プレイバック2023

JOLED処分品の4K有機ELディスプレイ、あれからどうなった? by 西田宗千佳

「glancy」ブランド、すなわち旧JOLED製の有機ELディスプレイを据え付けた筆者の仕事机

毎年いろいろなものを買っているが、今年買ったものの中でも満足度が高くて話題性があったものと言えば、「glancy」というブランドの有機ELディスプレイだ。

購入した経緯は既に記事に書いたが、正直なところ、本当に衝動買いであり、確実に使い物になるという確証があって買ったわけではなかった。だが、結果的に言えば、この買い物は大正解だった。

記事を紹介した時にもAV Watchのアフィリエイト経由でけっこうな数、購入した方がいらっしゃったようだが、後日、ブラックフライデーでセールになった時にも、やっぱりかなりの注目が集まったようだ。

それだけ、低価格な4K有機ELディスプレイに注目が集まっているということだろうとは思うし、10万円を切る価格帯くらいがスイートスポットということなのだろうとも思う。

そろそろ使い始めて半年になるわけだが、どんな感じなのか現状を紹介してみたいと思う。

JOLEDの印刷型有機ELが処分品に

以前の記事でも書いたが、このディスプレイの素性をおさらいしておこう。

ディスプレイを作ったのはJOLED。同社がリビング向けの環境ディスプレイとして発売したものだ。

そもそもPCディスプレーとして作られたものではないので、表面のアンチグレア処理はないし、ディスプレイの縁にも妙な透明な飾り板があって邪魔だ。

縁にはこういう透明の板があるが、本気で邪魔だ

壁に据え付けることが基本なので、ディスプレイスタンドの類もついてこない。入力端子についても、HDMIとディスプレイポートが中心で、USBタイプCの直接入力ができないのはちょっと残念だ。

PC用ディスプレイとして作られたのではないということは、PC用ディスプレイとして使うときの検証もあまりなされていないということではある。特に焼き付きであるとか、PCで使ったときの視認性であるとか、そういったものがどうなっているかは、まあ、買うまでわからなかった。

とはいうものの、27インチで4K・HDR対応で、ディスプレイとしての素性は良い。だから、ちょっと博打のつもりで買ったわけだ。

結果的に、賭けには勝った。

画質も良好で使い勝手も良く、不満も、ディスプレイのふちにある飾り板くらいだ。思いっきりグレアなパネルなので、そこが嫌いな人には向かないだろうが、私はあまり気にしないので、これで良い。むしろ発色の良さを評価したい。

発色は非常に良好。グレアパネルを許容できる人なら満足度は高い

半年使用したがPCディスプレイとしては問題なし

PC用のディスプレイとして使ったときどうなのかと言う課題はもちろんあったわけだが、冷静に考えると、ここも問題はなかったのだろうと思う。

と言うのは、同じパネルを使ったと思われる製品として、AKRacingブランドの「OL2701」があったからだ。あちらも遅延や仕様を考えるとゲーム向けとしては、最適なディスプレイではなかったようなのだが、PC用ディスプレイとして出荷した以上、それなりの検証はされた上での製品化だと思われる。

だとするならば、この製品をPC用に使ったって特に問題は出ないのは当然なのだ。

PC用として考えた場合、HDR入力では色調整ができなくなるため、カラーキャリブレーションが必須の人には向かない。だが、筆者の場合にはそこまで厳密な作業はしないので、これでも問題はない。

PC用に長期間使った場合の懸念として「焼き付き」があると思う。この点について、完全な疑念の払拭はなされていない。

ただ購入からほぼ毎日半年近く使い続けてきているが、現状、焼き付きの傾向は皆無だ。

筆者は主にMacを使っており、リンゴマークなど「画面にずっと表示が固定される」部分がそこそこある。だが、そういうところにも焼き付きのようなものは起きていないし、今のところ気になるような傾向も見られない。

ただ、スクリーンセーバーを早めにかけるようには設定してあるし、仕事場から出る時など、長時間ディスプレイの前を離れるようなときには、リモコンでディスプレイのスイッチを切っている。そもそもアイドル時間が長くなると、ディスプレイを切る設定にもしてある。これは主に消費電力を考えてのことなのだが、このことも焼きつき防止には、プラスに働いているだろう。

今は気に入っているものの、このディスプレイを何年使うかはわからない。1、2年で買い替えはしないだろうが、10年使うとは思えない。そう考えると、焼き付きのことはあまり考える必要がないんじゃないか、とも思っている。

数年後には、もはや物理ディスプレイが補助的な存在になっている可能性だってあるんだから。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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