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10万円で始めるホームシアター。デノン+Polk驚異のコスパ。2chからステップアップなら4ch!?
- 提供:
- ディーアンドエムホールディングス
2024年5月21日 08:00
「ホームシアター」と聞くと、“専用ルームを作ってプロジェクターにスクリーン、BDプレーヤー、AVアンプを用意し、スピーカーを沢山並べて……”と、本格的なシアターをイメージする人も多いだろう。
しかし、今「ホームシアター」は気軽なものになった。テレビで動画配信が楽しめるようになった事で、より手軽に、普段生活するリビングで、テレビと接続したオーディオ環境を整える「リビングシアター」に注目が集まっている。
「でも、スピーカーを沢山並べないといけないんでしょ?」「そんなスペースやお金も無いし……」と思ったアナタ。そりゃ「シアター」を謳うなら、5.1ch以上のマルチシステムが組めるに越したことはないが、そもそもリビングは「生活動線を考慮する」という制約があるため、沢山スピーカーを置くのはハードルが高い。
そこで実践して欲しいのが「最初からガチなマルチシステムを組まず、ひとまず2chスピーカーで、10万円から始めるホームシアター」だ。
「2chでどれくらい満足できるのか?」「マルチャンネルとどのくらい違いがあるのか?」編集部にピックアップしてもらったシステムを、実際に体験してみた。
結論を先に言うと、ちゃんと機材を選べば、2chからでも十分に「シアター」と言える満足度の高い環境が作れた。
堂々と2chから始めてヨシ!
まず体験したのは、65インチのテレビを中心に、Polk Audioのフロア型スピーカー「Polk Monitor XT60」(1台33,000円/以下MXT60)が2台と、デノンのAVアンプ「AVR-X580BT」(58,300円)を組み合わせた2chシステム。
何がすごいってこの組み合わせ、AVR-X580BTはデノン製AVアンプの中で最エントリー機にあたり、発売から日が経っていることもあって2024年5月時点での実売がなんと3万円台。さすがにDolby Atmosやネットワーク機能には非対応だが、Bluetoothには対応しつつ、エントリー機として基本的な音質を高めた5.2ch出力モデルだ。
そしてスピーカーのMXT60に至っては、実売1台2万円台である。定価の合計金額は12万4,300円だが、実売ではMXT60が2万円台、AVR-X580BTが3万円台なので、合計約8万円と、10万円以下で揃う2chシステムだ。
「そんなに安くて大丈夫なの?」と心配になるが、音を鳴らしてみると、「安価なだけのシステムではない」ことを実感することとなった。
まずは音楽再生からということで、マイケル・ジャクソンの「Black Or White」を試聴した。イントロのエレキギターが鳴り響いた途端にキレキレで、鮮度が高い。現代からすると基本の音数が少ない’80年代サウンドだが、本システムではドラムやベースのリズムセクションがハイスピードで楽曲のエッジが際立って好相性。あえて自分の語彙を無視して感覚的に表現すると、マジで超ノれる。
そして、あの有名なリフがちゃんと「ギターアンプが増幅する切れ味抜群なギターの音」としてリアルに響き、「全然安っぽくない。むしろこれで良い」と率直に思った。将来的にマルチシステムに拡張することは一旦置いて、「AVアンプで楽しむステレオ再生」というテーマでもオススメできるサウンドだ。さすが、デノンのHi-Fi製品と共通の“山内サウンド”を継承するAVアンプと、音質クオリティに対するコスパの高さで定評のあるPolk Audio製スピーカーの組み合わせである。
先ほどAVR-X580BTを“実売3万円台のエントリーAVアンプ”と書いたが、本機はデノンのハイエンドHi-Fi製品を手掛けるサウンドマスター・山内慎一氏の開発コンセプトを継承するAVアンプとして、一番安価な製品でもある。
また、AtmosとWi-Fiを非搭載とした分、パワーアンプ部や電源部などオーディオ的な内部構成にコストを投入した作りになっているそうで、山内氏の手でHi-Fiアンプに通じる音の純度を追求されたモデルでもある。音楽のステレオ再生で、その地力を深く感じた。
テレビで「シアター」するなら、2chで低域を稼げるフロア型が有力
テレビを中心としたシアターを2chからスタートしても楽しめるのか? が今回のポイントなので、映画「トップガン マーヴェリック」も視聴してみる。
結論から言うと、2chでもかなり楽しめる。「手軽なシアター」と言えばサウンドバーが存在するが、サウンドバーの音と比べても、AVR-X580BT + XT60の音は、上下左右方向の広がりやレンジ、純度が数段階パワーアップした感じ。テレビの画面サイズを大きく超えて奥行きのある豊かなサウンド空間が広がる。
その中で、航空機の風切り音による移動感は2chでもちゃんと感じられる。また、センタースピーカーは使っていないが、逆にそのことでセンターの音が下から聞こえる感じにならず、セリフなどは画面から出ているように感じるので聞きやすい。
ただ、“どんなスピーカーとAVアンプの組み合わせでも良い”というわけではない。まず、地の音が良質であることが重要。今回使用したAVR-X580BT + MXT60は、上述の通りHi-Fi的なサウンドに通じる地力を持っていて、メカ音や風切り音が自然に鋭く響くしセリフもナチュラルだ。
そしてもうひとつ、特に印象的だったのは、サブウーファーが無いのに飛行や爆破などのシーンで想定以上に低域の存在感があったこと。ここで、今回のスピーカーにフロア型のMXT60がチョイスされた理由がわかった。
MXT60のユニット構成は、2.5cmテリレン・ドーム・ツイーター、ダイナミック・バランス・デザインの16.5cmウーファーに加え、16.5cmのパッシブラジエーターを2基搭載する。そう、ダブルパッシブラジエーター構成のフロア型スピーカーを選択することで、サブウーファーが無くても、低域までしっかりカバーされているのだ。機材選びのポイントとして、スピーカーにフロア型モデルを選択することは大きい。
テレビ周りのオーディオ環境入門となれば、まずはブックシェルフ型と考えるのが普通だろう。しかし、大前提として「シアター」を念頭に楽しむなら、2chシステムだからこそそれだけで低域を稼げるフロア型が超有力である。というか、「2chで行くならフロア型ほぼマスト」と言って良い気がする。
そしてここで生きてくるのが、圧倒的なコスパの高さで人気のPolk Audioのスピーカーだ。Polk Audioといえば、ブックシェルフ型スピーカーを連想する人も多いが、それだけではなく「コスパの高いフロア型スピーカー」のブランドである事を、声を大にして言いたい。
よくよく考えてみれば、今回使用したMXT60には(そして上位モデルのMXT70にも)脚部が付属しており、別途スタンドを買わなくても良いというメリットがある。そして、1台実売3万円台と気軽に購入できる価格帯なのが強い。スタンドはそれなりの価格がするものなので、ブックシェルフ型 + 別売スタンドを組み合わせるより、フロア型を選んだ方がコストを抑えられるし、低域も稼げると良いことづくめだ。
なお、リビングではなかなか大音量が出しづらい場合もあると思うが、MXT60は音量を絞った際にも低域が痩せにくく満足感を得られる。
盲点だった! 2chの次にステップアップするなら「4ch」がアリ
実力派の機材を選べば、2chでも満足できるシアターが実現できる事がわかった。では、そこからチャンネルを足してステップアップするとどうなるのか? 2chシステムを購入して、ある程度楽しんで、資金も貯まり、リビングの模様替えに合わせてスピーカーを足せるようになった……というイメージだ。
普通は、テレビがあるフロント側にセンタースピーカーやサブウーファーを足して、2.1chや3.1chのシステムを構築することを考える。その場合の変化は、正直、ある程度想定内だった。 今回はサブウーファーとして「Polk Monitor XT12(MXT12)」(1台49,500円)を足したが、そこで得られる低音の量感の変化は大きく視聴感に影響し、爆発音などの迫力が段違い。一気に「シアター」っぽさが出てくる。
一方で、センタースピーカーを追加した効果も確かにあるのだが、上述のMXT60だけでそれなりにセリフは聴きやすかったこともあり、個人的には、フロント側にチャンネルを足すならセンタースピーカーは後回しで、サブウーファーを加えた2.1chでも良いかなと感じた。
そして、実際に試してみたら変化が大きくて面白かったのが、フロントスピーカー + リアスピーカーの4ch構成だ。つまり、サブウーファー追加のよる低音の量感アップを後回しにして、リアスピーカーを加えてサラウンド感を優先する選択だ。
今回は、「Polk Monitor XT15(MXT15)」(ペア27,500円/実売約2万円)をリアスピーカーに追加して聴いてみた。
例えば、戦闘機が編隊を組んで飛んでいる時の音。2chでも戦闘機の移動感は感じられたが、4chだとそれが立体的になり、“自分の周囲に他の戦闘機がいる”という臨場感がアップする。映画の世界に入り込んだような臨場感を味わう事がホームシアターの醍醐味なので、サラウンド感がアップする事で、シアターの本質的な魅力を感じられるわけだ。
「2chからグレードアップするぞ」という段階になったら、個人的にはサブウーファーとセンタースピーカーよりも先に、リアスピーカーを購入した方が良いと感じた。ちなみにMXT15は実売ペア約2万円と低価格なので、4chスピーカーとAVアンプ合計でも実売約10万円というお手軽さだ。
Polk Audioなら5.1ch揃えても20万円以下
最後に、今回使用したPolk Audioのスピーカーをフルで接続。5.1chに拡張してそのサウンドを体験した。先程の4ch環境に、サブウーファーとセンタースピーカーを追加したカタチだ。
AVアンプは最後までAVR-X580BTを使っており、基本の音質傾向は最初の2ch再生で述べた通り、切れ味が良く鮮度感のあるサウンドだ。
5.1chになると、4chサラウンド時の立体的な移動感に加えて、ミサイルの発射音や着弾した際の爆発音などが重厚感を持って響く。これぞ、求めていたホームシアター的体験。「Atmos非対応でもシアターは楽しめる」ということも改めて感じた次第だ。
衝撃なのは、今回のAVアンプ + 5.1chのフルシステムでも、20万円以下で揃えられるということ。そしてそれが「価格のわりに良い音」というレベルではなく「価格度外視で音のクオリティが高いシステム」だったということだ。
本格的なAVアンプとフロア型スピーカーであれば、2chでも十分楽しめる。そして、その先に待っている楽しいサラウンドの世界まで一気に体験したが、「テレビを中心としたリビングシアター」という手軽さと、「コストを抑えながら本格的なシアターを実現できる」とわかった。ホームシアターが時代に合わせて進化していることを実感した取材となった。
一方で、「この値段でこの満足度なら、もうちょっとお金を出したらどんな世界が?」と気になってしまう危険な取材でもあった。そんな“沼”に足を踏み入れた体験レポは、また次の機会に。