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finalフラッグシップワイヤレス「TONALITE」の“ガチな個人最適化” 編集部4人で体験してみた
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2025年11月21日 08:00
新たなフラッグシップ完全ワイヤレスイヤフォン「TONALITE」(トナリテ/39,800円)。最大の特徴は、ユーザーの身体形状をスマホでスキャンし、イヤフォンの「音色」を個人に最適化する、final独自技術「DTAS」を搭載していることだ。
TONALITEには専用アプリが用意されており、アプリ内の指示に従って、上半身や耳の形状をスキャン。さらにイヤフォンを装着して、耳穴内部の特性も測定。そのデータを用いて、TONALITEをユーザーにマッチした音色のイヤフォンに最適化するのがDTASだ。
本当に“その人にマッチした音色のイヤフォン”になるのか? AV Watch編集部員4人全員で、DTASを作成。その効果を体験してみた。
ガチな個人最適化“自分ダミーヘッド”がアプリでお手軽になった「DTAS」
AV Watch読者なら「似た話が前にあったような……」と、気がつくかもしれない。実はこのDTASは、finalが完全ワイヤレスイヤフォン「ZE8000」向けの有料サービスとして行なっていた、「自分ダミーヘッド」を手軽に利用できるようにしたものと言える。
自分ダミーヘッドを利用するためには、川崎のfinal本社に2回訪問して、上半身や耳の形状、耳穴の物理特性を精密に計測。そのスキャンデータを元に3Dモデルの「自分ダミーヘッド」を形成し、それをバーチャル空間に配置。空間の中で、音を仮想的に再生して、“現実の音の聴こえ方”をシミュレーションする……という大がかりなもの。期間限定かつ抽選での実施、サービス料も55,000円と、かなりガチな代物だった。
効果は絶大なのだが、手間や費用を考えると、気軽に利用できない。そこで生まれたのが、この測定などを、川崎に行かず、スマホアプリで可能にしたDTASだ。
そもそも、“自分ダミーヘッドのデータを作ると、なぜ音色を最適化ができるのか”というのは、ちょっと難しい話だ。
かいつまむと、人間が聞いている音は、頭や上半身、耳などに当たることで、回折・反射して変化する。それによって“音色”も変わり、我々は普段その変わった後の音を聞いている。
そこで、ユーザーとまったく同じ形状のダミーヘッドに音を当ててみて、その体によってどのように音が変化したのかを測定し、再生時に再現すれば、その人が日常的に聴いている音色を、イヤフォン再生でも再現できる……というわけだ。
詳しくは、自分ダミーヘッドを体験レポートした過去記事を参照してほしい。
DTASの測定方法
自分ダミーヘッドサービスと比べ、TONALITEのDTASは大幅に手軽になった。スキャンなどの作業と、サーバーでのデータ分析、TONALITE本体に最適化した設定をインストールするなど、全て含めて約30分で完了する。
スキャン自体も、アプリの説明画面で動画付きでの解説が一手順ごとに用意されているので、その指示通りにやっていけば難なく行なえる。
特徴的なのは、ヘアバンドとARマーカーのシールが付属していること。ヘアバンドの表側と裏側にこのシールを貼り付けていく。これも写真付きで、どこかに貼るか細かく指示してくれるので、迷うことなく貼れる。貼り終わったら、マーカーが耳の辺りにくるようにバンドを頭に装着する。
顔のスキャンは、スマホの顔認証の設定のような感覚で行なう。スマホの画面を見ながら上下左右に顔を動かすだけだ。
次は耳の撮影。右手でスマホを持って、そのまま顔は左側を向き。スマホが1回震えたら、その位置で静止。2回震えたら撮影完了と、その都度合図を出してくれるので、スマホが見えない状態でも比較的簡単に撮影できる。
撮影が完了すると、次は実際にTONALITEを装着して耳穴内の測定を行なう。片耳ずつ行なうのだが、こちらもアプリの指示通りにすればスムーズに完了。測定開始ボタンを押すと、「キュイーン」と音が聴こえて、すぐに測定が完了する。もう片側も同様だ。
次は、より精密にスキャンするために、イヤーピースを外して、イヤフォンを耳に装着するよう指示される。イヤーピースがない状態なので、この測定時には、とくに静かな環境で行なう必要がある。
スキャン後は一度サーバーにデータが送信されるため、イヤーピース有りと無しでそれぞれ3~5分程度の待ち時間ができる。この送信が終わると、ユーザーの身体形状の3Dアバター「アコースティック・アバター」が生成され、このアバターを使ったシミュレーションが始まる。
完了すると、最適化のデータがTONALITEに書き込まれて準備完了だ。
書き込みが完了すると、アプリのDTASの項目から「Personalized」を選択すると、自分に最適化された音色のサウンドで聴ける。元々の「General」も選択可能なので、DTASのON/OFF比較が手軽に行なえる。
編集部4人で変化を実感。他人の最適化音聞くと、どう聞こえる?
まず、最適化をしていない状態で「グレゴリー・ポーター/ホエン・ラブ・ワズ・キング」を再生する。アコースティクベースからボーカル、ピアノの高音までレンジは広く、音色もニュートラルだ。ベースの筐体の木の響きから、ボーカルの人の声のリアルさ、ピアノの綺羅びやかさといった質感もしっかり描きわけられている。
特筆すべきは低域の解像度の高さ。中高域はクリアでシャープな描写なのだが、そのシャープさが低域でも貫かれており、ベースの弦の動きも細かく見える。「上原ひろみ/ドリーマー」で、ドラムが乱舞する中でも、ピアノやベースの動きは明瞭。ジャズやクラシックをしっかり再生できる実力を備えたイヤフォンだ。
ここまでは“よく出来た完全ワイヤレスイヤフォン”という印象だが、DTASをONにすると、冗談抜きに、眼の前が晴れたような、世界の変化を体感できる。
まず驚くのは、個々の音がよりシャープに、音像の輪郭もクッキリ見えるようになる事。視力が落ちたので、メガネを新調した帰り道に「あの看板も、遠くの人の顔もクッキリ見える!」と感動するのだが、その感覚に近い。
誤解してほしくないのは、高域を強調したり、音の輪郭のエッジを立てて、無理にカリカリにした音とは、まったく違うという事。強調感は無く、楽器やボーカルと自分のあいだにただよっていたモワッとした空気が一気になくなり、ダイレクトに音が耳に届いたような印象。フォーカスだけでなく、鮮度感のアップ。より生々しく、眼の前にアーティストが現れたのようなリアリティがある。
さらに、超高精度ドライバー「f-CORE for DTAS」、圧迫感のない「トリプルハイブリッドノイズキャンセリング」など、finalが培ってきた技術を結集している。
「米津玄師/IRIS OUT」のような、打ち込み系の楽曲では、DTASの効果がよりわかりやすい。DTAS OFFの状態でも、クッキリハッキリした楽曲ではあるのだが、DTASをONにすると、ボーカルの周囲に出現する女性の笑い声や、金属質なSEなど、細かく、一瞬で消える音も、超クリアに聴き取れ、複雑な音楽の要素やサウンドが、全て聴き取れたような全能感に包まれる。
解像度の面だけでなく、DTASをONにすると音場の奥行きも深くなり、より立体的で広い空間になる。音像の前後や、音の響きが背後に広がる様子なども見やすくなる。IRIS OUTはビートも気持ちが良く、爽快な楽曲だが、DTASをONにすると、爽快が快感にアップグレード。ずっと聴いていたいという気持ちになる。
この楽曲でも、DTASをONにして、サウンドが劇的にクリアになっても、音のエッジや、ボーカルのサ行がキツいなどの破綻はしない。目の覚めるほどのシャープさ、ソリッドさが得られながら、音の質感としてはむしろナチュラルになる。魔法のような変化と言っていいだろう。
なお、阿部さんが最適化した状態のイヤフォンも聴いてみたが、これが面白い。音がクリアになり、空間が広くなるという変化の方向としては同じなのだが、阿部さん最適化の方が、特に高音がキツく感じる。私にとっては、変化が行き過ぎてしまった感があるのだ。人の体や耳の形状で、聴こえてくる音は、やはり違うのだなと実感できて面白い。なお、最適化の変化量は、アプリから±ボタンで微調整できるので、自分のプロファイルを適用した状態でも、キツめだと感じたら微調整すると良いだろう。
DTASの効果に驚いた。
ヘアバンドを装着し、スマホカメラによる顔面&耳撮影を行ない、ワクワクして待つことおよそ30分。自身のDTASを適用したTONALITEは、全く別モノのイヤフォンに生まれ変わっていた。
測定前に聴いた“素”のTONALITEは、ボーカルが素直で聴きやすく、ポップスを聴いている限りは可もなく不可もないサウンド。
普段愛用しているイヤフォンと比べると、低域・高域が物足りず、音場も狭めと感じた。耳元で聴いているような、やや窮屈な音……と表現すればよいだろうか。
ところが最適化後は、低域と高域が一気に伸び、音場も拡大。ベールを剝がしたように、一音一音が粒立ちよく聞こえるようになった。「米津玄師/IRIS OUT」のボーカルも、随所に散りばめられた細かなエフェクトも、非常にクリアで、聴いていて心地がいい。
「ジョン・ウィリアムズ ライヴ・イン・ウィーン/レイダース・マーチ」では、こもりがちだった管楽器が明瞭に聴こえ、オーケストラ本来の音の厚みが再現される。
一番驚いたのは、ホールの響きがとてもリアルに描写されたこと。最適化前はホールの端で聴いているような、ややアンバランスな印象を受けたが、最適化後はまるでホール中央で聴いているような音響と、音場のスケールを感じることができた。ひとたび最適化されたサウンドを耳にしたら、デフォルトに戻して聴くことはないな、というのが使用した筆者の感想だ。
なお、山崎さんのDTASも聞いてみたが、粒立ちの良さや音場の拡がりは近似していた一方、ボーカルの解像感がややマイルドで多少物足りなさを感じた。
まずはDTAS適用前の状態で「米津玄師/IRIS OUT」を聴いてみる。
一聴して感じたのは、ボーカルの立体感。ボーカルが浮かび上がってくるようなサウンドバランスで、歌詞をしっかり聴き取りやすい。
低音はズシンの体の芯に響くような沈み込みはないものの、小気味よく、楽曲のスピード感をしっかりと彩ってくれる。間奏部分のピアノなども描写力が高くて鮮明な印象だった。
そしてDTASを適用してみると、イントロ部分から、音の違いを感じられる。適用前よりも、高域の伸びが一段良くなり、きらびやかな印象になるのだ。
また米津の歌声も、声に混じる高音成分が強調され、適用前よりも伸びやかさが出てきた。
なかでも印象的だったのが間奏。ピアノの鳴りや質感は適用後のほうが断然良く、個人的にも好みなサウンドに変化していた。
ほかにも同じく男性ボーカルで「サカナクション/新宝島」や、先日サブスク配信が解禁されたアイドルグループ・V6のデビュー曲「MUSIC FOR THE PEOPLE」なども聴いてみると、DTASを適用するとボーカルの輪郭がさらにクッキリとしてくる。
特に「MUSIC FOR THE PEOPLE」は、イントロの描写力が段違い。適用状態ではシンセサイザーの音が伸びつつ、ギター、ドラムのサウンドも鮮明だが、DTASをOFFにすると、ベールが2~3枚かかっているような解像感で、かなり物足りなさを感じてしまう。「DTASで、ここまで音が変わるのか!」とその威力を痛感する1曲だった。
ただ、櫻坂46やClariSなど女性ボーカル楽曲では、自身のDTASを適用することで上が伸びすぎるせいか、サ行などに少し荒々しさ、トゲトゲしさを感じる部分も。素の状態のTONALITEのほうがバランスがより整っているように感じられた。
そんな時は、アプリからDTASの効果を「Ref-」「Ref+」と微調整できた。「Ref-」を選んだところ、女性ボーカルのトゲトゲしさはなくなり、伸びのある自然な聴こえ方になった。
この微調整でも自然な音色に感じられない場合は、DTAS効果を再計算することもできる。再計算は5~7分程度で完了し、耳の再撮影などは不要。試しにマイナス方向にひとつ数値を下げて再計算したところ、こちらも刺さり感のない女性ボーカルを楽しむことができた。測定結果を調整して、より好みに近づけたい時は、これらの機能を使うと良いだろう。
最後に、野澤さんのDTASを適用して「米津玄師/IRIS OUT」もチェックしてみると、ボーカルのクッキリ感には大きな違いは感じなかったものの、自身のDTASのほうが低音がよりズシンと沈み込み、シンバルの高音も伸びやかな印象で、「こんなに聴こえ方が違うのか」と驚かされた。
DTAS測定前の音の時点で、このTWSが39,800円ならちょうど新しいイヤフォンが欲しいと思っていたので「これにしたいな」と思うほど、自分にとってしっくりくる音だった。
だが、DTASを最適化した状態(Personalized)で2曲ほど聴いた後に、DTAS OFFの「General」に戻すと、音が全体的にぼんやりとして音源が少し遠い位置にあるように感じる。しっくりくる音に感じていたというのにだ。
ここで不思議なのが、最適化後すぐにPersonalizedの音とGeneralの音を聴き比べても、そこまで変化が大きいようには感じなかったこと。しかし、Personalizedの音をしばらく聴いて、その音に慣れてからGeneralに戻して聴くと、その差がハッキリわかる。「もうGeneralに戻すのは、ちょっと嫌だな」と感じてしまうほど。
自分の場合は最適化をONにすると、特に声の抑揚がより生々しく感じるようになり、ボーカル曲を聴くのがより楽しくなった。
今回編集部共通で聴いている「米津玄師/IRIS OUT」では、とくにレゼの「ボン」「バン」の存在感が予告編の映像を思い起こすように主張してくる。ほかにも、左右の広さはGeneralのときとほぼ同じなのだが、前後の奥行きがグッと広がった感覚がある。
さらに面白く感じたのが、バイノーラル音源を聴きながら、GeneralとPersonalizedを切り替えてみたとき。これも自分の場合だけなのだろうが、左側の音はあまり変化がないのに対して、右側はガッツリ音が変化している。以前から、自分の耳に左右差が大きくあることはなんとなくわかっていたが、ここまで明らかな違いを実感したのは初めてだったので、新鮮な体験だった。
酒井さんの最適化した音も聴いてみた。本人は「高域に寄る変化があった」と話していたので、自分が聴くと少し尖った音に感じるのかな? と予想していたのだが、実際に聴いてみるとその予想に反して、自分には全体的に低域に寄っていて、かつ音が篭もって聴こえる。
「米津玄師/IRIS OUT」では気のせいか? と思う程度だったのだが、「Reol/No title -10 Years Later Edition-」を聴いてみると、Reolの声が明らかに伸びきっておらず、煮え切らないイメージに。人の聴覚ってここまで違うのか……と思い知る不思議な体験だった。
大きな効果があったDTAS
このように、4人全員がDTASの大きな効果を体験した。
面白いのは、音の変化の方向が、人によって違う事。ただ、体験した後では、全員が「自分でイコライザーをいじった時の変化とは次元が違う」と感じ、「マイナス方向への変化がほとんどない」、「これまでのイヤフォンの最適化とは次元が違う」という点でも、感想が一致していた。
また、自分に最適化された音を、他人が聴くと、必ずしも良い音にはならないというのも面白い。前述の通り、体や耳に反射し、変化した音を再現しているので、体の形状が違う人は、耳穴に入る音も違ってくる。「音を聴くとはどういうことか」という根本的な部分にまで興味が出てくるのが、TONALITEの魅力でもある。
39,800円という価格は、完全ワイヤレスイヤフォンとしてはハイグレードなモデルだが、自分ダミーヘッドサービスの費用や手間などを考え、DTASの効果の大きさも踏まえると、これだけの技術を使いながら、むしろお得なイヤフォンと言える。
なお、アプリには、自分の最適化だけでなく、友人などに測定・最適化を体験してもらうゲストモードも用意されている。測定し合って、音の違いを聴き比べると、盛り上がるだろう。
「TONALITE」GREEN FUNDINGのプロジェクトページ
製品をいち早く試せるイベントも2025年11月24日10時~18時に、神奈川県川崎市のfinal本社で開催される。
アプリを使用した音色の個人性適用を体験したい場合は、事前予約制の「TONALITE DTAS Personalized体験」の予約フォームから申込みが必要(1枠8人/所要時間1時間)。
個人性適応を行なう前の「Generalモード」の試聴は、開催期間中は予約不要で自由に体験できる。また、体験試聴会は、大阪・梅田と東京・渋谷でも順次開催予定。詳細は後日アナウンスされる。
- 開催日
2025年11月24日10時~18時 - 場所
〒212-0012 神奈川県川崎市幸区中幸町4丁目44-1 final本社5F
(本社の正面玄関から入り、突き当り左側にあるエレベーターで5Fホールまで)
















