプルに
ソニーが'09年よりシリーズ展開を開始したイヤフォン一体型ウォークマン「Wシリーズ」の新モデル「NWD-W253」(以下W253)が5月22日より発売された。
カラーはホワイト、ピンク、ブラック、ライムグリーンの4色を用意 |
転送用ソフトは従来のSonicStage Vから、X-アプリ対応となったほか、ドラッグ&ドロップ対応の「Content Transfer」からも転送可能。W202より採用したダイジェスト再生機能「ZAPPIN」(ザッピン)は引き続き搭載している。
今回は、主な用途であるジョギングでの使用感や、ソフトの使い勝手などを中心に試した。
■ ジョギング向けを強く打ち出した新モデル
ランナーが走る際に持っているもので最も多いのは、携帯電話(54.3%)で、財布/小銭(44.7%)、カギ(39.7%)に続き、39.4%がポータブルオーディオプレーヤーを挙げたというライフネットの調査がある。ジョギング向けのオーディオプレーヤーとして考えられるのは、iPod shuffleなどクリップ留めできる小型プレーヤーや、Bluetoothヘッドフォンとプレーヤーの併用などがある。また、アップルのnike+対応iPodや、auの「Run & Walk」対応携帯電話なら、自分のワークアウト記録を管理して、効果的なエクササイズが行なえる。イヤフォンでも、既に多くの防水対応モデルが販売されている。
そんな中、イヤフォン一体型のウォークマンWが新たに防水対応となり、昨今のランニングブームを受けて「スポーツ(主にジョギング)時に音楽を楽しみたい人」をターゲットとして登場した。従来のW202でもジョギングでの利用は想定されていたが、W253では汗や雨天時も気にせず利用できるほか、終わった後に水洗いできるようになったことで、よりスポーツに適した製品となっている。
水洗いが可能に | 水抜き方法の注意書き |
防水性能としてはJIS IPX5に対応し、「あらゆる方向からの水の噴流に対して保護される」としている。W202はUSB端子が露出していたが、W253ではキャップが設けられている。このため、水洗いの際は忘れずにキャップを閉めることが必要だ。また、端子のキャップには防水のためのパッキンがついており、端子部はやや奥まった位置にある。このため、付属スタンド以外のUSBケーブルを使うと、端子が届かない場合もあった。
なお、防水となる対象は真水のみなので、海水やプールの水、洗剤などは対象外。また、イヤフォン部分は非耐水エリアのため、内部に水が浸入すると音が聞こえにくくなるという。そのため、濡れた場合の水抜きの方法についての注意書きも同梱されている。
メガネを掛けてもケーブルとは干渉しない | 左右の本体をつなげた状態 | USB端子部には防水のパッキンを備えている |
本体のカラー名はライムグリーン、ブラック、ピンク、ホワイトとW202から変わっていない。ただし、W202は4色ともにシルバーのヘアライン仕上げの部分を設けていたが、W253では、表面に光沢を持たせた仕上がりとなっている。これは、スポーツウェアに合わせたデザインにしたためだという。
限定モデルのNWD-W253 |
本体の装着方法はW202と同様、「耳掛け」ではなくイヤーピースを耳穴に挿入する。磁石でくっついている左右の本体を離してから耳に着ける。ネックバンドはワイヤー状で、バンドと外耳の間に適度なスペースができるため、メガネをかけていても邪魔にならず、髪型にもあまり影響しない。
装着例 |
イヤフォン部分はW202から変更は無く、13.5mm径のダイナミック型ユニットを搭載。ユニットから角度を付けて飛び出したイヤーピースを耳穴に入れる「アングルド・イヤーピース」形状となっている。
磁石が強力なため、持ち運び時にクレジットカードなどに影響しないよう、左右の本体を固定するカバーが同梱されている。従来モデルW202のカバーは、全体を覆う形だったが、W253では接合部分だけを留める形で、外れにくくしている。そのほか、USB接続用のスタンドも付属している。
本体をつなげると「く」の時になる | イヤフォン部(イヤーピースを外した状態) | バッテリ残量などを確認できるステータスランプ |
左右の本体は磁石でつながる | カバーは従来モデルに付属のものより小さくなったが、より強く固定できるようになった |
付属のUSB接続用スタンド | 本体を装着すると斜め向きになる |
■ フォルダスキップ対応で操作性向上
再生フォーマットは、W202と同じくATRAC/MP3/WMA/AAC/リニアPCM(WAV)で、moraで購入した曲などDRM付きファイルには非対応。
イヤフォン部分に変更は無いとのことだが、ジョギング時に聴いていると、装着感が良くなったためか多少揺れても低音の力強さは失われず、悪条件の中でも安定した再生ができている。ただ、静かな場所で聴いていると、防水筐体にしたことが影響したためか、音質は全体的に少しこもった感じを受け、高域の抜けがもの足りなくもある。
内蔵バッテリでの連続再生時間はMP3/128kbpsで約11時間。充電はUSB経由で行ない、3分間の充電で約90分間再生できるクイック充電にも対応する。
操作面の変更としては、楽曲の送り/戻しなどの操作がW202のジョグダイヤルから、ジョグレバーに変更された。また、新たにフォルダスキップにも対応。ジョグレバーを前方に倒して長押しするとフォルダ送り、後方だとフォルダ戻しとなる。メモリ容量が倍となったことでより多くの楽曲を記録できるようになったが、アルバムやアーティスト単位で楽曲を探しやすくなったことは便利だ。なお、フォルダは最大8階層まで認識できる。フォルダ送りをしたときには「NEXT FOLDER」、フォルダ戻しをしたときは「PREVIOUS FOLDER」と英語で音声案内される。
曲の一部をダイジェスト再生する「ZAPPIN」は引き続き対応。楽曲のサビ部分のみを連続で再生するもので、ディスプレイを持たないこのモデルの主要検索機能となっている。サビの検出には、付属ソフトのx-アプリなどを使った楽曲の「12音解析」を利用し、サビに相当すると判断された部分を抜き出して再生する。ロング/ショートの2モードを用意し、ロングは1曲につき15秒、ショートは4秒ずつ次々と再生される。ZAPPINとシャッフルの併用も可能。
ジョグレバーはR側に備える | 右手で本体上下を挟むように操作する | shuffleボタン |
通常再生中にジョグダイヤルを長押しすると、「ZAPPIN IN」という音声案内とともにZAPPIN再生に移行。曲と曲の間はわずかにフェードイン/アウトし、効果音も入ることで曲が変わったことがはっきり分かる。音楽番組のカウントダウンを聴き続けるような感覚だ。再びジョグダイヤルを長押しするとロング/ショートの切り替えが行なわれる。短押しすると、「ZAPPIN OUT」という声で通常再生に戻り、途中の楽曲が曲頭から再生される。ZAPPINのまま左右の本体をつなげて電源OFFにしても、もう一度再生すると引き続きZAPPINで聴ける。
なお、再生フォーマットのうちWAVとAAC(.mp4/.m4a)にサビ情報を付加することはできない。また、x-アプリや後述のContent Transferで転送した楽曲以外についてはサビ検出は行なわれない。サビ検出されなかった曲のZAPPIN再生については、45秒以降の部分を“一般的にサビが多い”と判断して再生する。
■ 走ってみた
W253を装着して、1時間程度のジョギングを行なった。走っていても本体が上下することは無く、頭に装着しているという煩わしさはほとんど無い。W202のときは、個人的な感想として、装着したときに耳穴の上部にわずかな隙間ができることがあったが、W253では前述の筐体設計の変更のためか、より頭にフィットしているように感じた。
本体の重さは約43gで、W202の約35gに比べると若干重くなっている。しかし、装着感はW253の方がよくなったため、走っていて重さが気になることは無かった。ケーブルが邪魔にならない装着感も、走ることに集中できる要素の一つとなっている。
走るという行為は、好きな人ならいつまでも続けられると思うが、飽きっぽい性格でも、好きな音楽を聴きながら、しかも着けている感覚をあまり気にせず続けられる点は大きく、「このアルバムが終わるまでは続けよう」といった小さな目標をもって走りやすい。走りながらの操作でも、基本的にはジョグレバーの前/後や押し込みだけなので、操作を間違うこともほとんどなかった。汗を多くかいても、走り終わったあとに水洗いすれば、清潔に利用できる。
なお、Wシリーズの発売に合わせて、フィットネスアプリケーション「way」とコラボレーションした「“WALKMAN”meets“way”」をスペシャルサイトにて展開している。ここでは、運動強度に合わせたBPM(Beat Per Minutes)で作られた音楽をダウンロードでき、ランニング、ウォーキング、ヨガの3種類で合計13曲(6月4日に12曲追加予定)を用意。ユーザーが好きな音楽を組み合わせて自分のフィットネスプログラムを作れる。楽曲ダウンロードだけでなく、プロのランニングコーチによるアドバイスなどの情報も公開されている。
この専用楽曲を1つのプレイリストとしてフォルダに収めておけば、フォルダスキップ機能を使って、すぐにこのプレイリストの曲を始められる。他の普通の曲を聴きたくなったときにも、すぐ戻せるので、この点でもフォルダスキップに対応した意味は大きいといえる。
■ Content Transferでシンプルに管理可能
x-アプリでの転送に対応 |
転送ソフトは、従来のW202はSonicStage Vを使用していたが、W253では新たに他のウォークマンと同様に「x-アプリ」に対応。x-アプリは本体メモリ内に収納されており、パソコン接続時にインストールできる。
そのほか、W202と同様に、エクスプローラ画面でのドラッグ&ドロップによる転送も可能。ウォークマン本体のMUSICフォルダに入れることで、楽曲ファイルとして使用できる。
さらに、ドラッグ&ドロップで転送できるソフト「Content Transfer」にも対応。このソフトは、iTunesやWindowsのエクスプローラなどからドラッグ&ドロップすることで、最適なフォルダへ自動で転送されることが特徴で、ウォークマンの他シリーズでは、Podcastコンテンツを他の音楽と区別する場合などに便利だ。W253の場合はmoraやLISMOで買った曲が使えないので、高機能なx-アプリを使わなくても、このソフトだけでシンプルに管理できる。例えばiTunesのライブラリからドラッグ&ドロップした場合は、自動でアーティスト名/アルバム名のフォルダが作られ、楽曲が格納される。
ZAPPINでサビを検出させたい場合は12音解析が必要となるが、x-アプリだけでなく、Content Tranferでも転送時に12音解析を掛けることが可能。12音解析の設定項目は3種類で、ウォークマンWや、おまかせチャンネル(Wシリーズは非対応)対応ウォークマンへの転送時のみ12音解析する「自動」と、「常にオン」、「オフ」から選べる。
また、他のパソコンやLAN HDDなどにある楽曲を転送する場合でも、一度Content Transferの入ったPCにファイルを保存する必要は無く、フォルダをそのままソフトの画面にドラッグ&ドロップすることで転送できることは細かい点ながら便利だ。そのほか、本体をパソコンに接続したときに自動で楽曲を同期させるという設定も行なえる。このように、ウォークマンWに必要な機能は「Content Transfer」だけでカバーできる。なお、このソフトは本体に格納されていないため、入手方法はサイトからのダウンロードとなる。
シンプルな画面のContent Transfer | iTunesからの自動転送にも対応。ウォークマン接続時に、自動で楽曲を追加することができる | 「MUSIC」フォルダ内にあるファイルを「ミュージック」として表示する |
Content Transferで楽曲削除画面 | 12音解析の設定 | 楽曲の自動同期の設定 |
PC以外でも、新たに同社コンポ「ネットジューク」や、PlayStation 3(新型/旧型)からも楽曲を転送できるようになった。PS3に接続した場合は、W253内の音楽ファイルのアップストリーミング再生も行なえる。
PS3でウォークマンWを認識 | 楽曲の再生のほか、PS3からの転送先としてウォークマンWを選べる |
■ ジョギング機能の進化に期待
防水への対応と操作性の改善で、ジョギング用プレーヤーとしての魅力が増したW253。ロスレス圧縮フォーマットやDRM付きのファイルに対応しないという点はあるが、容量が4GBであることや、曲をドラッグ&ドロップで簡単に管理できることを考えると、手持ちの楽曲すべてを入れるメインの音楽プレーヤーではなく、ジョギング専用として使い分けたほうがよさそうだ。ハードウェアの進化だけでなく、この製品に最適といえるContent Transferとの連携で、製品の使い勝手がさらに向上し、ジョギング向けのプレーヤーとして手ごろな価格のまま、完成度が上がっている。
今後、さらにジョギングに特化した機能を追加するならば、nike+iPodやau Run&Walkのような走行データの管理や、例えばGPSによる走った軌跡を記録するという方法もあるだろう。また、パソコンを通じて、他のユーザーがよく聴いている曲の情報を共有するといったこともできるかもしれない。ただ、機能を載せすぎて本体が大きくなったり重くするのではなく、よりシンプルな使い勝手を実現させることが、このプレーヤーには求められていることだろう。
今回、少しではあるが走ってみて気づいたのは、ウォークマンW独自の機能であるZAPPINは、目的の曲を検索するという実用性だけでなく、走りながら聴いていると、次々と曲が替わるのが単純に面白く、楽しみながらジョギングを続けられるということ。W253の操作性に大きな不満は無いので、この軽快な装着感や操作体系を維持しつつ、今後も走ることが楽しくなる機能向上や、「“WALKMAN”meets“way”」のような関連サービスの充実にも期待したい。