ニュース
マランツ、新世代CINEMAアンプを代表するディスクリートアンプの9.4ch「CINEMA 40」
2023年3月10日 11:00
マランツは、9.4ch AVアンプ「CINEMA 40」を3月下旬に発売する。パワーアンプは9chだが、最大11.4chのプロセッシングも可能。プリアンプにHDAM-SA2を採用するなど、こだわりのパーツを搭載したプレミアムモデルとなる。価格は50万6,000円。カラーはブラック。
先日発表されたハイエンド・セパレートAVアンプ「AV 10/AMP 10」の下位モデルに位置付けられる、一体型AVアンプ。2020年発売の「MODEL 30/SACD 30n」などと同様に、新世代のマランツを象徴する筐体デザインを採用。インテリアとの調和を重視し、ラックの中に入れず、外に見える場所に設置した際も、佇まいがリビングで映えるデザインを追求している。
デザインだけでなく、内部も“新世代のAVアンプ”を追求。ユーザーのライフスタイルが多様化し、テクノロジーも大きく進化。2chのHi-Fiと、AVアンプという従来の垣根も無くなりつつある市場環境を踏まえ、「この時代に求められているAVアンプとは何か、マランツらしさとは何か」を追求した。
その結果、50万円を超えるハイクラスなAVアンプではあるが、パワーアンプのチャンネル数をあえて追わず、2chで聴いた場合でもHi-Fiアンプのクオリティを実現するため、内部に高音質パーツを多数投入。音のチューニングにも時間をかけ、「“この価格で9.4chにする事で、この音を実現した”というクオリティを体験していただける。新世代CINEMAシリーズでマランツが目指したものを、一番特徴的に表したモデル」(マランツ・ブランドマネージャーの高山健一氏)になったという。
独立基板の9chフルディスクリート・パワーアンプを搭載
そのため、機能面では既発売の「CINEMA 50」と比較するとそこまで大きな違いはない。一方で、アンプとしてのグレードがCINEMA 40では大幅に高められている。外観的には、筐体がCINEMA 40の方が大きく、前面の丸窓ディスプレイは同じだが、CINEMA 40はトラップドアの中にもディスプレイを備えている。
CINEMA 40最大の特徴は、1chごとに独立した基板の9chフルディスクリート・パワーアンプを搭載していること。セパレーションを高められるほか、パーツの選定や回路設計の自由度が高く、プレミアムグレードならではの高音質パーツも多数採用している。なお、アンプの方式としてはアナログ。
肉厚なアルミ押し出し材を使ったヒートシンクに、パワーアンプ基板をダイレクトにマウント。実用最大出力は235W(6Ω/1kHz/THD 10%/1ch駆動)。
パワーアンプの配列にもこだわりがある。チャンネル毎に、パワートランジスタの電気的・熱的な負荷が異なるものだが、負荷が重いチャンネルのパワーアンプは発熱も増すため、それらが隣り合うと排熱の処理が大変になる。そこで、一番活発なフロント用パワーアンプの隣に、負荷が比較的軽いハイト用アンプを配置するなど、配列を工夫する事で、電気的・熱的な負荷が適切にヒートシンクに換算されるようにしている。
パワーアンプの配置としては上記のようになっているが、出力後、スピーカーターミナルでは並び順を戻しているため、背面端子の並び順は一般的なAVアンプのものと同じ。スピーカーターミナルはスクリュー式で、全チャンネル同一のものを採用。バナナプラグにも対応。全ての端子を水平に配置する事で、簡単にケーブル接続ができるという。
パワーアンプ回路に電源を供給するブロックコンデンサーには、CINEMA 40専用に開発した15,000μF×2のカスタムコンデンサーを採用。電源トランスにも、大型のEIコアトランスを採用。大音量再生時にも、限界を感じさせない、圧倒的な余裕を持った電源供給を実現したという。
HDAM-SA2搭載の11.4ch電流帰還型プリアンプ
11.4chすべてのプリアンプ回路に、マランツ独自の高速アンプモジュール「HDAM-SA2」を採用。前世代までの製品は、AVアンプ用に一部を簡略化した回路を使っていたが、CINEMA 40のHDAM-SA2回路は、Hi-Fiオーディオ機器と同じ電流回路を備えている。
入力セレクター、ボリューム、出力セレクターそれぞれの機能に特化した高性能カスタムデバイスを使うことで、信号経路を最短化。不要な信号経路の引き回しを排除し、音質を高めている。
11.4chのプリアウトも備えているため、ハイトスピーカーやパワーアンプの強化が可能。また、使用しないパワーアンプを信号ラインから切り離すプリアンプモードも搭載。全てのパワーアンプの動作を停止できるだけでなく、チャンネルごとに個別にON/OFFできる。
サブウーファープリアウトは4系統備え、音量レベルとリスニングポジションまでの距離を個別に設定できる。マニュアルでの設定に加え、独立した4系統のサブウーファープリアウトを備えているのも特徴。それぞれのサブウーファーに、音量レベルとリスニングポイントまでの距離を個別に設定できる。マニュアル設定に加え、Audyssey Sub EQ HTを使った自動設定も可能。
4系統のサブウーファー全てから同じ音を再生する「スタンダード」と、各サブウーファーの近くにある「小」に設定されたスピーカーの低音を再生する「指向性モード」から、動作を選べる。なお、指向性に設定した場合は、Audyssey Sub EQ HTは機能しない。
デジタルオーディオ回路が動作する基準となるクロック信号に含まれるジッターを取り除く、ジッター・リデューサーも搭載。
デジタル部では、DSPやネットワーク、USBなどのデジタル回路への電源供給に、専用のトランスを使用。アナログ回路との相互干渉を排除している。また、デジタル電源回路の動作周波数を通常の約3倍に高速化することで、スイッチングノイズを可聴帯域外へとシフトさせている。
専用マイクを使い、部屋の音響特性を測定し、ルームアコースティックを最適化する「Audyssey MultEQ XT32」を用意。Audyssey MultEQ XTと比べ、32倍のフィルター解像度で補正する。有料のアプリを用いて、より詳細な調整も可能。
有償でのアップデートとなるが、Dirac Liveにも今後対応予定。周波数特性だけでなく、部屋の反射やスピーカーの位置ずれに起因する音の遅延についても測定・補正するもので、2023年にファームウェア提供が予定されている。
HDMI入力は7系統、出力は3系統
3DオーディオフォーマットのDolby Atmos、DTS:Xにも対応。9chアンプを搭載しているため、5.1.4ch、7.1.2chシステムを構築できる。2chパワーアンプを追加すれば、5.1.6chまたは7.1.4chまでシステムを拡張可能。
ソースがハイトスピーカー信号を含まない従来のチャンネルベースのコンテンツであっても「Dolby Surround」や「Neural:X」で3Dサウンドにアップミックスして再生できる。
Dolby Atmos Height Virtualizer、DTS Virtual:Xにも対応。ハイトスピーカーやサラウンドスピーカーを設置していないステレオ、5.1ch、7.1ch環境でも、高さ方向を含むイマーシブオーディオを擬似的に再生できる。
IMAX Enhanced認定製品でもあり、IMAX Enhancedコンテンツの再生に最適化されたサウンドモード「IMAX DTS」、「IMAX DTS:X」を用意。Auro-3Dにも対応し、5.1chシステムにフロントハイト(FHL+FHR)、センターハイト(CH)、サラウンドハイト(SHL+SHR)、トップサラウンド(TS)を加えた11.1chシステムでの再生が可能。
MPEG-H 3D Audio(360 Reality Audio)にも対応。360 Reality AudioコンテンツをHDMI端子から入力して再生できる。新4K/8K衛星放送で使用されている音声フォーマットであるMPEG-4 AAC(ステレオ、5.1ch)もサポートする。
HDMI入力は7系統、出力は3系統。このうち入力7系統と出力2系統(Monitor 1/2)は8K/60Hz、4K/120Hz映像のパススルーに対応する。また、全てのHDMI端子がHDCP 2.3に対応する。HDR映像は、HDR10、ドルビービジョン、HLGに加え、HDR10+とDynamic HDRにも対応する。
さらに、eARCにも対応。HDMI 2.1の新機能であるALLM、VRR、QFTもサポートする。8Kや4Kへのアップスケール出力も可能。
HEOSのネットワークオーディオ再生も可能。NASやUSBメモリーに保存したDSDファイルやハイレゾファイルも再生でき、DSD 5.6MHz、PCM 192kHz/24bitまでサポート。Amazon Alexaにも対応。Bluetooth受信や、AirPlay 2にも対応。Bluetooth送信も可能で、夜間に映画の音をBluetoothヘッドフォンで聴く事もできる。
ワイドバンドFM対応のFM/AMチューナーも内蔵。MMカートリッジ対応のPhono入力も備えている。
Marantz AVR Remoteアプリをスマホやタブレットにインストールし、操作や設定が可能。
イラストなどをふんだんに使ったセットアップアシスタントを搭載。セットアップメニューも進化しており、テキストや画像の解像度がアップ。視認性を高めたほか、デザインもより洗練されたものになった。
HDMI以外の端子は、音声入力がアナログ×5、Phono(MM)×1、光デジタル×2、同軸デジタル×2。さらに映像入力として、コンポーネント×1、コンポジット×2も備える。音声出力は11.4chプリアウト×1、ゾーンプリアウト×2、ヘッドフォン×1。他にも、LAN端子やマランツリモートバス、フラッシャー入力、DCトリガー出力などを備えている。
消費電力は710W。外形寸法はアンテナを寝かせた状態で、442×413×188mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は15.1kg。