ニュース
HD DVD終了から10年。変わりゆく映像市場と変わらなかったもの
2018年2月19日 00:00
ちょうど10年前の2008年2月19日、東芝がHD DVD事業の撤退を表明した。
DVDの“次世代”を担う光ディスク規格として東芝やワーナー、Microsoftらが推進した「HD DVD」。ソニーやパナソニックが推進した「Blu-ray Disc(BD)」との間で、次世代DVDの座を争い、家電メーカーやハリウッドスタジオが真っ向から対決、「フォーマット戦争」と呼ばれ、消費者を巻き込みつつ注目を集めたが、HD DVDの撤退により、BDが勝者となった。撤退発表から10年、映像を取り巻く状況の変化を簡単に振り返ってみよう。
HD DVDと「フォーマット戦争」
HD DVDが市場で展開されたのは実質2年。東芝が2006年3月31日に初代HD DVDプレーヤー「HD-XA1」を発売し、その後プレーヤーHD-XA2/XF2や、レコーダ「RD-A1」、「RD-A300/A600」などを順次展開。MicrosoftがXbox 360用にHD DVDドライブを発売したほか、パソコンでもHD DVDドライブ搭載製品が複数展開された。コンテンツもワーナーやパラマウントなどのハリウッドスタジオに加え、国内のアニメや実写作品も発売された。
HD DVD陣営がそのメリットとして訴求していたのが、DVDとの親和性と製造コストの安さ、一部スタジオの支持やMicrosoftのサポートによるPCとの親和性など。一方のBD陣営は大容量(1層25GB、2層50GB。HD DVDは1層15GB、2層30GB)や、将来的な拡張の可能性などをアピール。HD DVD陣営が「勝ったとは言わないが圧勝」といえば、BD陣営は「本当に日本でHD DVDは売っているんですか?」と応じるなど、大手企業の同士ではあまり見られない“口撃”もフォーマット戦争に彩りを加えた。
しかし2008年1月4日に、東芝とともにHD DVDを推進していたワーナーがHD DVD推進方針を転換。これにより、BDの優位が決定的になったことから、東芝が事業撤退を表明したのが2月19日だ。
東芝のHD DVD関連機器累計販売台数は、日本のレコーダ約2万台、プレーヤーは全世界の70万台。HD DVD搭載PCは世界では30万台で、そのうち北米が14万台、欧州が13万台、日本が2万台。HD DVDドライブの累計出荷は約200万台だった。
西田厚聡社長(当時)は、撤退理由を「ワーナーの方針変更。市場環境の変化を直視し、変化への対応策を速やかに講じる。これ以上HD DVD事業を継続することは、経営にとっての影響とともに、複数の規格が併存することによる次世代DVD市場や消費者への影響でも問題がある。よってHD DVD事業を終息させることを決定した」と説明。フォーマット戦争に幕を引いた。
変わりゆく映像市場。高画質はいまもパッケージ
HD DVDの撤退とフォーマット戦争の終結から10年。当時は、「最後のパッケージ向け光ディスク」と呼ばれていた。この10年でBDの市場も拡大したが、DVDを完全に置き換えるものとはなっていない。
一方で、Netflix(当時はBDやHD DVDの宅配レンタルも手掛けていた)、やHulu、Amazonビデオなどの映像配信は年々その存在感を増しており、Netflixの契約者数は全世界で1億件を超えた。フォーマット戦争当時からは、映像メディアを取り巻く環境は大きく変わってきている。
しかし、BDを拡張したUltra HD Blu-rayが2016年に登場。4K、HDRなど新たな高画質を盛り込んだメディアとして、市場が徐々に拡大しつつあり、いまも最高画質・高音質のメディアとしてのパッケージメディア(UHD BD)というポジションに変わりはないといえる。
すっかり市場から姿を消したHD DVDだが、2月9日に更新されたメディアプレーヤーソフト「VLC Media Player V3.0.0」のリリースノートに、「HD DVDの.evoファイルに対応(HD-DVD .evo support)」という文字があった。
懐かしさとともに、Windows 10のPCでVLC 3.0.0とXbox 360用HD DVDプレーヤーを組み合わせて、市販のHD DVDタイトル「夜桜」の再生を試みたが、著作権保護がかかっているためか、evoファイルは再生できず、スピーカーからノイズ音が出るだけであった。