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AVファン待望ユニバーサルプレーヤー「MAGNETAR」はOPPO「UDP-205」を超えたか?

MAGNETAR「UDP900」

2月16日の発表以来、大きな話題となっているMAGNETAR(マグネター/中国・深圳)のUHD BD対応ユニバーサルプレーヤー「UDP800/UDP900」。ぼくの周りも騒がしい。なぜならOPPO Digitalのユニバーサルプレーヤー・ユーザーが多く、エミライがOPPO Digital製品の修理を受け付けなくなって以来、ヒヤヒヤしながら使っているという仲間が多いからだ。

そんなAV&オーディオ・ファンのみなさんは、「MAGNETARの2モデルはOPPO Digital最後の高級機UDP-205の性能を超えたのか?」、「画質・音質で評判の高いパナソニックDMR-ZR1と比べるとどうなのか?」、「UDP800とUDP900、品質面でどれほどの違いがあるのか?」、そんな疑問をお持ちのはず。はい、安心してください、これから詳細にリポートします。

MAGNETAR「UDP900」
MAGNETAR「UDP800」

発表会から10日後の2月26日、輸入元エミライの担当者がUDP800とUDP900を我が家に運び入れてくれた。ハコから出してみると、ずっしりと重い。800は8kg、900は15.5kgもある。ソニー製のちゃっちいモデルとは大違いの重量感だ。

UDP900の写真を見たときは、フロントパネルのガンメタとブラックの2トーンの対比が強すぎて、なんか落ち着かないデザインだなと思ったが、実物はほどよいコントラスト感で、とても好ましい。両モデルを見比べると、UDP900は背が高すぎて視覚的にはUDP800のプロポーションのほうがぼくは好き。ちなみにお値段はオープンプライスで、実売はUDP900が550,000円前後、UDP800が297,000円前後だ。

実物のUDP900を見ると、2トーンのコントラストが程よく、好ましいデザインだ
左がUDP800、右がUDP900。UDP900の方が背が高い

UDP800とUDP900は何が違うのか?

では、UDP800とUDP900の共通点と相違点を述べよう。

まずとても大事なことなので最初に言っておくが、この両モデル、操作性がすこぶる良い。OPPO Digital製品に比べて圧倒的にサクサク動いてストレスを感じさせない。

また、輸入元のエミライがカスタマイズした独自のフォントデータを採用したとのことで、OPPO Digital製品以上にOSD(On Screen Display)が見やすく、“メイド・イン・チャイナ”の雰囲気が雲散霧消している。この2点だけでOPPO Digitalから乗り換えたいとぼくは思う。

まず、サクサク動いてストレスが無いのが良い。フォントも見やすく、日本語が不自然な点も無い

UDP800、UDP900の共通点でいちばん大きいのは、どちらもSACD再生に対応した振動対策済みのソニー製同一メカニズムを採用している点。また、ディスク再生の基本動作を司るSoC(Silicon on Chip)もMediaTek製の同一チップだ。それから、両モデルともに映像/音声の分離出力が可能な2系統のHDMI出力を装備している。

ドライブメカはソニー製の「481AAAレーザードライブ」
MediaTek製のクアッドコア・プロセッサー「MT8581」

注意したいのは、両モデルともにYouTubeや音楽/映像のストリーミングサービスに対応していないこと。LAN端子は用意しているが、これはあくまでもファームウェアのアップデート用だ。この両モデル、あくまでもハイクォリティ・ディスク再生に特化した製品と理解したい。

では、違いは何か。まず電源回路が異なる。ともに電源トランスを積んだアナログ・リニア回路を採用しているが、UDP800はシングル・パワーサプライ、UDP900はメインボード(スイッチング電源)、オーディオ回路(アナログ・リニア電源)で独立した電源供給を行なうデュアル・パワーサプライである。

UDP800の内部。右の「POWER」というシールドに覆われている部分にリニア電源モジュールが入っている
UDP900の内部。メインボード用のスイッチング電源と、オーディオ回路用のリニアトランス電源を個別に搭載したデュアルパワーサプライになっている

アナログ音声出力は、UDP800は2ch出力のみ。XLRバランス出力とRCAアンバランス出力を用意する。DAC素子は768kHz/32bit対応のバーブラウンPCM1795で、これをL/R独立で2基用いている。

UDP800のアナログ音声出力は2chのみだが、XLRバランス出力も備えている

UDP900は、2ch(XLRバランスとRCAアンバランス)/7.1ch(RCAアンバランスのみ)両方のアナログ出力を搭載する。DAC素子は2ch出力用がESS製「ES9038PRO」で、7.1chは「ES9028PRO」だ。768kHz/32bit対応のUSB DAC端子も用意される。

マルチチャンネルのアナログ出力に対応したアンプはほぼ見当たらなくなったが、ぼくが愛用しているオーラ「VARIE」やアキュフェーズ「CX-260」などをまだ大事に使っているという方にとっては、7.1chアナログ出力を用意してくれているのは有り難い。

UDP900は2chに加え、7.1chのアナログRCA出力も備えている

内部のコンストラクションは、ともにセクションごとに独立した基板設計で相互干渉を低減させているが、UDP900はそれに加えて振動・ノイズ対策が徹底されている。各セクションを金属カバーでシールドして電磁干渉を抑制するとともに、オールアルミの筐体構造にダブルシャーシ、ダブルカウンターウェイトプレートを採用して振動抑制に意を払っている。このへんの設計手法に昔のパイオニア製品に共通したセンスを感じるが……。

UDP900のシャーシ構造

OPPO Digital「UDP205」と比較

ヒートアップさせたUDP800/UDP900をセットし、ぼくのサブシステムに組み込んでいるOPPO Digital「UDP-205」と比較してみよう。テレビディスプレイはREGZAの65型有機ELタイプ「65X9400」、プリアンプはオーラ・VARIE、パワーアンプはリン「MAJIK6100」、スピーカーはエラック「330CE」だ。

サブシステム
OPPO Digital「UDP-205」

まずHDMI接続で画質比較。

最初に使ったのはビコム制作の4K/24p、HDR10+のUHD Blu-ray『西表島』だ。南国らしい抜けるような青空の「星砂の浜」を観たが、OPPO Digitalに比べてUDP800のほうがピーク輝度が上がったように見え、コントラスト感で明らかな違いがあった。また、波間のきらめき、その解像感、情報量でも違いが実感できる。UDP-205は2017年の発売、この画質の違いを体感し、6年の進化の度合いは大きいと確信した(UDP800の海外での発売は2023年)。

では、UDP900はどうか。UDP800との違いを感じたのは色純度の向上だ。輝度のピーク感については差をあまり感じないが、波打ち際にいる人が着ているブルーやイエローのTシャツがいっそう鮮やかで、その色切れもよい。電源回路や筐体設計の違いが表れているのだろう。

映画ソフトでも比較してみよう。UHD BDの『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』のチャプター2、アムステルダムの廃墟で2人の男が語り合うシーン。暗闇からイーサン・ハント演じるトム・クルーズの顔がふっと浮き上がってくるのだが、UDP-205に比べて、UDP800は暗部のノイズが少なく、顔のしわが克明に描かれる。比較するとUDP-205はSN感、解像感で劣り、彩度も浅い印象だ。UDP900はこの800の印象の延長線上にあり、色乗りとSN感がUDP800以上に好ましいと思った。

音質もチェックする。

まずUDP-205とUDP800のアナログ2ch出力(RCAアンバランス)をオーラVARIEにつないで音を聴き比べる。オノセイゲンさんがマスタリングしたSACD『Jazz,Bossa,and Reflections Part1』からオスカー・ピーターソン・トリオの「You Look Good To Me」を聴いてみた。

この音も予想以上に違う。UDP800のほうがリズミックな表現で上回り、聴いていて楽しい。ピアノのブリリアントな響き、ベースの弾む感じ、ドラマーのブラッシュワークの鮮明さ、すべてUDP800の勝ちだ。比較すると、UDP-205はサウンドステージの天井が低く、音のヌケがいま一つの印象となる。

UDP800のXLRバランス出力の音もチェック。最大出力電圧はバランス出力のほうが大きいが、音圧を揃えて聴くとRCAアンバランスとの音質差はさほど感じられなかった。安心してRCAアンバランス出力をお使いいただきたい。

UDP900

では、UDP800とUDP900の音を聴き比べてみよう。この音質差は画質以上に明らかだった。

UDP900で聴くと音の重心がぐっと下がって音場のスケールが雄大となり、それぞれの音像に豊かな生命感が付与されるようになる。電源回路や筐体構造への物量投入が、このすばらしい音に寄与しているのは間違いないだろう。また、本機もRCAアンバランス、XLRバランスの両出力で、音圧を揃えて聴くと有意な音質差を感じることはなかった。

UDP900には7.1chアナログ出力があるので、VARIEとつないで4.0chダウンミックス(サラウンドスピーカーはエラック312)再生をしてみた。聴いたのは、サム・クックの5.1ch SACD『ライブ・アット・コパ』やジャクソン・ブラウンの5.1ch DVD-Audio『ランニング・オン・エンプティ』、同じくドナルド・フェイゲンの5.1ch DVD-Audio『ナイトフライ』など。この再生はとても楽しかった。

なつかしのDVD-Audioも聴いてみた

サム・クックとジャクソン・ブラウンのライブは、サラウンド・チャンネルの振り分けられた聴衆の拍手やざわめきがぐんとフレームアップされて、演奏会場にワープしたかのような臨場感が味わえるし、スタジオ収録されたドナルド・フェイゲンは、各楽器が精密にサラウンド音場に振り分けられ、2chステレオ再生以上に音数が多く感じられる。その音の奔流に身を委ねる面白さに陶然となった。

ちなみにSACDやDVD-Audioのマルチチャンネル収録作品については、OPPO Digital製品では再生できないソフトがいくつかあったが、今回のテストに用いたディスクはすべて再生できたことを申し添えておく。UDP900を入手して2000年前後に数多く登場したSACDやDVD-Audioの5.1ch盤をもう一度掘り直したい気分になった。

プロジェクターでDMR-ZR1とも比較してみる

では、UDP800とUDP900をぼくのメインシステムに組み込んで、パナソニック「DMR-ZR1」と比較してみよう。

上段がUDP800、下段がDMR-ZR1

JVCのプロジェクター「DLA-V9R」の映像をオーエス製110インチ・スクリーンに映し出して画質比較。有機ELテレビでのチェックでも用いたビコムのUHD BD『西表島』と『ミッション:インポッシブル~』でUDP800とZR1を見比べたが、ZR1のほうが全体に明るく、『西表島』の打ち寄せる波のディティールの掘りが深く、解像感が高く見える。『ミッション:インポッシブル~』でもZR1のほうがコントラスト感で勝り、暗部の見通しも良い。パナソニックならではの優秀なクロマアップサンプリング技術ゆえだろう。比べるとUDP800はローキーな画調で、相対的にクロマレベルが高い印象となる。

UDP900の画質はその延長線上にあり、ローキーながらUDP800以上に色乗りがよく、SN感で勝る印象だ。『ミッション:インポッシブル~』の暗部階調の描写もUDP800よりも優れる。ただし、ZR1の輝度レンジの広さ、解像感の高さには及ばないことがわかった。

UDP900にチェンジ

次に、BD『ハウス・オブ・グッチ』を用いて、ZR1とUDP900で4Kアップコンバート画質をチェックしてみた。両モデルともにハイレベルな画質だが、ディティール表現についてはZR1がUHD900を上回る。暗闇からスポットライトで浮かび上がるグッチ夫人演じるレディー・ガガの表情の豊かさ、頬の立体感などにわずかな違いがあるのだ。

HDMI出力の音質比較も興味深かった(AVアンプはデノンAVC-A1H、スピーカーはJBL K2S9900)。『ミッション:インポッシブル~』で聴き比べてみたが、UDP800とUDP900では台詞の押し出しや細かな環境音の再現性でUDP900が上回る印象。HDMI出力においても筐体構造の違いが音質に反映されるのだなと実感した。

UDP900の音質はZR1よりも好ましかった。どちらも台詞に十分な厚みを感じさせ、ダイナミックな表現力で映画のスリルを醸成していくが、UDP900のほうが音に芯があり、力感で上回る印象だ。

ディスク再生にこだわるAVファンの期待に応えるユニバーサルプレーヤー

ディスク再生にまだまだこだわりたいという熱心なAVファン注目の2モデル、UHD800とUHD900。環境を変えながら画質・音質をシビアにチェックしてみたが、いかがだっただろうか。

プロジェクター大画面でのチェックでは、パナソニックDMR-ZR1の精細度の高さや4Kアップコンバート性能にマグネターの2モデルは追いついていない印象はあるが、ZR1はあくまでレコーダーで、SACD再生機能もないし、アナログ音声出力もない。UHDブルーレイ対応のユニバーサルプレーヤーとして、UDP800/UDP900は現在入手できる製品の中で最上のものだと確信する。修理対応ができず、中古市場で高値取引されているOPPO Digital製品を買うくらいなら、断然マグネターの2モデルを購うべき。SACDやDVD-Audioのマルチチャンネル・ソフトが再生できるオーディオプレーヤーとして考えても、UDP900は現在トップエンドに位置づけされる製品であると断言したい。

山本 浩司

1958年生れ。月刊HiVi、季刊ホームシアター(ともにステレオサウンド刊)編集長を務めた後、2006年からフリーランスに。70年代ロックとブラックミュージックが大好物。最近ハマっているのは歌舞伎観劇。