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ソニー、新S-Master HXと4.4mmバランス搭載で6万円台の新ウォークマン「NW-ZX300」

 ソニーは、ウォークマンZシリーズの新製品として、Signatureシリーズ「WM1」の高音質化技術を取り入れながら、ポータビリティや操作性の向上を図った「NW-ZX300」を10月7日に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は65,000円前後。カラーはブラックとシルバーを用意する。

ウォークマン「NW-ZX300」シルバー

 ZX100(2015年発売)の後継モデル。最大の特徴は、最上位「WM1」シリーズで採用された、新開発の独自フルデジタルアンプ「S-Master HX」を採用している事。これにより、DSDのネイティブ再生や出力の強化を実現。さらに、ステレオミニのアンバランス出力に加え、4.4mm 5極のバランス出力も新たに装備。ヘッドフォンも含め、ソニー製品で4.4mmバランス環境を揃えようとすると今までは20万円ほどかかっていたが、ZX300の登場により10万円程度で実現できるようになる。

ウォークマン「NW-ZX300」ブラック
4.4mm 5極のバランス出力も新たに装備した

 内蔵のストレージメモリはZX100の128GBから、ZX300は64GBへと減った。しかし、microSDカードスロットは備えており、ユーザーがメモリの追加が可能。また、ZX100に搭載していたデジタルノイズキャンセリング機能は、ZX300では省かれている。

microSDカードスロットを側面に用意

 新S-Master HXの搭載により、従来はPCMに変換していたDSDが、DSDのままネイティブで再生可能になった。11.2MHzまでのファイルが再生できる。PCMも、ZX100は192kHz/24bitまでだったが、ZX300では384kHz/32bitのFloat/integerまで再生できる。

 再生対応ファイルはMP3/WMA/ATRAC/ATRAC AdvancedLossless/WAV/AAC/HE-AAC/FLAC/Apple Lossless/AIFF/DSD(DSF/DSDIFF)。新たにMQAの再生も可能になった。上位機種のWM1シリーズも、今後のアップデートでMQA対応する予定。

 ハイレゾでない楽曲を、ハイレゾ相当にアップコンバートしながら再生する「DSEE HX」機能も備えている。

「NW-ZX300」シルバー

 新S-Master HX(CXD-3778GF)は出力も強化。ZX100のアンバランス出力は15mW×2chだったが、ZX300では50mW×2chとなった。4.4mm 5極バランス接続はさらに強力な200mW×2ch出力を実現している。

中央の銀色のチップが新S-Master HX(CXD-3778GF)
左が従来モデルのZX100

WM1シリーズの高音質技術を多数採用

 音質面では、WM1シリーズと同様に微小音の再現性にこだわっている。シャーシはWM1Aと同様のアルミを採用。リアパネルにもアルミを使い、低抵抗化と強度の向上を実現。歪感のない、透明感のあるサウンドになったという。内部には無酸素銅のバスプレートも配置してノイズを抑えている。

シャーシはWM1Aと同様のアルミを採用

 電源も強化。アンプ部の音声ラインに、新規フィルムコンデンサを使ったほか、その実力を引き出すために、端子部のメッキ厚や、熱処理時間、フィルム自体の素材を最適化するなど、部品構造を改善した。これにより、高域の伸び、ボーカルのリアルさ、しっかりとした低音を実現したとする。

内部構造

 新S-Master HXの基板との接続ボール部分には、高音質はんだを使用している。ソニー専用はんだのため、半導体後工程工場での管理方法の見直しや、はんだの強度保証を地道に行なって実現可能になったという。この工夫も、透明感や艶のあるボーカルに寄与するという。

 クロックは、新開発の100MHz対応低位相ノイズ水晶発振器を使っており、44.1kHz系と48kHz系で、個別に搭載。これはWM1で使った発振器と、サイズは5032から3225へとダウンしているが、内部ICとしては同じものだという。

 バッテリも、低抵抗電池保護回路基板を使った専用のものを採用。電気二重層キャパシタや、アナログとデジタル&電源を分離した基板レイアウトなども、WMシリーズの技術を使っている。ただし、WMシリーズで、バッテリの接続部分に5本ケーブルを使う技術は取り入れていない。また、WM1Zで、4.4mm端子と基板の接続にキンバーケーブルを使っているが、ZX300ではWM1Aと同じOFCケーブルになっている。

「NW-ZX300」のブラック
シルバーモデルの背面

USB DAC機能を追加

 ZX300から新搭載した機能として、PC用のUSB DACとしても利用可能になった。接続には、付属するUSB-AとWMポートの変換ケーブルを利用。ZX300は底部にWMポートを備えている。

USB DACとしても使用可能
底面にWMポート

 なお、ハイレゾでない楽曲をハイレゾ相当にアップコンバートしながら再生する「DSEE HX」機能は、USB DAC動作時も利用可能。

 Bluetooth送信機能も備え、プロファイルはA2DP/AVRCPに対応。コーデックはSBC、LDAC、aptXをサポートするほか、11月以降のアップデートによりaptX HDにも対応予定。なお、WM1シリーズも、今後のアップデートでaptX HD対応を検討しているという。

 ディスプレイは3.1型で、解像度は800×480ドット。マットガラスを使っており、マットな仕上げの本体との一体感を演出。指紋がつきにくく、指すべりも良いという。天面と底面はヘアライン仕上げ。

タッチ対応で操作性も向上

 ZX100はタッチパネルではなかったが、ZX300はタッチパネルを採用し、より直感的な操作が可能になった。右側面にはハードウェアキーも備えており、画面を見なくても、基本的な操作は可能。

側面にハードウェアキーを装備

 UIも改良。スペアナ表示やアナログメーター表示、各種音質設定変更メニューも用意する。

 外形寸法は119.5×57.3×14.8mm(縦×横×厚さ)。重量は約157g。バッテリは、FLAC再生時で約26時間。

タッチ操作が可能になった
メニュー画面

 アクセサリとして、レザーケースの「CKL-NWZX300」も10月7日に発売。カラーはブラックで、価格はオープンプライス。店頭予想価格は6,500円前後。液晶保護シート「PRF-NWZX300」も10月7日発売で、価格はオープンプライス、店頭予想価格は1,500円前後。

レザーケースの「CKL-NWZX300」

音を聴いてみる

 ZX100とZX300を聴き比べてみた。切り替えた瞬間に、音場の透明感、クリアさ、奥行きの見通しなどが大幅にアップしており、SN比が良くなったのがわかる。じっくりと時間をかけて聴き比べなくても、瞬時にわかるほど大きな進化が感じられる。

 同時に、低音の深さや、押し出し感も大幅にアップ。静粛で広大な描写ながら、迫力も増している。駆動力もアップした新S-Master HXならではの描写だ。この、“凄みのある低域と、広大な中高域の共存”は、まさにWM1シリーズの特徴であり、その世界に肉薄していると感じる。

 厳密に聴いてみると、WM1シリーズよりも低域の沈み込みはやや浅く、“ドッシリ感”では一歩劣る。しかし、価格も考えると十分なクオリティであり、ZX300のコストパフォーマンスは高いと感じる。また、これらZX100からの進化点は、ZX300をバランス駆動で聴くとさらに差が広がる。ZX300のアンバランスとバランスの空間描写や、低域の分解能などの向上幅は大きく、ZX300を使うのであれば、バランス対応のイヤフォン/ヘッドフォンを組み合わせたいところだ。

使用イメージ

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