小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第868回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

最強空撮ドローン「DJI Mavic 2」を海で飛ばす! これがProとZoomの違いか……

今度は自由に飛ばしてみる

2週前の9月5日、DJIのコンシューマ向けドローン新モデル、「Mavic 2」シリーズの新製品説明会の模様をお伝えした。実際にフライトさせて、機体性能のポイントはある程度お伝えできたものと思う。

DJI Mavic 2 Pro(左)とMavic 2 Zoom

ただ、カメラ性能に関しては、被写体が限られていたこともあり、よくわからない部分もあった。そもそも空撮となれば広い風景しか撮らないため、画質評価は難しい。

そこで今回は改めて新モデル2機をお借りして、帰省のついでではあるが、いろんなパターンの撮影を試してみることにした。空撮も行なったが、飛ばさずにカメラだけを使ってじっくり撮影した例は珍しいだろう。静止画HDRや10-bit Dlog-Mの実力を、早速テストしてみよう。

新ボディをじっくり観察

まず前々回は細かいところまでご紹介できなかった機体について、補足しておきたい。Mavic 2にはProとZoomの2モデルがあるが、違いは搭載カメラのみだ。価格はそれぞれ、194,000円と162,000円(いずれも税込)となっている。

両者の違いは搭載カメラのみ

ボディ後部の大半はバッテリーとなっており、連続飛行時間は約31分となった。ただしバッテリー切れギリギリまで飛ばすわけにも行かないので、実際には残り10%ぐらいでは帰還させたいところだ。そうなると実質25分程度と考えておくべきだろう。

後部の大半はバッテリーが占める

ローターの装着は、軸部押し当てて30度ほど回すだけで簡単にロックされる。羽根には右回り、左回りがあり、マッチしない組み合わせではロックできないようになっている。

簡単に着脱できるローター

ボディには前後左右上下の6方向にセンサーを備えており、障害物を検知すると自動的に回避または停止するのは前回述べた通り。

腹部のセンサーとLEDライト

なお動作中は、底部がかなり熱を持つ。空を飛んでいれば自然に冷却されるだろうが、電源をいれたままの持ち運びは、放熱に留意していただきたい。

コントローラは折りたたみ式で、下部にスマートフォンを抱え込むためのハンドルがある。ジョイスティックはねじ込み式で、輸送時には取り外してリモコン内に格納できる。

ジョイスティックを外して格納できる

スマホとコントローラは専用ケーブルで接続する。コントローラ側の端子は真四角だが、実質的にはMicro USBだ。リモコンの充電にも、この端子を使う。専用ケーブルは各種スマートフォンに合わせて、片側がLightning、USB-C、Micro USBの3種が付属する。

スマホと接続することで、コントローラだけでは使えない多くの機能が使えるようになる$$

カメラの差は意外に大きい

まずカメラの画角だが、1/2.3型センサーのZoomは24~48mmの2倍光学ズーム。ワイド端はProよりも広角だ。ただし静止画モードでは、画像アスペクト比が4:3か16:9しか選べない。

Mavic 2 Zoom

1型センサーのProのほうは短焦点で、焦点距離は28mm。こちらはアスペクト比が4:3、16:9以外に、3:2も選べる。フォーカスはスマホ画面タッチによるタッチフォーカスおよびAFも使えるが、マニュアルフォーカスも使える。ただし元々空撮用途のカメラなので、あまり近距離にはフォーカスが合わないようだ。

Mavic 2 Pro

双方条件を合わせて静止画のHDRモードで撮影したが、ダイナミックレンジやフレアの処理、発色の深さに差がある。Zoomのほうも写りとしては平均的ではあるだが、さすがハッセルブラッドカメラのProは、もう一歩クオリティが高い。

Zoomで撮影
Zoomで撮影
Zoomで撮影
Zoomで撮影
Proで撮影
Proで撮影
Proで撮影
Proで撮影

またProのカメラには機械的な絞りがある。F2.8からF11まで可変可能で、当然露出調整に使えると言う点では、ISOだけで追いかけるよりは画質的に有利だ。ただし実際に飛ばす段になると、自動衝突回避システムがあるので、被写体に近づいて立体感のある構図にするには限界がある。つまり被写界深度を活かすのは、結構難しいのではないだろうか。

もう一つProのポイントは、HLGか、10-bit Dlog-Mによる4K HDR撮影が可能なところだろう。前回はHLGで撮影してみたが、今回は10-bit Dlog-Mで撮影してみた。

ただし10-bit Dlog-Mは、執筆時点ではDJIから公式にLUTがリリースされていないようだ。探してみると、すでにユーザーが対応LUTをいくつか公開している。無料有料共々、3つほど見つけたのでリンクを貼っておく。

今回のサンプルは、Mauros MAVIC 2 PRO DLOG-M CINE LUTを使っている。

多彩な「クイックショット」

次は、前回ではテストできなかった飛行モードをいくつか試してみよう。本機にはクイックショットと呼ばれる、オートパイロット機能がある。クイックショットには様々なパターンがあり、以前のレビューでご紹介したドリーズームもクイックショットの一つだ。

今回はZoomにて「Boomerang」と「Asteroid」を試してみた。Boomerangは、中心となる被写体の正面には近づき、背面は遠く離れるといった円運動を自動的に行なう。人物を中心に、見晴らしの良いビューポイントに来たら、ぜひ使いたいモードである。

回転計の動きは、中心点を指定してGOをタップするだけ
Zoomにて撮影した「Boomerang」と「Asteroid」
Zoom.mov(68.96MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

一方Asteroidは、ターゲットからまっすぐ離れていき、最終的には360度カメラにあるような「プラネット」効果にまで繋げるモードだ。後半部分はカメラを上下左右に振って静止画のパノラマ画像を作り、そこに繋げるようだ。DJIのデモ映像では、プラネット状態から被写体に近づくショットがあるが、あれは撮影した動画を逆再生したものだ。

またProの方では、まっすぐ離れていく「Dronie」と、らせん状に離れていく「Helix」を試してみた。4Kの10-bit Dlog-Mによる色空間とともに見ていただきたい。

モードを選ぶと動きの説明が表示される
Proで撮影した「Dronie」と「Helix」

こうした自動モードでは、Zoomを使った場合でもカメラのズーム操作ができず、ワイド端固定となる。また録画のスタートとストップはモード中で自動的に行なわれるため、せっかく飛行させたのに撮れてないというミスがないようになっている。

ハイパーラプスは、Mavic 2をゆっくり移動させながら静止画を撮影し、最終的にハイパーラプス動画を生成する機能だ。飛行動作はフリー、サークル、コースロック、ウェイポイントの4つがある。

今回はZoomのほうでサークルとコースロックを試してみた。コースロックは、撮影開始地点までドローンを移動させ、進行方向を決めてGoボタンを押すと、直線で飛行しながら撮影を行なう。一方サークルは、中心となる被写体を画面上でドラッグして囲うと、それを中心に円形に飛行しながら撮影を行なう。

コースロックで飛行中の画面
Zoomを使い、ハイパーラプスでサークルとコースロックをテスト
Laps.mov(29.13MB)
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

撮影間隔と完成動画の時間を指定することで、自動的に飛行時間が決まる。当然バッテリーによる飛行可能時間以上の撮影ができないので、残量を見ながら決める事になる。途中でコースをキャンセルして帰還させる事も可能だ。

もう一点注意点として、こうしたオートパイロット機能は、実際に機体をフライトさせないと、ポイントの設定ができない。それどころか機能そのものにアクセスできないので、事前に設定をシミュレーションができないのが残念だ。

実フライト時間は1バッテリーにつき25分程度なので、アングルやコースを検討したり、コマ感覚や動画時間のいいところを探しているうちに、バッテリー1本終わってしまう。こうした機能でしっかりした結果を出したい場合は、予備バッテリーが3~4個は必要だろう。

総論

筆者が初めてDJIのドローンを飛ばしたのが、2014年の「Phantom2 Vision+」の時で、コンシューマ向け新製品が出るたびに一通りは触らせてもらっているつもりだ。改めて初期のドローンを思い出してみると、現場へ持っていってGPSの捕捉に時間がかかったり、キャリブレーションがなかなか終わらなかったりと、段取りが大変だったものだ。

そこからたった4年程度で、ホビー用ドローンはものすごく進化した。GPSの捕捉キャリブレーションも、すぐに完了する。運動性能もあがり、かなりのスピードで目的のポイントまで移動できる。FPVの精度も上がり、機体が豆粒にしか見えない距離からでも、映像が途切れないので、安心感が高まっている。

Mavic 2 Zoomのほうは、単純にズームできて撮影のバリエーションが拡がるだけでなく、ある程度離れた位置から安全に撮影できるという事でもある。高画質パノラマ合成機能やドリーズームが使えるだけでなく、撮影機能が多いので、アウトドアが好きな人はこちらだろう。

一方Proは、ズームができず画角もZoomよりやや狭いが、撮影される映像に関しては、大きな進歩がある。特に10-bit Dlog-M対応で抜けのいい発色が期待できるため、南国の海山や紅葉を撮るならまちがいなくこちらだ。

両方買えば幸せになれるかもしれないが、個人的にはProのカメラ性能をじっくり腰を据えて使いこなしてみたい。ハッセルと共同開発とはいえ、初めて自社開発のカメラを積んだ2014年からたった4年でここまで来るとは、DJIの開発スピードには驚かされるばかりである。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチビュッフェ」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。