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惚れたマランツ「STEREO 70s」で実践! ビギナー向けアンプ使いこなしテク
- 提供:
- マランツ
2024年10月17日 08:00
我が家のリビングでこの5年間変わらないもの。それがテレビとスピーカーとアンプだ。代替わりはしているものの、テレビは「レグザ」、スピーカーは「HARBETH(ハーベス)」、アンプは「マランツ」との蜜月が続いている。
テレビやスピーカーの話はまた別の機会に譲るとして、アンプについてはHDMIセレクター付きステレオプリメインアンプの嚆矢となった「NR1200」を2019年に導入。2023年には同じコンセプトでありながら、飛躍的なクオリティアップを果たした「STEREO 70s」(143,000円)へアップグレードした。
日々各社から新製品が登場するなかで、私がなぜマランツのプリメインアンプを使い続けるのか?
正直、音だけで選ぶなら、他にも選択肢はあった。なんて書くと、STEREO 70sの音が良くないみたいに思われるかもしれないが、とんでもない。導入時に某所に寄稿したレビューでは、「泣くほど良い音がする傑作アンプ」と秋山史上最高レベルで絶賛した。(余談だが、その原稿を麻倉先生にすごく褒めていただいた)
しかし、拙宅のリビングで使うアンプとなると、音が良いだけではダメだ。
HDMI ARC・CECによるテレビとの連携は大前提で、さらに「音質」「機能」「デザイン」を高次元に両立していることが絶対条件となる。加えて、できれば「サイズ」と「価格」は控えめで。それがスリム型のアナログアンプ「STEREO 70s」を選んだ理由だ。
本稿では、STEREO 70sならではの魅力と、使いこなしのコツをお伝えしたい。
特筆すべきHDMIの仕様。テレビ音声も抜群の高音質に
まずはSTEREO 70sの「デザイン」だ。新生マランツデザインについては、すでに国内外で高い評価を受けており、今さら私が賛辞を贈る必要もないだろう。これほどカッコよさとラグジュアリー感を両立した国産オーディオも珍しい。これぞ世界で戦えるデザインだ。薄型筐体に上級機のデザインエッセンスが巧みに取り込まれていて、オーディオファンの所有欲を満たすと同時に、インテリア映えもしてくれるので、家族にも大好評である。
次に「機能」。ネットワーク機能であるHEOSに対応していることは当然だが、特筆すべきはHDMIの仕様だ。
STEREO 70sはARC対応(eARCには非対応)HDMI端子1系統に加え、通常のHDMI入力が6系統(そのうち3つは8K/60Hz、4K/120Hz対応)もあり、これはHDMIハブ的な活用ができるだけでなく、テレビ側の制限によって事実上48kHz/16bit止まりとなっているARCの弱点を、通常のHDMI入力にてカバーできることを意味している。
実際、UHD BDなどに収録されている96kHz/24bitや192kHz/24bitの音声を、オリジナルのまま再生するのと、48kHz/16bitにダウンコンバートして再生するのとでは、音質に雲泥の差があるのだ。
さらにSTEREO 70sのARC端子は、上級機「MODEL 40n」と同じくHDMIインターフェースをバイパスした特別仕様。取り扱える信号はPCMに限定されるが、これによって通常のテレビ音声も抜群の高音質で再生できる。
しかも、この両方を備えているのは(おそらく世界でも)STEREO 70sだけで、本機の絶対的なアドバンテージとなっている。
そしてもうひとつ、HARBETHのスピーカーを愛用する私にとって、本機がベストパートナーである理由。それが「音色」だ。
スピーカーの持ち味を引き出す、アナログアンプとしての魅力
HARBETHに代表されるような、エンクロージャーの美しい響きを活用したスピーカーには、強固な素材で箱鳴りを徹底的に排除した最先端スピーカーとは違った魅力がある。人気ブランドでいえばDALIもそうだろう。これらの要素は、悪くいえば「色付け」なのかもしれないが、ひとたび、その音色(ねいろ)に惚れてしまえば、何物にも代え難い唯一無二の存在となる。
そんな個性的なスピーカーの持ち味を増幅し、もっともっと好きにさせてくれる“才能”が、STEREO 70sにはある。その理由を述べるために、STEREO 70sのアナログアンプとしての特徴を紹介したい。
一番の目玉は、プリアンプ部にマランツ自慢の高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を、スリム型アンプで初めて搭載したことだろう。以前、別の取材で、HDAM-SA2の有無を比較試聴した際には、試聴室の空気が静まりかえるような高いS/N性能に驚嘆したことがある。
さらにパワーアンプ部は、オペアンプを使わないフルディスクリート構成で、細かな回路の見直しによって、1kHzで10dB以上の低歪化を実現しながらも、定格出力75W+75W(8Ω)という十分なパワーを確保している。
その他にも、専用カスタムコンデンサーと高品位パーツで構成された大容量パワーサプライや、アナログ回路とデジタル回路の徹底したシールディング、ビスやワッシャーにまでこだわった筐体設計など、実売で約11万円のプリメインアンプとは到底思えない、プレミアムな内容となっている。
しかし、それだけの話であればMODEL 40nだって同じことだし、上位機の方がコストをかけられるぶん有利な面もあるだろう。実際、MODEL 40nの低重心で迫力のあるサウンドは、物量投入の成果であることは間違いないのだが、かといって、STEREO 70sの衒いのない自然体なサウンドがそれに見劣りするのかというと、まったくもってそんなことはない。
むしろ、スピーカーに対してそれほど支配的にならず、適度に手綱を締めて伸び伸びと歌わせる能力は本機ならではのもので、そのうえ、音の浸透力が半端なく、歳のせいで弱くなった筆者の涙腺を容赦なく刺激してくる。これこそが、STEREO 70sの“才能”であり、私が本機を“傑作”と評した理由だ。
ビギナーにもオススメ。アンプの使いこなし術
我が家にSTEREO 70sがやって来て、もうすぐ1年。ここからはその間に実践した、STEREO 70sのポテンシャルを引き出すためのノウハウを紹介しよう。他のアンプでも当てはまる基本的なことばかりだが、近頃はそういった記事も少ないので、これから本格的にオーディオを始めるというビギナーの方にも参考になればと思う。
フォノ入力の空き端子に「ショートピン」
はじめに、必ず対策したいのがフォノ入力だ。内蔵のフォノイコライザーを使用しない場合、この空き端子が外来ノイズを拾ってしまう。MODEL 40nにはショートピンが付属していたが、STEREO 70sは無し。もちろん無対策でもハムノイズが出るようなことはないが、HDAM-SA2による高いS/N性能を余すところなく享受するためにも、ショートピンを挿すことを強くオススメしたい。定位のフォーカスがさらに良くなって、音が晴れやかになるのが実感できるハズだ。
ガンガン換えてしまおう「電源ケーブル」
電源ケーブルもガンガン換えてしまおう。マランツ試聴室で同社製品がデモされる際は、必ずといっていいほど、Audioquestの弩級電源ケーブルが刺さっている。付属ケーブルは動作確認用くらいに考えておこう。
電線病の筆者ならば、最低でも5万円クラスの電源ケーブルをおごりたいところだが、このあたりは予算に応じて決めてほしい。重要なのは交換することだ。老舗ブランドの製品ならば2、3万円のケーブルでも失敗することは無いと思う。
“音質”に直結。ARCに使う「HDMIケーブル」を聴き比べる
近頃、私がハマっているのが、HDMI ARC用のHDMIケーブル遊びだ。これがテレビの音質にモロに影響してくる。映像用ケーブルには18Gbpsや48Gbps対応の最新ケーブルが必須だが、ARCはその限りではない。そのため、過去に購入したHDMI 1.4時代の高級ケーブルを活用することも可能なのだ。
拙宅の場合は、新旧様々な製品を試した結果、故かないまる氏が遺したソニーの逸品「DLC-9150ES」に落ち着いたが、今回は試しにAudioquestの現行ラインナップから48Gpbs・eARC対応でグレードの違う3種類をピックアップして比較してみた。
①「Pearl48」(5,830円/1m)
付属品レベルから音質アップを狙うなら、最低でもこれくらいの価格帯のケーブルは使いたいところ。帯域バランスはフラットで音色に変なクセがない。空間表現もこれみよがしなところがなく、STEREO 70sとの相性は良さそうだ。
②「Vodka48」(58,300円/1m)
全体の厚みや音数が一気に増す一方で、現状のセッティングでは情報量が捌ききれず、やや飽和している感がある。やはりこういう時には優秀なインシュレーターの力を借りたくなるが、今回はスピーカーを少し前に出して低域をスッキリさせるだけでほぼ改善した。こうした現象は“高級ケーブルあるある”だったりするので、「失敗した!」と頭を抱える前に、その原因を見極めて冷静に対処することで、一段上のステージに到達できるだろう。
③「Dragon48」(353,100円/1m)
STEREO 70sが3台買えてしまう超高級ケーブルであり、あまりに非現実的な組み合わせだが、底なしのケーブル沼にハマってみたくてお借りした。すこぶるパワフルでダイナミック! 音の大洪水だ。
しかし、Dragon48が伸長してくれたローエンドとハイエンドに、1987年製であるHARBETHの分解能が追いつかなくて、ドンシャリ気味に聴こえてしまうきらいがある。やはり、ハイエンドなケーブルはハイエンドな機器でこそ真価を発揮するんだということを再認識させられた。
秋山オススメは“シングルワイヤリング+たすき掛け”
最後にスピーカーケーブルだ。STEREO 70sのスピーカー出力はバイワイヤリング対応となっているが、巷でよく聞く、「バイワイヤリングにしたら良くなった!」という声は、じつはワイヤリングの違いよりも、スピーカー付属のジャンパープレートを取り外した恩恵であることが多い、と私は思う。
そこで読者にオススメしたいのが、「シングルワイヤリング+たすき掛け」である。どういうわけかオーディオ業界では、プラスもマイナスもスピーカーの低域側に接続することが多く、それで低域が過多だった場合には、今度は両方とも高域側に接続してどちらかマシな方を採用する、というやり方が一般的だ。
一方の「たすき掛け」は、プラスを高域側に、マイナスを低域側に接続する方法で、電気的にも問題は無いのに、なぜか知る人ぞ知る裏技的結線となっている。しかし、私の30年以上のオーディオ歴で、たすき掛けが負けたことは一度もない。こればっかりは体験してもらうしかないが、毎回、ギクシャクしていた各ユニットのパワーバランスが一発で揃ってしまう。
念のため、今回の取材でもAudioquestのスピーカーケーブル「Q2 (26,400円/3m)」をお借りして、全ての接続方法を試してみた。バイワイヤリングでは全体の力感が増して、原理的なメリットを感じられる部分もあるが、聴感的には中域にピンポイントで凹んでいるような箇所が発生し、上の帯域と下の帯域が分断されているような印象となる。
シングルワイヤリングについては、やはり、たすき掛けが一番しっくり来る。奥行き方向にスッと音場が広がり、音像定位にも自然な立体感が生まれた。
もちろん、メーカーが接続方法を厳格に指定していたり、バイワイヤリングを前提に音作りをしている場合にはオススメしないし、付属のジャンパープレートではなく、良質なジャンパーケーブルを用いることが必須ではあるのだが、バイワイヤリング対応スピーカーをお持ちの方には是非一度お試しいただきたい。
STEREO 70sはアナログアンプの存在意義そのものだ
先日、マランツ試聴室で体験した「MODEL M1」は衝撃的だった。あの小さいボディで、あのB&W 801D4をカンペキに鳴らしてしまうんだから、物量的に限界があるSTEREO 70sでは明らかに分が悪いと思った。オーディオの未来はデジタルアンプで決まりなのだろうか?
しかし、帰宅してSTEREO 70sとHARBETHが奏でる音を聴いた時、何だかホッとしたのだ。やっぱり自分はこの音が好きだなぁ。オーディオという趣味が奥深いものであり続ける限り、アナログアンプが消えて無くなることはない。大袈裟に聞こえるかもしれないが、STEREO 70sはアナログアンプの存在意義そのものだ。今回も、泣きながらそう確信した。