|
2007年後半に、各社からAVアンプの新製品が多数投入され、市場も盛り上がりを見せている。Blu-rayやHD DVDに採用されたドルビーTrue HDやDTS-HD Master Audioなど最新オーディオコーデックに対応した製品が多数登場したのがその理由だ。 “BD/HD DVD完全対応”元年ともいえる今シーズンのAVアンプ。「ここ数年は、今回の製品に向けて全力で開発を進めていた」とするメーカーもあり、10万円以下のエントリー機から、セパレート型のフラッグシップまで、各社が充実した新製品を投入している。最新オーディオ対応製品を紹介するとともに、その注意点をまとめた。 ■ DVDより大幅に進化したBD/HD DVDのオーディオ 最新のAVアンプが対応したのは、「ドルビーTrue HD」、「DTS-HD Master Audio」といった可逆圧縮(ロスレス)の音声フォーマット。さらに、BD/HD DVDではドルビーデジタル・プラス(DD+)や、DTS-HD High Resolution Audio(DTS-HD HRA)など、DVDに採用されたドルビーデジタルやDTSより、高圧縮かつ高音質な非可逆圧縮フォーマットも導入されている。これらの最新オーディオ形式を総称して「HDオーディオ」と呼ぶこともある。
ただし、これらの最新コーデックに対応した製品が出てきたのはつい最近のこと。そのため、例えばHD DVDプレーヤーでは、DD+音声をDTSなどに変換して出力するなど、既存のアンプなどと接続した際の互換性に配慮した設計が行なわれている。また、DTS-HD MA/HRAでは、コーデックそのものにコアストリームと呼ばれる通常のDTS部分が含まれており、光デジタル出力時などには、この部分を出力して互換性を維持する仕組みを組み込んでいる。 最新のアンプでは、こうしたことが不要となり、「ビットストリーム」、つまり、変換なしでそのまま伝送された音声をデコードして再生可能となった。従来は“ディスクはあるのに対応機器がない”という状態であったが、新コーデックのデコードに対応したDSPなどが提供開始され、ビットストリーム伝送に必要なバージョン1.3以降のHDMIの普及が進んだことなどから、今シーズンの各社の新製品がビットストリーム入力に対応したのだ。なお、新コーデックのビットストリームの伝送は、現時点ではHDMIでのみ実現可能となっており、出力側にも対応プレーヤーが必要となる。 ■ 対応機器を組み合わせて最新オーディオを体験 最新コーデックを“そのまま”楽しむためには、対応機器同士の組み合わせ、つまり対応のプレーヤーとアンプが必要だが、もう一つの方法として、プレーヤー側でリニアPCM変換して、AVアンプのHDMIで受ける方法もある。 TrueHDやMaster Audioの音声をリニアPCM変換して出力できる機器はあまり多くないが、ユーザー数が圧倒的に多いPLAYSTATION 3がその代表例だ。 この場合、アンプ側はバージョン1.1以降のHDMIを装備し、マルチチャンネルのリニアPCM入力に対応している必要がある。デノンの「AVC-2308」や、ソニーの「TA-DA3200ES」など、10万円以下のモデルで、こうした製品が用意されている。また、2006年に発表された1世代前のモデルでもPCM入力に対応した製品が多い。PS3からリニアPCM変換でHDMI伝送した場合、従来コーデックの光デジタル出力などと比べると、格段の音質差を体感できるだろう。 またBDビデオにおいては、リニアPCM音声をマルチチャンネル収録した作品も多数発売されている。マルチchのリニアPCM対応アンプであれば、これらの作品も高品位に楽しめる。ただし、今後はビットストリームでの伝送がスタンダードとなっていくと思われる。ビットストリーム出力対応のレコーダも増加しており、やはり、将来性を考えるのであればビットストリーム対応アンプを選択しておきたい。 プレーヤーからビットストリームで出力した音声を、AVアンプ側でデコードするためには、対応機器同士の組み合わせが必要だ。出力側のプレーヤーについては、ソニーの新BDレコーダ「BDZ-X90/L70/T70/T50」や、ブルーレイDIGA「DMR-BW900/BW800/BW700」、東芝のHD DVDプレーヤー「HD-XA2」などが発売されている。 同様にそれを受けるAVアンプについても、デノンやヤマハ、パイオニア、ソニー、マランツなどの中位機以上が最新オーディオのビットストリーム入力に対応する。
【ビットストリーム出力対応プレーヤー/レコーダ】
【ビットストリーム入力対応AVアンプ】
■ プレーヤー/アンプ設定時の注意点 実際の設定方法について、松下電器の最新のBDレコーダ「DMR-BW900」をプレーヤーとして利用し、デノンのAVアンプ「AVC-3808」の組み合わせで試してみた。
ビットストリーム出力のためには、まずはプレーヤー側の設定が必要だ。DIGAの場合、[初期設定]-[音声]-[デジタル音声出力設定]において、各音声コーデックの設定を[bitstream]に変更する。なお、BW900の場合、この画面内にある[BDビデオ副音声]を[入]にしておくと、bitstreamへの変更が反映されず、全てドルビーデジタルで出力されてしまうので、BDビデオ副音声は[切]にしておく必要がある。 最新音声形式のビットストリーム音声出/入力については、製品が出始めということもあり、設定が少々複雑になってしまう場合もある。購入した製品の取扱説明書などでしっかり確認しておきたい。 HDMIでマルチチャンネル音声を受信できれば、アンプ側でのデコードに多くの設定は必要が無い。基本的に、HDMIへの入力音声を[自動]などに設定しておけば、PCMが入力されても、TrueHDでもDTS-HD Master Audioでも、問題なくアンプ側が検出して、再生できるはずだ。
もっとも、AVアンプの利用時には、なにはともあれスピーカー設置設定や自動音場補正機能を活用したしっかりとしたセットアップが最重要だ。ビデオ関連でも入力映像信号のアップコンバートなど、最新AVアンプでは様々な機能を有している。中級以上のAVアンプの多くがGUIメニューによる設定画面を有しているので、それらを活用してしっかりと設定しておきたい。
なお、今回試用した「AVC-3808」では、2系統のHDMI出力を装備しており、入力した映像信号を同時に2つのディスプレイに出力できる。特にプロジェクタのユーザーにとっては、テレビとの使い分けができるという点で非常に魅力的な機能だ。 現行機種では、中級クラス以上で多くの製品が2系統出力を装備している。ただし、同時出力ができるものと、できないものがある点は注意したい。こうした観点からのAVアンプ選びも重要となるだろう。 AVC-3808の場合は、2系統同時出力だけでなく、音声をデコードする機器について、AVアンプ/TVの切り替えが可能。ただし、同時出力時に2種類の機器で異なる音声出力などを行なうことはできない。
また、注意しておきたいポイントとしては、家庭内でレコーダとテレビの間にアンプをHDMI接続する場合、利用時にアンプの電源を入れないと、HDMIからは音声/映像ともに出力できないこと。 BDビデオなどで映画を見るときにアンプを使うのは当然としても、レコーダに録画したテレビ番組を見るためだけに、毎度アンプを立ち上げたくない、という人もいるだろう。今回試用したAVC-3808をはじめ、多くのAVアンプでは、基本的に電源OFF時にはHDMI入力信号を伝送しない。“単にレコーダの番組をテレビに出力したいだけ”、という場合でもアンプをONにしなければいけない。 こうした点も考慮して、家庭内の各機器にあわせた環境作りが必要となる。例えば、レコーダの番組を見るだけの場合はコンポーネント出力を使うなども解決法だ。AVC-3808の場合、3つまでの機器設定を記憶してワンボタンで呼び出すことができるため、こうした各種機能を使いこなしたい。 ■ まとめ DVD世代からハイビジョンディスクの時代に入り、映像面での大きな進歩は、薄型/大型テレビの普及などで多くの人が体験していることだろう。今シーズンのAVアンプが最新コーデックに対応したことで、音響面でもいよいよ環境が整ったといえる。AV環境で音響面の改善を検討している人にとっては、最新コーデック対応アンプの導入は非常に重要なポイントといえる。 AVアンプは、家庭内のAV環境の中心となる存在だけに、各家電機器との連携も重要だ。たとえば、オンキヨー製品のように東芝や松下のテレビ/レコーダとの連動機能を搭載したものもある。こうした連携機能や、HDMI入力、出力の数、さらにはネットワークやiPod対応などの付加機能も多い。
しかし、音響製品の要はやはり、音質。今回は音質面での各社の違いには触れられなかったが、販売店での試聴などで納得のいく製品を見つけてほしい。 □関連記事 ( 2008年2月21日 ) [AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]
Copyright (c)2008 Impress Watch Corporation, an Impress Group company. All rights reserved. |
|