ミニレビュー

PS VR2をPCに繋ぐ「PlayStation VR2 PCアダプター」を試す

PlayStation VR2 PCアダプター。価格は8,480円

ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は、8月7日から、PlayStation VR2(PS VR2)をWindows PCで使うための「PlayStation VR2 PCアダプター」を発売する。価格は8,480円。

SIEより評価機材が届いたので、早速PCにつないで試してみた。

パッケージ背面

設計時よりPCを意識、PS VR2の用途をPCに拡大

PS VR2はこれまで、PlayStation 5(PS5)専用のVR機器だった。1本のケーブルでPS5と接続できるシンプルさに加え、良好な発色と十分な解像度を備え、視線認識による「Foveated Rendering」による画質最適化など、色々な特徴をもつ。

今回発売されるPlayStation VR2 PCアダプターは、PS VR2をPCに接続して使えるようにするものだ。

今回の発売に際し、SIEに以下の3点を質問してみた。

  • なぜPCアダプターを用意することになったのか
  • PS VR2設計開始時からPC接続は想定されていたのか
  • 今後PS5向けPS VR2ビジネスに変化はあるのか

SIEは、「PlayStation VR2をお使いで、Gaming PCもお持ちの方々に対して、PC上の多くのVRコンテンツもお楽しみいただける環境を提供し、PS VR2でのVR体験の幅を広げる為にPC対応を行なった」とする。

また、PS VR2は「設計時からPC接続を検討していた」ともいう。

「PC接続の重要性はPS VR2開発チーム内でも認識されており、PS VR2の設計開始時点でPC接続についても想定をしていた。PS VR2の発売日にはまずPS5接続におけるVR体験の最適化を進め、発売以降のPC対応の開発を加速していった」とのことだ。

PS5向けについても「SIEとしてPlayStationが提供するゲーム体験の没入感を最大化することに継続的に注力しており、PS VR2は没入感を高めるための重要な商品の一つ」とする。

要は、PS5向けの展開も続けつつも、PC向けに使ってもらうことも想定して販売していく……ということなのだろう。

ただ、利用にはいくつか留意点がある。

1つ目は、PS5で実現されていた機能が全て使えるわけではないこと。

HDR表現や視線認識、ハプティックフィードバックなどの一部機能が使えない。視線認識によるFoveated Renderingにも対応しない。

2つ目は、画質はPC側の性能に依存し、DisplayPort 1.4出力を備えたビデオカードが必要、という点。当然といえば当然なのだが、USB Type-Cだけで接続できたPS5での利用に比べ、相応にハードルが高くなる点は認識しておく必要がある。

動作条件自体は一般的なレベル。ゲーミングPCなどのディスクリートGPUが搭載されたPCなら、DisplayPortも備えている場合が多いだろう。筆者のWindows PCではGeForce RTX 4070を搭載したグラフィックカードを使っているので、性能面でも特に問題はない。

PS VR2をPCで使う際に必要なスペック。要は「PCで快適にVRができる性能」という感じ

詳細は後ほど解説するが、基本的にはSteamを介して利用するため、Steamのアカウントも必須となる。

接続は少々複雑。ソフトはSteamからダウンロード

アダプター自体は小さな箱状のデバイスだ。

アダプター本体

Display Port端子と電源、そしてPS VR2をつなぐUSB Type-C端子がある。アダプター自体にもUSB Type-A端子があり、PCにはDisplay PortとUSB Type-Aをそれぞれつなぐ。

アダプター本体正面にはUSB Type-Cコネクタ
反対側には電源とDisplay Portコネクタ
アダプターには電源が必須
アダプター本体と電源がパッケージに入っている。Display Portケーブルは別売

正直、PS5向けに比べるとだいぶ複雑にはなるが、初代PSVRのように「図を見ないと接続もままならない」レベルではない、というところだろうか。

PS VR2からのUSB Type-Cケーブルと、Display Portケーブル、そして電源をアダプターに繋ぐ
パッケージより。PCとはUSB Type-AケーブルおよびDisplay Portケーブルで接続

ソフトウエアとしては、別途Steamから「PlayStation VR2 App」のダウンロードが必要になる。

Steamから専用ソフト「PlayStation VR2 App」をダウンロード
動作は基本的にSteamを介して行なう

また、PC上での利用は、基本的には「SteamVR」を介し、OpenXR規格に準拠する形になる。だから、SteamVRのセットアップを先に行なっておく必要もある。

どちらもそう難しい話ではない。

PlayStation VR2 Appの表示に合わせ、機器を接続していけばいいだけだ。

「PlayStation VR2 App」アプリの説明通りに接続していく

注意が必要なのがコントローラー。コントローラーについては、PC側に左右それぞれのコントローラーをBluetoothでペアリングしておく必要がある。すなわち、PS5と併用する場合、つなぐ先に応じてコントローラーはペアリングをやり直す必要がある、ということだ。

コントローラーはPCにBluetoothで接続
正常に接続できていればこの表示に

PS VR2では、安全のためにプレイするエリアを決めておき、その範囲から出る時には境界線が見えるようになっている。この機能自体も、SteamVRと連携する形で実現される。ユーザーインターフェースも、PS5の時とほぼ同じだ。

ヘッドセット本体にあるファンクションボタンを押すとことで、周囲をモノクロシースルー映像で確認することもできる。ここもPS5で使った時と同じ、といっていい。

PS VR2レンズ越しの映像を直接撮影。PCからもモノクロシースルーでの周囲確認は可能

SteamVRのゲームが問題なく楽しめる

SteamVRやOpenXRを介してプレイできるゲームなら、特に問題なくすぐに遊べる。筆者の手元で数本遊んでみた限りでは、特に問題が出るゲームもなかった。

SteamVR Home内でスクリーンショット。特に問題なく使える。表示も十分綺麗だ
ボードゲーム風RPG「DEMEO」のPC VR版も問題なく遊べた

PS VR2の中から「Microsoft Fright Simulator」をVR設定で遊ぶと、なんともいえない気持ちになってくる。でも、そういう使い方ができるのが「PCとつながる」ということでもある。

「Microsoft Fright Simulator」のVRモードもプレイ可能。「PS VR2で」遊べるのはちょっと妙な気分にもなってくる

ソフトによってはコントローラーの設定などが必要な場合もあるが、それもさほど大変ではないし、ほとんどの場合は標準設定でも問題ない。ボタンの配置だけ確認しておいた方が良いだろうが。ちなみに、スクリーンショット撮影はPS5と同じく「クリエイト」ボタンに割り振られている。

では画質はどうか?

率直にいって、かなり良い。特に発色が良好だ。

レンズを介してPCでPS VR2を動かした場合の画面を撮影。若干の色収差が見えるのは撮影の関係もある

ただ、PS VR2の特徴を反映した部分で気になることもあった。

PS VR2はハードウエアの特性として、画質が最高の状態を維持できる範囲である「スイートスポット」が狭い。だから頭からヘッドセットが少しズレると、ぼやけや色収差を感じやすい。この点は、Meta Quest 3などと比較すると不利にも思える。また、解像度自体はQuest 3の方が若干上なので、PC接続した際の文字などの精細さは、PS VR2の方が劣る。

また、PS5と接続した時と比較した場合、視線認識を使ったFoveated Renderingの有無も関係するのか、PC接続時の方が画質は劣ると感じるシーンも多い。GeForce RTX4070だとレンダリング性能自体はPS5より上だが、ゲームの最適化などを含めて考えると、「PCの方が常に最適」というわけでもない……というところだろうか。

現状、PS VR2はPC用VR機器としては「最高ではないが十分に良い」くらいの性能だと感じる。一方で、他のPC対応機器はPS5では使えない。「グランツーリスモ7」をはじめとしたPS5+PS VR2専用ソフトには大きな価値がある。

PCのためだけにPS VR2とアダプターを買うのは微妙な感じもするが、PS5とPCで両方使うために買うなら良い。まさにそのためのPCアダプター、といえそうだ。

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、AERA、週刊東洋経済、週刊現代、GetNavi、モノマガジンなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。 近著に、「生成AIの核心」 (NHK出版新書)、「メタバース×ビジネス革命」( SBクリエイティブ)、「デジタルトランスフォーメーションで何が起きるのか」(講談社)などがある。
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