レビュー

Amazon「Echo Input」で、古いiPodスピーカーが息を吹き返した

Amazon.co.jpが3月28日に発売した「Echo Input」は、手持ちのスピーカーに接続してAlexaの音声操作などを使えるようにするという製品。これ自体がAlexaスマートスピーカーなのではなく、簡単にいえば「スマートスピーカーからスピーカー部分を省いた」ものだ。

Echo Input(手前)と、接続したスピーカー「Zeppelin Mini」(奥)

用途を特化している分、価格は2,980円(税込)で多くのスマートスピーカーに比べて手ごろであり、本体も薄型でコンパクト。スマートスピーカー自体に興味はあるけれど「これ以上はスピーカーを家に置きたくない(スペースがない)」人や、「音質にこだわりたいのでスピーカーはオーディオメーカー製品が良い」人などにうってつけといえる。

今回やってみたかったのは、一時期大量に登場した“iPodスピーカー”の再活用だ。筆者がかつて愛用していた、Dockコネクタ搭載iPod/iPhoneスピーカーのB&W「Zeppelin Mini」を再び現役として使うべく、Echo Inputの追加でスマートスピーカー的に活用できるかを中心に試した。

Echo Inputが持つ機能はシンプルで限定されているものの、色々と使っていくうちに、組み合わせる機器や置き方など、想像していたより自由な使い方ができることも分かってきたので、その辺りも紹介したい。

行き場のなくなったiPodスピーカーに活路?

Echo Inputは、外形寸法80×14mm(直径×厚さ)、重量は78gで、コースターのような薄い円形の筐体に、通信機能や音声操作用のマイクを内蔵。Echoシリーズの頭脳である音声サービス「Alexa」と繋がり、同シリーズで初めてAlexaが発する音声が外部スピーカーから再生されるように設計されている。

Echo Input

組み合わせるスピーカーは、3.5mmステレオミニ端子の音声入力またはBluetoothを搭載していればOK。Echo ImputがAlexaの部分を受け持ち、音はスピーカーから出てくるという役割分担だ。

パッケージ

現在市販されている小型スピーカーの多くはBluetoothを搭載するため、入力端子の主流が時代の変化によって変わったとしても、スマホなどの音楽を聴くのに困ることは少なくなった。しかし、Bluetooth搭載が一般的になる前の“Dockコネクタ”のみのスピーカーには、最新のiPhoneやiPadとはつながらないモデルが多い。

筆者がかつて枕元のiPodスピーカーとして愛用していたZeppelin Miniも、Dockコネクタ搭載のモデルで、小型ながらデジタル入力対応の上質なサウンドが気に入っていた製品だ。ステレオミニのアナログ入力やUSBデジタル入力も持つためPCなどのスピーカーとしては問題なく動くが、iPhoneからステレオミニ端子まで無くなったのを機に、ほとんど使わなくなってしまった。このように、まだ音は出せるのだが、機能が古びたために使わなくなったスピーカーやコンポ、ラジカセなどが家に眠っている人は、他にもいるのではないだろうか。

B&W Zeppelin Mini。iPod touchをDock端子に接続すると今でも使えた

Echo Inputの登場により、新たにスマートスピーカーを買うよりも手頃な値段で、手持ちのスピーカーが再び便利に使えるようになりそうだという期待をもって、さっそくセットアップした。

普通のスピーカーが、声の操作で音楽やラジオを聴けるスマートスピーカーに変身

セット内容はシンプルで、使い始めるまでの準備は特に迷うこともない。流れとしては、まずEcho Inputに付属の電源アダプタを家のコンセントにつないで、スマホアプリを使ってWi-Fiに接続。手持ちのアクティブスピーカーとステレオミニのAUXケーブルまたはBluetoothで接続するという形だ。なお、スピーカーとEcho Inputの間は、AUX接続時は15cm以上、Bluetooth接続時は1m以上離すよう案内されている。また、Echo Inputは四方の壁から20cm以上離しておくことが推奨されている。

ステレオミニのアナログ音声入力を装備。給電はマイクロUSB
USB-ACアダプタやAUXケーブルなどが付属

接続設定は、iPhone/Android/Fire OSのAlexaアプリで行なう。画面の指示に従い、Echo InputをWi-Fiに接続。このアプリで管理できるように設定する。このあたりは、従来のEchoなどのスマートスピーカーと同様だ。Wi-Fiは2.4/5GHzデュアルバンド対応で、IEEE 802.11 a/b/g/n/acをサポートしている。なお、アプリ以外にWebブラウザからもアクセスして設定できる。

Alexaアプリからの操作でEcho InputをWi-Fiに接続
接続完了すると、中央のインジケーターが青く点灯

既存のAlexa対応スピーカーと違って、Echo Inputの場合は、ここからスピーカーへ接続する手順も加わる。といっても有線かBluetoothかを選んで接続するだけなので、特に迷うこともないだろう。Zeppelin MiniはBluetoothを搭載していないので、有線接続を選んだ。これで準備は完了した。

なお、接続するスピーカーの機種によっては電源を自動でオフにする省電力モードが有効な場合があるが、Echo Inputで使う場合は、意図せず接続が切れないように、省電力モードをオフにするよう案内されている。

使うスピーカーがAUX(有線)かBluetoothかを選択
有線接続時
Zeppelin Miniの背面端子にAUXケーブルを接続

普通のスマートスピーカーと同様に「アレクサ」と呼びかけて質問や指示をする。まずは定番の天気やニュースを聞いてみると、Zeppelin Miniのいい音で答えてくれた。Alexaの声も、小型スピーカー特有の軽い音ではなく、腹から出したような厚みのある人間っぽい音質だ。

もっとスピーカーの音の良さを活かせるように、音楽を聴いてみた。アーティスト名や音楽ジャンルを指定して「アレクサ、ジャズをかけて」、「アレクサ、寝る前の曲をかけて」などと言えば、Amazon Prime Musicなどの音楽がスピーカーから聴ける。久しぶりにZeppelin Miniの音をじっくり聴いたが、量感たっぷりの低域、厚みのあるボーカルなどの中域、繊細だが情報量の多い高域まで、やはり小型スピーカーとは一線を画した音だ。

Spotifyや、dヒッツ、うたパスなど、普段使っている音楽サービスがAlexa対応なら、アプリ上で有効にしておけば、声の操作でその音楽を聴ける。複数のサービスを使っている場合は、Alexaアプリ上で「デフォルトの音楽サービスを選択」を選んでおくと、そのサービスから音楽を探すように指定できる。

スマートスピーカーの便利な用途の一つであるラジコ(radiko)も再生してみた。「アレクサ、ラジコで文化放送をかけて」などと話しかけるとEcho Inputを介してZeppelin Miniからラジオが聴けた。スマホ単体で聴く方法に比べていい音なので、家でラジオを聴くときなどに活用できそうだ。そのほか、電子書籍のKindleで購入した本の読み上げなどにも使えた。

Bluetoothスピーカーも再び活用できる

Echo InputにはBluetoothも内蔵しているため、次は家にあったBluetoothスピーカーにも接続してみた。使ったのはソニーのポータブルワイヤレススピーカー「SRS-X33」。2015年の製品だが、スピーカーとしては十分使えて、小型ながら音量もしっかり出る。

BluetoothスピーカーのSRS-S33と接続

Echo InputとのBluetooth接続は、スピーカー本体のペアリングボタンを長押しして待機状態とし、Alexaアプリの「Bluetoothデバイス」から選択して接続する。接続に成功すると効果音が鳴る。

先ほどの有線接続の場合と基本的な使い方は同じで、Amazon Musicなどの音楽ストリーミングをEcho Input経由でBluetoothスピーカーから聴ける。BluetoothのプロファイルはA2DPに加えAVRCPにも対応し、接続中のデバイスの再生や停止なども音声でコントロールできた。

X33は小さなスピーカーなので、音質はZeppelin Miniに比べると、さすがに出力の大きさや解像度の高さで少し物足りなさもあるが、ワイヤレスで持ち運びできるのがメリットであり、耳元に近い場所にスピーカーを置くこともできるので、使い勝手の面では有利だ。XB31も、ここ最近使うことが少なくなったが、Echo Inputという相棒を得たことで、もう一度活用できるようになった。

ヘッドフォン接続や、パソコン/テレビのUSBバスパワーでも使える?

説明書などに書かれた使い方ではないが、スピーカーではなくBluetoothヘッドフォンとつながるかどうかも試してみた。ソニー「WH-1000XM3」や、ShureのBluetoothケーブル「RMCE-BT2」と接続してみると、ペアリングの方法は同じであり、問題なく動作。声でラジコを起動したり、Amazon Musicの音楽再生操作をして、ヘッドフォン/イヤフォンから聴けた。

ソニーのヘッドフォン「WH-1000XM3」と接続
ShureのBluetoothケーブル「RMCE-BT2」と接続

スピーカーと違い、ヘッドフォンを着けたまま歩き回っても音楽などが間近で聴こえるのが良い。もちろんEcho Inputから離れすぎると声での操作が届かなかったり、Bluetooth接続が切れる場合はあるが、同じ部屋の中で動き回る程度なら、全く支障なく使えた。1000XM3のように、ヘッドフォン本体が既にAlexa対応(スマホ経由で利用できる)モデルも増えてはいるが、そうではない普通のワイヤレスイヤフォンでも、Echo Inputがあるとスマートスピーカー風に使えたのは新鮮な体験だ。

もう一つ試したかったのが、家のコンセントを使わなくても、USBバスパワーでEcho Inputが動くかどうか。付属のUSB-ACアダプタを使うのが正しい利用方法だが、それほど電力を使うようにも見えないので大丈夫なのではと予想して、手持ちの13.3型ノートPC「Ideapad 710S Plus(生産終了)」のUSBに接続すると問題なく動作。前述のBluetoothスピーカーやヘッドフォンなどで使えた。

パソコンのUSB給電でも動くか試した。もちろんメーカー推奨ではない

また、テレビやPCディスプレイのUSB端子からの給電でも動作するか試したところ、手持ちのソニー「BRAVIA KJ-55A9F」や、EIZO「EV2450-BK」のUSB端子に接続しても動作できた。

これらはメーカー推奨の利用方法ではなく、どんな機器のUSB給電でも動作するとは限らない。安定して動作させるには、やはりAC経由が確実だとは思うが、少なくとも筆者の家で使う場合は色々な場所に置けるのが分かったので、寝室だけでなく、パソコン作業をしながら、テレビを観ながらといった使い方もしようと思っている。

“時々音楽”だけでも使える、気軽さもポイント

結果として、当初の「使わなくなったiPodスピーカーを復活させる」という目的よりも幅広い使い方を紹介する内容にはなったが、メインであるZeppelin Miniの再活用はできるのが分かったので満足している。ここまで紹介した用途が、3,000円を切る製品で実現できるのは満足度は高いので、新しくスマートスピーカーを買うことに迷っている人にもおすすめしたい。

「スマートスピーカーが良い音である必要はあるのか?」という点は、よく聴く音源や、加入している配信サービスなどによって意見は分かれると思う。ただ、Amazon Music、Spotifyなどの対応音楽サービスや、音楽コンテンツでもあるラジコを普段から使っている人は、スマホやパソコン以外の聴き方もできるようになるので、これまでより利用シーンが広がるはずだ。

あまり構えて使うような製品でないのもポイント。普段は「今日傘が要るか」、「最高気温は何度か」を尋ねるくらいの使い方だとしても、ふと音楽やラジオを聴きたい気分になった時にも気軽に使える製品として、Echo Inputは身近な存在だと感じている。それに加えて、スピーカーの能力次第で良い音でも聴けるというのが、自分にとってかなりツボを押さえた製品であり、これからも使い続けようと思っている。

中林暁