【新製品レビュー】

高機能セカンドテレビの決定版? 「DMP-HV200」

DIGA連携が光る10型ポータブルVIERA。計画停電にも


DMP-HV200

 2011年3月31日、家電のエコポイント制度が終了した。2010年は過去最高の薄型テレビ販売を記録したが、これからのアナログ停波に向けて、台数の伸びが予想されるのが「セカンドテレビ」だ。地デジ移行の進んでいない家庭内の2台目、3台目のテレビや、移行が遅れている層などで、20~32型程度のテレビ需要が拡大すると見込まれている。

 「高付加価値なセカンドテレビ」といえるのが、パナソニックの「ポータブルVIERA」こと「DMP-HV200」。10.1型/1,024×600ドット液晶を搭載し、チューナは地上デジタルの12セグとワンセグに対応。内蔵の4アンテナ/4チューナを用いたダイバーシティシステムにより、外部アンテナ端子を接続せずにテレビを受信できる。

 「テレビ」機能だけでなく、有線/無線LANのネットワーク機能を搭載し、DLNA/DTCP-IPの「お部屋ジャンプリンク」に対応する点がHV200の特徴。同社のブルーレイDIGAに録画した番組や、DIGAのチューナで受信中のBS/地デジ番組をLAN経由で視聴できる。また、YouTubeの視聴やフォトフレームモードの搭載。別売カメラ「TY-CC10W」を追加によりSkypeのビデオ通話などの多くの機能を搭載している。IPX3相当の防滴にも対応する。

 加えて、別売のバッテリ「DY-DB35(直販価格17,850円)」を追加することで、バッテリ駆動に対応。最長で3時間30分のテレビ視聴が可能になる。アンテナ接続せずに、さらに電源接続することなしに使える。バッテリ駆動対応ということは、東京電力管内で始まった「計画停電」時でも、大いに活用できる。この点も含め、新ポータブルVIERA「DMP-HV200」をテストした。



■ スタンド一体型のデザイン。アンテナも搭載

 接続端子やカードスロットなどを兼ねたスタンド部からのアームで10.1型のディスプレイ部を支持するというデザイン。テーブルトップ型のデザインはなかなかすっきりしているが、ソニーの有機ELテレビ「XEL-1」を思い起こす人も多いかもしれない。ディスプレイ部は前/後のチルトに対応する。

 また、スタンドの上の部分には、地デジ用アンテナを装備。これを立ち上げることで、アンテナ線接続なしに地デジ視聴を行なえる。また、アンテナを開いた部分には、バッテリ収容スペースを用意。別途バッテリを追加することで、AC電源無しにテレビを視聴できる。

10.1型/1,024×600ドットの液晶をスタンド部で保持するボリュームやチャンネル、カーソルキーをスタンド部に備えているジェスチャーコントロール用のボタンも
側面前/後にチルト後ろにはかなり角度をつけられる

 スタンドの右側部には電源やボリューム、チャンネルなどの各種ボタンやタッチセンサーを装備。背面にはUSBとEthernet、ミニB-CASスロットを備えている。これらのスロットにはすべてパッキン付のカバーが備え付けられており、IPX3相当の防滴を実現。キッチンや水回りでの使用を想定してのもののようだ。

 ディスプレイ上部には、センサーを内蔵している。これはHV200の特徴の一つでもある、手かざしで、非接触でテレビ操作する「ジェスチャーコントロール」機能のためのものだ。国内デジタルテレビとして初の搭載で、2つの非接触センサーと受光部が手の動きを感知し、本体から約5㎝~10㎝の距離で手を左右に動かすとテレビのチャンネル切替や音量調整ができるというもの。もちろんリモコンも付属。リモコンや本体のボタンでの操作も行なえる。

 外形寸法は260×122×208mm(幅×奥行き×高さ)。重量はが約1,120g(バッテリパック除く)

アンテナを立ち上げアンテナ部にバッテリを内蔵ジェスチャ操作用のセンサーを搭載
重量は1,120g。片手で持てるがやや重い背面にEthernetやUSB、ミニB-CASカードスロット、外部アンテナ入力AV入力やヘッドフォン、SDカードスロットを装備する
ACアダプタ底面にACアダプタを接続リモコン


■ バッテリ追加で「配線無し」のテレビに。万能ではないが使えるジェスチャー

メインメニューでテレビや、お部屋ジャンプリンク、テレビでネットなどを選択できる

 まずは、テレビとしての性能をチェックしてみる。起動時間(放送画面が出るまで)はクイックスタート[入]時で7~10秒、[切]時で約12秒以上といったところで、普通のテレビと比較するとかなり遅い。チャンネル設定などは通常のテレビと同じで、地域を選んでチャンネルスキャンを実行する。

 アンテナ入力も備えているが、ケーブルは別売だ。受信環境さえよければ背面のダイバーシティアンテナで地デジ受信が可能だ。東京千代田区の編集部では、地デジ(12セグ)はほとんど受信できないものの、ワンセグだとほぼすべてのチャンネルを確認できた。一方、品川区の自宅(1階)では、すべてのチャンネルで12セグの受信が行なえた。家庭内で受信できれば、ACアダプタ以外のケーブル接続が不要となるので、取り回しの自由度が高くなる。

 12セグ/ワンセグの自動切替のほか、12セグ固定、ワンセグ固定の設定も可能となっている。


チャンネル設定背面にダイバーシティアンテナを装備

 チャンネル切り替え時間は受信環境にもよるが2~3秒程度。普通のテレビよりはやや待たされる感覚はある。録画機能はないものの、番組表やお好みチャンネルなどの機能も搭載しており、テレビとしての基本機能に不満はない。

番組表2~5チャンネルまで変更できる番組表の設定
サブメニューで機能呼び出しお好みチャンネル地デジ/ワンセグを自動切り替え
ジェスチャー操作に対応

 また、リモコンだけでなくジェスチャーで操作可能。本体右脇のジェスチャーボタンを押すことで、ジェスチャー操作モードになる。

 手をかざして左から右にスライドすることでチャンネル送り、右から左でチャンネル戻りになる。また、左側に手を長めにかざすことでボリュームダウン、右側にかざすことでボリュームアップとなる。

 チャンネル送り時に、手を早く動かしすぎるとなかなか反応してくれない。ただし、左と右にセンサーがあり、そこにしっかりと動きを認識させるということを意識できるようになると、操作ミスはほとんど起こらない。

 リモコンや本体ボタンの操作のほうが確実ではあるが、手が届きそうで届かないぐらい離れた場所にHV200を置いてある場合、結構実用的に使える。例えばキッチンでの料理中で手が濡れている、といった時にはリモコンや本体は触りづらい。そんな時には「手かざし」のジェスチャー操作はかなり使える機能といえる。

 すべてのシーンに対応できるとは言い難いが、「あれば助かる」シーンは確実に存在する。ただし、不使用時にジェスチャーモードをOFFにしておかないと、近くに寄った時に突然ボリュームが上がるなどの誤動作の元になるので、気を付けたい。

画質モードを選択

 画質モードは、ダイナミック、ノーマル、ナイト、ユーザーの4モードが選択できる。基本はノーマルでもいいが、就寝前に室内灯を落として利用するときなどはナイトモードを選びたい。できれば、輝度にあわせた自動画質調整モードなども搭載してほしいところだ。

 12セグを見る限り画質に不満はない。パネルはグレア(光沢)仕上げで、コントラスト感も高い。解像度は1,024×600ドットとフルHDには足りないものの、10.1型とサイズが小さいために解像感の不足は無い。発色も良く、視野角もまずまず広いので、ベッドサイドにおいて、寝転がりながら見てもそれなりのに楽しめる。

 ワンセグは10型ディスプレイで見ると、ディテールが完全に落ち、フレームレートも足りないので、画質には不満は残る。といってもこれはソースに起因する問題なのでしようがない。ニュースの字幕等はだいたい確認できるので、情報収集という意味ではワンセグ対応は重要だ。

 音質については、セリフなどは明瞭だが、音楽などは聞くと音場感や広がりに欠け、こもった印象は残る。出力は800mW×2chで、ステレオミニの音声出力も装備する。

 計画停電の実施で、期待されるのがバッテリ駆動。今回別売バッテリを追加してテストした。ACアダプタをつながなくてもいいので、設置の自由度も高まるのは大きなメリット。停電とは全く関係なく、家庭内でちょっと部屋を移動するときに一緒に持っていくということもできる。停電時についても、特に夜遅くに停電になった場合は、テレビの明かりがあるだけで心細さもかなり緩和される。エンターテインメントの楽しさだけでなく、テレビの力を感じる瞬間だ。

 連続視聴は約3時間30分。実際に12セグを2時間強使ったところでも、バッテリ表示は3コマ中1コマ残っていた。現在の計画停電の3時間であれば、つけっぱなしにしても大丈夫そうだ。夏には停電の長時間化の可能性もあるとはいえ、停電中もテレビである程度情報収集できるというのは魅力だ。

 また、そもそもの消費電力も15Wで、ACアダプタ駆動時は13W(クイックスタート[入]待機時3W、[切]待機時0.3W)と大型テレビよりは1ケタ以上少ない。迫力やリアリティなど大画面ならではの魅力はあるが、情報が確認できればいい番組などは、HV200を利用すれば省エネ化にも寄与できる。

 SDカード/USBに記録したAVCHD動画やJPEG画像を表示する機能も搭載。メインメニューの[SD]、[USB]の各項目からアクセスして、動画や画像をチェックできる。DIGAで録画した「お出かけ番組」(ワンセグ画質/VGA画質)も再生できる。

 さらに、画像をスライドショーで表示したり、カレンダーや時計とあわせて表示する「フォトフレーム」モードも用意。SDカード内の画像とカレンダーを合わせた表示などが可能となる。

フォトフレームモードフォトフレームモードの設定カレンダーや時計表示も


■ DIGAの機能をHV200で実現する「お部屋ジャンプリンク」

お部屋ジャンプリンクを選んで、DIGAを検出

 ネットワーク関連機能も充実している。有線LANのほか、IEEE 802.11b/g/nの無線LAN機能も搭載しており、DIGAと連携したDTCP-IP/DLNAクライアント機能「お部屋ジャンプリンク」に対応する点も大きな特徴だ。ブルーレイDIGA「DMR-BZT700」と組み合わせてテストした。

 メインメニューの「お部屋ジャンプリンク」からDMR-BZT700を選択すると、「ビデオを見る」、「放送を見る」、「写真を見る」の選択画面が現れる。

 最大の特徴といえる「放送を見る」はDIGAのチューナーを使って、VIERAにネットワーク経由で番組を転送する機能だ。地デジが受信できればHV200のチューナを使えばいいのに? と思う人もいるかもしれない。だが、この機能を使うことでHV200がチューナを搭載していないBS番組を、DIGAのBSチューナを介してみることができる。あるいは受信環境が安定しない場合、別室のDIGAのチューナを利用して、HV200で番組視聴ができるのだ。対応のDIGAは同社のホームページで案内している。

 放送を見る場合、視聴開始まで5秒ほど待たされる。この間にDIGA側で約6MbpsのMPEG-4 AVC/H.264に変換して転送する。また、一時停止や[30秒戻る]などの操作もできるが、2秒ほど待たされる。なお、テレビでの直接視聴と比較すると、DIGA経由の放送視聴では変換しながら転送するため遅延が発生する。使ってみた限りでは遅延時間は約6秒程度だった。

ライブ放送を見る「放送を見る」、録画番組を見る「番組を見る」放送の種類を選択。本体には地デジチューナしかないが、BSやCSも見られる点が特徴放送を見るでは、一時的に録画しながらDMP-HV200に転送する
チャンネルを選択「放送を見る」の視聴画面

 HV200でもBSが見られるなど、BS視聴が多い人にとっては、相当に魅力的な機能だ。ただし、DIGA側で録画している場合などには使えないなど制限もあるので、この点は注意したい。今後のDIGAなどでもこの方面の進化には大いに期待したい。


録画番組。DIGAの録画リストを呼び出し

 「ビデオを見る」は、DIGA内の録画番組をDMP-HV200で視聴可能にする機能だ。ネットワーク内のDIGAを選択すると、DIGAの録画リストが表示され、録画順や未視聴、スポーツ、音楽などのジャンル順で番組を探して、再生できる。

 番組を選択すると3秒程度で再生を開始。早送りや戻しが行なえるほか、リモコンのサブメニューボタンを押して、30秒スキップなどの機能が利用できる。また、DIGAで録画した番組はオートチャプタ機能によりチャプタ設定されているため、リモコンのスキップ/バックボタンでCM飛ばしも行なえる。さすがにDIGAを直接操作しているときと比べるとレスポンスは遅めとなるが、十分に実用的な動作速度だ。ただし、IEEE 802.11gの無線LAN環境だと、地デジ録画番組が時々ストップしてしまうことがあった。できればIEEE 802.11nや有線LANの接続が望ましい。

 お部屋ジャンプリンクの全機能に対応するのは、2010年秋以降のブルーレイDIGAで。対応のDIGAユーザーにとってはかなり魅力的な機能といえるだろう。

放送番組の操作パネル録画番組の操作パネル

 さらに、YouTubeやSkypeにも対応。YouTubeはPCなどで使っている自分のアカウントを入力して、マイページなども閲覧可能となっている。別売カメラ「TY-CC10W」を追加することでSkypeのビデオ通話が可能となる。そのほか、パナソニックの調理家電を使ったレシピなどのWebサイト「Panasonic Cooking『おうちごはん』」のレシピ検索が行なえ、前述のジェスチャー操作により、レシピ画面をめくることも可能。

YouTubeにも対応Panasonic Cooking『おうちごはん』


■ 機能の満足度/完成度は高い。価格だけがネックか

 ポータブルテレビとしての機能は余すところなく入っており、特にDIGAのユーザーにとって、ネットワークを生かした連携機能はとても魅力的だ。バッテリ駆動による計画停電対応など、機能面の魅力は高い。

 個人的にもメインのレコーダとしてDIGA(DMR-BZT700)を使っていて、寝室用テレビの選択に悩んでいたので、これらの豊富な機能は大いに魅力的だ。また、計画停電対応のための製品購入も考えていたので、ほとんどのニーズを一台で満たしてくれる。

 ただし、実売約49,800円+バッテリ17,000円強で合計7万円近い価格は、32型の普通のテレビが購入できてしまうため躊躇する部分はある。計画停電用と割り切れば、2万円程度のワンセグポータブル機もあるので、フルセグやDIGA連携の付加価値をどこまでとるかというのが選択時の重要なポイントとなるだろう。

 また、上位モデルとしてBlu-rayプレーヤーやバッテリ標準搭載の「DMP-BV300」も用意されている。こちらも実売79,800円とそれほど価格差も無いので、思い切ってこちらを選択するのもいいかもしれない。ともあれ、「ネットワークを使った自社製品連携」の提案の完成度が高く、こうした付加価値の訴求は今後も大いに歓迎したい。


(2011年 4月 8日)

[AV Watch編集部臼田勤哉 ]