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4K映像やカーナビ連携で、スマホ以外も採用広がるMHL。4K/60pやハイレゾも検討

MHLのRob Tobiasプレジデント

 スマートフォン/タブレットやテレビなどで採用が進むデジタルインターフェイス「MHL」を推進するMHLコンソーシアムは4日、現行の最新規格であるMHL 3.0や、対応機器/分野の広がりなどに関する記者説明会を開催した。

 MHLのRob Tobiasプレジデントが登壇し、MHL 3.0によりスマートフォンを4K対応テレビやヘッドマウントディスプレイなど、様々なMHL搭載機器と接続する事例を紹介したほか、対応機器の拡大や今後の取り組みなどについて説明した。

4K対応などでテレビのMHL採用に広がり

MHLのこれまでの進化

 ノキア、サムスン、シリコンイメージ、ソニー、東芝の5社によって'10年4月にMHLコンソーシアムが設立され、'11年に最初のMHL(Ver.1.0)対応製品が発売された。その後、'12年4月にMHL 2.0が、'13年8月に現行の最新規格であるMHL 3.0を発表。現在は5億台以上の対応製品が出荷されているという。

 最新のMHL 3.0は、最高2160p30(4,096×2,160ドット/30p)までの4K映像の伝送に対応。ハリウッドの映画スタジオなどが4K対応デジタル機器に対応を求めている著作権保護の最新規格「HDCP 2.2」もサポート。さらに、接続機器の充電は最大10Wまで拡張。音声はドルビーTrueHDやDTS-HDの7.1chサラウンドに対応、複数台の同時ディスプレイ出力も行なえる。タッチスクリーンやキーボード、マウスなどの周辺機器をサポートする「リモートコントロールプロトコル(RCP)」も改善され、4K出力しながら、テレビのリモコンから巻き戻しや一時停止、再生などの操作も行なえる。

 MHLのRob Tobiasプレジデントは、携帯電話が通話中心だった時代からスマートフォンへの移行を振り返り、「MHLは新たなスマートフォンの使い方を再定義した」と説明。スマホを外部ディスプレイにつないで“ポケットの中のPC”のように扱う使い方のほか、カーナビなど車載機器のハブとしてのスマホの利用、スティック型STB端末からのストリーミング再生といった例を挙げた。ユニークな製品としては、一見ノートPCのように見えて、実はスマホ用のディスプレイ兼バッテリ/キーボードであるというMHL対応機器を紹介。主に新興国などで使われ、PCを持っていない人がスマホを「最初のコンピュータ」として、こうした機器を活用しているという。

対応機器の出荷は5億台を突破
MHLによるスマホの新たな使い方の例
各バージョンの仕様比較
MHLを採用するスマートフォンのメーカー
'13年はテレビ/ディスプレイのMHL対応も拡大
MHL接続で、スマホを小型PCのように扱えるという製品も登場
ケンウッドブランドの「MDV-Z701」など車載機器にもMHL対応が広がっている。
カーナビのタッチ操作でスマホのアプリなどを利用可能
シリコンイメージジャパンの竹原茂昭社長

 MHLの日本における総代理店であるシリコンイメージジャパンの竹原茂昭社長は、「スマートフォンをリビングのディスプレイに接続する際、ビデオを大画面に表示することも大事だが、双方向のコマンドや、充電についても重要な機能として考えている」とし、MHLの特徴をアピール。

 Rob Tobias氏は、最近では4K動画撮影対応のスマートフォンなども登場していることなどから、今後は大画面で4Kゲームを楽しむといった使い方の広がりにも期待を寄せた。また、'13年からテレビにもMHL対応機器が大幅に増えており、「'14年も大きな成長を想定している」と述べた。

MHL 3.0では4K/30pやHDCP 2.2をサポート
MHL 3.0対応のスマホやケーブルなど
ソニーは4K対応テレビ「KD-55X9200B」を展示。スマートフォンと接続して4K映像を楽しむというデモを行なった

飛行機やフィットネスなどへの対応も。4K/60p、ハイレゾは検討中

 スマートフォン/タブレットやテレビ以外にも、様々な対応機器の広がりがあることを説明。日本では発売されていないが、Googleサービス対応のソニー製HDMIスティック型端末や、DELLのクラウド連携端末「Ophelia」(オフィーリア)、米国で人気の動画対応スティック「Roku」といった製品を紹介した。

 このほかにも、プロジェクタやAVアンプなどへの接続、ドルビーTrueHDやDTS-HD音声サポートなどに触れ「究極のホームシアター体験を実現する」とアピール。「ソニーのヘッドマウントディスプレイなど、今までのスマートフォン/ディスプレイには無かった対応の広がりがある。飛行機やフィットネス機器などとスマートフォンがつながるといったアイディアもあり、今後も採用メーカーから新しい提案が出てくると期待している」と述べた。

ソニーのヘッドマウントディスプレイで、MHL接続したスマホの動画やゲームを楽しめる。接続したスマホの充電も可能
BRAVIAと接続、スマホとBluetooth接続したコントローラで大画面のゲームを楽しむ
Rob Tobias氏

 MHLには、コンシューマ向け製品だけでなく、テクトロニクスやアストロデザイン、Simplay Labsといった業務向けのテスト機器を開発するメーカーも参加している。Tobias氏は「接続規格として、様々なベンダーが参加する堅牢なエコシステムが必要」とし、米国や中国など各地のMHL公認試験センターで製品認定を実施していることなども紹介した。

 次世代バージョンのMHL 4.0について、詳細な仕様については明らかにしなかったが「さらなる高解像度化や、より高速なデータ転送など、マーケットに合わせて進化することを念頭に活動している」と説明。4K/60p映像や(24bitなどの)ハイレゾ音声への対応も検討中としており、スマホなど接続機器側の対応状況を見て判断するという。4.0の発表時期は「いま予告はしないが、今まで発表してきた間隔(1.0が'10年、2.0が'12年4月、3.0が'13年8月)が参考になるだろう」とした。

シャープのAQUOSクアトロン プロのXL10シリーズ(左)や、東芝REGZA「50G9」(中央)で、スマホのゲームや動画を楽しむというデモ
Simplay Labsは、HDCP 3.0対応プロトコルアナライザ「SL-8800」などを展示
テクトロニクスの任意波形ジェネレータやオシロスコープなどを使ったMHLコンプライアンステスト
アストロデザインのMHLプロトコルアナライザ「VA-1836」

(中林暁)