小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第1197回

これがAladdin Xの真骨頂。プロジェクターを遊び尽くす「Aladdin Poca Laser」
2025年11月12日 08:00
Aladdin X初のモバイル型
Aladdin Xといえばシーリングライト一体型プロジェクタの元祖として知られるところだが、中国大手XGIMIの傘下となったあたりからシーリングライト型以外の製品も手がけるようになった。今年はすでに超短焦点型の「Aladdin Marca Max」をレビューしたところだ。
そして今年、もう1シリーズが投入される。モバイル型プロジェクタ「Aladdin Poca」シリーズだ。製品にはLED光源の「Aladdin Poca」と、レーザー光源の「Aladdin Poca Laser」の2種類がある。光源が違うだけで、機能的には同じだ。
現在クラファンサイト「Makuake」にて販売中だ。製品にはそれぞれ単体、オプションレンズ同梱のSet、専用ハードケースなどをまとめたポータブルキットの3種類がある。
今回はLaser光源の「Aladdin Poca Laser」Setをお借りしている。現在20% OFFの79,900円で販売中で、通常価格は99,900円となっている。
モバイルプロジェクタは今もっとも競争が厳しいところだが、もちろんAladdin Xだから普通のプロジェクタではない。早速試してみよう。
すっきり格納できるボディ
バッテリーを搭載したモバイル型プロジェクタは円筒型の製品が多いところだが、その類に漏れずPoca Laserも円筒型だ。一見するとどこにもレンズらしきものが見当たらないが、実はスタンドと本体が一体化しており、円筒部を少し引き出して回転させると、先端にレンズ部が出てくるという仕掛けだ。
確かにこの構造であれば、持ち歩く時にレンズ部が保護されるというメリットがある。またスタンドのアーム部によって、USBやHDMI端子が保護される。なかなかよく練られたデザインだ。反対側側面に電源ボタンと充電用USB-C端子があり、収納状態でも充電が可能だ。
サイズは高さ207.6mmで、直径96.6mm、重量1.32kg。高さは同様の製品としては同じぐらいだが、径が若干太めだ。
アーム部には着脱可能なミニリモコンがぶら下がっており、持ち出した時にリモコン忘れた、という時に重宝するはずだ。正規のリモコンは別にある。その代わり、本体でのタッチ操作みたいな機能は持たない。
光源には3色レーザーを使用しており、輝度は550 ANSIルーメン。バッテリー内蔵型としてはかなり明るく、バッテリー非搭載のポータブル型に匹敵する。
解像度はフルHDだが、BT.2020の110%をカバーしており、HDRコンテンツにも対応できる。ダイナミックレンジは3000:1。
スピーカーはHarman Kardon製の6W×2を内蔵。Dolbyオーディオにも対応しており、Bluetoothスピーカーモードも搭載する。
内蔵バッテリーは、容量はスペックにないが、映像はエコモードで2.5時間、スピーカーモードはムードライト機能をOFFで6時間再生が可能。なおポータブルキットにはバッテリー内蔵スタンドが付属するが、それを併用すると同様の条件で再生時間が2倍になる。
メインのリモコンは、ボディカラーに合わせたグレーで、従来同様ボリュームボタンを斜めに配置している。ショートカットボタンは、Netflix、YouTube、Prime Videoのほか、ユーザーが機能を割り付けられるショートカットボタンが1つある。
例えばここにBluetoothスピーカーモードを割り付けておけば、いちいちホームメニューを開いてモード変更する必要がない。リモコンの接続もBluetoothなので、プロジェクタにリモコンの先を向ける必要はない。
また最大の特徴は、手前に持ち上げるとボタンにバックライトが点灯することだ。だいたいプロジェクタは真っ暗な中で使うのに、ボディが黒で何も見えないリモコンが多すぎる。バックライトでボタンが見えるのは、あって当然の機能だ。
Set以上の製品には、2つのオプションレンズ「Aladdin Lens」が付属する。このレンズはレンズ面にマグネットで装着できる。これらを取り付けると自動的に専用モードが立ち上がり、星空や夕景などが楽しめるようになっている。これは後で試してみよう。
発色の良い光学系
ではまず普通にプロジェクタとして使ってみよう。OSは独自のAladdin OSで、ホーム画面では主要映像配信プラットフォームへのショートカットと設定、アプリストアのほか、全アプリへの入り口がある。上部のタブでも区分けされているので、希望のアプリがすぐ探せるようになっている。
プロジェクタとしての基本性能から見ていくと、画像関係の設定としては、画質モードとして標準、シネマ、スポーツ、ゲーム、黒強調、カスタムといった設定が選択できる。前半3つはおもに色温度の違いで、標準はニュートラル、シネマは色温度低め(暖色)、スポーツはやや色温度高め(寒色)系となっている。
これらのモードに色空間を組み合わせることができる。自動、DCI、BT.709、BT.2100、sRGB、Adobe RGBといった設定が選択できる。基本的には標準+自動の組み合わせでフルパフォーマンスが出るようになっているので、よほど特殊な環境でなければこれで対応できるだろう。
いつもの4K HDRのサンプルコンテンツを試してみたが、輝度の高さはバッテリー内蔵型としてはかなり満足できるものだ。夕方ぐらいからなら十分使っていける程度の輝度は確保されている。解像度は4Kではないものの、ダイナミックレンジの高さや発色、特に赤の発色の良さはLEDタイプでは得られない体験だ。
一般コンテンツとしては、Prime Videoで「藤本タツキ 17-26」を視聴してみた。アニメコンテンツではあるが、こちらも赤の発色の良さが光る。重厚な実写作品でもアニメ作品でも、テレビとはまたひと味違ったダイナミックな表現が楽しめる。
スピーカー性能は、セリフの明瞭感などは問題ないが、音楽中心のコンテンツでは、スピーカーサイズからどうしても低域が不足するので、物足りなさはある。一応ステレオスピーカーではあるのだが、胴体前面の上部に2つが近接して設置されているようで、ステレオ感には乏しい。
エアフローは、前面吸気-背面排気となっているようで、背面に手をかざすと暖かい風が出ているのがわかる。ただファン音はほとんどわからず、電源接続してのフル輝度でも、視聴に影響を与えるようなことはない。
動画配信の対応サービスは、Netflix、YouTube、Amazon Prime Video、バンダイチャンネル、U-NEXT、TVerがプリインストールされているのに加え、Disney+、AppleTV+、DAZNなどに対応している。一方Hulu、ABEMAはアプリストアに見当たらなかった。
充実のエンタテイメント機能
では次に、プロジェクタを使ったエンタテインメント機能を見ていこう。Poca Setの大きな売りになっているのが、Aladdin Lensだ。長短2つのレンズが付属している。まずは長いほうのレンズから試してみよう。
マグネットでレンズ部に固定できる仕掛けになっているが、レンズ部には2つの接点があり、これが本体と接続することで装着を認識するようだ。
装着を検知すると星空、木星、夕暮れの3つのコンテンツが自動的に再生される。これは広角レンズになっており、通常よりも広い範囲でコンテンツを投影することができる。周辺部は多少流れたりするが、きちんとコンテンツとして鑑賞するというよりも、環境コンテンツ的に楽しむものである。天井に投影すると、部屋中に星空を感じる。
手をかざすことでコンテンツを切り替えることができるため、リモコン操作が必要ないのも気が利いている。同時に音楽も再生されるという仕掛けもある。
もう一つの短いレンズは、すりガラス的なディフューザーになっている。再生されるコンテンツは同じなのだが、ぼんやりとしか映らないので、どちらかといえば環境光的に楽しむというスタイルになる。
プロジェクタを閉じると、スタンド底部がランタンのように光るというムードライトモードも搭載されている。これは底部にLEDが仕込まれているわけではなく、光源はプロジェクタの光なのだが、スタンド底部がディフューザー構造になっており、ライトとして使えるわけだ。
これは閉じた時にどういう動作にするか、事前にモード選択ができる。まず閉じた時に、ムードライトにするか、電源OFFにするかを選択。ムードライトを選択すると、閉じた時には自動的にBluetoothスピーカーモードになる。ライトモードとしては、通常光、呼吸するように輝度が変わる呼吸モード、音楽のリズムに合わせて点滅するリズムモードが選択できる。
光源であるプロジェクタを使って様々なエンタテイメント機能を提供するという発想は、新しいものだ。単に映像をでっかく見るだけのデバイスとして捉えず、美しい佇まいを見せるという工夫がある。ソフトウェアだけでなく、ハードウェア的にもエンタメに全振りしたのが、Pocaシリーズの面白さだ。
ソフトウェアとして提供されるエンタメとしては、「キャンプゲーム」がある。現時点では3つのゲームが提供されており、キャンプで子どもたちも含め大勢集まった際にみんなで楽しめる。
「ものさしゲーム」はいわゆる数字あてゲーム、「ジェスチャーゲーム」はその名の通りジェスチャーでお題を当てるゲーム、「真実か挑戦か」は、ルーレット式の王様ゲームみたいなもので、出題されたチャレンジを実行する必要がある。
総論
バッテリー内蔵のモバイル型プロジェクターとしては後発となるわけだが、さすがはAladdin X、普通に高輝度高性能プロジェクタとしてまとめてきただけにとどまらず、多数のエンタテイメント機能を搭載してきた。
単にコンテンツを投影するだけでなく、オプションレンズによる巨大映像空間を演出したり、あるいは折りたたんでいるときでも楽しげなライトアップ機能を搭載したりと、限られたリソースの中で多くのアイデアが盛り込まれている。
付属リモコンも、傾けるとバックライトが点灯するなど、さりげない工夫もある。またサブリモコンが付属するのも、慌てて持ち出してもどうにかなるという配慮がされており、非常に好印象だ。なおサブリモコンは赤外線方式なので、ペアリング不要ですぐ動くのも助かる。
PocaにはLEDとLaserの2タイプがあるが、家庭内など照明が自由にコントロールできるのならLEDタイプでもいいだろう。一方キャンプなどの屋外においては、わざわざ焚き火を消して投影するということもあまり考えられないので、Laserの高輝度は助かるだろう。
スピーカーがやや物足りないところではあるが、HDMIはeARC対応なので、サウンドバーなどと連動して使うことで、十分な音楽体験が得られる。
コンパクトに収納でき、加えて高いエンタメ性能を備えた、欲張りな逸品である。



























