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ひかりTVやDAZNなど580chの映像を監視。NTTぷらら新オペレーション拠点が披露

NTTぷららは24日、運営する「ひかりTV」や業務受託している他社サービスを含めて一元的に映像を監視する、新しい「NTTぷらら メディアオペレーションセンター」の本格稼働開始を発表。報道関係者に対し内部を公開した。

NTTぷらら メディアオペレーションセンター

2004年に自社の映像配信サービス「4th MEDIA」(2008年にひかりTVへ統合)を開始した当初から運用してきた映像監視センターを統合。全国40拠点以上のデータセンターにあったサービスや機能を集約した。広さは従来比約2倍の350m2に、監視用の壁面モニター数は4倍以上の約650面に強化した新たなセンターとして構築。4K8K映像にも既に対応可能な設備となっている。人員は90名規模。場所は都内で、住所は非公開。

メディアオペレーションセンターの位置づけ

【訂正】初出時、センターの面積を誤っていたため修正しました(5月27日)

580chを一元監視。ロボット、天気図、Twitter解析も活用

現在、ひかりTVの延べ視聴時間は月間約8,000万時間。ビデオ視聴は約600万時間、テレビ視聴は約6,500万時間、録画再生は約810万時間(いずれも4月時点)に及ぶ。約160局の放送事業者(地デジ/BS/多チャンネル放送局のユニーク数)から、約320chを受信しており、配信先サービスを合わせると延べ約580chを配信している。

メディアオペレーションセンターの規模

ひかりTVのユーザー数300万に、dTVやCATV、その他OTTサービスを合わせると、約1,000万ユーザー規模のサービスプラットフォームを提供。それらの映像について、センターで約32,000項目を常時監視する。

同社の映像監視センターは、自社サービスだけでなく、7月より親会社となるNTTドコモが運営するサービス「dTV」の監視とオペレーション業務も受託。さらに、NTTコミュニケーションズがスポーツ映像配信DAZNのサービス向けに提供するサッカーの試合映像伝送についても、監視などの業務を担当。24時間365日体制で運用されている。今回の拡張で業務領域を拡大して多様なサービスに対応可能になり、映像配信をこれから始める事業者や、提供中の映像サービスのオペレーション/監視業務を委託したい事業者などからの受託拡大を見込んでいる。

新センターでは、自社/他社の放送型映像サービスの全送出チャンネルをリアルタイムで網羅的に確認可能。さらに、これまでオペレーターがマニュアルで行なっていた映像/音声出力の品質確認作業に、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)を導入して自動化。オペレーター業務の効率化を図る。品質確認作業の実施間隔が従来の約1/4に短縮され、故障発見の精度を高めてサービス品質維持向上を図る。

現在は受託配信サービス含め、延べ580チャンネルを送出。ウォールモニターは約650面あり、約320チャンネルを監視ポイント別に表示。ブロックノイズなど映像の乱れや、無音など音声の異常が発生していないかを確認。将来のビジネス拡大に備え、ウォールモニターや監視卓を増設できるよう設計しているという。

約650面のモニターで監視

ウォールモニターには映像監視機能内蔵のマルチビューワーを採用。映像のブラックアウト・フリーズや、音声のトラブルを人の目や耳に代わってリアルタイムに検知。監視は、映像プラットフォーム出力ポイントとエンドユーザー配信直前の2カ所で行なう。

映像または音声に異常などが発生すると、画面の赤い帯で通知

ひかりTVで再送信している地上/BSデジタル放送は、放送局ごとに、電波(RF)信号で送られてきたTSパケットと、IP信号に変換して出力する際のTSパケットを比較/検証。映像信号のビットマップ列を比較して映像に入るノイズを検出する。

ロボットによる監視(RPA)は現在試行運用中。ひかりTVなどのSTB上のサービスや機能が正常に動作しているかを自動監視。たとえばトップ画面を起動してチャンネル一覧を呼び出し、特定のチャンネルを選局するといった一連の流れを、あらかじめ作成したテストシナリオに沿って自動的に操作。その時々の映像/音声出力から画面遷移のエラーや映像品質の劣化を捉えた場合にアラートを出力して知らせる。

これまでは、オペレーターがサービス画面を常時操作して目や耳で判断していたが、RPA導入で自動化することにより判定の正確性が向上。オペレーターはより高度で安定的なサービスの運用に注力できるという。今後はSTBだけでなく、スマートフォンなどマルチデバイスや、サービス監視の適用範囲拡大の検討を進める。

システムが発する故障アラートを待つだけでなく、社内外の情報を積極的に取得し分析を行なうことで、システム障害の未然防止や“サイレント故障”の早期発見を目指す。

例えばBS放送に影響する雨雲のリアルタイム情報を取得してモニターに表示。1時間に30mmを超える降雨でノイズが増えるとのことで、悪天候が予想されるアンテナ局を、他の局の受信に切替えることで降雨障害を防ぐ。

天気図も監視

また、自社コールセンターの対応履歴や、TwitterなどSNSのリアルタイム解析を元に、「つながらない」、「見られない」、「遅い」などサービスに対するネガティブワードを抽出。モニター上に表示されるグラフの変化などで異常を発見しやすくすることで、システム上で見つけ難いサイレント故障を早期発見できるという。

コールセンターやTwitter解析結果などもモニターで表示

そのほか、視聴端末の通信ログを定期的に収集してパケットの受信エラーを監視。直接的に監視できないアクセスネットワーク異常を早期に発見、故障被害を最小限に抑えるという。

様々な監視技術を活用

年間約1,000試合以上のスポーツ映像配信を監視

今後の拡大が見込める分野の一つとして、スポーツ中継映像の監視やオペレーションに対応するのも特徴。NTTコミュニケーションズの「映像ネット」と連携して、スポーツや音楽などの中継映像の監視や、オペレーション、アーカイブなどのサービスを提供している。サービス開始から年間1,000試合以上、累計約2,500試合の対応実績があり、視聴者が映像を観られないなどの“サービス影響”はゼロという高い信頼性をアピールしている。

スポーツ中継映像の監視やオペレーション

現在は、1台の監視卓で、一人のオペレーターが5カ所の配信を管理できる体制となっており、配信現場のスタッフらとの協力により、スポーツ映像サービスやパブリックビューイングなど、1日で約20のイベントに対応可能なシステム/体制となっている。

システム構成概要
作業は細かくチェック項目を設け、作業の遅れなどもオペレーターが管理しやすくなっている

5G時代を見据え「オペレーションで差別化」。ドコモ以外のサービスにも拡大

NTTぷららの板東浩二社長は「これからの時代は、映像配信サービス自体は料金も中身も似たような傾向になってくる一方、どこで差別化するかと考えると、オペレーションが重要になるのでは」と体制強化の意義を説明。

板東浩二社長

2月に発表された、NTTドコモによるNTTぷららの子会社化についても触れ「5Gという新サービスを提供する時にキラーとなるコンテンツが必要になる。まだまだスマートフォンの映像マーケットは拡大する必要がある」と説明。ドコモが持つ顧客基盤と、NTTぷららのコンテンツ制作力や調達力、映像配信の技術力を掛け合わせることで、「5G時代を見据えた新たなコンテンツビジネスの創造」を目指す。

株主構成の変更で、NTTぷららは7月からドコモグループになる
NTTドコモとNTTぷららのシナジー

具体的な取り組みとしては、ドコモ顧客基盤との連携以外にも独自の顧客基盤の拡大や、AR/VR/MRなど新技術導入、AIを用いたおすすめコンテンツのパーソナライズ、5Gを見据えたデバイス対応などを挙げた。また、新しい技術を使った独自コンテンツのほか、ライブ/劇場や著作権ビジネスなどの新規ビジネス創出にも意欲を見せた。

板東氏は今後のビジネス拡大について、自社やドコモのサービスを中心とした“垂直統合”ではなく、他事業者へのサービス提供にも注力することを強調。映像監視オペレーション業務をB2C(ひかりTVなど)だけでなく、様々なパートナーとの協力による“B2B2X”で展開していく方針を示した。

ぷららの目指す姿
今後の取り組み