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AK超弩級プレーヤー「KANN CUBE」。8ch「ES9038PRO」×2基、バランス出力12Vrms
2019年4月26日 10:00
アユートは、Astell&Kernブランドの新機種として、ポータブルながら8ch DACのESS「ES9038PRO」を2基搭載、バランスで12Vrms、アンバランスで6Vrmsの出力を実現、ミニXLR出力も備えた超弩級プレーヤー「KANN CUBE」(カンキューブ)を6月に発売する。価格はオープンプライスで、直販価格は199,980円(税込)。
既発売の「KANN」に次ぐ、パフォーマンスシリーズの最新モデル。従来のKANNは、ポータブルアンプいらずの高い駆動力と、豊富なメモリーカードスロットなどを備え、ポータブルプレーヤーの新しい楽しみ方を提案するモデルとして2017年に発売された。
iriverでデバイス事業部のマネージング・ディレクターを担当するTed Baek氏は、「KANNは実験的なモデルとして投入したため、最初は我々も心配していた。しかし、予想よりも人気モデルとなり、KANNのコンセプトを“面白い”と受け止めてくれたユーザーが沢山いた。そこで、次期モデル開発にあたっては、パフォーマンスもサウンドも、そして出力もよりアップする方向が良いと考え、開発した」という。
ヘッドフォン/イヤフォンに加え、5ピンのミニXLR出力も搭載。据え置きのオーディオ機器と接続し、屋外でも、屋内でもKANN CUBEをプレーヤーとして活用するスタイルも提案している。内蔵ストレージメモリは128GB。最大512GBまでのカードが利用できる、microSDカードスロットも1基備えている。
特徴的なのはそのサイズで、外形寸法は140×87.75×31.5mm(縦×横×厚さ)と非常に大きい。ポータブルプレーヤーとしては大きな、前モデルのKANN(115.8×71.23×25.6mm)と比べ、二回りは大きく感じる。重量もKANNの278gに対し、KANN CUBEは493gと重い。サイズ感としては、ワイシャツの胸ポケットには入らず、ズボンのポケットや、ジャケットの左右ポケットにはなんとか収まる印象だ。
スペック面での特徴は、DACに据え置きのオーディオ機器で使われるESS製の8ch DACチップ「ES9038PRO」を、2基採用した事。左右チャンネルそれぞれに1基ずつ使っており、8chをフルで使ってD/A変換する事で、「限りなく正確なサウンドの提供が可能になる」という。
なお、ES9038PROのポータブルプレーヤーへの採用は、「A&futura SE100」が既に搭載している。ただし、SE100は「ES9038PRO」1基で、8ch分のDACを、左右のチャンネルそれぞれに4ch分の割り当てて処理。KANN CUBEでは、ES9038PRO自体を2基搭載するという違いがある。
アンプ部分も最新の回路設計で強化。ヘッドフォン出力は3.5mmのアンバランスに加え、2.5mm 4極のバランス出力も搭載。バランス出力で最大12Vrms、SN比117dBを実現。高出力かつノイズの少ないアンプで、ES9038PROのパフォーマンスを最大限に引き出せるという。これにより「KANN CUBE単体で、高インピーダンスヘッドフォンや平面駆動などの鳴らしづらいとされるヘッドフォンもしっかり駆動できる」という。
KANN CUBEのゲインの切り替えは3段階用意。KANNやAK380+ジャケット型外部アンプを組み合わせたものと比べても、さらに高出力なモードを用意している。
- KANN CUBE
High アンバラ 6Vms/バランス 12Vrms
Mid アンバラ 4Vms/バランス 8Vrms
Low アンバラ 4Vms/バランス 4Vrms - KANN
High アンバラ 4Vms/バランス 7Vrms
Normal アンバラ 2Vms/バランス 2Vrms - AK380+AMP
High アンバラ 4.1Vms/バランス 8.1Vrms
Low アンバラ 2.1Vms/バランス 2.1Vrms
また、ヘッドフォン出力(可変)はライン出力(固定)を兼ねており、ライン出力モード時は、2.5mm 4極端子が1.4Vrms/2Vrms/2.5Vrms/4Vrms、3.5mmは0.7Vrms/1Vrms/1.25Vrms/2Vrms/から設定可能。さらに、3.5mmの出力端子は光デジタル出力も兼用している。
ミニXLR端子は5ピンで、側面に搭載。デフォルト出力は可変で、最大4Vrms。ライン出力モード時(固定)は1.4Vrms/2Vrms/2.5Vrms/4Vrmsから選択できる。
ミニXLR出力は、プレーヤーを据え置き機として、ホームオーディオ機器と接続する事も想定。AKブランドから、ミニXLR-XLR変換ケーブルの発売も検討されている。
再生対応ファイルは、PCMが384kHz/32bit、DSDは11.2MHzまでネイティブ再生が可能。MQAにも対応する。ファイル形式はWAV/FLAC/MP3/WMA/OGG/APE/AAC/Apple Lossless/AIFF/DFF/DSFに対応。
フェムトクロックを搭載。250Fsの低ジッターを実現する電圧制御水晶を採用している。
OSはAndroidベース。Open APP Service機能を使い、音楽ストリーミングサービスのアプリなどを、ユーザーがインストールすることもできる。CPUはクアッドコア。
USB-C端子を備え、最大10Gbpsのファイル転送や、高速充電に対応。USB DAC機能も備えており、デジタルトランスポートとして使うこともできる。
Wi-FiはIEEE 802.11b/g/nの2.4GHzに対応。BluetoothはA2DP、AVRCPに対応、コーデックはSBC/aptX HDをサポートする。
ディスプレイは5型の液晶で、静電容量式のタッチスクリーン。解像度は1,280×720ドット。バッテリは7,400mA/3.8V。連続再生時間は、44.1kHz/16bitのFLAC再生で約8時間。
音を聴いてみる
据え置きのオーディオ機器向けの8ch DACを、2基も搭載するという豪快なプレーヤーだが、音にもその効果が現れている。印象的なのは、SN比の良さと、音場の広さ。ESSのDACらしい、精密かつ緻密なサウンドで、音の輪郭のシャープさが心地良い。
出力のパワフルさも特徴で、ポータブルプレーヤーながら、大型のヘッドフォンも難なくドライブできる。能率が今ひとつのモデルでも、ゲインを「High」(アンバラ 6Vms/バランス 12Vrms)にすると、ボリューム値90~100程度(MAX 150)で十分すぎる音が出る。ヘッドフォンの活用シーンを拡げるプレーヤーとも言えるだろう。
特筆すべきは、豪華なDAC構成による情報量の多い、シャープで、細かい音までクッキリ聴こえるサウンドを、パワフルなアンプと組み合わせた上でも、シャープなまま維持できている事だ。パワフルだからといって、野太い音になったりせず、微細な音のまま、キッチリヘッドフォンをドライブする力強さも兼ね備えている。そのため、低域描写にもキレがあり、ボワッとした音にならない。
情報量の多さがありながら、ドッシリとした安定感のある低音が出せており、キレも良い。音の輪郭は非常にシャープ……と、音だけ聴いていると、ポータブルとは思えない。据え置き高級コンポでヘッドフォンをドライブしたかのような、余裕を感じさせる。これがKANN CUBEの特徴と言えるだろう。
Ted氏は、KANN CUBEが目指したサウンドとして、「ES9038PROを2基搭載しているが、このDACチップの特徴である、空間の広さや、音の自然さが損なわれないようにチューニングした。圧倒的な出力を備えながら、音質の高さも維持する事に注力した」と説明。「別途、ポータブルアンプを追加しなくても、単体のプレーヤーで、パワフルな高出力と自然なサウンドが楽しめるところが魅力」だという。
ポータブルとして非常に大きなプレーヤーだが、手でホールドした際に触れる部分を斜めにして、ホールドしやすくするなど、使い勝手にも配慮。このサイズ自体は「満足できる再生時間を実現するためのバッテリーを内蔵するなど、搭載パーツによるもの」とのこと。「高出力である事が、見た目でもわかりやすいデザインにもこだわった」という。