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「シン・エヴァ」声優14人による舞台挨拶、シンジから皆に「おめでとう」

(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会

3月8日から公開されている「シン・エヴァンゲリオン劇場版」。出演している声優陣、総勢14人が揃い踏みした舞台挨拶が3月28日に新宿バルト9で実施された。なお、舞台挨拶の模様は全国334の劇場にも生中継された。

登壇したのは、緒方恵美さん、林原めぐみさん、宮村優子さん、三石琴乃さん、山口由里子さん、石田彰さん、立木文彦さん、岩永哲哉さん、岩男潤子さん、長沢美樹さん、優希比呂さん、伊瀬茉莉也さん、勝杏里さん、山寺宏一さんと、日本を代表する豪華声優陣、総勢14人。エヴァンゲリオンシリーズの舞台挨拶は1997年以来となる。なお、声優の皆さんは極力ネタバレを避けて語っているが、一部、作品の内容に触れている部分もあるので注意して欲しい。

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作品を見た感想として、碇シンジ役の緒方さんは「新劇場版は、“破”くらいから声優陣がバラバラで収録する事が多かったのですが、今回のシン・エヴァは本当にバラバラの収録でしたので、今までみんながどういう芝居をしていたのか、完成して初めて知るという感じでした。すべてのクリエイター、スタッフの皆さんに、ありがとうと言いたい気持ちですね」と語る。

アヤナミレイ(仮称)役の林原さんは、「2時間35分、ながいながい時間見終わり、ながいエンドテロップを見ながら、“これだけの人が集結した映画なんだ”と改めて感慨深い思いでした。30代の人たちは、ここがひとつの終わりであり、10代の人たちはここがひとつの入り口かもしれない。無限ループの中をただよう人も、一度抜けて帰ってくる人もいると思いますが、“エヴァンゲリオンという世界がここに存在していたんだな”と噛みしめるような気持ちでした」という。

式波・アスカ・ラングレー役の宮村さんは、「エヴァが以前に社会現象になった時、インターネットはそこまで普及していませんでしたが、エヴァの謎を考察する本が出たり、そういうの当時読んで“そうなんだ!”と思っていました。今回のシン・エヴァでも、自分でも考察したり、皆さんの考察を見たりして、“そうだったの!”“そうだったっけ!?”と驚いて、また映画を見に行く……これが正しいエヴァンゲリオンの楽しみ方なんだなと思いました。一粒で何度も美味しい思いができる、皆さんにもいっぱい楽しんで欲しいです」と、エヴァならではの楽しみ方を紹介した。

葛城ミサト役の三石さんは、「試写で見て、人物達の気持ちは、心にグッと迫るものがあり、涙したりもしましたが、その他の細かい設定とか、“地球がどうなっちゃってるんだろう”というのはわからないところもありました。ミサトとしては、大切な役割を担って、重要なシーンをまかされたので一生懸命がんばりました。今日はみんなと一緒にいられて幸せです」と感慨深げな様子。

赤木リツコ役の山口さんは、公開初日に、ここバルト9にこっそり来て、映画を見たという。「台本を読んだ時に30分くらい感動して泣いていましたが、その時よりもさらにさらに動けないくらい感動しました。素晴らしい芸術作品、アニメを超えた芸術作品だと思っていて、出会えてよかったと思います。いろんな方に感謝しながら、エンドロールが終わって、ワッと拍手が巻き起こったあの瞬間は忘れられません。間違いなく私の好きな映画トップはシン・エヴァ、あと10回は見ると思います」と語る。

渚カヲル役の石田さんは、「僕もこの作品見終わったあとに、作品自身に翻弄されました。異様とも言える映像を見せられて、これをどう解釈すればいいんだろうとか、細かな設定的な事とか、理解が及ばない事が多すぎて、物語をどうとらえればいいんだろうと思ったいました。けれど、シンジとゲンドウの会話をきっちり聞き逃さないようにしていれば大丈夫なのかなと思っています。今作の中で、ゲンドウがシンジに“大人になったな”と言うんですけど、“お前が言うな!!”って思いました。そういう作品です」とぶっちゃけ、場内から拍手喝采を受けた。

そんなゲンドウを演じた立木さんは「そうですか」と苦笑いをしながら、「今作はゲンドウとして大事な役どころでしたが、収録の時と、作品を見た時で印象が違って見えました。役者の皆さん、スタッフの努力の結晶が現れていて、すべての役に愛があって、エヴァで“みんなを好きになる”というのもちょっと変なのですが、そのくらい思い入れが強くなる作品でした。もうこれはアニメではないな、と思います。ザ・映画というか、そのへんがみなさんにTVシリーズから愛してもらっている所以なんだと思う。庵野監督と同世代で、この映画に到達するまでやれて、“一つの区切りをつけられた事”が、自分の中のビューティフル・ワールドですね」と語り、大きな拍手が沸き起こった。

洞木ヒカリを演じた岩男さんは、「試写会で作品を見るのが怖かった」という。映画館で鑑賞した時も、「座った途端、涙が溢れて、泣きじゃくる状態になってしまって、隣に座った女性もずっと泣いていました。2回目に、事務所のスタッフの皆さんと見ることができて、庵野監督の温かい気持ち、優しさが散りばめられていて、“誰も一人にさせないよ、みんな幸せになるんだよ”ってメッセージが込められているように感じられました。本当にありがとうございます」と深くおじぎをした。

伊吹マヤを演じた長沢さんは、NHKで3月22日に放送された「プロフェッショナル 仕事の流儀」の庵野秀明スペシャルを振り返り、「庵野総監督が美しいだけのものに魅力を感じない、どこか欠けている存在のほうが魅力を感じるとおっしゃっていた。エヴァという嵐のようなキャラクター、世界観の中で、マヤは“普通の女の子”という整った存在で登場したと思う。でも始まってみると、エヴァの捕食シーンで吐いてしまったり、リツコ先輩大好きだったり、“整った部分を壊されるシーン”が多かった。こういうところが庵野さんが大切にされていた事だったんだなと、改めて思いました」と振り返る。

さらに、エヴァからは「人生で活用できるセリフ」を与えてもらったという長沢さん。「“不潔”って言葉は日常でいっぱい使わせていただいたので、これからは“これだから若い男は”と、いろんな人達に言っていこうかなと思います」と語り、笑いを誘っていた。

日向マコトを演じた優希さんは、声優陣が実際に会わず、別々に収録する、いわゆる“抜き録り”でシン・エヴァが作られた事を振り返り、「複雑な人間関係、難しいセリフが多い作品を、抜き録りでよくできたなと、よく相手がいない状態でこんなセリフが言えるな、なんてスゴイ声優達なんだろうと、客観的に見て感動していました。映画としても、エンターテインメント要素やSFファンにはたまらない設定などもあり、何度見ても楽しめるところが多く、僕も何度も劇場に通おうと思います」と、声優ならではの視点で魅力を紹介。

北上ミドリを演じた伊瀬茉莉也さんは、「まさか最終章まで関わることができて、本当に光栄でした」と語る。「完成した作品を見た時、涙が止まりませんでした。作品やキャラクターへの愛、そしてキャラクター同士の愛が感じられました」と語る。

多摩ヒデキを演じた勝杏里さんは、10代の頃、声優業界に入る前からファンとしてエヴァを楽しんでいたという。「だからこそ、まさか自分がこの作品に携われるとは思っていなかった。それも含めて、シン・エヴァを見た時は金縛りにあってしまいました。自分が変化すると、印象が変わるのがエヴァの特徴なので、きっと今、TV版を見直したら、感じ方が変わると思います。これからも1ファンとしてエヴァを見続けていきたい」。

加持リョウジを演じた山寺さんは、「出ててよかったなぁと思いました。セリフ、そんなにたくさんあるわけじゃなかったので……。“プロフェッショナル”を見たら、庵野さんに“つまんないからカットしましょ”って言われかねなかったなと思いました(笑)。庵野さんをはじめ、たくさんのスタッフが命を削って作った作品。世の中に沢山エンターテインメントがある中で、どれとも違う、唯一無二の存在であるこのエヴァンゲリオンに出られてよかったです。我々声優にとって、作品との出会い、キャラクターとの出会いが“ほぼ全て”と言えます。自分にとっての代表作は“加持リョウジ”“アンパンマンのチーズ”、この2つのキャラクターに感謝をしたいと思います。本当にありがとうございます」と、山寺さんらしいユーモアあふれる挨拶を披露した。

加持からミサトにひとこと!?

加持役の山寺さん、そしてカヲル役の石田さんは、特にネタバレをしないで感想を語るのが難しい役どころ。山寺さんは感想の代わりに、「ミサトにかける言葉がある」とのことで、加持の声にチェンジ。ミサト役の三石さんの方を向き、「葛城、ほんとによく頑張ったな。そして何より、俺のピリリリリ!!! を、ピリリリリ!!! してくれて本当にありがとう」と、自分の声で「ピー音」を入れて対応。三石さんが「一瞬、泣きそうになった私が馬鹿でした」と返す、加持✕ミサトらしい一幕も。

石田さんは「新劇場版では破とQ、から、林原さんのカバー曲が挿入歌として入るシーンがあって、“これいいな”と思っていたんです。シン・エヴァでも、僕が出てくるあのシーンにカバー曲をもし入れるなら、なにがいいかな? と思っていて、中島みゆきさんの“時代”が流れたらいいなぁと」と語り、途中で林原さんが「まわる~まわる~よ~時代はまわる~」と歌い出し、石田さんが感激する一幕もあった。

(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会

シンジから皆に“おめでとう”

シン・エヴァでは、シンジとゲンドウ“親子の対決”が、大きな軸にもなっている。ゲンドウを演じた立木さんは、「これまでシンジと掛け合いで、同じ場で収録することが少なかった。今回はそれがあったので、シンジと一緒に演れた、今までやれなかった事を叫んだりもしました。ピー!(セルフピー音)インパクトがとっかかりとしてあって、それが一緒にできたというのが嬉しいですね。25年歩んできて、シンジもそうですが、お別れをするのがこんなに寂しいというのが今までなかった。その感情がいま、湧いてきているところです。以前から、ゲンドウが独白する時、シンジに全部まるくおさめてもらいたいとも思っていたので、うれしかったですね」と噛みしめる。

緒方さんは、「昔のテレビシーズの一番最後に、シンジが中心になって“おめでとう”と皆に言われ、シンジは“ありがとう”と返したのですが、今回はそうではなく、逆に自分から離れていく皆さんに“おめでとう”と声をかける役回りでした。そういう意味でも、庵野さんも含めて、シンジが送り出して、自分が残ったという感じでしたね。ですので、“庵野さんお疲れ様でした”という気持ちでいっぱいです」と振り返る。

最後に緒方さんは、「おかげさまで長い年月をかけてここまでたどり着いた作品です。ファンの皆さんの中には、“昔はシンジの気持ちで見ていたけれど、新劇場版はゲンドウの気持ちになってしまっている”なんて事も聞きます。また、今、初めてエヴァに触れる10代、20代からのお声も聞いています」。

「今、“昔のエヴァ”を見たら、かつてと違う気持ちが湧くのと同じように、シン・エヴァを数年後に見たら、また違う見方で、なにか新しいものが次々に発見できるような、違う思いを抱いていただけるような作品だと思います。作品タイトルにも“リピートマーク”がついていますけど、多くの方々の気持ちがこもったフィルムですので、何度も見ていただいて、なんならTVシリーズからも見ていただき、その時々のみなさんの気持ちを、その中から探していただけたらいいなと思います。本当にありがとうございました」と締めくくり、大きな拍手を受けた。

舞台挨拶は新宿バルト9で実施された(C)カラー (C)カラー/Project Eva. (C)カラー/EVA製作委員会