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“超薄板ガラス振動板”とは何か?OTOTENで実物を見た

超薄板ガラスを使った振動板

オーディオとホームシアターの祭典「OTOTEN2025」を東京国際フォーラムで開幕。6月21日、22日の2日間で、入場は無料だが事前登録制。このイベントに、台湾のガラス加工メーカー Glass Acousticが出展。日本電気硝子と共同開発した超薄板ガラス製振動板を紹介すると共に、それを採用したイヤフォンやスピーカーを展示し、大きな注目を集めていた。

超薄板ガラス製振動板とは何か?

ガラスの厚さは、一般的な窓では3mm、極薄とされるコップでは0.9mmだが、日本電気硝子が2005年に開発した超薄板ガラスは、世界最薄となる0.025mmを実現している。

ユニットの形状に3D成形する前の、薄さ0.025mmのガラス。このように曲げられる

これだけ薄いと、曲げればすぐに割れてしまいそうなイメージがあるが、超薄板ガラスは曲げても割れない剛性と耐久性に備えている。これにより、折りたたみスマホや、軽量化が必要な人工衛星のソーラパネルのカバーなどに採用されてきた。

この日本電気硝子の超薄板ガラスを、GAITが3D成形し、表面に特殊な化学処理を施して強化。スピーカーの振動板にしたというわけだ。

GAITが3D成形し、表面に特殊な化学処理を施して強化し、振動板になる
スピーカーユニットになったところ

特徴としては、音の伝達速度が紙や樹脂素材に比べ圧倒的に速く、音の立ち上がりが速いため鮮明・クリアな音になる。さらに、内部損失が大きく、固有音が少なく、音に歪みが少ない。軽くて振動しやすいため、繊細な音のニュアンスを正確に表現できるといった特徴がある。

さらに、ガラスは温度や湿度などの環境変化に強く、経年劣化しにくい。また、ガラス表面を特殊な化学処理で強化する事で、重低音の激しい振動にも耐えられるという。一般のガラスに比べ、5倍以上の強さがあるとのこと。

なお、一般的な石英ガラスは内部損失は小さい。これは、内部でケイ素(Si)と酸素(O)が強力に結合しているためだが、 超薄板ガラスではこれに他の成分を添加する事で、アルカリガラス(多成分ガラス)とし、内部損失を大きくしているとのこと。それでいて、内部の骨格自体は強固にする事で、剛性の高さと、内部損失の大きさを両立している。

左が一般的な石英ガラス、右がアルカリガラス(多成分ガラス)

会場では、この超薄板ガラスを使ったマークオーディオのユニット「Alpair 5G」や、SIVGAブランドのイヤフォン「Que UTG」を展示。さらに、Glass Acoustic自身が手掛けたスピーカーも試聴できた。

超薄板ガラス振動板を使ったサウンドは、非常にクリアでトランジェントが良く、朝ハイスピード。スピーカーから離れて聴いても、音がシャープに、力強く耳に入るため、細かな音も聴き取りやすい。音の質感は少し硬めではあるものの、キンキン、カンカンする不快な響きはまったく無かった。

マークオーディオのユニット「Alpair 5G」
SIVGAブランドのイヤフォン「Que UTG」
Glass Acoustic自身が手掛けたスピーカー

Glass Acousticによれば、今年中を目処に8インチの大型ユニットの開発も目指しているとのこと。様々なメーカーからも問い合わせが来ているとのことで、超薄板ガラスの振動板を使った製品は、これから続々と登場しそうだ。