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アルパイン、AKプレーヤーで384kHz/32bit再生するカーオーディオ
2021年6月22日 16:30
アルプスアルパインは22日、カーオーディオ業界で初めて384kHz/32bitのハイレゾ再生に対応したカーオーディオ「AlpineF#1Status(アルパイン エフナンバーワン ステータス)」を発表した。同システムではAstell&Kernとのコラボレーションにより開発されたデジタルオーディオプレーヤー「DAP-7909」が活用される。
AlpineF#1Statusは今秋よりグローバルで販売を開始し、日本国内ではトヨタ自動車の「アルファード エグゼクティブラウンジS」をベースとするコンプリートカーを今秋発売。7月より受注を開始する。価格はシステム自体が200万程度、アルファードの場合は組み込み工賃は150万程度という。
フルコンプリートカーの販売やコンプリートカー以外でのシステムでの取り扱い、取り付けの相談は直営店「アルパインスタイル」全4店舗で受け付ける。なお、取り扱いはシステム販売のみで、個別での販売はしない。
音楽の楽しみを提供するシステムサプライヤーとして、これまで培ってきた技術力・ノウハウ・知見を結集し、約3年の期間をかけて開発されたカーオーディオ。「車を移動するためだけの空間ではなく、音楽の楽しみや日々の感動を生む空間として提供」するという。
システムは、デジタルオーディオプレーヤー「DAP-7909」、ヘッドユニット「HDS-7909」、デジタルオーディオ・プロセッサー「HDP-H900」、パワーアンプ「HDA-F900」×2、ツイーター/ミドル/ウーファー/サブウーファーの4ウェイスピーカー「HDZ-9000」で構成されている。
Astell&Kernとのコラボレーションで誕生したDAP-7909は、最大384kHz/32bitのPCM音源再生に対応し、ポータブルオーディオプレーヤーとして使えるだけでなく、プレーヤーに保存した音源をカーオーディオで再生できる。ドックにプレーヤーを差し込むことでAlpineF#1Statusコマンダー(ヘッドユニット)から操作でき、内部の音楽をカーオーディオで再生できる。
AKプレーヤーのベースモデルは「A&ultima SP1000M」で、ヘッドユニットからの操作に対応するカスタマイズがされている事と、筐体にアルパインロゴが入っている事などを除いては、通常のSP1000Mと同じスペックだという。接続はUSB経由のデジタル接続。他のプレーヤーやスマートフォンはストレージとして使用できない。
なお、ストレージとしてはヘッドユニットにUSBメモリーを接続し、そのメモリー内のハイレゾファイルを再生させることも可能。Bluetooth受信機能は備えていない。後述するクロックの同期も行なうために、ヘッドユニットやプロセッサーはA2B BUSという独自のバスで接続している。
DAP本体はアルミニウムボディで軽量化されており、高解像度の4.1インチHDディプレイも搭載した。USB3.0のType-Cポートを備え、高速データ通信に対応する。プレーヤーは単体でも利用可能。
業界で初めてDAP操作に対応したヘッドユニット「HDS-7909」は、新開発の「マスタークロック・マネージメントシステム」を搭載する。これは従来ヘッドユニットやオーディオ・プロセッサーごとに別々のクロックで処理されていたデジタル信号を、オーディオ・プロセッサーから発振させたクロックを「マスタークロック」としてヘッドユニットに送り、信号処理を完全に同期させるもの。これによりジッターの発生を低減、ジッターに起因する音質劣化を最小限にしたという。
デジタル・オーディオ・プロセッサーの「HDP-H900」に搭載する水晶発振器は、世界最高の周波数精度を謳う「OCXO DuCULoN」。業界最高スペックというDSP「Griffin UL」も搭載した。オペアンプには専用の高音質チップ「MUSES05」を新規開発。回路ブロックの構成の細部に渡る改善により、信号処理の純度を高め、ノイズを極限まで抑え込むことに成功したという。DACチップはESS製「ES9038PRO」。
パワーアンプ「HDA-F900」は、独自のネガティブ・フィードバック(NFB)サーキットにより低歪み、低ノイズ、高ダンピングファクタを実現。このパワーアンプにも共同開発のオペアンプ「MUSES05」を搭載した。
4ウェイスピーカーシステム「HDZ-9000」には、炭素繊維強化樹脂(CFRP)を全ユニット共通の振動板として採用。ネジ穴位置などの調整も相まって、各ユニットの音色の統一に成功したという。ツイーターには80kHz再生デュアルエミッション磁気回路、ミッドドライバーにはDDLinear+DDDriveハイブリッド磁気回路、ウーファーにはDDDrive磁気回路、サブウーファーにはDDLinear磁気回路を採用。ミッド/ウーファー/サブウーファーには低歪みギャザードエッジも採用した。
フルコンプリートカーに乗って試聴してみた
フルシステムを導入したコンプリートカー「トヨタ アルファード エグゼクティブラウンジS」に乗って、試聴してみた。“車両そのものを最高の音質を再現できる環境に整えるための新コンセプト”として開発された「Solid Frame#1」を導入したのがこのコンプリートカーで、フロントドアや後席スライドドアへのデッドニングや、後席、トランク床部への制振材、天井への制振と吸音材、更にはタイヤハウス裏側への制振施工、静粛性向上シートなどの素材を使用し、徹底したノイズ低減が行なわれている。
実際に乗り込むと、SNが非常に良く、ハイレゾ楽曲の細かな音が聴き取りやすい空間に仕上げられているのがわかる。内部で44.1kHz/16bitと、384kHz/32bitの楽曲を聴き比べたが、打楽器の音が広がる余韻が384kHz/32bitの方がより遠くまで見渡せる。非常にナチュラルかつニュートラルな、ホームのピュアオーディオにも通じるサウンドになっており、楽器の質感や音色といった部分に384kHz/32bitの情報量の多さを実感できた。
なお、今回試聴に使われたアルファードでは、運転席と助手席の間にあるコンソールボックス後方にプレーヤーをマウントするようになっていたが、このマウント位置やスピーカーの配置などは、オーダーする際、任意の場所に変更できる。
アンバサダー務めるCHEMISTRY・川畑要さんも体験。「想像以上」
同日開催された発表会には、代表取締役副社長執行役員の米谷信彦氏が登壇。2016年に販売店を巡った際に、当時市場に出回っていたハイレゾ対応カーオーディオについて「“社長さん、なんちゃってハイレゾではマニアの皆さんは満足しませんよ”といった厳しいアドバイスをいただいた。それが新製品開発のキッカケになっている。これまでカーナビに注力した開発体制をとっていたが、“音のアルパイン復活”を目指して、3年前から本格的に開発を開始。途中で開発コンセプトの見直しや、半導体供給問題、コロナ禍なども重なり、やっと本日の発表に至った」と経緯を説明。
サウンド設計部 主任技師の中村清志氏は、最高384kHz/32bitに対応させた理由として、「(384kHz/32bitのクオリティについて)私自身も半信半疑だったが、米谷のほうから“なんちゃってでは駄目だ、最高を目指せ”と激が飛び、すぐレコーディングスタジオで384kHz/32bitを体験させていただいた。その時に圧倒的なリアリティ、情報量を体験し、鳥肌が立った」という。さらに、「(市場のハイレゾ対応カーオーディオは)96kHz/24bitまでの対応が一般的で、一部の高級機が192kHz/32bitに対応しているという状態だが、384kHz/32bitに対応する事で空気感も大きく変えていける」と、魅力を説明した。
クロックを各ユニットで揃えるマスタークロック・マネージメントシステムにより、従来のカーオーディオの1万倍という精度のクロックを実現。心臓部の水晶発振器は温度の変化に影響されるパーツであるため、車載器で採用される事は少ないが、そこを工夫して搭載を実現した。
「水晶発振器は高精度になるとパーツのサイズが物理的に大きくなり、温度の変化にも影響されるため、温度補償回路による動作を取り入れ、ケースに断熱性の高いものを採用。さらに発振器を筐体中央に配置し、シャーシを小部屋のように区切ってシールド構造を採用することで、課題を回避した」という。
さらに、人間の耳が、ユニットの取付角度が1度変化しただけでもそれを判断できる能力を持っている事から、「その長さをスピーカーレイアウトを測定すると、0.9mmステップでの時間補正が必要だったため、従来の7.2mmから0.9mmの微細なステップで調整できるようにした」と明かした。
こうした膨大な情報を処理するために、DSPは64bit対応で1GHz動作のチップを4基搭載。処理能力は従来機の10倍以上になったという。
アンバサダーに就任したCHEMISTRYの川畑要さんも発表会に登壇。デビュー前、建築現場で働いていた時に、先輩の車などにアルパインの機器が搭載されているを見て、「もともとあこがれを持っていた」という。
今回の新製品を試聴した印象としては、「想像以上でした。デモカーのドアが開いた状態で漏れてきた音を聴いた段階で、“普段聴いているものとは違う”と感じました。まるでライブの空間にいるようで、気がついたら目を閉じて聴き入ってしまうような。感動的な体験ができました」と語り、「できれば運転したくないですね。できれば2列目にいたいなと思ってしまった」と笑った。
川畑さんのYouTubeチャンネル「KKTV」とも連動。24時間でテーマソングを作り上げるという企画も実施。その企画で誕生したテーマソング「Tailwind ~音楽とともに~」も、発表会で披露した。