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新4K8K衛星放送へあと1年。深田恭子が推進、対応TV来夏以降。帯域再編でBS録画に注意も

 2018年からスタートする「新4K8K衛星放送」の開始1年前となる12月1日、野田聖子総務大臣、総務省や、各放送事業者やテレビメーカーなどが集まり、今後の周知広報に向けた取り組みなどを説明する「新4K8K衛星放送開始1年前セレモニー」が開催された。主催は放送サービス高度化推進協会(A-PAB)。

新4K8K衛星放送の推進キャラクターに深田恭子さんが任命された

 新しい放送の正式名称は「新4K8K衛星放送」に決定。新たなロゴマークも発表された。また、4K8K放送の周知広報の顔となる“推進キャラクター”として女優の深田恭子さんを任命。野田総務大臣から任命状が手渡された。

総務省や放送事業者、受信機メーカー関連などの関係者が集結
正式名称は「新4K8K衛星放送」
ロゴマーク

なぜ新放送開始? どうやって視聴? 録画はできる?

 現在のBS/110度CS放送は、それぞれの衛星から「右旋円偏波」(衛星から見て時計回りに回転する)で伝送される方式。この方式での伝送帯域は現在のチャンネルでほぼ一杯になっており、新たにチャンネルを追加したり、より高精細な(データ量の多い)映像を送るには足りない状況となっている。

 '18年12月から予定されている新4K/8K衛星放送では、これに加えて「左旋円偏波」(反時計回り)での伝送も新たに開始。現在の衛星放送サービスの帯域である12GHz帯に、右旋/左旋の両方を収められ、1本の同軸ケーブルで右旋/左旋を同時に伝送できる。

 なお、現行の地デジと同様に、BS/110度CSデジタルのハイビジョン(2K)放送は、新4K8K衛星放送が始まっても、これまでのテレビやチューナを使って、視聴できる。

新たに左旋円偏波を使用
チャンネル構成(1月24日の総務省発表資料)
総務省のロードマップを元にA-PABが作成した資料

 なお、現在販売されている4Kテレビだけでは受信できず、新4K8K放送に対応したチューナを追加購入するか、対応したチューナ内蔵テレビを購入する必要がある。チューナや対応テレビの発売時期は'18年夏~秋の見込み。アンテナも、各メーカーが現在販売している右左旋対応のモデルが必要。ブースターなども対応機種が販売されている。

現在の4K対応テレビ
左旋対応のBS/110度CSデジタルアンテナは販売中
ブースターや分配器、壁面端子など

 既報の通り、シャープは8K対応液晶テレビ「AQUOS 8K LC-70X500」を12月1日より発売(オープンプライス/店頭予想価格は100万円前後)。今後発売される8K対応チューナを追加すれば、来年のNHK 8K番組も視聴できるようになる。

 そのほか、ピクセラが4K対応チューナを'18年夏に、2万円以下で発売することが既に発表されている。セレモニー会場では、現在の試験放送電波を使って4K/8K放送を受信するデモを行なっていた。

シャープが12月1日に発売する8K対応テレビ(左)と、試験放送対応のチューナ(右)
ピクセラが開発中の4K対応チューナ

 録画については、従来のBS/110度CS放送と同じ仕組みとなる予定で、「コピーネバーの話は特に進展していない。このままいけば、従来と同じ運用になり、録画機メーカーが開発している」(A-PAB 周知広報部 馬場俊明部長)という。

現行BSの帯域再編で、予約録画が実行されない可能性も

 新放送の開始により、現在のBS(右旋)帯域に4K放送を6チャンネル割り当てるため、現行の2K BS放送の帯域削減(チャンネル当たりのスロット数の削減)と、トラポン(トランスポンダ/衛星中継器)の移動(周波数の変更)が必要となる。これを'18年1月14日より順次行なう計画も発表した。なお、今回の再編では各チャンネルの番号に変更はないが、一部で予約録画が失敗する可能性があるという。

右旋再編計画や、4K8Kに関するコールセンターなどの内容

 帯域再編の期間は、現行からの削減がNHK BS1/BSプレミアムは1月14日、BS-TBSとBS朝日は22日、BSフジとBS日テレは29日。いずれも時間は午前1時~6時。

 トラポン移動は、BSジャパン、NHK BSプレミアム、ディズニーチャンネル、BSアニマックス、スターチャンネル(スター2、スター3)で行なう。日程は調整中で、それぞれの移動に伴い、放送休止となるチャンネルが発生。そのため、番組が視聴できなかったり、レコーダなどで毎週録画予約している番組などが、録画失敗となる恐れがある。

 予約録画の失敗は、古いレコーダで起きる可能性があるもので、防ぐための基本的な方法は、「トラポン移動しないチャンネル」を観てから予約すること。例えばBSジャパンの番組を視聴/録画予約したい場合は、移動しないNHK BS1などに1度チャンネルを合わせれば、以降はBSジャパンも視聴/録画できるようになるという。ただし、機種によってはチャンネル再スキャンが必要となる可能性もあるため、A-PABで対象機種があるかどうか検証するという。

 A-PABは今後1年間の周知広報/普及推進アクションプランとして、「パブリックスペースなどを活用して4K・8Kの魅力をデモ展開」する。集客力のあるイベントなどに連動し、試験放送や、番組風のコンテンツを訴求。全国20カ所程度での展開を想定している。

 また、「販売の第一線に、リーフレット、ポスター、共通POPなどを提供して、広く一般ユーザーへ周知」することも決定。リーフレット/ポスターは12月1日に最新版を配布。共通POPでは、現在の4Kテレビで視聴するために対応チューナの追加が必要なことなどを案内する。

A-PABによる周知広報のリーフレット

 受信のための環境整備だけでなく、家庭内の電波干渉を防止するための取り組みも推進。同軸ケーブル同士を銅線が露出した状態で結ぶといった“直付け”をすると、その場所から電波が漏えいし、無線LANルータや他のワイヤレスブロードバンドなどを妨害する恐れがある。逆に、電子レンジなどからの電波が直付け部分に干渉があることで、受信障害が発生する可能性もある。そのため、直付けの場所を減らすことを目的に、JEITA(電子情報技術産業協会)が認定した「SHマーク」の機器(左旋/3,224MHz対応)を使用することを求めていく。

 なお、今後左旋を受信する設備の漏洩基準を定める法令が改正される予定で、2018年4月からは、基準に適合しない受信設備は違法になるという。

電波の漏洩対策も必要となる

 放送開始に先駆け、2017年12月1日からは受信方法などの問い合わせを受け付ける「新4K8K衛星放送コールセンター」(0570-048-001)を開設。さらに、上記の再編計画関連の相談窓口(0120-480-004)も別途設け、周知を図る。

野田総務大臣「早期の情報提供を」。NHKなどが今後の取り組み説明

 今回のセレモニーでは、A-PABのほか、NHKやJEITA、民放連などの関係者がそれぞれ放送開始に向けた取り組みなどを紹介した。

 A-PABの福田俊男理事長は「4Kチューナの発売は来年半ば以降と聞いている」とし、受信器メーカーらに対し早期の対応テレビ/チューナの製品化を求めたほか、放送事業者に対し「数多くのピュアな4K番組を提供していただければ」とした。

A-PABの福田俊男理事長

 野田総務大臣は「政府の成長戦略において、2020年に全国世帯の約50%で視聴されることを目標と掲げている。昨今は、ネットによる動画配信の普及に伴う“若者のテレビ離れ”など、テレビを取り巻く環境は大きく変化している、新4K8K衛星放送が視聴者に選択されるためには、業界を挙げた取り組みが必要」と述べた。そのために「4K8Kでなければ観られない魅力的なコンテンツ制作」と「対応チューナがいつ発売されるのか、早期の情報提供」を関係者らに求めた。

野田聖子総務大臣

 唯一の8Kチャンネルを持ち、4K/8K両方の放送を行なう予定となっているNHKの上田良一会長は、東京オリンピック/パラリンピックの2020年に最高水準の放送サービスを実現することを経営目標に掲げている。4K/8K放送もその一つ。
4K

 また、「地上波や衛星はから選りすぐった番組を4Kで制作し、さらに週末には4Kチャンネル独自の大型番組も放送する。8Kは、最高品質の映像と音響を楽しめるフラッグシップチャンネルと位置付ける。来年には8K中継車をヨーロッパに長期間派遣し、ロシアで開かれるワールドカップサッカー大会のほか、舞台やコンサートなどのコンテンツを制作する予定。明後日(12月3日)まで、新宿でPRイベントを開催する。全国でのセミナーやイベントなどの取り組みを強化する」とした。

NHKの上田良一会長

 民放連の井上弘会長は「デジタル(放送開始)の時もこういう会合があったが、あの時は『全部入れ替えなければいけない』と、何となく悲壮感があった気がするが、今回はその分(入れ替えではなく新規追加のため)ラクかなと思っている」と場を和ませた上で、「民放連では、在京キー局計のBS 5社、WOWOWと12月以降に4K放送を開始する。新しい放送メディアを盛り上げたい。放送局と番組の普及には受信機の普及が必要。我々も努力しますので、新しい受信機が一日も早く普及するようにご協力お願いしたい」と受信機メーカーに求めた。

 また、地上波の高度化にも言及し「総務省は平成28年度から3年に渡って地上テレビジョン放送の高度化技術研究開発を、NHKさんに委託して実施していると聞いている。まず技術面でしっかりした研究成果が得られることを、我々地上波としても期待している」と述べた。

民放連の井上弘会長
JEITAの長榮周作会長。これからの1年は重要。国、放送業界、販売店、機器メーカーが協力しながら、放送開始に向けた環境整備に務めたい

 今回のセレモニーでは、“4K8K推進キャラクター”として深田恭子さんが任命されたことも発表。壇上で野田総務大臣から任命状が手渡され、握手を交わした。

深田恭子さんが登場

 深田恭子さんは、4K8Kで観たい映像についてスポーツを挙げ、「オリンピックでは、シンクロ(シンクロナイズドスイミング)で、地上と水中がこんな風に見えるんだ、というのが感動しました。スポーツは鮮明に観たいですね」と語った。

 また、NHKスーパーハイビジョンのナビゲーターを務めているディーン・フジオカさんもビデオで応援メッセージを寄せた。「いよいよ新しい時代の準備が整ってきたという感じです。深田恭子さんは推進キャラクターに任命されて、活動を開始すると聞きました。新しい時代のテレビのPRをご一緒できることは心強い。お互いに頑張っていきましょう」と呼びかけると、深田さんも「私も負けないように一緒にPRしていけたら」とした。

野田総務大臣から任命状が手渡された
ディーン・フジオカさんも応援メッセージ
司会はフジテレビの秋元優里アナウンサー