AV Watchアワード

輝度のLG「G5」と階調のパナ「Z95B」が激突!!今年の有機は凄かった~AV Watchアワード座談会・後編

発売中のテレビ製品の中から、“読者に本当にオススメしたい優れたモデル”を選ぶ「AV Watchアワード」。

既報の通り、2025年のナンバーワンテレビには、ソニーの4KミニLED液晶テレビ「K-65XR90(BRAVIA 9)」と、LGエレクトロニクス・ジャパンの4K有機ELテレビ「OLED65G5PJB」が選出されました。

AVWatchアワード2025 結果

・有機ELテレビ大賞
 LGエレクトロニクス・ジャパン「OLED65G5PJB」

・液晶テレビ大賞
 ソニー「K-65XR90(BRAVIA 9)」

本稿では、アワードの締めくくりイベントとして、選考会後に行なった座談会の模様を、前後編の2回に分けて掲載します。

今回は「有機ELテレビ編」。選考会に参戦したシャープ「4T-C65HS1」、レグザ「65X9900R」、ソニー「XRJ-65A95L」、パナソニック「TV-65Z95B」、そしてLGエレクトロニクス「OLED65G5PJB」といった各社最新有機ELテレビの評価を振り返ります。

なお、本文中の実売価格は、リリース発表時の市場想定価格ではなく、11月上旬時点での大手家電量販店5社の平均価格(コジマ、ジョーシン、ノジマ、ビックカメラ、ヤマダのネットショップ価格)を記載しました。

前編「液晶テレビ編」はコチラ

シャープ「HS1」:明るくて派手なアクオス。新QD-OLEDも力負けしてない!

編集部・阿部:有機EL編は、シャープの「4T-C65HS1」(以下HS1、実売価格51.2万円)から始めていきましょう。HS1は国内モデルで唯一となる、“最新世代の量子ドット有機EL(QD-OLED)パネル”を採用したモデルです。

公称でも“耀き(ピーク)2倍”と謳っていて、実際の測定でも「AIオート」「映画」モード共にピークで2,000cd/m2超、全白で350cd/m2を超えるなど、24年モデルから明るさが大幅にアップしていました。

西川氏(以下敬称略):横に旧世代のパネルを使った「A95L」(ソニー)があったこともあって、新世代の輝度の進化が非常に分かりやすかったですね。サムスンディスプレイの新しいパネルも、LGディスプレイの「次世代RGB有機EL」(プライマリーRGBタンデム)と比べて、決して力負けしていません。

西川:HS1はそんなパネルの強みを活かした輝度と色鮮やかさが特徴で、液晶(HP1)も有機ELも画作りは一貫していた印象です。暗室で見る映画モードは明る過ぎるし暗部も浮いて見えますが、天井照明が付いてる中で映画を楽しむためのチューニングなのでしょう。

明るくて派手な放送やアニメの画も、僕は嫌いじゃないかな。メリハリの効いたサウンドも良かった。まぁ、放送のモスキートノイズは相変わらず目立つんだけれどもね(笑)。

4KブルーレイのHDR映像(1,000nits/24p)を、シャープの4K有機ELテレビ「4T-C65HS1」(左、映像モードは「映画」)と、ソニーのマスターモニター「BVM-HX3110」(右)に同時に表示し、ミラーレスカメラで4K/HDR収録した映像

※鑑賞時は、HDR対応のテレビ、PC、スマートフォンなどを使用してください。SDR環境では、正しく表示されません。
推奨設定:ガンマ/HDR10、色域/BT.2020、色温度/D65

秋山:明部が白飛びするくらい画面全体が明るい感じとか、画作りは液晶とそっくりですね。全白や色域など最新世代のパネルのポテンシャルの高さも感じましたし、映り込みも低減されています。音の出来もよく、明るいリビングで普通に楽しめるテレビに仕上がっているなと。

ただ、色についてはやっぱり癖があるというか、AIオートでは以前の“蛍光カラー”が戻ってしまったようにも感じました。映画モードで「すずめの戸締り」を他機と比べると、遠景がセピアっぽいというか、全体がイエローがかったように見えてしまいます。実際、映画モードの色差値は昨年より大きくなっていました。

このことは液晶テレビのときにもコメントしましたが、測定を意識したプロ系の映画モードを用意して欲しいですね。

旧世代のQD-OLEDパネルを搭載した、ソニー「XRJ-65A95L」の映り込み
最新世代のQD-OLEDパネルを搭載した、シャープ「4T-C65HS1」の映り込み

「グレースケールΔE値(平均)」の比較

機種
モード名
25年24年23年
LG
「シネマ」
※23年は「シネマダーク」
G5
1.7
G4
2.9
G3
0.5
パナソニック
「シネマプロ」
Z95B
2.5
Z95A
1.2
MZ2500
1.4
シャープ
「映画」
HS1
9.3
GS1
6.2
FS1
2.5
ソニー
「シネマ」
A95L
3.4
※25年再測定
A95L
3.5
A95K
4
レグザ
「映画プロ」
X9900R
10
X9900N
6.1
X9900M
4.6

レグザ「X9900R」:新パネルで色域は劇的改善!HDRエンハンサーでピークキラキラ

阿部:レグザの有機ELテレビ「65X9900R」(以下X9900R、実売46万円)は、LGディスプレイの「次世代RGB有機EL」を採用したタイムシフトマシン搭載モデルです。今年は、生成AI技術の「レグザ インテリジェンス」や、2画面表示の「ダブルウィンドウ」も新たに搭載されています。

西川:連載企画で55型(55X9900R)を自宅で視聴したのですが、十八番のタイムシフトマシン機能はもちろん、新しいパネルで加わった赤緑発光層の威力というか、緑・赤方向への色域が劇的に改善されているのが分かりました。HDR映像特有の自発光表現もリアリティを感じました。

「BT.2020」(1976,u'v'表示)カバー率の比較

機種
モード名
25年24年
LG
「G5」
シネマ
82.45%76.11%
パナソニック
「Z95B」
シネマプロ
82.02%76.33%
シャープ
「HS1」
映画
89.28%89.51%
ソニー
「A95L」
シネマ
25年再測定
89.38%89.56%
レグザ
「X9900R」
映画プロ
81.66%74.39%
4KブルーレイのHDR映像(1,000nits/24p)を、レグザの4K有機ELテレビ「65X9900R」(左、映像モードは「映画プロ」)と、ソニーのマスターモニター「BVM-HX3110」(右)に同時に表示し、ミラーレスカメラで4K/HDR収録した映像

※鑑賞時は、HDR対応のテレビ、PC、スマートフォンなどを使用してください。SDR環境では、正しく表示されません。
推奨設定:ガンマ/HDR10、色域/BT.2020、色温度/D65

西川:ただ、LGの「G5」やパナソニックの「Z95B」などと並べてしまうと、X9900Rは放送も映画も全体的に画が暗く、やや重い印象を受けたのも事実です。同じパネルのはずなのに、こんなにも差が出るのかな?と不思議に思ったくらいでした。

阿部:X9900Rに関しては、テレビの設定を変えたり、PCや測定器の再起動などを繰り返して何度も測定を行なったのですが、テスト機ではピークが1,500cd/m2前後(モニターモード時)という結果でした。歴代有機ELレグザの中では最高値ですが、他社に比べ、明るさはあえて抑えた仕様なのかも知れません。

「65X9900R」の輝度・色差比較

モード名10% Window
(ピーク輝度)
100% Window
(全画面輝度)
グレースケール
ΔE値(平均)
おまかせAI1,246cd/m2341cd/m26.5(D93)
映画プロ1,082cd/m2315cd/m23.4(D65)
モニター1,474cd/m2315cd/m26.9(D65)

秋山:液晶と同じく、映画プロでの「すずめの戸締り」の“ミカンせいじん”はだいぶ直っていました。ですが、今度は全体がグリーニッシュになって色がくすんでいるように感じました。ピチューの黄色も癖がありましたから、もう少し追い込んで欲しいですね。

ただ、グレースケールΔE値は3.4と去年よりも改善しています。レグザについては、第1回からいろいろ厳しいことを言い続けていて、正直心苦しかったのですが、ようやく軌道修正が始まったのかなという印象です。

阿部:個人的には、HDR映画再生時の過度なピーク表現が気になりました。夜景や花火なら見栄えがするかもしれませんが、「マリアンヌ」を再生すると、部屋の奥にある照明が近くで光っているみたいに眩しく、遠近感が崩れてしまう。またテーブルのライトも変に目立ってしまって、キャストの会話に集中できないんですよね。

しかも、字幕の輝度も同じように光るため、まるでドルビーシネマで眩しい字幕を見せられているようでした。自宅の有機ELレグザでは、このような見え方にならないので、次のモデルでは是非改善して欲しいですね。

編集部注
TVS REGZAに対し、上記箇所を伝えたところ、「指摘の現象が確認でき次第、クラウドAI高画質の更新データを使い、カラーイメージコントロールのデータ変更等の対応を実施する予定」との回答がありました。

また、字幕の輝度に関しても「映画プロのデフォルトは『HDRエンハンサー』が“オート”になっています。HDRコンテンツ再生時は同設定を“手動”にして0~10で調整すると、好みの映像に出来ます」との案内がありました。

ソニー「A95L」:海外発売の後継機「BRAVIA 8 II」が無いのは寂しい

阿部:次はソニー・ブラビアに移りましょう。ブラビアは今年、有機ELテレビの新商品を導入しなかったので、昨年のアワードと同じモデル「XRJ-65A95L」(以下A95L、実売68.9万円)を再びテストしました。

西川:去年の採点表を見返してみると……ゲーム性能は置いといて(笑)、放送から配信、映画画質といずれも高評価で、大賞モデルのパナソニック「Z95A」といい勝負をしていました。けれど今年は、他社の新モデルに比べて明らかに見劣りしてしまった。放送もYouTubeも輝度が物足りず、何世代も古く感じてしまったほどです。

秋山:A95Lという“北極星”があったことで、去年との差分が如実に現れた格好ですね。A95Lも決して悪いモデルではないし、去年と同じ測定値が出ているのに、これだけ落差を感じたというのは、最新の有機ELテレビが飛躍的に進化した証しなのだと思います。

4KブルーレイのHDR映像(1,000nits/24p)を、ソニーの4K有機ELテレビ「XRJ-65A95L」(左、映像モードは「プロフェッショナル」)と、ソニーのマスターモニター「BVM-HX3110」(右)に同時に表示し、ミラーレスカメラで4K/HDR収録した映像

※鑑賞時は、HDR対応のテレビ、PC、スマートフォンなどを使用してください。SDR環境では、正しく表示されません。
推奨設定:ガンマ/HDR10、色域/BT.2020、色温度/D65

阿部:ちなみに海外では、最新世代のQD-OLEDパネルを搭載したA95Lの後継機「XR80M2(BRAVIA 8 II)」シリーズや、WOLEDの廉価モデル「XR8B」シリーズも販売されています。

秋山:海外にもAV Watchアワードのようなガチ系のテレビグランプリがいくつかあり、「XR80M2」を1位に選んだ評価サイトもありました。そのレビューを読む限り、A95Lよりも良い印象を受けましたし、もしもこの場にXR80M2があれば、LGやパナソニックを脅かす存在になっていたかもしれません。

来年にRGBミニLEDテレビを控えるソニーが、今後有機ELテレビをどうするのか?は定かではありませんが、高評価の最新フラッグシップが日本で見ることができないのは、やはり寂しいですね。

国内未発表モデルの「BRAVIA 8 II」

有機ELブラビアの仕様比較

XR80M2
25年モデル
日本未発売
A95L
24年モデル
XR80
24年モデル
直販価格(55型)2,599米ドル60.5万円39.6万円
プロセッサーXRXRXR
パネルQD-OLEDQD-OLEDOLED
色性能XR Triluminos MaxXR Triluminos MaxXR Triluminos Pro
コントラスト性能XR Contrast Booster 25XR OLED Contrast ProXR Contrast Booster 15
サウンドシステムAcoustic Surface Audio+Acoustic Surface Audio+Acoustic Surface Audio+
スピーカー構成アクチュエーター×2
サブウーファー×2
アクチュエーター×2
サブウーファー×2
アクチュエーター×2
ツイーター×2
サブウーファー×1
HDMI入力444
リフレッシュレート最大120fps(VRR)最大120fps(VRR)最大120fps(VRR)
スタンドポジション2ウェイ3ウェイ4ウェイ

パナソニック「Z95B」:黒が潰れない匠の暗部階調。映画再生は今年もナンバーワン

阿部:パナソニックの「TV-65Z95B」(以下Z95B、実売48.5万円)は、次世代RGB有機ELを採用した有機ELビエラの最上位機種です。ビエラは昨年、テレビの基本OSをFire TVに切り替えUIを刷新しましたが、今年はパネルとその冷却構造、そして筐体のデザインにもメスを入れてきました。

秋山:総合点では、LG「G5」に僅か0.5ポイント及ばなかったZ95Bですが、映像と音の主観評価だけの3人の合計点では上回っていました。暗部階調については、G5では潰れてしまうようなシーンも、Z95Bは最後まで粘るんです。

何というか“黒が黒いのに潰れない”んですよね。「マリアンヌ」や「デューン 砂の惑星PART2」といった暗いシーンの多いコンテンツでは、Z95Bのパネル制御が勝っていました。これこそプラズマ時代からの伝統芸ですよね。

地デジにおけるノイズリダクションに関しても、去年より処理が巧みになったよう感じますし、YouTube再生時の補間エラーも修正されていました。それから、内蔵スピーカーの音質も、厚みと重低音がしっかり感じられて良かったです。

西川:僕は、Z95Bの画が一番マスターモニターに近く見えました。放送はG5に比べて暗いけれど、NHKアナウンサーの顔色が悪く見えたりする辺りはむしろ原画に忠実な印象です。あと音も気に入っていて、とても迫力があり、「アリ―/スター誕生」における音場感も非常にリッチでしたね。

4K/165Hz VRRやHDMI 2.1の4入力対応など、ゲーム性能の面でG5に負けている部分はありますが、入力遅延はほぼ遜色ないレベル。正直どちらを買っても間違いのないモデルですよ。

4KブルーレイのHDR映像(1,000nits/24p)を、パナソニックの4K有機ELテレビ「TV-65Z95B」(左、映像モードは「シネマプロ」)と、ソニーのマスターモニター「BVM-HX3110」(右)に同時に表示し、ミラーレスカメラで4K/HDR収録した映像

※鑑賞時は、HDR対応のテレビ、PC、スマートフォンなどを使用してください。SDR環境では、正しく表示されません。
推奨設定:ガンマ/HDR10、色域/BT.2020、色温度/D65

ゲームモードにおける入力遅延比較

機種
モード名
4K60p信号2K120p信号
LG
「G5」
※1
1.4ms0.8ms
パナソニック
「Z95B」
ゲームプロ
等速駆動オン
1.2ms1.0ms
シャープ
「HS1」
ゲーム
9.0ms0.9ms
ソニー
「A95L」
※2
12.6ms4.2ms
レグザ
「X9900R」
※3
1.8ms1.4ms

※1:ゲームオプティマイザ 入力遅延の防止「ブースト」時
※2:スタンダード、FPS、RTS共通
※3:スタンダード、シューティング、レトロゲーム、ロールプレイング共通

阿部:地デジ視聴時の消費電力を測ったのですが、Z95Bは130W前後と、X9900RやG5に比べて数値が低く抑えられていました。放送が暗いのは、もしかしたら消費電力を下げる目的もあるのかなと思います。

秋山:Z95Bで気になったのは、暗部階調は良いのだけど、平坦部分にカラーノイズっぽい偽色を感じることがあったことです。それが全体のS/Nに影響していて、前モデルのZ95Aに較べると画がやや平坦というか、奥行き方向への展開力が感じられなくなってしまった。

それからグレースケールΔE値も昨年より若干悪くなっていて、ひょっとしたら今年から出荷時のパネルチューニングを省略したことが影響しているのかなと考えてしまいました。対するG5は、明るさフルパワーの状態でシネマ・FILMMAKER MODEの2つモードで、ΔE値2以下というモニター並みの色精度に仕上げており、測定での加点が最終的な勝敗を分けた感じです。

あとはシネマ系の明るさのデフォルトを今年から70に設定していることについても、その意図を事前に説明して欲しかったですね。

「グレースケールΔE値(平均)」の比較

機種モード名グレースケールΔE値
LG
「G5」
シネマ1.7
シネマホーム5
FILMMAKER1.4
パナソニック
「Z95B」
シネマ
明るさ70
8.4
シネマプロ
明るさ70
2.5
FILMMAKER2.4
シャープ
「HS1」
映画9.3
ソニー
「A95L」
25年再測定
シネマ3.4
プロフェッショナル2.4
レグザ
「X9900R」
映画プロ3.4
モニター6.9

【編集部注】

明るさが「デフォルト70」になっている点について、パナソニックからは下記の回答がありました。

「HDR映像を表示する際、『シネマ/シネマプロ/FILMMAKER MODE/プロフェッショナル/キャリブレーション』モードでは、デフォルトの明るさを70に設定しています。

目的は、HDR映像時でも明るさ調整できるようにすることです。

はじめに、HDRのPQ信号には、信号レベルごとにターゲット輝度がありますが、明るさ70の時には、それらの輝度スペック通りに再現しています。

ただし、コンテンツ情報がパネルが出せる輝度より高い場合には、従来通り、トーンマッピングを適用します。よって、明るさ70の時は、コンテンツ情報によらず、可能な限りクリエーターが意図とした通りの輝度を再現するようにしています。

一方、明るさを70から上げた場合には、環境照度や好みに応じた輝度の調整が可能です。従来のビエラは明るさの値を最大に設定していたため、ユーザーが明るさを上げたくても上げることができませんでした。

Z95Bでは周囲が明るく暗部が見えにくい環境下でも、70から明るさを上げることで、全体のコントラストが改善し、暗部を見えやすくすることができるようになっています」

LGエレクトロニクス「G5」:25年のチャンピオンモデルは地デジも一番キレイ!?

阿部:最後は、2025年の有機ELテレビ大賞に輝いた、LGエレクトロニクスの有機ELテレビ「OLED65G5PJB」(以下G5、実売51.4万円)です。ホームページやカタログを見ても、新パネルに関する情報が記載されていませんが(笑)、X9900R、Z95Bと同様に、LGディスプレイの次世代RGB有機ELが採用されたモデルです。

西川:G5は、従来の有機ELとは一線を画す明るさと、オールラウンダーな画質が印象的でした。放送もネット動画も、映画も、Dolby Visionのコンテンツも、悪いところが見当たらなかった。4K/165Hz入力だとか、全入力でHDMI 2.1対応だとか、ゲーム性能も相変わらずのフル装備で、大画面でゲームをプレイする方にもお勧めできます。

「おまかせ/標準」系モード時の輝度値比較

機種モード名10% Window
(ピーク輝度)
100% Window
(全画面輝度)
LG
「G5」
標準1,962cd/m2323cd/m2
パナソニック
「Z95B」
オートAI
※明るさ100
1,895cd/m2391cd/m2
オートAI
※明るさ70
デフォルト
1,542cd/m2334cd/m2
シャープ
「HS1」
AIオート2,159cd/m2364cd/m2
ソニー
「A95L」
スタンダード
25年再測定
1,273cd/m2251cd/m2
レグザ
「X9900R」
おまかせAI1,246cd/m2341cd/m2

「映画/プロ」系モード時の輝度値比較

機種モード名10% Window
(ピーク輝度)
100% Window
(全画面輝度)
LG
「G5」
シネマ2,359cd/m2355cd/m2
シネマホーム1,815cd/m2326cd/m2
FILMMAKER2,292cd/m2358cd/m2
パナソニック
「W95B」
シネマプロ
※明るさ100
2,305cd/m2320cd/m2
シネマプロ
※明るさ70
デフォルト
1,018cd/m2357cd/m2
FILMMAKER
※明るさ100
2,307cd/m2328cd/m2
FILMMAKER
※明るさ70
デフォルト
1,018cd/m2344cd/m2
シャープ
「HS1」
映画2,081cd/m2357cd/m2
ソニー
「A95L」
シネマ
25年再測定
1,320cd/m2267cd/m2
プロフェッショナル
25年再測定
1,319cd/m2249cd/m2
レグザ
「X9900R」
映画プロ1,082cd/m2315cd/m2
モニター1,474cd/m2315cd/m2

HDMI入力の比較

機種入力端子数HDMI2.1対応
入力端子数
対応fps
(VRR)
LG
「G5」
44165fps
パナソニック
「Z95B」
42144fps
シャープ
「HS1」
42144fps
ソニー
「A95L」
42120fps
レグザ
「X9900R」
42144fps
4KブルーレイのHDR映像(1,000nits/24p)を、LGの4K有機ELテレビ「OLED65G5PJB」(左、映像モードは「FILMMAKER MODE」)と、ソニーのマスターモニター「BVM-HX3110」(右)に同時に表示し、ミラーレスカメラで4K/HDR収録した映像

※鑑賞時は、HDR対応のテレビ、PC、スマートフォンなどを使用してください。SDR環境では、正しく表示されません。
推奨設定:ガンマ/HDR10、色域/BT.2020、色温度/D65

秋山:G5で驚いたのが、地デジの画質です。私はぶっちぎりの出来と感じたのですが、審査後にそれぞれの採点を発表したら、3人全員が最高点を付けていました。とにかく画が明るく、クリーンで抜け感がある。人肌にほんのりとピンクが乗って、健康的な見栄えのチューニングに仕上げているのも上手いなと思いました。

西川:海外ブランドのテレビで、地デジがこれだけキレイに映るって時代も変わったよね。

秋山:超解像も非常に効いていて、画に立体感があります。テロップのところなどは、4K放送を見ているような錯覚を受けるほど文字がクッキリと鮮明です。

先鋭感を残しながらノイズを処理するというのは非常に難しくて、通常はエッジも溶けてしまいがちです。昨年の「G4」は超解像が強すぎて、髪や服の模様にジャギーのような悪影響が見られましたが、今年は気にならなかったですね。本機の精細感とS/Nの両立は特筆に値します。

弱点は、暗部の引き込みの早さと低輝度シーンにおける色抜けくらいでしょうか。撮像ノイズの多い「8K空撮夜景」の場合は、暗部の引き込みの早さが上手く作用するのだけれど、「マリアンヌ」のナイトシーンはもう少し暗部が見えて欲しい。

あと、色抜けについては「デューン 砂の惑星 PART2」のシーンが非常に分かりやすくて、赤成分がゴッソリ抜けて全体が青っぽくなってしまったり。ただ、これはZ95Bでも確認された現象なので、パネル側の問題かもしれません。

西川:測定データも一番良かったし、音は前から「物足りない時はサウンドバーを使ってください」というスタンスだし、僕はこれと言って弱点はないかな。25年のベストモデルに相応しい有機ELテレビだと思います。

総括:“液晶派”も納得!? やっぱり25年は有機ELの当たり年だった

阿部:というわけで、2025年のAV Watchアワードはいかがでしたか?

秋山:そうですね、今回はやはり“有機ELの当たり年”という言葉に尽きる気がします。昨年は全テレビの中でBRAVIA 9が最高得点を取ったわけですが、今年は有機ELテレビ勢がBRAVIA 9の得点を上回りました。

なかでも、次世代RGB有機ELを採用したLG「G5」とパナソニック「Z95B」の伸長が目覚ましかったですね。有機ELはまだまだ進化していくのだなという印象を持ちました。

秋山真氏

西川:僕も同感ですね。LGディスプレイのパネルが従来の黄色発光層からRG発光層になったおかげで、QD-OLEDに対する色域の狭さがほぼ解消されました。全白の明るさにおいても、不満がない。

対して液晶テレビは、ソニーのBRAVIA 9が2連覇したように、バックライトの制御であるとか、量子ドットのコントロールであるとか、ミニLED技術を使った高画質化に停滞感が見えてしまった。どれだけ分割数を増やしても、結局有機ELのような局所的な光を作り出すことはできませんからね。

ですから、今年は“有機EL嫌い”の僕ですら「有機ELもいいかな」と思ったくらい、有機ELテレビの画質進化に驚かされた、という感想でしょうか。

秋山:え゛、有機EL嫌いだったのですか!?(笑)

西川:はい、液晶のアナログの感じが好きなんですよ。これまで有機ELって“暗く光らせること”ができなかったじゃないですか。プラズマテレビも最後まで苦労していましたよね。でも有機ELもようやく最近になって暗部がだいぶキレイに見えるようになってきましたし、やっと有機ELの買い時じゃないか?って思っています。

阿部:そういえば秋山さんは、昨年の座談会で「有機ビエラが電源ケーブル着脱式になったら即購入します!」と話しておられましたが……。

秋山:はい、その点については、この場をお借りして感謝と謝罪をさせてください!まずはパナソニックの皆様、電源ケーブルを着脱式に変更してくださり、本当にありがとうございました!

ですが。Z95Bのインレット部分に凹みがあって、愛用の電源ケーブルの極太プラグが入らないのです!! 是非来年モデルは、インレット部分のフラット化をお願いします!そしてLG、ソニー、シャープの皆様も着脱化を何卒よろしくお願いします!

インレット部分に凹みがあり、丸型のプラグが挿さらないという

阿部:今年は“有機ELの当たり年”だったということですが、来年の液晶テレビには、新しいバックライト技術「RGBミニLED」が採用されそうですね。

西川:青色ミニLED+量子ドットから、RGB3色のミニLEDになることで、どれだけ液晶の高画質化に寄与するのか、とても楽しみですね。

バックライトをRGBミニLEDにする利点て、色域の拡張だけではないんですよ。実は階調やコントラストのダイナミックレンジも拡げる可能性を秘めています。

もちろん、光源がRGBミニLEDになってもローカルディミングの制御が重要であることに変わりはないので、各社がどのように制御の問題を解決してくるのか? という部分にも関心を寄せています。

西川善司氏

秋山:先日ドルビーが「Dolby Vision 2」なる規格をアナウンスしましたね。HDR10+陣営も「HDR10+ Advanced」なる規格を年明けのCESで披露するという話も聞きます。

秋山:AV Watchアワードでは、2024年の審査からDolby Visionコンテンツの視聴も行なっていますが、今年テストした液晶テレビは「ドルビーは画をチェックしているのか?」と疑いたくなるくらい、Dolby Visionモードの画がバラバラでした。Dolby Visionの存在理由は、どのようなテレビで見てもある程度似たような画質が表示できる、ということだと理解してるのですが、方針転換をしたのでしょうか?

有機ELテレビの方は、かろうじて似た画が出せていましたが、Dolby Vision IQが環境に適応できず、暗すぎたり、明るすぎたりと、今年もIQの低さが散見されました。新しい規格がどのようなものになるのか、注目したいと思います。

阿部:というわけで、お二人とも今回も本当にお疲れ様でした!

最後になりますが、アワードに参加・協力していただきましたメーカー、関係者の皆さんにも改めて御礼を申し上げます。ありがとうございました。

2023年からスタートしたAV Watchアワードですが、有難いことに、毎回読者の方々やメーカーの皆さんから様々な反応を頂戴しております。「全モードを測定して欲しい」といった要望も寄せられていますが、じつはすでに行なっていて、結果がよくなかったものに関しては掲載を控えています。

数字というものは非常にインパクトが強く、センシティブな部分でもありますので、次回はメーカー技術者も立会いの元で測定することも検討しています。1年後の「AV Watchアワード2026」も是非お楽しみに!

編集部・阿部邦弘
AV Watch編集部