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手が届く価格でコンパクトなのに“ガチ画質”、BenQ 4K HDRプロジェクター「HT4550i」に感激
- 提供:
- BenQ Japan
2023年8月25日 11:56
“プロジェクター”というと、ホームシアターにとっては憧れの存在だ。100インチを超える特大画面、映画館と同じスクリーン投影など、自分だけのホームシアターを実現した人の多くが導入しているので、自分も将来的にプロジェクターを手に入れたい……と思っている人もいるだろう。
一方で、本格的な高級プロジェクターだけでなく、手軽に使えるモバイルプロジェクターも出てきており、プロジェクター自体の普及は進んできているようにも思える。
だが、大画面でより明るく美しい映像を求めると、どうしても大型で高価なプロジェクターが欲しくなる。しかし各社のハイエンド機になると数百万円するなど手が出ない……。そんなジレンマが生じてしまう。
そこで、プロジェクターの大画面に憧れる人に注目して欲しいのが、世界中で高いシェアを誇るBenQから映画視聴用途として久しぶりに登場したフラッグシッププロジェクター「HT4550i」(実勢価格45万円)だ。
簡単にスペックを紹介すると、DLP方式を採用したプロジェクターで、RGBBのLED光源を採用し最大3,200ANSIルーメンを実現。BenQ独自の高画質技術もフルに盛り込まれており、映画鑑賞のためのフィルムメーカーモードも搭載。HDR方式はHDR10、HLG、HDR10+にも対応。さらにNetflixなどの映像配信も表示できるAndroid TV端末を内蔵し、プレーヤーを用意しなくても、プロジェクターだけでホームシアターが楽しめるというもの。最新のプロジェクターに求められる機能と性能をきちんと備えた実力派モデルだ。
HT4550iを自宅でしばらく使っているのだが、その実力は確かなものだと実感している。最大3,200ルーメンの高輝度は、照明をつけた明るい環境でも十分にコントラストの高い映像を楽しめるし、明るいだけで色が薄かったり、白色が緑に偏るような色のおかしさもない。4Kの高精細さと高いコントラスト、正確な色再現をしっかりと実現できている。
筆者が自宅の試聴室で使っているプロジェクターはVictor「DLA-V90R」(288万2,000円)だが、それと比較しても投写レンズの差と思われる映像の密度感や立体感には差はあるものの、前述した高精細さ、コントラスト、色再現、そして高輝度などでは遜色のない実力を備えていると感じた。価格の差を考えれば極めて優秀だ。
レンズシフト機能も備え、コンパクトで設置性も優秀
まずは機器を詳しく見ていこう。サイズは420.5×312×135mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は6.6kg。高級プロジェクターとしては比較的コンパクトなサイズだ。
ズームレンズは1.3倍、レンズシフトは縦0~60%、横±15%(ともに最大値)となっている。ズーム/フォーカス/レンズシフトは手動。台形補正機能は、縦横ともに±30度のデジタル補正で縦方向のみ自動補正にも対応する。設置性は優秀でモバイルプロジェクターなどでの簡単設置のための技術が活かされている。
投写距離も100インチなら約2.5~3.3m、自宅の120インチスクリーンに投写した場合3~4mと焦点距離は短め。6畳間で80インチはやや無茶ではあるが、設置は不可能ではない。10畳以上の広いリビングならば、100インチ級の投写が余裕で実現できる。本体が軽量でコンパクトなので、部屋の後ろ側に棚を置いたり、天井に設置するのも比較的容易だ。
背面には各種の接続端子がある。4K/60p対応のHDMI入力は2系統で、1系統はHDMI(eARC)に対応する。このほか、USB端子、LAN端子、光デジタルオーディオ出力、アナログ音声出力などを備える。
右下のカバー内にはAndroid TV端末を装着するスペースがあり、付属のスティック型端末が同梱されている。
本体の左側面には、電源スイッチほか基本的な操作ボタンがある。右側面は冷却のための開口部がある。天面はレンズシフトのための調整ツマミがあり、スライド式のカバー内にズーム/フォーカスの調整用リングがある。外観そのものは一般的なプロジェクターと大きくは変わらない。開口部が多めなことに気付くが、これはLED光源の冷却のために必要なのだろう。
底面には設置のための脚部がある。前側のふたつが高さ調整が可能で、後ろ側のひとつは固定式。このほか、天井取り付け金具のためのネジ穴もある。サイズ自体がコンパクトなので、棚などに置くこともできるし、設置自体は比較的容易だ。ズーム/フォーカス/レンズシフトは手動なので、部屋の後ろなど置き場所を決めてしまった方が使いやすいだろう。
設置調整は簡単で、初心者でも安心して使える
設置して電源を入れると、出画自体は数秒とかなり速い。これはLED光源のためだろう。ただし、Android TV端末の起動があるため、映像の表示などができるようになるにはもう少し時間がかかる。このあたりは他のプロジェクターと大きな違いはない。
まずは設置調整を行なうが、最初は自動的に初期設定の画面が現れ、設置調整からAndroid TVのセットアップまで一通り行なえばいい。このあたりもAndroid TV搭載の薄型テレビと同様で大きく異なるものはない。
設置調整では、スクリーンに合わせてきちんと設置して、画面の傾きや図形歪みなどが出ないようにする。これには多少の手間がかかるが、じっくりと時間をかけて調整しよう。
図形歪みはキーストン補正(台形補正)機能でデジタル的に修正することもできるが、画質的に多少の影響が生じるし、表示遅延の原因ともなるようだ。ゲーム用の低遅延モードも備えているが、ゲームをプレイするならばキーストン補正は使わずに、物理的な設置調整できちんと映像が表示されるように調整したい。
ちなみに、設置調整用のテストパターンとは、画面をグラフ状に白線でマス目を表示したもの。この状態で一番外枠の四角が歪んでいないか、中央と四隅でフォーカスが均一に合っているかなどをチェックする。この状態で見てみると、外枠の四角が歪むこともないし、中間や中心付近だけが歪むようなこともない。補正の難しいタル状(糸巻き型)歪みもない。
またフォーカスについては中央に比べて四隅はやや甘くなる傾向もあるが、画面にかなり近づいてようやくわかる程度の差だ。色収差も同様で実用上はほぼ気にならないレベル。4K解像度のプロジェクターとして十分な実力があることが確認できた。
また、三板式プロジェクターで気になりやすいRGB各色のズレだが、本機は単板式のため原理的に色ズレは生じない。単板式はカラーブレイキング(色割れ現象)などの心配もあるが、色ズレが生じないために色のエッジがにじんだりぼやけた印象にならず、くっきりとした色が再現できるなどのメリットもある。そうした単板式DLPプロジェクターの良さがしっかりと確認できた。
これらが済んでしまえば、後はAndrod TVで自分が契約した動画サービスを楽しめるようになる。契約したサービスのプランにもよるが、きちんと4K HDRのコンテンツも楽しめる。もちろん、HDMI接続したUHD BDプレーヤーやゲーム機などの映像を表示することも可能だ。
正確な色再現と高輝度化のための4LED光源。開発者に聞く
本国にいるBenQプロジェクターの開発者とメールで行なったインタビューを交えながら、HT4550iの高画質について詳しく解説していこう。
HT4550iはDLP単板式で光源は4LEDだ。レーザー光源ではなく、LED光源というのがユニークなところ。RGBBの4LEDとした理由について聞いてみた。
「4LED光源としたのは、より高い色精度を達成するためです。HT4550iはBenQ独自の高輝度4LED光学エンジンと0.65インチのDMDパネルを使用することにより、DCI-P3の色域カバー率100%を実現しました。他のレーザー光源採用モデルと比較してもより広い色域をカバーしています」。
「また4LEDは3つのRGB LEDと全体の明るさを増すための追加LEDで構成されています。光源の設計と選択されるLEDカラーはモデルによって異なりますが、HT4550iではRGB+Bの4LEDとしています。光源をさらに追加することで、3LEDプロジェクターと比較して全体的な明るさが向上します。また、BenQならではの4LEDプロジェクターの優れた点として、色の正確さを長期にわたって維持するために、一貫したホワイトバランスを確保する自動キャリブレーション機能を備えています。これは、RGBBの各光源で常時自動的に調整されています」。
LED光源は今やmini LEDも含めてかなり高輝度化が進んできている。レーザー光源も小型化が進んできているが、HT4550iの映像を見ると、色再現性を含めてかなり優秀なものになってきているのがわかる。
続いてはコントラスト性能だ。高輝度ばかりでなく、暗部の再現性を含めてHT4550iの実力はかなりのものだと感じた。その理由はどこにあるのか。
「HT4550iは最新のコントラスト調整技術『HDR-Pro』を採用し、2段階のトーンマッピングにより明るいシーンから暗いシーンまでよりディテールを再現します。第1段階はローカルコントラストエンハンサー技術です。各画像を1,000以上の領域に分割し、独自のアルゴリズムを適用することで暗部や明部のコントラストやディテールを最適化します。これはフレーム単位で動作しています」。
「第2段階として、異なるコンテンツやシーンに基づいてプロジェクターの光学システムを制御し、光源の出力を決定するダイナミックブラック技術を使用しています。この2段階方式によりコントラストを最適化でき、制作者が思い描くシーンに階調を近づけることができました」。
入力された映像を細かく解析して、最適なトーンマッピングを行なう技術、そして、コンテンツやシーンの画面の明るさに合わせて、LEDの明るさを動的に制御する技術。このふたつを組み合わせたものがHDR-Proということだ。これらはプロジェクターだけでなく、薄型テレビなどでも各社が高い技術を盛り込んでいる部分だが、その点においてもBenQのHDR-Pro技術はかなり優秀だと言うことができる。
「HT4550iの開発でもっとも苦労した点は、シングルチップ(単板式)のDLP方式でありながら、優れた色精度と高いコントラストレベルを犠牲にするこなく、LEDの輝度効率を高めるかという点です。結果的に明るい部屋でも使えるほどの高輝度でありながら、忠実度の高い色と豊かなコントラストを実現できたと思います」。
この点については、実際に使ってみると、苦労の成果がよく伝わってくる。プロジェクターで高輝度を追求すると、どうしても画面は明るいが正確な色が犠牲になってしまうことが少なくない。安価なプロジェクターではよくあることだ。このあたりを妥協なく実現しようとすると、価格もかなりのものになってしまう。しかし、HT4550iは現実的な価格に抑えながらも、この部分にかなり力を入れて開発したことがわかる。
なお、HT4550iは出荷時に色域(Rec.709およびDCI-P3)のチェックを行ない、その測定値の結果をキャリブレーションレポートとして製品に添付している。製品の性能についての自信の表れだろう。
忠実度の高い映像を投写するためには、“細かな設定ができる事”も大事
画質調整機能などの設定を見ていこう。プロジェクター用のメニューでは、初期設定をはじめ、画質調整や音質調整などが一通り行なえる。メニューの内容も一般的なプロジェクターと同様だ。
まずは画質調整。HDR映像とSDR映像でピクチャモードは切り替わるようで、HDRでは信号に合わせたHDR10/HLG/HDR10+のメニューがあり、このほかにフィルムメーカーモードがある。これは、映画コンテンツなどを制作者の意図に忠実に再現するモードで、フレーム補間機能がオフとなるのをはじめ、コントラスト強調やディテール強調などの高画質機能もオフとなる。モニター的なモードだ。
調整値はシャープネスがHDR10では「12」だったものが「0」となっているが、他の項目は同じ。違いがあるのは詳細設定で、独自の高画質機能である「CineMaster」の設定値がすべて「0」または「オフ」となっている。ディテールを強調する「Color Enhancer」や「ピクセルエンハンサー」、肌色補正、フレーム補間を行なう「モーションエンハンサー」、局所的なコントラストを高める「ローカルコントラストエンハンサー」がある。
SDR映像を入力した場合は、ピクチャモードがSDR映像向けのものとなるが、こちらにもフィルムメーカーモードが用意されている。詳細色設定では広色域やHDR輝度などのHDRに関わる機能は選択できなくなるが、基本的な項目は同様となっている。
感心したのは、ガンマ選択や色温度の調整。ガンマ選択では1.8~2.6まで細かく切り替えできる。色温度は標準/低い/高いを選べるほか、RGB各色のゲインとオフセットを変更する微調整が可能。見たところ「色温度:標準」は6500K付近のようで、基本的には「標準」のままで使って問題ない。「色温度:低い」はさらに低めの色温度となり、「色温度:高い」はテレビ放送などに近い色温度となるが、薄型テレビでありがちな白が青白く見えるような1万Kを超えるような高い色温度ではない。
さらに詳細な色温度の微調整では、映像レベルごとにRGBのバランスを調整することも可能。正確な調整を行なうにはキャリブレーション用の測定器などが必要になるが、正確な色再現をした人にはありがたい機能。また、グレースケールなどで確認すると特定の明るさだけグレーが赤や緑に寄ることもあるが、それらを補正することも可能だ。
オーディオの項目では、内蔵スピーカーの音質や音声出力についての設定が可能。「treVolo」は内蔵スピーカーのことで、独自の高音質機能を備えている。このほかに、「Audio Return+(HDMI eARC)」「S/PDIF(光デジタル音声出力)」、「3.5mm端子」と外部オーディオ出力に切り替えられる。サウンドモードはシネマ/音楽/ゲーム/スポーツ/ユーザーのモードが用意されている。
このほか、「ディスプレイ」の設定では、アスペクト比の変更のほか、3D映像の設定が可能。HDMI設定などもここに用意されている。24コマ収録の映像を忠実に再現する「24P Trueシネマ」が用意されているのも、映画ファンにはうれしいところ。
日本メーカーの薄型テレビに慣れているとあまり珍しく感じないが、海外製のディスプレイではフレーム補間を行なうのが基本で、モデルによってはフレーム補間をオフにできないことさえある。これについては、映画制作者の側でも24コマ収録の映像をそのまま見てほしいと声高に言いはじめたことに連動しているのかもしれない。
実際、HT4550iにはフレーム補間機能も備わっていて出来も優秀なのだが、初期値では24コマ表示を行なう仕様になっている。このあたりも映画を忠実に再現するためのプロジェクターという作り手の意図がよくわかる。
「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」でHT4550iの実力を確かめてみた
HT4550iを長めにお借りできたこともあり、色々な映画を見た。ここではプロジェクターとしての実力を確認するため、UHD BDプレーヤー・パナソニック「DP-UB9000」の映像をHT4550iに入力して確認している。ピクチャモードは「フィルムメーカーモード」としているが、独自の高画質機能の実力を確かめるため、随時映像設定を調整して確認した。
視聴したのは、「アバター:ウェイ・オブ・ウォーター」(以下 アバター:WOW)。「アバター」のシリーズ第2作で、惑星パンドラを舞台としたリアルな異世界を楽しめる作品。
主人公は今作では結婚して子供も生まれていて、家族の物語としての側面も強まっている。そして、ご存じの通り舞台は海となり、森の民とは体色や腕や足などの形状に違いもある海の民との生活や美しい海の映像が大きな見どころだ。
冒頭の平和な生活から、再び人類がやってきて闘争が再開する場面を見たが、4K映像の高精細さは十分。画面全体の明るさが十分なこともあり、部屋を暗室としてしまえば、薄型テレビと変わらない明るくクッキリとした映像が楽しめる。そして、色の正確さ、コントラスト表現の正確さにも感心した。アバターの青い体色や身体の模様も鮮明だし、肌の質感も十分に緻密だ。
コントラストでは、宇宙から飛来する人類の宇宙船の描写が印象的で、漆黒の宇宙空間でロケットを噴射する眩しい輝きがしっかりと表現できている。惑星パンドラの夜の森の中の場面も、暗い森の中でも色が抜けてしまうようなことがなく、木々の緑やアバターたちの青い肌がよくわかる。プロジェクターにありがちな黒浮きが気になるようなこともなく、実に鮮やかな映像だ。
なお、フィルムメーカーモードでは、局所的なコントラストを高める「ローカルコントラストエンハンサー」は「オフ」。ここでその実力を確かめてみたが、「オフ」のままでも暗部の階調もきちんと再現できているが、「ローカルコントラストエンハンサー」を「低」とするとさらにコントラストが高まり、暗部が締まる。映像に密度感が出て、特に暗い森の雰囲気がより豊かになる。その一方で、アバターや森の獣のギラリと光る瞳の輝きもしっかりと出ている。フィルムメーカーモードの忠実感の高い映像も魅力的だが、適度に高画質機能を足してやるとさらに表現力が増す。
なお、「ローカルコントラストエンハンサー」を「高」にするとよりくっきりとした映像になるが、それでもいかにもCG映像とか、ゲーム映像のような作り物的な印象にはならないのも好ましい。好みで「高」を選んでもいいが、個人的には映画ならば「低」、ゲームなどは「高」と使い分けるとリアルな感触でそれぞれのコンテンツの持ち味を活かした映像を楽しめると感じた。
そして一家は自分たちを付け狙う人類から逃れるため、海の民の元へ身を寄せることになる。ここでは海面や海中の映像の美しさが見事だし、そのリアルさは実際に海で泳いでいる感覚になるほど。海面からの陽の光の感じも実にそれらしいし、水に濡れた肌の感じや海中での珊瑚礁のような場所での色鮮やかさも見事だ。映画での色が正確に再現されているのがよくわかるし、やや暗く青みを帯びた海中、陽の光が眩しい海上、そのどちらでも色の正確さ、リアルさのバランスが変化しない。
BenQ設計陣のインタビューでも、正確な色の再現にこだわったことがよくわかるが、映像を見ても改めてリアルな映像再現ができていることに感心した。特にコントラスト感の表現は見事なもので、HDRの映像表現をしっかりと描きながら、白飛びや黒沈みなどの不自然さがない。
正直なところ、BenQに限らず海外メーカーのディスプレイでは、このあたりの細かな表現力に物足りなさを感じることがあったが、HT4550iではそうした不満がまったくない。この実力は相当なものだし、実際に同価格帯の国内メーカー製の4Kプロジェクターと比較しても肩を並べる実力だ。
海中のシーンでは、戦闘シーンの迫力も見物だが、クジラに似た大型の生物との交流が感動的でさえある。このあたりでも画質調整をいろいろと試してみた。
CineMasterのColor Enhancerやピクセルエンハンサーは基本的に初期値の「0」のままで十分な精細感がある。旧作の4Kリマスター版などは最新の映画に比べるとディテール感が不足した印象になることもあるので、そういう場合に使うと良さそうだ。
HDR輝度は画面全体の明るさを調整するもので、完全に真っ暗にできない環境や照明をつけた環境など、周囲の明るさの影響で映像のコントラスト感が不足する場合に使うといいだろう。調整の範囲は-2~+2まで(初期値は0)。白飛びや黒沈みは生じるので、周囲の明るさに合わせて加減するといい。
モーションエンハンサーはフレーム補間機能で、滑らかな動きを再現できる。一般的な映画では不要な機能だが、「アバター:WOW」の場合は劇場公開用として、48HzのHFR(ハイフレームレート)で制作されており、一部劇場ではアクションシーンにおいて48Hzの滑らかな動きが楽しめた。本機のモーションエンハンサーを加えると、HFRらしい滑らかな動きが楽しめる。「低」ならば過度に滑らかになりすぎることもなく、なかなか良い。素早い動きがより鮮明になるのでアクションシーンでの素早い動きもより鮮明に感じるし、スピーディーに展開する海中を逃げ回る場面などの迫力も高まる。逆にゆっくりとした動きの場面で映像に乱れが生じるようなこともない。テレビ放送やドキュメンタリー番組などはモーションエンハンサーを積極的に使った方が見やすい映像だと感じるだろう。
「アバター:WOW」は、最新鋭のCG技術を駆使したリアルな映像体験が一番の魅力だから、それを特大の画面でリアルに楽しめると満足度は非常に大きい。映画館と言ってしまうとおおげさだが、それに近い大画面の迫力を自分の家で満喫できるプロジェクターはやっぱり楽しい。
ゲームでは「ファイナルファンタジーXVI」もプレイしてみたが、低遅延となる高速モードを使えば、アクション主体のこのゲームでも大きな支障なくプレイできるし、モーションエンハンサーを使うことで敵となるモンスターの動きが見やすく、攻撃を避けやすい。特に暗いシーンでの見通しの良さに感心した。明るく持ち上げすぎて雰囲気が台無しになることもなく、適度な暗さと見通しの良さが両立している。こうしたところからも、暗部の階調表現がかなり優秀であることがわかる。
もちろん、映画的なムービーシーンもHDRのコントラストの高さがしっかりと再現できていて満足度は極めて高い。あきれるほどに大きなタイタンの巨大さ、地上を飛び出して宇宙空間で戦うバハムートとの高いも迫力満点で楽しめる。
このようにゲームも十分楽しめるHT4550iだが、よりゲームに特化したいという場合は、リフレッシュレート240Hz動作をサポートするゲーミングプロジェクター「X3000i」もラインナップしているので、そちらを選んでもいいだろう。
SDR映像では、「かがみの孤城」を見た。本作は不登校になった主人公の少女が家の鏡を通じて絶海の孤島に建った城に誘われ、似たような境遇の少年少女とともに城の謎を解くというファンタジー。物語の展開とともに各キャラクターの抱える問題が明かされていき、それらが城の謎解きにも絡んでいく語り口も見事だし、最後の結末にも爽快感があるなど、よく出来た作品だ。映像は2K SDRでアニメとしては標準的な品質だが、作画の出来もよく、CGを駆使した城の中などの描写も見応えがある。
「アバター:WOW」では肌色の再現の正確さや自然さを確認しにくいので、本作で肌色の調整をしてみた。調整範囲は「±5」(初期値は0)。初期値のままで健康的な肌の色は出ているし、設定通りの色が出ていると感じるが、「+5」まで上げてみてもわずかに顔色が青くなる程度で過度な補正は行なわれない。好みによって「-1」くらいにすると肌の赤みが増すので作品によって使い分けるといいだろう。
ピクセルエンハンサー4Kは、ディテールの再現を高めるもので、調整範囲は0~20。「5」くらいまで上げてみると実写映像では輪郭に強調感が出てしまうので、控えめに使う方が良さそうだ。ちなみに「0」のままでも映像が甘く感じるようなことはない。古い映画やDVD品質の映像を見るときに使うといいだろう。アニメに関しては「10」くらいまでは使える。顔などの描線にオーバーシュートが目立ち始めるが、不自然さはない範囲だし、背景画の質感がよく出てくるので、大画面でも映像に緻密さが出る。
クッキリとした色再現はカラフルで、アニメらしい鮮明さもしっかりと味わえるなど、こちらも満足度は高い。実は正確な色再現を過剰に重視すると、日本人の肌がグリーンに寄った不健康な色になるような弊害もあり、モニターディスプレイの正確さが悪く出てしまうようなこともある。
当初はそのあたりも心配していたのだが、いろいろな作品を見ていてもそうした不自然さを感じることもなく、しかも正確な色再現と感じるバランスになっているのは立派だ。このあたりの日本人の感性にも合わせた画作りは日本メーカーならではとも感じていたが、BenQのような世界規模で活躍するメーカーがここまでのレベルに仕上げてきたことは驚きさえある。逆に言えば日本メーカーはもっと頑張らないとヤバいとさえ感じた。
特大画面の時代はもう目の前に! プロジェクターに注目を
ここ最近、映画の宣伝などで監督や主演俳優が「なるべく大きな画面で見てほしい」というメッセージを発することが増えてきた。これはもちろん、映画は映画館で見てね、という映画業界の宣伝でもあるのだが、実際映画館のスクリーンで見る映画体験は一般的な薄型テレビでの視聴体験とは別物だ。映像の物理的な大きさは視聴体験に大きく影響する。
モバイルプロジェクターを含めて価格の安いプロジェクターも増えてきたし、昭和の家庭のように家に誰かいるときは必ずテレビが映っていてそこに家族が集まるというシチュエーションも減ってしまった。テレビ放送はそれぞれがスマホなどで個別に見る時代になりつつあり、薄型テレビの存在意義は相対的に下がっている。テレビが映っていない時は“巨大な黒い板”なので、「2001年宇宙の旅」の類人猿じゃあるまいしそんなものに価値はない。
とすれば、必要な時だけ100インチ級の映像が現れるプロジェクターこそ、現代の生活スタイルの合うのではないかと、個人的には思う。チューナーがないから使いにくいという問題も、動画配信サービスやテレビ放送のネット再配信がこれだけ普及すれば、Android TV搭載で何の問題もない。
「100インチ級で100万円を超える薄型テレビ」に憧れを感じるが、「100万円を超えるプロジェクター」と聞くと、自分には関係が無いと感じてしまう人も少なくないだろう。しかし、HT4550iであれば、45万円で100インチ級の高画質映像が楽しめてしまう。
「100インチ級の映像なら10万円のフルHDプロジェクターでも表示できるのでは?」と思う人もいるかもしれないが、HT4550iのような高画質4Kプロジェクターと比べると、さすがに画質的な落差が大きすぎる。画質というのは同じサイズでわずかに高画質になっても差がわかりにくいものだが、画質そのままでサイズだけ大きくすると“画質が落ちた”と感じる。粗が目立ちやすくなるためだ。だから、100インチ級を前提としたプロジェクターこそ、それなりの価格のものを選びたい。
冒頭述べたように、現在の高画質プロジェクターは“100万円越えが当たり前”という世界で、あまりにもハードルが高い。実売で50万円くらいというのが妥当な線だと思うが、その一番層が厚くなってほしい価格帯が、ほぼ空白地帯になっていた。そこにBenQのHT4550iが登場した意義は大きい。現実的な価格で、より高価なプロジェクターにも迫る実力を備えているのは素晴らしい。このようなモデルがさらに増えてくれると、プロジェクター全体の魅力もさらに高まると思う。
“100インチ級で高画質”は決して非現実的なものではない。特大画面のホームシアターに憧れる人は、薄型テレビだけでなく、今こそプロジェクターにも注目してほしい。