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4K+HDRに進化した「Apple TV 4K」でテレビが便利に。課題はコンテンツ数
2017年9月21日 20:00
Apple TVが2年ぶりにリニューアルし、「Apple TV 4K」になった。その製品レビューをお届けする。この2年の間に、リビング向けのテレビは大きく変わった。2年前は4Kがようやく立ち上がりはじめた頃だったが、現在の主力商品は4K+HDRになっている。
Apple TV 4Kはその名の通り、Apple TVを4Kに対応させたものだが、現在のトレンドを反映し、「4K+HDR」になったのが進化点だ。この言葉で、Apple TV 4Kの機能的な本質はほぼ語り尽くされている。
だが使ってみると、この製品がもう少し奥深い、面白い製品になっているのにも気付く。アップルからの「遅れてきた4K対応製品」がどうなっているのか、チェックしてみよう。
外観は「おなじみ」のスタイルのまま
冒頭で述べたように、Apple TV 4K最大のアピール点は「4K」だ。だから、箱にも名前がはっきりと書いてある。箱は黒から白へ変わり、名前にも「4K」とついたものの、外観的な変化はそのくらいである。2Kと4Kを一緒に使っていると、どっちがどっちだったか忘れるほどだ。
とはいえ、もちろん違いはある。2015年版(2Kモデル)にはあったUSB-C端子が、4Kからはなくなった。もともとサービスコネクタのような扱いで、一般には用途があまりなかったのでなくなったのだろう。実はあのコネクタ経由でスクリーンショットを撮れたのだが、その機能は「ネットワーク経由で行なう」ように変わったので、実際にはなくても困らない。今回の記事のスクリーンショットと動画も、その機能を使って撮影している。
なお、ネットワーク経由でApple TV 4Kのスクリーンショット・動画を作成するには、macOS High Sierraの「QuickTime Player」を使う。この場合、記録解像度は2Kに限定されるし、著作権保護されたコンテンツは、Mac側には表示されないようになっている。
底面にも変化がある。2015年版にはなかった放熱スリット的なものが、4Kにはあるのだ。これは、プロセッサーが「A10X Fusion」になったことなどから、内部の放熱が厳しくなったためだろう。スリットはできたが正面からは見えないし、排気音がするわけでもない。使っている時は気にする必要もないだろう。
本体の他の付属品は、電源ケーブルとリモコンの「Apple Remote」、その充電用のLightningケーブルと、これも変化がない。ただ、Apple Remoteは「Menu」ボタン周りに突起状のリングがついた。これはおそらく、暗闇で触ってもすぐにわかるように……という配慮に伴う改善だろう。機能的には変化はない。
なおリモコンについては、iOS11の登場に伴い、変化がひとつある。
以前から、アップルが公開しているアプリ「Remote」を使うことで、iPhone・iPadをApple TVのリモコン代わりに使うことができたが、iOS11からはアプリが不要になる。OSの「コントロールセンター」から直接呼び出せるようになるからだ。操作がひと手間減るので、ありがたい改善である。これは従来のApple TVでも利用できる。
わかりやすい「4K+HDR」の設定項目
Apple TV 4Kの本質は「4K+HDR」だ。適切なテレビに適切なケーブルをつかって、4K+HDRのコンテンツを表示すればきちんと映る。Apple TVに標準搭載されている、空撮映像を使ったスクリーンセーバーも4K+HDRにリマスタリングされており、UI系も4Kになっている。
ただ、4K+HDRのことをご存じの方ならおわかりのように、2K時代に比べ、4K+HDRの設定は複雑化している。同じ4K+HDR対応テレビでも、発売時期によっては「4K+HDR+60p」の表示はできない場合があるし、テレビのHDMI端子のすべてが4K+HDRに対応しているわけでもない。HDMIケーブルも、18Gbpsの伝送帯域に対応した「プレミアムHDMIケーブル」認証のあるものが必要になる。AVファンならともかく、普通の人にはなかなか高いハードルだ。
Apple TV 4Kは、その辺での配慮がうまくできている。
まず接続時には4K+HDRでの接続を試し、「解像度とフレームレート優先」で自動設定を行なうようになっている。
「設定」の「ビデオとオーディオ」の中にはより詳しく、きちんと設定するための項目も用意されている。まずは「ケーブルを調べる」を選ぶことをお勧めする。これを実行することで、適切な表示が行なえるかどうか、調べてくれるのだ。4K+HDRが見れるつもりなのにうまくいかない場合には、ここでセッティングできるし、ケーブルの問題も見つけられる。
もちろん、明示的に設定を変えることもできる。解像度・色域・フレームレート毎に設定が並んでいるので、自分が求めるものを選んで試してみればいい。
4K+HDR関係で面倒なのは、スペック的に機器は機能を満たしているのに表示出来ない場合、それが「テレビの問題」か「ケーブルの問題」か「機器の問題」かが分かりづらいことだ。Apple TVもそのジレンマと無縁ではないが、少なくとも、各種設定から明示的にチェックできるので、「問題がどこにあるか」「どの表示を今の自分が使えるか」はわかりやすくなっている。過渡期的な仕様といえるが、この種の機器の中では、Apple TVの仕様は「わかりやすいもの」といえる。
なお、オーディオ出力については、2015年モデルと同様で、7.1chもしくは5.1chの出力まで。Dolby Atomosなどのオブジェクトオーディオには対応していない。
UIはそのまま、4K+HDRコンテンツは「当面Netflixと写真」
ではUIを見てみよう。
実際問題、2015年モデルと大差ない。解像度が4K化されたくらいだろうか。(ただし動画キャプチャ環境の問題から、以下の動画は2KのUIである)
Apple TVの特徴は、Siriをつかってコンテンツを検索できることだ。英語環境では、「HDRのコンテンツを探して」などと言えば対応作品がすぐに出てくるようになっている。
しかし、日本ではそうはなっていない。これは、Siriのデータベースのアップデートの問題なのか、それとも、テスト段階での日本のiTunes Storeに「4K+HDR作品」がなかったからか、不明だ。
海外では9月22日の発売時から、それなりの数の4K+HDR作品が配信されるものの、日本では準備に時間がかかる模様だ。アップルとしては「積極的にコンテンツ提供をよびかけていく」としており、いくつか交渉もまとまっているようだが、アメリカ市場向けほどスムーズにいっていない……という状況であるようだ。
なお、4K+HDRのコンテンツが配信された場合の価格は「2K版と同じ」であり、すでに2K版の映画を持っている人には、同じ映画の4K+HDR版が配信されると、自動かつ無料で4K+HDR版にアップグレードされる。この方針は「基本的には日本でも変わらない」(アップル関係者)という。
すなわち現状は、4K+HDRに対応している別のサービスを併用するのが基本となる。具体的には「Netflix」だ。Apple TV 4Kの発売に合わせてアプリがアップデートされ、4K+HDRへの対応が行なわれる。こちらは筆者も試したが、問題なく高画質に視聴できた。
他のサービスにおける4K+HDR対応は、まだ「準備中」といったところのようだ。
これまでAmazon プライム・ビデオはApple TVに対応してこなかったが、年末までの対応がアメリカでアナウンスされた。
Apple TV対応のゲームについては、現状は「2K描画からの4Kアップコンバート」になっている。ただし、ゲームデベロッパーが開発すれば、4K+HDRでの描画も行なえるという。
自分で撮影した写真などは、iCloudの「写真」機能を介して、4Kでテレビに表示できる。写真を動画スライドショーにする「メモリー」も4K対応だ。iPhoneでたくさん写真を撮っている人には、案外この機能がもっとも有用かも知れない。少なくとも操作性でいえば、SDメモリーカードやデジカメを経由し、テレビにつないで表示するよりずっといい。
一方で、YouTubeは4K+HDRに対応していない。現状では対応予定もないようだ。4KテレビなどではYouTubeの4K動画もかなり見られているので、ここで対応がないのは気掛かりである。
なお、2Kコンテンツについては、内蔵SoCである「A10X Fusion」を使って4Kへのアップコンバートされ表示される。アップコンバート品質は「そこそこ」。圧倒的な効果、とは思わなかったが、十分満足できるものだと感じた。Apple TVを使っている人には、PC用モニターなどにつないでいる人も多い。チューナがいらなければその選択肢はアリだし、昨今は4Kディスプレイも安くなってきたので、賢い選択のひとつだとは思う。ただし、4Kディスプレイには良いアップコンバート機能が備わっていない場合が多く、2Kのコンテンツを見る時に不満が出やすかった。Apple TV 4Kの場合、「Apple TVを介して見られる2Kの映画や動画」に限定されるものの、アップコンバート画質が「若干良くなる」メリットがある。
iPhoneユーザーにはファーストチョイス、安価なライバルをどう見るか
映像配信の世界も、この2年でずいぶん変わった。日本はサービス展開やコンテンツ増加の面で、いまだアメリカに比べ不利である。しかしそれでも、Netflixを初めとしたSVODや、Abema TV・DAZNのようなライブ中継系のサービスも増え、「放送への依存度」は減ってきている。
それらのコンテンツをいかに快適に見られるかは、今後のテレビにとって重要な課題だ。テレビ内蔵の機能も進化はしてきたが、パフォーマンスなどの問題がまだ残っている。外付け機器の方が、性能もいいし価格も安い。
Apple TVはその最たるものだが、問題は、他のライバルが「非常に安くなっている」こと、映像配信におけるiTunes Storeの価値が低下していることだ。上にはPS4 Proのようなゲーム機があり、下にはAmazonのFire TVのような安いSTBがあり、厳しい市場ではある。
しかし一方で、「快適に4K+HDRを楽しめる外付け機器」として、Apple TVの完成度が高いことに変わりはない。特に、iPhoneなどアップル製品との連携は強い。結局iPhoneユーザーにとっては「圧倒的ファーストチョイス」であり、そこで「丹念な4K対応が行なわれた」ことが、Apple TV 4Kの価値なのだ。ここで、「4K+HDRの映画配信」がもっと増えれば、状況は大きく変わってくることだろう。