西田宗千佳の
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SCE新社長アンドリュー・ハウス氏が語る「Vitaの戦略」

「コアから幅広いユーザーへ」


SCE代表取締役社長 兼 グループCEO アンドリュー・ハウス氏

 12月17日、SCEはPlayStation Vitaを発売する。それに先立ち、代表取締役社長 兼 グループCEO アンドリュー・ハウス氏が、複数の記者によるラウンドテーブル形式の取材に応えた。話題は、Vitaの勝算からPlayStation Suiteの展開、PS3の今後まで多岐にわたった。

 SCEの考えるソーシャルゲーム時代に対する「濃いゲーム機の勝算」とは、どのようなものになるのだろうか。


PlayStation Vita背面

■ まずはコアから、しかしこれまでとは違う世界に

 まず、ハウス氏の経歴について触れておこう。ハウス氏は1990年にソニーへ入社、1995年よりSCE本社にて、マーケティングを担当した。特に北米市場でのPlayStationビジネスを中心に担当してきたが、2009年5月にソニー・コンピュータエンタテインメント ヨーロッパ(SCEE)の社長兼CEO兼Co-COOに就任、この9月、平井一夫氏に代わり社長に就任した。日本でのビジネス経験も長く、日本語も非常に流ちょう。今日のインタビューも、ほぼ日本語で行なわれた。

 ハウス氏がまず説明したのは、直近のPlayStationビジネスの状況だ。PS3は、9月末の段階で、全世界で5,500万台を出荷、ホリデーシーズン(年末商戦)の売上げについても、11月上旬までの値では昨年比で12%、売上げが上昇しているという。「本格的な収穫期を迎えており、PS3ビジネスはさらに拡大していきたい」とハウス氏も自信を見せる。PSPについては、7年間で全世界累計7,310万台を販売、「携帯型の新たなマーケットを創造した。今後も継続的なコストダウンをして、ビジネスをしていきたい」と話す(コストダウンについては後述)。

 その上で、携帯機ビジネスを「さらに加速するもの」(ハウス氏)と位置づけているのがVita、ということになる。

ハウス氏(以下敬称略)ゲーム専用システムとして、プレイステーションのDNAである「深くて没入感のある体験」を提供したいと考えています。ゲーム機としての操作性もさることながら、 様々なアプリと通信の連動により、他のユーザーと「出会い」「つながり」「あそび」といった無限の可能性を提供します。10月15日以来受け付けている予約も非常に好調です。

 ゲームという主軸の機能に加え、他のユーザーとのコミュニケーションを軸と語るハウス氏だが、Vitaには様々なメジャー・コミュニケーションサービスとの連携があることも強調する。

ハウス:Facebook、Twitter、Foursquare、Skypeといったメジャーなコミュニケーションサービスに対応します。このうちTwitterについては、日本発売の12月17日より、PlayStationNetwork(PSN)を介して対応アプリケーションを配布します。またこのたび、新たにフォトストレージ・サービスの「Flickr」にも対応することをお知らせします。Twitter以外に対応するためのアプリケーションは、発売後順次提供していくことになります。

4つの主要なソーシャルサービスにVitaが対応することを強調。さらに、写真サービスとして大きなシェアを持つFlickrへの対応も発表

 SCEは自社でもPSNとひもづく形で、様々なコミュニケーション系サービスを提供する予定でいるが、それに加え、Vitaでは多くのメジャーなサービスとも提携することになった。これらの要素はPS3のような据え置きはもちろん、他社のゲーム機でも見られる特徴ではあるが、3GやGPSなどのモバイル系技術を搭載した製品では、より価値が高くなる。

 濃いゲームからコミュニケーションまで。そういった要素を含めたキャッチフレーズとして、ハウス氏は「Allday PlayStation, Everyday PlayStation」というものを使った。ちょっと極端なフレーズではあるが、狙うところはよくわかる。

 このあたりは、スマートフォンとの競合にも関係してくる要素だ。

 現在ゲームの世界はスマートフォンとソーシャルゲームの波に覆われている。単純に「すべてのゲームがソーシャルゲームにとって代わられる」と考えるのは難しいが、それでも「ゲームをするのに、わざわざ数万円のゲーム機を買わずとも、スマホで十分」と考える人も増えており、それが「家庭用ゲーム専用機」というビジネスモデルにとって大きな脅威となっている。そもそも「ソーシャル」「カジュアル」「コア」という3つの層は、それぞれ断絶しており、必ずしもつながっていない。ソーシャルからカジュアルへ、カジュアルからコアへは移行もあるが、間を飛ばしてはなかなか移っていかない。コアゲーマーにとっては「スマホでゲームなんて」と思われるが、ソーシャルゲームやカジュアルゲームをちょっとやるだけの層からは「わざわざゲームのために数万円も払うならスマホでいい」と思われている。ゲームに対する考え方にも、支払える金銭的にも差が大きい。すでに述べたように、特に携帯ゲーム機はこのギャップの直撃を受けるものだ。日本ではそれなりの期待と注目を集めているVitaだが、アメリカの市場やデベロッパーからは、日本ほどの注目を集めていないのも事実である。

 そもそもVitaには、任天堂の「ニンテンドー3DS」という強いライバルもいる。3DSはこの8月に価格を15,000円に改定し、「モンスターハンター3G」や「スーパーマリオ 3Dランド」「マリオカート7」といった人気タイトルがそろってきたこともあり、この年末非常に好調である。

 新しい変革と足下のライバル。両方から攻められるVitaは、それらとどのように戦おうとしているのだろうか?

ハウス:国により市場に関する状況が違うのは理解しています。確かに、ゲーム専用機の売上げが落ちているという指摘はありますが、アメリカ市場でも、つい最近のブラックフライデーには、ニンテンドー3DSの売上げが、ガン、とあがりました。各リージョン(地域)において、ゲーム専用機のマーケットは十分あると思います。幸いにして日本では、PSPは好調であり、Vitaもおおいに可能性があると考えています。

 これまでの成功の秘訣は、まずコアのユーザーを抑えて、それから幅広いライトユーザーへ広げていく、というものです。Vitaもこのプロセスは変わらないと思いますが、ポータブルは特に加速度が大きい。マーケティング戦略を変えていかないといけないでしょう。据え置き型では「最初の1、2年はコア、そこから広げる」という戦略を採ってきました。まだVitaは発売されていませんから、時期的に言えることは少ないのですが、(コアからライトへの移行を促す時期は)それよりも早くなる、と思います。おそらく、あっというまに幅広いユーザー、若い世代へ広げていかねばならないでしょう。

 私が面白いと見ているのは、まだ親からスマートフォンを買ってもらっていないユーザー層、すなわち子供達です。コアだけでなく、同時に子供が好きなゲームを提供する、そういったコンテンツ戦略が必要になるかと思います。

 また「ソーシャル」と「コア」の間についても、コンテンツ開発のやり方によって変わると考えています。据え置き型向けの例として、「リトルビッグ・プラネット」を挙げておきます。このゲームは、ゲームメカニックとしてはコア向けといいますか、伝統的な作りです。しかし、ゲームの中にユーザーがゲームを作るためのツールを持っていて、あっというまにソーシャルゲームになりました。作ったゲームを他の人々とシェアしたいと考える人が増え、パッケージ内には入っていない、他人が作ったコンテンツを多くの人が遊んでいるのです。確かに、コアとソーシャルは多少別々ですが、ベースはコアなゲームにソーシャルな面を入れれば、ソーシャルゲームにもなっていくはずです。もちろん、コアゲームの没入感は大切ですが、そこにソーシャルな面も作るべきだと感じます。

 Vitaにはいままでにないインターフェース(操作体系)が多く採用されており、濃い楽しみ方が色々できます。その点で今は十分な競争ができると考えています。

 確かに、スマートフォン上のカジュアルゲームはライバルですが、世の中でスマートフォン/スマートデバイスが増えていくのを見ていると、むしろそれは我々にとっては大きなチャンスだ、とも感じます。彼らはカジュアルゲームはあそんでいますが、Vitaではそれよりいい体験ができます。カジュアルの世界から深い世界への「橋」になれるのでは、と思うのです。


■ PlayStaion Suiteで「コア」と「ソーシャル」をブリッジ

PlayStation Suite。現在開発環境のテストがすすめられているが、将来的にはAndroid系とPlayStationの世界をつなぐものになることを期待されている

 そこで、ハウス氏が「我々にとってのマイグレーションストラテジー(統合戦略)の中核」と呼ぶのが、新プラットフォーム「PlayStation Suite」(以下PSS)だ。PSSについて、詳しくは以前掲載したSCE 松本吉生 SVP兼第2事業部長へのインタビューを併読していただけると助かるが、簡単に言えば、仮想的な「PSS」という、機械やOSを問わないプラットフォームを作り、ソニーのAndroid携帯電話・タブレットなどへもコンテンツ提供できるようにしよう、という計画だ。PSS向けのアプリケーション開発については、現在開発キットがクローズドβテスト中であり、来春には正式な開発キットが供給され、本格的なビジネスがスタートすることになるという。

ハウス:Vitaでは、PSSのゲームやアプリケーションがそのまま動作します。ですから、PSSでのゲームを遊んだ方が、Vitaのより深いゲームの世界へとやってきてくれることを期待しているのです。そこで、カジュアルなゲーマーをコアな世界に引き入れるための施策ですが……。マーケティングはもちろん大切ですが、それ以上に「クロスプラットフォーム・クロスデバイス。PSSを使い、これまでのゲームビジネスには参入していなかったような、新しいタイプのモバイルゲーム専用の開発者を引きつけたいのです。PSSならば、AndroidからVitaまで、クロスプラットフォーム、クロスデバイスでターゲットデバイスにアプローチできます。そしてさらに、Vitaならば、新しいゲーム体験がそこからできる、ということになります。

 となると、気になる点は2つになる。

 そもそも、PSSを介さずAndroidそのものにゲームを提供すれば、対象となる機器はより広くなる。SCEと開発契約を交わす必然性もない。

 そもそも、家庭用ゲーム機のライセンスモデルは、比較的規模の大きな企業を主軸にしたもので、契約形態の点でも、開発キットのコストの点でも、個人・中小のデベロッパーにはかなり縁遠いものだった。

 そんな中で、PSSを選ぶ理由はどこにあるのだろうか?

ハウス:PSS開発キットのクローズドβでは、日本・アメリカ・イギリスの開発者に参加していただいています。中には学生も含まれます。PSSへのエントリーに必要なコストについて、今日の段階で正式にコメントすることはできませんが、少なくとも、PSP用開発キットよりもずっとずっと安いものを考えていますので、より広いデベロッパーに参加していただきたいと考えています。また、いまはまずソニーのAndroid端末から、ということになっていますが、別のメーカーとのアライアンスも十分にあり得ますし、OSを限定したものでもありません。

 また、PSSにおいては「Store」の部分がなにより大切かと思います。

 残念ながらAndroid Marketは少々混乱しており、いいもの・正しいものを区別するのが難しい状況です。我々には「よりよいブラウジング」と「検索」の経験を提供することで、良いStoreを提供する、というの選択肢があると考えます。やはり「買いやすさ」「入りやすさ」は十分大事です。PlayStation Storeで培ったものは、ここで生かせるはずです。

 そうはいうものの、カジュアルゲームを狙う企業は多く、そこでのプラットフォーム競争も厳しい。アップルやGoogleはもちろんだが、ハードを持たず、ネットワーク上のコンテンツ提供と課金を握る形でプラットフォームを作る、グリーやDeNAのような存在もある。海外の大物に目を向ければ、AmazonやFacebookもいる。それらといかに「プラットフォーム争い」をするのだろうか? 逆にいえば、そこで協業の可能性はないのだろうか。

ハウス:微妙なところはありますね。PSSはよりオープンなイニシアチブだと考えています。今のところはAndroid端末ですが、他のOSや企業とのアライアンスも考えられます。そこで、相手が本当の敵なのかアライアンスの相手なのかは、状況や条件によります。マーケティング用語でいうところの「Frenemy(フレネミー、フレンド+敵の造語)」というところで……。

 課金については、現在はPSNで利用しているクレジットカードやプリペイドカード、Edy決済などを中心に考えています。現時点でどこかと組む、という話についてコメントはありませんが、各地域ですばらしいコミュケーションパートナーと組んでいるので、色々な可能性はあります。

 アップルなどへの対抗策は? という質問の答えになるかと思うのですが……。Vitaは、PSNやソニーエンターテインメント・ネットワークの中で、大事な役割をとると思います。これまでは、PS3を中心にPSNをつかってきたわけですが、これは利用時間帯的には限られるものかと思います。家にいる遊び時間だけに使うものですので。Vitaにとってのチャンスと考えているのは、持ち歩きの携帯型なので、さらに深くかかわっていただけるだろう、という点です。だからこそWi-Fi(無線LAN)だけでなく、3Gモデルも用意したのです。


■ 有機EL採用の理由は「パフォーマンス」、あくまで「ゲーム体験」を第一に

 Vitaのハードウエアについても触れていこう。

 Vitaは有機ELディスプレイを採用しており、これが大きな特徴である。他方、コスト面では不利だが、採用の決め手はなんだったのだろうか?

ハウス:決めた理由は、ひとことでいって「パフォーマンス」です。開発側と組み、早い段階から「どれが魅力的なのか」という観点で選びました。

 ラウンドテーブルに同席した、同社の第2事業部 ソフト開発部部長の島田宗毅氏は、有機EL採用の背景について、以下のようにコメントを追加している。

島田:ビジュアルクオリティの面でやはり評価が高いです。技術的には、バックライトがない分、消費電力の観点でもプラスに働きます。ただ、場合によって削減量は異なるため、一律に何%減ったか、という形ではコメントしかねるのですが。

ハウス:Vitaについては、まずゲーム機としての性質を、本当に充実させたいと思います。しかし、PS3ではある意味いい経験をしています。ヨーロッパのユーザーデータなのですが……。最初は20代のユーザーが、自分の部屋向けに買ったものだったのが、その後リビングに持ってこられて使われているようなのです。他の家族が他の機能、動画配信やブルーレイなどに気がついた結果、役割として、個人のデバイスからファミリーのデバイスになったということです。そういう事例がたくさんあります。

 同様に、Vitaはまずゲーム機として売りたいです。しかし有機ELの品質は、それにとどまるものではありません。結果、色々なことができる多機能端末として注目されていくのではないか、と思います。

 SCEの伝統として、その時期としてはハイエンドなLSIを使い、ハードウエア寿命を長くして安定的なビジネスを狙う、というものがある。そのために、PS1からPS3、そしてPSPも、それぞれ特徴は異なるものの、独自性の高いアーキテクチャのLSIが採用されてきた経緯がある。他方、VitaはCPUコアについてもGPUコアについても、スマートフォンで広く採用されている技術が使われている。クアッドコアである、という点ではまちがいなくハイエンドだが、そこにスマートフォンやタブレットが追いついてくる日も近い。「ハイエンド機」としての寿命を、SCEはどう考えているのだろうか?

ハウス:アーキテクチャについては、寿命に関し、深い意味合いはないと思います。また、携帯ゲーム機と据え置きでは、すこし違います。まずはなによりもソフトの戦略が大事です。せっかくゲーム専用機にSNS・コミュニケーションの機能を入れたので、その延長線上で、使い方の部分が大きく価値を持ってくるでしょう。すなわちコミュニティの部分、そのコミュニティのメンバーであるということの価値観が、ハード自身よりも長い寿命を持つことになるのではないか、と考えています。

島田:Vitaの上でPSSのコードも流してテストしていますが、やはりネイティブに動くものとでは、実践的なパフォーマンスが異なると感じます。同じCPUコア・GPUコアであることについて色々言われますが、それがすべてを決定するわけではなく、厚いOSをもっているかどうか、ゲームがどう動いているかを見据えてコーディネーションした設計をしているかどうかが大きいと思います。結果、Androidの上でやっているのとは違うユーザー・エクスペリエンスになります。

 iPhoneにしても、別にGPUやCPUで売れているわけではありませんよね? トータルでのユーザー・エクスペリエンスの良さが評価されてのものです。ジャンルは違いますが、それと同じかと思います。

 では「メモリーカードをパッケージに入れてゲームを販売する」というビジネスモデルはどうだろうか? それを古いと断罪するのは少々気が早いと思うが、ゲーム市場がノンパッケージへ移行しつつあるのも事実。Vitaのような機器での市場性をどう見ているのだろうか?

ハウス:ユーザーのフレキシビリティが大切だと考えています。なぜパッケージとノンパッケージを同時にやるのかというと、ユーザーの方に聞いても、双方の意見があるからです。「もうパッケージはいらない。全部ゲーム機に入れて持ち運びたい」という方もいれば、パッケージが欲しい、という方もいらっしゃる。特に大容量のゲームでは、ダウンロードだけ、という形ですと配信速度の問題もあります。両方の声になるべく応えるべきかと考えています。

 他方、PS1はゲーム販売をCDベースにすることで、在庫管理のビジネスモデルを進化させました。Vitaでは配信専用も出来るので、また新しい形を狙えます。物理在庫の壁はなくなり、よりリスクの高いもの、その分クリエイティビティに振り向けたものも期待できるかと考えます。

 SCEには、Vitaはもちろん、PS3やPSPというプラットフォームがある。それぞれの扱いは今後どうなるのだろうか? PS3の後継機などは、すでに存在するのだろうか?

ハウス:PS3はやっと、いい時期に入るところです。価格も安くできたし、前年に比べ普及も加速しています。いまのところは、後継機よりもPS3にフォーカスすべきと考えています。初期には、確かに開発環境に関するチャレンジはありましたが、ようやく本当のパワーを世界中の開発者が見つけ、よりいいゲーム体験ができるようにになってきました。ですから、いまその計画についてコメントすることはありません。

 PS3は、すでにエマージングマーケットにも投入をはじめています。PS3はロシアで好調ですし、SCE全体で言うと、特にラテンアメリカで好調です。PSPについては、残念ながら海賊版の問題もありましたが、Vitaではよりセキュリティを強化しています。日本には投入していませんが、ヨーロッパ市場には99ユーロの、低価格化したPSPも投入しています。

 Vitaのハード価格がライバルやスマートフォンに対して高い、という点については、発売前なのでなんとも……。 ただし基本的には、各プラットフォームのバリューの位置づけをよく考える必要があります。良いインターフェースでいいゲーム体験ができるところから、お客様が位置づけを決めるところだと思います。PSPに比べ進化したものを出そうとしているので、初期は高い設定にせざるを得ないです。しかしそれに見合うだけのバリューを出したいです。

 現在、ゲームの世界では、Kinectに代表されるようなナチュラルインプット・ユーザーインターフェースが注目されている。携帯機器でも、iPhone 4Sに搭載された音声入力機能「Siri」がある。Vitaにおける、それらの可能性はどうだろうか? ARなどには積極的なようだが、どのようにゲームに生かしていくのだろうか?

ハウス:いくつもの分野で開発を続けています。技術としてはもっていますから、それを組みこむのは難しくありません。しかし、音声認識や顔認識では、特にクオリティの保証が必要です。それをゲームとどこまで両立して実現するか、検討が必要です。また、なによりそれぞれのゲームで、ゲームの経験よりインターフェース経験を優先するのは、とてもあやういことです。エンハンスになるのかデメリットになるか、ゲームによって経験は異なると感じます。大切なのは、ゲームとしてのエクスペリエンスです。

 すなわち、こういった点でも、Vitaは「ゲーム優先」である、ということなのだろう。


(2011年 12月 15日)


= 西田宗千佳 = 1971 年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う?世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ!クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(徳間書店、神尾寿氏との共著)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)などがある。

[Reported by 西田宗千佳]