「FED」の事業化を断念。資金調達難のため

-ソニーなど出資のFETが清算手続きを開始


2007年のCEATECで展示された240fps対応FED

 「FED」(Field Emission Display/電界放出ディスプレイ)方式のディスプレイ開発を進めてきた、株式会社エフ・イー・テクノロジーズ(FET)が、自社での事業化を断念。清算手続きを開始した。

 工場の買収や設備投資のための資金調達が難航したことが主な要因としている。自社での事業化は断念したが、「FEDの技術が世の中から無くならないよう、譲渡などの交渉を進めている」という。

2006年に初披露したFED

 同社の開発してきた「ナノスピント型FED」は、電子を蛍光体に衝突させて発光させるというブラウン管に近い自発光方式のディスプレイ。ブラウン管に近い自然な高画質が実現できるほか、1ピクセルに対して微細なエミッタ(ナノスピントエミッタ)を1万個以上対抗させる構造を採用することで、画面の隅々まで歪みのない均一なフォーカス感が実現できるのが特徴。高画質やブラウン管に近い特性を武器に、放送向けマスターモニターなどでの市場参入を計画していた。

 FEDは、ソニーが次世代ディスプレイとして'99年から開発を進めてきたが、ソニー社内で液晶と有機ELをディスプレイ事業の中心に据えることが2005年に決定。その技術継承や、独自の事業化に向けて、ソニーと投資ファンドテクノロジーカーブアウト投資事業有限責任組合(TCI)が共同でエフ・イー・テクノロジーズを2006年12月に設立。FED事業化に向けた、研究開発などに取り組んでいた。2008年にはパイオニアの鹿児島工場を買収して量産する計画を立てていたが、2008年11月に正式に断念していた。


(2009年 3月 26日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]